北ア 高嵐山 2009年10月16日
所要時間
5:33 七倉ゲート−−6:35 高瀬ダム−−7:33
林道終点−−7:46 登山道を離れる−−7:48 ウェーダー準備、デポ、パッキング、徒渉 8:01−−8:05 尾根末端 8:13−−9:04 1599m峰
9:20−−9:50
アディダス岩(1780m)−−10:46
2130m肩(赤錆プレート)−−10:55 高嵐山 11:33−−11:43
2130m肩−−12:11 アディダス岩−−12:25 1599m峰−−12:52 尾根取付−−13:00 徒渉
13:49−−14:04 林道終点−−15:00 高瀬ダム−−16:02
七倉ゲート
このルートのポイント ・最大の難関は高瀬川の渡渉。たぶん飛び石で靴を履いたままの渡渉は不可能で水に入る必要あり。水量が減る秋〜初冬で雨が降って 数日経過して水量が落ち着いてからが良い。水深は腿程度。 ・藪の状態は予想外に薄く、1599m峰までのシャクナゲ帯を通過すればあまり問題になる場所は無い。無雪期で問題なし、というか、途中の 急傾斜を考えると無雪期の方が歩きやすいと思う ・尾根が不明瞭な区間が多く、安全に下るためには目印必携。特に1599m峰以下では微小尾根が入り混じっている ・尾根上に露岩があるが無理に乗り越える必要がある岩は無く、危険個所は無し。ロープの出番は無かった ・2130m肩以西は地形図に表現されない微小ピークがいくつかあり、どれが三角点峰なのか読図では判別不能。DJF、私の目印があるうちは これで判断できるが、目印が落ちた以降はGPSが必要。三角点は発見できなかった |
高嵐山は野口五郎岳、真砂岳中間ピークから東に延びる尾根から北東に分かれた尾根上にある山で、当然ながら登山道は無い。高嵐山はどう考えてもマイナー中のマイナーな山だと思うが、ネットで検索をかけると山行記録はDJFのもののみどころか、他には高嵐山に登ったというリストすら発見できなかった。山頂渉猟著者の南川さんと柏の小川さんは登っているが、以上3人の他に登った人数はどれほどなのだろうか。先日の北ア坊主山も滅多に人が入ることはないが、おそらくそれよりも入山者数は1ランク少ないだろう。
問題はどう登るかであるが、枝尾根の末端近くに位置するので裏銀座縦走路から下るには距離がありすぎるし、そもそも裏銀座から周遊すると最低2日は必要となろう。こうなると山頂渉猟のように下から登るのが得策と言え、今年4月の降雪時にDJFが高瀬川を徒渉(帰りは水泳?)して下から登っている。当初は私も残雪期を狙っていたのだが、先行して登ったDJFの報告から無雪期がいいと判断、藪漕ぎと徒渉を考えれば涼しくなって最も水量が減る秋が最適だ。あまり遅くなると北アも雪が降るようになるので初冬では遅すぎ、11月中旬くらいが限界と考えた。今週末は土曜日は広範囲で天候が崩れ、日曜は日本海側で悪天が続く予報で、おそらく冬型の気圧配置が現れるのだろう。北アの未踏2000m峰を登るには時期はいいのに週末の天気が悪く、せっかくなので余った有給休暇を金曜日に取得して高嵐山を目指すことにした。今週は雷雨はあったが長時間の降雨はなく、高瀬川の水量も減っているだろう。ただ、金曜日に登るとなると高速道路の値引きがないのが難点だ。深夜割引の半額で我慢するしかない。
七倉は久しぶりに足を踏み入れるが、ここ最近は鹿島槍登山口の大谷原に通っていたので車の運転は問題ない。豊科ICで降りて毎度の県道を川沿いに北上し、国道を突っ切って「上原の湯」方面の県道に乗り換え、あとは葛温泉の案内に従う。既に裏銀座の山小屋は営業を終了していると思うが、平日と言うこともあって七倉駐車場はガラガラだった。
