白山 別山、(南白山)、焼滑、三ノ峰、二ノ峰、一ノ峰  2009年4月29日〜5月1日

広域地図

歩いたルート。クリックでコメント付き2.5万図に拡大


 白山は以前主峰周辺に日帰りで登っているが、別山周辺は空白地帯のまま何年も経過していた。何せ別山周辺の2000m峰は夏道があるのでいつでも行けるからだった。しかし日本山名事典に焼滑が記載されて状況が変わった。焼滑とは別山東尾根上にある2082.7m三角点峰で、この尾根上には登山道は無く、場所を考えれば間違いなく激藪地帯であろう。登るのは残雪期以外に考えられない。

 残雪期は毎年手ごわい2000m級藪山に挑戦してきたが、いよいよ残りが少なくなって今の実力では挑戦できない山がずらりと並ぶ状態の中で、焼滑はアプローチが悪いだけで危険度が少なく、私でも行けると判断できた。そこで2009年の大型連休は白山に向かった。ちょうど今年は高速道路が地方&土日祝日ならどこまででも\1000のため、東京から石川まで走っても\1000で済むのも大きな理由だ。まあ、ガソリン代は相当かかるが。

 コースであるが、市ノ瀬からチブリ尾根を登って別山山頂付近で幕営し、翌日は軽装で焼滑を往復し、三ノ峰に下って軽装で二ノ峰、一ノ峰を往復。時間によっては三ノ峰避難小屋に泊まるか余裕があれば赤兎山方面への尾根を下って適当な場所で幕営。翌日は杉峠から北西尾根を下って林道経由で市の瀬に戻る2泊3日の計画だ。焼滑だけなら別山も含めて2日で行けるだろうが、せっかくそこまで行くのなら一ノ峰まで足を伸ばしたいところなので、上記のような計画となった。

 地形図を見る限りではヤバそうな箇所は南白山手前のガレに挟まれた2110m峰で、ここだけ尾根が痩せて急なように見え、うまく突破できるかが鍵となりそうだ。まあ、稜線がダメなら南を巻けそうだが。念のため15mのお助けロープを持っていこう。あとは12本爪の出っ歯アイゼンとピッケルが頼りだ。おっと、自分の度胸もだな。

 中央道をひた走って名神、北陸道と乗り継いで福井北ICで降りると29日に突入していて料金表示は\1000だった(中央道定額区間で別に\500はとられているが)。国道416号→157号と進んで白峰で右折、あとは道なりで最後の集落が市ノ瀬だった。このあたりはこの時期に来たことが無いので詳細は知らないが、周囲には雪のかけらも無くどれくらい登ったら雪が出てくるのかちょっと心配になるくらいだ。まあ、今回は別山まで夏道を行くので別山〜焼滑間の稜線だけ雪があればいいのだが。てっきり桧枝岐と同じ程度の雪があるのかと勝手に考えていたがまったく違っていた。

市ノ瀬駐車場 右に上がるのがチブリ尾根への林道

 人家の先の橋を渡るところでゲートが閉じていたが、私が登るチブリ尾根へのルートは少し手前で右に入る林道が登山口だ。ゲート前でも車は置けるがもう少し手前に広い駐車場があったのでそこに戻って仮眠した。東京を夕方5時に出発して市ノ瀬着が翌日1時半、初日の睡眠時間は短いなぁ。まあ、初日は別山まで行けばいいので出発が遅くても問題は無かろう。駐車場の車は10台前後で思ったより少なかった。まだ連休本番前だからだろうか。

 目覚ましをかけずに寝て、十分明るくなってから自然に目が覚めて、朝飯を食い終わって出発したのは6時半近くと記録的遅さだ。例年ならワカンなど必要ないが、今年の場合は先週末に強い冬型になって高いところは雪になった可能性が高く、それから日が浅いので雪が締まっていなくてボッカボッカのラッセルが予想されたので、今回はワカンも担ぐことにした。また、寒気の影響が残って寒さが予想されたため寝袋も2つ担ぐことに。まるで2週間前の丸山岳の重装備だ。あの時はワカンどころかスノーシューだったけど。稜線であの雪質は勘弁してもらいたいなぁ。