今回は積雪の心配はないのでアイゼンは置いていくが、代わりにウェーダーをザックに突っ込む。これは釣りで使う腰まである巨大長靴で、深い沢の徒渉には最強の武器だ。靴底はフェルトで滑りにくいのもうれしい。でも重さが結構あるのが難点だ。まあ、今回は平坦なところでしか担がないので最小限の労力で済むが。目印も多めに持って行くことにし新品の紙テープ1巻を追加したが、これで足りるだろうか。DJFの記録では尾根下部で迷いやすいようだ。また、念のために10mの補助ロープもザックに入れた。
七倉ゲート(帰りに撮影) | 硫黄尾根取付には渡渉が必要か |
七倉ゲートから徒渉点まで2時間強の歩きが必要で、音楽を聴きながらのんびり歩く。ゲートには春嵐荘先の水俣川にかかる吊橋破損との看板が。この橋は硫黄尾根取り付きでも使う橋で、これが無いと渡渉が必要だ。水量がどの程度だったのか覚えていないが、春先の雪解水を靴を脱いで渡るのはとんでもなく冷たくてきついだろうし、雪解けで増水していればDJFのように流される危険だってある。いつ開通するのか心配だ。
新高瀬発電所入口付近のカモシカ | 途中のトンネルに置いてあった懐中電灯 |
堰堤右縁をショートカット | 堰堤場から見たジグザグ車道 |
高瀬ダム堰堤 | 高瀬ダムから見た烏帽子岳 |
ダム堰堤へのジグザグ道は車がいないので右側端をショートカット、ここを歩いたのは3回目だと思うが、人がいないシーズンや時間帯だったので未だ車道を素直に歩いたことがない。さすがに直登は早く、最後は緩やかな車道を歩いて堰堤上へ。ダムはほぼ満水であるがひどく白く濁っていた。たぶん裏銀座の山小屋はほとんど閉まっているだろうから、今日ここを登り始める登山者はいないかもしれない。ここからだと不動岳が大きい。
高瀬隧道入口 | 温泉が出ている「わもり沢隧道」のパイプ |
ダム横のトンネルに入るとひんやりを通り越して寒いくらいだ。次の「わもり沢隧道」は逆に内部の気温が高く暖かさを感じる。それもそのはず、トンネル内部に湧水を排水するパイプが5本?突き出しているのだが、ここから出ている水は温かいのだ。風呂に入れるまでは暖かくないが、寒い朝には気持いいいくらいの水温はある。その昔、このトンネルを歩いて温水の存在に気づいたKUMO氏が、もし猫爺氏がここを通ったなら喜んで水浴びするだろうと書いていたなぁ。ここはトンネル内照明が当たらず真っ暗なので人目にとまらないので本当にやりそうであるが。
ダム湖から見た高嵐山 | 高瀬川第5発電所。ここだけ硫黄臭が強い |
もう一つトンネルを抜けると高瀬川第5発電所で、轟音を立てて発電機(正確には水車の音か?)が回っていた。なぜかこの発電所付近だけ強い硫黄臭がしていたが、実は発電所内に温泉でもあったりして?? まさか発電用水に硫黄分が多いとか言わないだろうなぁ。水車が腐食してしまう。まあ、地熱発電用タービンなどは耐腐食性材質で作られているのだろうから水車でも可能か。
ダム湖が終わり広い河原になる | 林道終点 |
やがて林道終点に到着、ダムに登る前に追い抜かれた3台の車が駐車していたが、2台が水戸ナンバーというのが謎だ。どんな関係者だろうか。この先では晴嵐荘関係者しかいなさそうな感じもするが水戸はなぁ・・・。ちなみに水戸ナンバーの2台にはダムを下っているときにも追い越された。到着直前には白煙を残してディーゼル4WD車が下っていった。
ここから河原に下る | 高瀬川河原に出る |
登山道になってからは五郎沢出合を逃さないよう樹林が切れるポイントで高瀬川側の様子を見ながら進んでいく。ここからだと高瀬川の流れの音だけ聞こえて流れを見ることはできず、結構な音がしていて水量が多そうに思えるが、過去の経験では音と水量は比例せず、音から想像する水量より実際の水量が少ないことの方が圧倒的に多い。まあ、音量は流れまでの距離によるので現場に行ってみないとわからないが。
上流方向を見る | 渡渉した場所。比較的緩やかな流れ |
目的の尾根は遠くからでもはっきりと見えており、地形図から実際の地形が読める人なら尾根末端を見落とす心配はないだろう。そろそろいいだろうと思える場所で登山道を外れて河原へと降りたが藪は無く、広葉樹林を適当に下ればすぐに河原に出られた。対岸にはDJFの写真にあるような低いガレがあり、あれを登れば尾根末端だ。水の流れは左岸側にあるようで河原に出たすぐでは見えず、適当に歩きやすい所を進んでいくと肝心の流れが姿を現した。音は威勢がいいが沢の規模としては7月に登った北海道日高の100名山幌尻岳の額平川と同等で危険を感じるようなレベルではなく、今の時期では楽勝の部類だ。DJFが果敢に挑戦した残雪期の雪解けシーズンでの渡渉は失敗だったようだ。しかし、今の時期でも靴を履いたまま石伝いに飛べそうな場所は無く(今回は真面目に探しておらず、広い範囲でよ〜く探せばあるかもしれないが)、高嵐山に取り付くには登山靴を脱いでの渡渉は必須と言えよう。
この尾根を登る | 下流には針ノ木岳 |
さて、渡渉するのに私には強い味方がある。釣りに使う腹まである巨大長靴「ウェーダー」である。これなら体に水が直接触れないので冷たい水でも難なくジャブジャブが可能だ。今の気温は2,3℃で裸足ではかなり寒いだろうが、ウェーダーなら全く問題ない。靴を脱いでザックに収容し、流れの弱そうな場所を選んで川に突入、川の中に沈んでいる大きな石の上流側を横断しようとしたが思ったより水流が強く、石のすぐ下流側に切り替える。こちらは石で水流の勢いが殺され、難なく通過できた。この石は川の中央付近にあったがこの辺りが一番深く、腿まで水が来たがウェーダーは腹まであるので何の問題もない。対岸に到着し、目立つ巨岩のたもとにウェーダーを置いて上に石を置いてデポした。こんなところにやってくる人はほとんどいないだろうから、分かりにくい所に隠す必要はなかろう。
まずはこのガレを登る | 尾根末端付近 |
2時間以上歩いて少々疲れたので日当たりのいい河原で休憩しようかと考えたが、河原は風が吹き抜けて寒いので樹林に潜ることにする。尾根に取り付くには高さ3,4m程度の崩れやすい砂のガレをよじ登る必要があり、少しでも足元が安定していそうな場所を選んで登っていくと、人間のものか動物のものか不明だが足跡があった。ガレを登ると平坦な樹林帯に出るが、樹林が深くて尾根末端がどこにあるのか見えない。適当に奥に進むとすぐに斜面が始まり、そこが尾根末端だ。ここは背の高いシラビソ樹林で藪は無く風も防げるので少しだけ休憩。ここから見上げる尾根(というか斜面)は早くもシャクナゲが姿を表しているが、この付近は疎らで藪といえるような状態ではない。
急な尾根を登り始める | シャクナゲの森。密度はこの程度が続く |
休憩を終えて出発。DJFの失敗例を教訓に、ここからは頻繁に目印を付けながら登っていく。かなり急な斜面で尾根と呼べるような明瞭な地形ではなく、微小な尾根地形を辿っていく。少し登ると本格的なシャクナゲの森になってくるが、この辺はまだ標高は1300m台だからだろうか、奥秩父で出現するような根元から盛大に枝分かれして四方八方に枝を広げたシャクナゲではなく、枝分かれが少ないヒョロっとした背の高いシャクナゲで、しかも密度はさほど高くなく、体を突っ込む隙間だらけだった。ただしザックにストックやピッケル、ワカンがあれば引っ掛かりまくる程度の密度はあるので、ザックはできるだけ小さい物の方がいいだろう。それでもこのレベルの藪はまだ楽な部類であり、予想外の展開だった。
高密度区間は短い | シャクナゲではない木が一番邪魔 |
たまに開けた場所に出る | まだシャクナゲが続く |