林道に入ってすぐに車止めあり 別当出合方面は市ノ瀬すぐ先の橋でゲート
林道を離れて登山道になる(でもまた林道に合流) 登山道の案内に従ったが薄い個所も

 駐車場を出発して標識に従って右斜めに上がる林道を歩くとすぐに車止めの鎖がある。その後もいい道が続き、付近の尾根も真っ黒で、かなり上がらないと雪にありつけないようだ。車止めからゲートを見ると何台も車が止まっており白山は賑やかそうだ。林道には先客がいるがえらい軽装なので釣りだろうか? 当然ながらこっちの重装備では追いつくのは無理だろう。林道を歩いて案内標識に従って登山道に入ったがいかにも歩かれていない雰囲気がプンプンする薄い道で、チブリ尾根はあまり登られないのかと思ったらすぐ左手を林道が通っており、そっちが今のメインルートらしい。標識はちゃんと付けて欲しいぞ。

ここが本当の登山口 延々と巻道が続き高度が上がらない

 林道が左カーブするところでようやくまともな登山道に変身し、今度は安心して歩けた。やっぱり残雪は皆無であるが、その分だけ足が軽く疲労が軽減される。最初は尾根を巻くように登っていき、距離の割には標高が稼げないが今日のような重荷では足に優しい。もちろん雪があったら尾根直登するのだが。この付近は巨大な落葉樹林で地面付近はまだ笹が無く直登も可能だが、どこで笹が出てくるかわからない。

やっと雪が出てくるが先週降った新雪 水場。標柱のほとんどが出ている
新雪で結構沈んでいる先人のラッセル 周囲はブナ林。青空が眩しい

 小さな沢をいくつか横断し、進路が横ではなく上に向かい始めるとやっと雪が出てくるが、明らかについ先日降った真新しい雪で古い雪は見当たらず、本格的な残雪帯に入ったのは標高1200m付近からだった。エアリアマップの最後の水場付近は一面の残雪帯に入っていたが深さは2,30cmといったところか。水場の標識がかなり出ていたが、ジモティー?に聞いたところでは半分くらい埋もれてたり、多い年は頭しか出ていなかったりとのことなので、やっぱり今年は残雪は少ないらしい。この手前で軽装の単独女性に追い越された。まだ先行者がいるようで明瞭な足跡が雪の上に残っており、夏道がわからない私には大いに助かる。まあ、残雪が続くようになったので、適当に歩きやすいところを拾いつつ上を目指せば自動的に尾根に乗るが。傾斜が増す手前で休憩中の10人位の大パーティーを追い越した。

尾根に出る。夏道の道形が分かる 徐々に積雪量が増える

 先行者も完全に夏道をトレースしているわけではないようで、小尾根を乗り越えるところは少し笹が出ていて、尾根を越えると夏道に合流した。この後はほぼ夏道の形跡が分かる程度の積雪で、尾根直上は藪が出ているので夏道を歩く。まだ雪で寝た木や枝があって適当に左右に進路を振る。そのうちに夏道が分からなくなるくらいの雪になるとほぼ尾根上を行くようになる。尾根上もまだ樹林だが、隙間から左手に大きな白山が見られるようになった。ここで長靴姿の軽装の男性が休憩中だった。こりゃ手馴れた人だな。今のところ新雪も締まってワカンの必要性は無く長靴で問題ない。

このピーク(肩)の裏が避難小屋 先行パーティーの姿

 市ノ瀬出発から約3時間が経過したので標高1750mの平坦部で休憩。70歳を越えていえるという関西弁の男性が休憩を終えて出発するところだった。夏道はこの先は右を巻いて尾根に乗るようだが、今の積雪量ならどこでも勝手に歩けるので、先行者の足跡、いや、今は登っている姿が見えているが、それは浅い谷を直線的に登っていた。たぶんこれを登り終えたところが避難小屋がある平坦地だろう。

避難小屋向けて急斜面を登る 1900m肩に出ると大展望!
1900m肩からの展望(クリックで拡大)

 休憩を終えて大ザックを背負って出発。傾斜がきついとやっぱり体力的にもきつい。ゆっくりゆっくりと登っていく。見た目にはアイゼンが必要かと思える傾斜だが現場に行ってみると凍っているわけでもないのでノーアイゼンでまったく問題なかった。登りきって平坦部に出ると樹林が開け、やっと御舎利山と別山が姿を現した。さすがに間近ででかい。山頂部は森林限界を超えているようで真っ白だ。ここから先は積雪量が増え吹き溜まっているようで、先行者のトレースを踏んでも私の重装備では重さが違うようでつぼ足では僅かに沈むようになった。そろそろワカンの出番かなぁ。とりあえず避難小屋まではこのまま行くことにする。標高が上がり木の高さも低くなり、樹林の密度も低下して大展望が開け、デジカメ全開だ。前を行く女性は携帯電話がデジカメだった。