DJFはシャクナゲが濃い場所は尾根を避けて谷を登ったようだが、ここの谷はかなり傾斜がきつく危険を伴いそうなので、私は微小尾根を正確に辿って登ったいった。2か所くらいで僅かな距離だが樹林が開ける場所があって気持ちがいい場所だが、2か所ほどが藪が深くて突破に苦労する場所もあった。この藪の主はシャクナゲではなくお茶の木のような葉を持つ低い常緑樹で、こいつはハイマツのように地面に寝て幹を伸ばしており、おまけに盛大に枝分かれして高密度だ。あまりに密度が濃すぎて左に逃げた。尾根左側がガレた場所もあり、ここは稜線右側を迂回する。高度が上がってもシャクナゲの密度は似たり寄ったりで、隙間を縫って登っていく。もちろん目印は頻繁に残していく。この不明瞭な地形では目印無しで往路を追うのはまず無理だろう。ここではGPSは使わなかったが、シャクナゲの上にはシラビソが茂っているのでたぶん衛星捕捉できないだろう。
1560m肩に乗るとシャクナゲ区間終了 | 1599m峰 |
傾斜が緩むとやっとシャクナゲの森が終わってシラビソ樹林と薄い笹に変貌、太い尾根に乗って左に進路を変える。こうなれば尾根が明瞭になって目印は不要となり、目印を付ける時間が不要となって少しは登るスピードが上がりそうだ。シャクナゲが無くなると一気に歩きやすくなり、尾根上を西に進んでいくとなだらかなピークに到着、ここが1599m峰だろう。周囲は背の高いシラビソに覆われ、地面付近は薄い笹と少しのシャクナゲだが地面が出て座れる場所もある。ここまでの急な登りで疲れたので休憩を入れる。樹林で日差しは無いが、今日は快晴で青空が広がっていた。気温は10℃まで上がってきた。
最初は稜線南側が歩きやすい | 歩きやすい尾根が続く |
休憩を終えて出発。最初は籔っぽいがすぐに笹が切れてシラビソ樹林の歩きやすい尾根に変わる。正確にいえば尾根の真上は籔っぽいのだが、僅かに南を巻けば藪は皆無で歩きやすく獣道もある。古い切株も見られたので一度人の手が入ったのは間違いないと思うが、植林された形跡は見られずシラビソの自然林が広がっていた。尾根は明瞭で、このままの状態が山頂まで続けば楽勝だな。
尾根が広がると笹が登場 | 標高1700mで尾根左下に露岩登場 |
標高1660mで細い尾根から広く不明瞭な尾根に変わると同時に笹が出てくるが、恐怖の根曲竹ではなくもっと茎が細くて背丈は胸くらいの笹で、密度もそれほど高くはなく、多少鬱陶しいがかき分けながら登っていく。このまま続くとヤダなぁと考えてながら歩いたが、徐々に密度が減って歩くのに支障が無い程度に落ち着いてくれた。それでもDJFが歩いた時のように雨が降っていれば笹が濡れてその中を歩くのはイヤだけど。晴れた日を狙えてよかったぁ。
標高1700mで目の前に大きな露岩が現れてちょっと緊張したが、実際は尾根上の岩ではなく尾根直下左側の岩で、この露岩の上を稜線が通っているが尾根上は土と笹、樹林に覆われて何の変哲もない尾根だった。下ってくると露岩とは気づかない場所だった。この少し上部で左から尾根が合わさり、下山時に引き込まれないよう要注意個所だ。さらに上部でも尾根が左に別れ、ここも下山時要注意個所だ。
小尾根を登り続ける | 標高1780mの「アディダス岩」 |
標高約1780mでDJFの写真に登場する「アディダス岩」と一目でわかる露岩が登場、これは細い尾根上を占拠しているわけではなく、広い尾根上にあるので左側を通過する。帰りがけに近くの木に赤テープを巻いて「アディダス岩 by DJF」とマジックで書いておいた。これは通過点としていい目印になるだろう。
標高1820m付近は笹が濃い | 標高1900m付近で大きな露岩群登場 |
ここは左を巻く | 尾根に乗り直すが猛烈な傾斜 |
標高1800m付近を越えると笹が濃くなり尾根を外さないよう注意しながら登り続けるが、標高差で50mくらい登ると再び笹が薄くなり、深いシラビソ樹林で歩きやすくなる。それと同時に傾斜がきつくなってきて、標高約1900m地点でかなり大きな露岩地帯が現れる。1枚岩ではなく途中にたくさんのシラビソが生えていて頑張れば登れそうではあるが、単独でわざわざリスクを冒す必要もないのでここは左を巻くことにする。左は水が無い浅い谷地形で笹は薄く歩きやすいが、このまま谷を詰めると尾根に出るのに苦労するかもしれないので、適当な場所で右の尾根に取り付きなおす。これがまたかなりの急傾斜で木にしがみつきながら登るような場所で、もし木が生えていなければクライミングに近い状況だろう。下りも慎重に行動した。雪が乗って凍結している場合は要注意個所だ。
傾斜が緩む | 1920m付近は藪がうるさい |
尾根に乗りなおし少し登るとやや傾斜が緩むが、まだまだ急な登りが続き、標高1950m付近でいったん傾斜が緩み、ここから尾根が明瞭になる。1660m地点からここまでは目立たない小尾根を登ることになり、下りでは入口からして分かりにくいので、ここまでは要所に目印を付けた方がいい。1920m付近は一時的に笹とシャクナゲがうるさくなるが、尾根の左側が植生が薄いので巻けるところは巻いて進む。
標高2000mを越えると再び急傾斜。でも藪無し | DJFの写真と同じ露岩 |
標高が2000mを越えると藪が消えて歩きやすくなるが再び傾斜がきつくなり、グングン高度を上げる。コケたら転げ落ちそうな場所もあるが、シラビソ樹林が深く手掛かりはたくさんあるし、根が張り出して地面が階段状になった場所もあって比較的歩きやすい。でも雪が乗ったら急な雪面だな。尾根は微小だが背の高いシラビソ樹林で灌木藪は無く樹冠より下の展望はよくて下山では先が見通せるので尾根を外す心配は少ないだろう。
やっと空が見えてくると肩が近い | 深い笹に覆われた標高2120mの高嵐山東端肩 |
赤錆プレートは地上高3mほどの位置 | 肩から先は明瞭かつ藪無し尾根 |
ようやく傾斜が緩むと同時に背丈ほどの密生した笹が出現し、標高2130mの高嵐山東端の肩に乗った。帰りは下る尾根は笹で隠れて見えないので入口には目印が必要だろう。DJFが目撃した真っ赤に錆びたプレートは今でもしっかり木にくっついているが、高さは地面から3mほどあって手の届かない場所だったので、これを付けた人はDJF同様に残雪期か冬季に登ったようだ。DJFの写真では目の高さ以下にこの標識があるように見えるので、積雪は1.5〜2m程度だったようだ。なお、これと同じく真っ赤に錆びたプレートがこの先にもう1か所あったが、こちらは高さ2mくらいにあってどうにか手が届く範囲だった。
もう一つの赤錆プレート | 藪に覆われた小ピークを越える |
笹があるのは赤錆びプレート付近の狭い範囲だけで、すぐに藪が消えて歩きやすいシラビソ樹林に変貌する。おまけにこの先は尾根が明瞭で安心して歩ける。肩に乗ると傾斜はほぼ無くなって水平移動になるが、小さなピークがいくつか現れてそれらを乗り越えて進んでいく。ピーク付近で低いシラビソの藪がうるさい所が2か所くらいあったが距離的には短く、ピークを抜けると再び歩きやすい尾根となった。
再び藪無し尾根になる | この露岩のすぐ先が山頂 |
高嵐山山頂 | DJFのリボンは背伸びしてギリギリ手が届かない高さ |