チブリ避難小屋。完全に雪から出ていた チブリ避難小屋から見た御舎利山(中央)

 やがて避難小屋が目に入り、意外にも雪に埋もれずほぼ完全に雪の上に出ていた。除雪したのか、それとも風で雪が飛ばされ積雪が少ない場所に建てたのだろうか。外で休憩している登山者が数人、これから山頂を目指すのか、それとも今日はここまでで明日山頂を目指すのか。こちらは別山まで行かないと話にならないので避難小屋には立ち寄らず通過だ。しかしその先で踏み抜きがひどくなり、いよいよワカンの登場となった。これが効果絶大で踏み抜きがゼロとなり足が軽くなった。そういえば先行者のトレースはスノーシュー、ワカン、アイゼンが混じりあっている。もちろんスノーシューは歯の部分しか沈んでいない。

先行者とトレースが続く 広大な雪面に散らばる登山者の列
小尾根を乗り越える。ワカンが無いとラッセルがきつい ここが最後の急斜面

 先行者の姿は2名見えているが、市ノ瀬からここまで登るのに私も含めて皆苦労しているようで進行速度がゆっくりしている。もしかしたら追いつくかな、なんて考えたが、1950mを越えて登りにかかるとこちらのペースもがた落ちだった。今日は別山まで行けばいいのであまり無理をする必要は無く、もう少し登ったら休憩するか。振り返ると黒い避難小屋が徐々に遠くなっていた。傾斜が少し増して小尾根に向けて登っているところで2名を追い越した。

 いよいよ最後の本格的な登りが始まる直前、標高2200m手前で最後の休憩。上方には先行する5人のバラけた列がゆっくり進んでいくのが見えるが、先頭の人は徐々に差を広げて急傾斜を抜けて森林限界を超えていった。後続部隊は力尽きたようで急斜面の途中に生えたシラビソ根元でお休みに入った。そして私が追い越した2名が追いつき、長靴の男性はこまめに立ち止まりながらも先行し、もう1名の男性は先行するパーティーのメンバーとのことだが、もう限界なのでこれで戻るとのこと。いや、まだ時刻はお昼前で標高差200mしか残っていないのでまだ充分いけると思うのだが、疲労の度合いは他人はうかがい知ることはできないので余計な口は挟まなかった。先行者に追いついたらここで戻ることを伝えておいてくれと伝言を頼まれたが、その後別山山頂まで登ってきて無事パーティーに合流することができていた。限界だと思っても時間に余裕があれば休憩によって体力的/精神的に回復するということだろう。

急斜面のただ中。部分的に凍っている 後ろを振り返る。ここはもう傾斜が緩い
ミニ樹氷登場 背丈より低いシラビソが点在。森林限界直下

 休憩を終えて急な登りにかかる。アイゼンを付けるほどではないが、登山靴のままだとエッジを効かせて登る場面もある。こちらはワカンの歯があるので凍った部分さえなければ問題なしだ。しかしこの斜面は風が吹き付けるらしく、新雪が飛ばされて硬い古い雪が出ている場所は固く締まってアイゼンが必要な場面も出てきた。ワカンの歯では危なっかしい場所も登場したが、ピッケルで安全を確保しながら突破していく。そのピッケルでも石突の先端しか刺さらないくらい雪は硬かった。もし滑っても下部は傾斜が緩むし谷はほとんど木が無いので死ぬことは無さそうなので緊張感は高まらないが、登り直すのはあまりにも酷なのでできるだけ新雪が付いてワカンの歯が食いつく雪面を繋いでルートを取った。凍った区間はさほど長くはなく、そこを突破すると傾斜はやや緩んで、硬い氷と化したえびの尻尾がへばりついた背の低いシラビソ樹林を縫うように上がっていく。高度を上げると木の高さが徐々に低くなってとうとう森林限界を突破、雪に埋もれたハイマツ帯に入ったようだ。傾斜が緩んでやっと御舎利山到着だと思ったらまだその先があって精神的ダメージが大きかった。

森林限界突破! チブリ尾根を振り返る
御舎利山山頂 御舎利山から見た白山
御舎利山から見た別山

 ゆるい尾根を登りきると先行者2名がいる御舎利山に到着。すでに先頭は別山山頂に姿が見え、そこに続く尾根には4人くらいの一塊の隊列が見えていた。もう別山は目の前で10分くらいで行けそうだ。たおやかな尾根でつながり穏やかな風景だ。白山方面の稜線にはトレースは無かったが連休中に付くだろうか。ここで休憩しつつ先着の2名としばし歓談。長靴の男性は御舎利山までだと言っていたが、やっぱりここまで来れば別山に行きたくなるのも当然だろう、もう1名の男性とともに元気に歩き出した。こちらも荷物を背負いなおして出発。