DJFの写真に登場する庭石のような大きな石が現れると山頂は近く、そのすぐ向こうの僅かな高まりが地形図での高嵐山山頂だった。全く目立たないピークで、東端肩から今まで越えてきた小ピーク群と標高的に高いとは思えず、GPSが無ければ間違いなく通過してしまうような場所だ。今はDJFのピンクリボンがあるので山頂を確認できるが、あるはずの三角点をかなりしつこく探索したが、笹藪の中にも発見できなかった。地面に埋もれているのか、それとも最高点近くではなく外れた場所にあるのだろうか。稜線上の東西は詳細に探したが発見できなかったし、稜線南側は藪が無く三角点があればすぐ見つかるだろうから、稜線より北側にずれた場所(笹地帯)にあるのだろう。
高嵐山から見た三ッ岳 | 下山時のアディダス岩 |
周囲はシラビソ樹林で展望は無く、僅かに北側が見えるだけでどうにか三ッ岳から野口五郎岳の稜線が見えるだけだった。DJFのピンクリボンはギリギリ手の届かない高さに取り付けてあり、DJFがここを訪れたときの積雪は1m程度だったようだ。たぶんその高さがあれば北側はもっと展望があっただろう。その点以外はここに登るなら無雪期が正解だった。人工物はDJFのピンクリボンのみで他には一切見当たらない。布KUMOも無いのでたぶんKUMO氏も未踏だと思うが、もしそうでも登り残した2000m峰が私よりはるかに少ない氏のことだから、私のレポートを参考にすぐ山頂を踏むことだろう。
しばし山頂で休憩してから下山開始。登りで多数の目印を残してきたので下りは安心してルートを辿れた。それでも尾根が不明瞭な「シャクナゲ森」では相当しつこく目印を付けたにも関わらず見失うこともあり、注意深く周囲を見渡してやっと正しいルートを探せた場面もあった。無事に尾根末端に辿りつくまではなかなか気が抜けない微妙な地形だった。
尾根末端に下りて河原に出てウェーダーを回収、着用して対岸に渡ってしばし休憩。小さなシートとザックの上にひっくり返って少しの間お昼寝タイム。これからまた飽き飽きする2時間の車道歩きが続くので、ここで疲労を回復しておく必要がある。上空は少し雲が増えてきたが日差しが多く気持ちよく寝られた。
登山道途中から見た高瀬川下流方面 | 高瀬ダム下部から見た唐沢岳と幕岩 |
重いウェーダーをザックに詰め込んで出発。平日なので登山道に人はいないと思っていたが前方に小さなザックを背負った2人の男女が。登山者というよりハイカーと思えるが、この時刻にこの辺りということは湯俣まで日帰りだろうか。道を譲ってもらいテクテク歩いて車道終点に出ると登りで見た車の他に3台増えていた。こちらはなおも歩きである。平日なのでダム堰堤は無人かと思ったら結構賑わっていて10人以上はいただろう。タクシーも数台いたが、今の時刻ではみんなお帰りの車であろうと予想、実際そのとおりで、その後も空のタクシーが上がってきては客を乗せて下って行った。私が乗るには電話でタクシーを呼ぶ必要があるが、残りは下りの道1時間の歩きなので最後まで歩くことにした。さすがに衆人環視の中を堰堤をショートカットして下るわけにもいかず、緩やかな車道をそのまま辿って下っていく。堰堤を下ったところではトンネルで何やら工事中で、これが理由なのか帰りのトンネルのいくつかは照明が消えていてヘッドライトを取り出して歩いた。ゲートを越えて七倉駐車場に到着すると、私の車を含めて2台だけだった。最後の車道歩きは結構に疲れた。
DJFの情報のおかげでいい時期に登らせてもらえた。予想より藪が薄く、北アの道無き2000m峰の中では登りやすい部類であることは間違いない。ただし、高瀬川の渡渉が最大の関門で増水時は避けた方が無難で、適期は10〜11月頃と言えよう。あと、長い車道歩きもネックとなるのでタクシーが使えるなら利用した方がいいだろう。また、時間的に日帰りが無理そうな人は前日に名無沢避難小屋に宿泊し、早朝から軽装でアタックするのがいいだろう。今回は小屋まで足を延ばさなかったが、以前見たときにはきれいな建物で水場も近く、たぶん利用者はほとんどいないだろうから静かに過ごせると思う。