御舎利山から見た奥三方岳 新雪の蔭の部分が青い(写真ではイマイチだが)

 稜線には先客の明瞭なトレースが付いており、私はワカンを装着しているがせっかくなので少しでもトレースを固めようとトレース上を歩いた。まあ、ワカンではほとんど沈まないので効果はほとんど無いだろうが。ここから見る別山山頂部はなだらかで広く、明日歩く東尾根がなだらかに延びており、これなら西風を避けてテントを張れる場所がありそうだ。新雪はほんとうにきれいで、雪質の関係か不明だが雪の穴が青く見える。ピッケルを挿した穴を撮影したがうまく色が再現できただろうか、いや、やっぱり写真ではイマイチの色合いだ。テレビで見る北極や南極の氷の隙間の青さと同一で、神秘的な色だった。

別山山頂。三角点が出ていた 山頂直下の祠。半分埋もれている
別山から見た御舎利山(黒いピーク)、白山 別山から見た東尾根2110m峰(雪が落ちた部分)
別山から見た三ノ峰方面(クリックで拡大)

 緩やかに登りきると待望の別山山頂に到着。山頂には標柱が立ち、意外にも三角点が顔を出していて、一部地面も出ていた。でも山頂付近以外は深い雪に覆われ、東側に緩やかに張り出した雪庇の深さは計り知れない。ここから見る南白山はかなり下がったところにあり、帰りを考えるとがっかりする標高差だ。最大の問題と思われる2110m峰は南面の雪が落ちており、距離が離れているので稜線上の雪や藪、傾斜の様子はうかがえないが、一見した感想はかなり悪そうだ。まあ、予想通り南面は巻けそうなので稜線上が危険だったらトラバースしてしまえばいいだろう。南に目を向けると三ノ峰がかなり低く、その先にも延々と雪が載った稜線が続いていたが、土地勘ゼロなので名前が不明。下山後にカシバードで確認するか。おっと、でもこの地域の山名はデータに入れていないなぁ。白山はでかく高く名前どおり真っ白だ。トレースは別山までで三ノ峰方面には無く、当たり前だが南白山方面にも無い。明日はワカンとアイゼンの両方を持っていった方が良さそうだ。東側は木曾御嶽や乗鞍のすそ野は見えているが北アは雲か霞の中らしく見当たらなかった。

東尾根2370m峰から見た東尾根(クリックで拡大)


 当初はこのまま東尾根を下って行けるところまで行こうかとも考えたが、大ザックを背負っての登り返しがきつく、明日の行程もさほどきつくないので当初計画どおり別山山頂で幕営することに決めた。さてその場所であるが、山頂周囲は広いのだが西風が避けられるところが無い。偵察ついでに東尾根を下って最初のピークまで行ったが、鞍部でも風が吹いて快適とは言えない。ピークから東尾根を見るとまだまだ下りが続き、黒くなった2110m峰はまだ遠く様子が掴みきれなかった。

お社手前の石垣にテント設営 夕暮れ迫る白山

 山頂に戻り周囲を覗うが、風を避けてテントが設営できる場所はお社手前の石垣しかない。ここは北側および西側に石が積まれて風除けに最適なのだが、さすがに神社前にテントを張るのは気が引ける。せめて山頂が無人になってから設営しようと風を避けられる南斜面でしばし休憩。しばらく好天だったがそのうちガスがかかるようになり寒くなってきた。最後まで休憩していた最初に到着したパーティー(スコップを持ってきてスノーブロックを積んで風除けを作って休憩していた)が出発してからテント設営。やっぱりテント内は無風で快適だ。石垣のおかげでテント上部にしか風が当たらないので問題なし。石垣様様だ。付近の新雪をすくってガスを豪勢に使って水作り。やっぱりとてもきれいな水だった。酒を飲みはじめたが今回は持ち上げた量(というかアルコール濃度)が不足で翌日分を残すとイマイチの酔いだった。

 今回は寒さに備えてダブルの寝袋だったのでまさか夜寒さで起きることはないだろうと思ったが、これでも微妙に寒くて快眠できなかった。アルコールが足りなかった影響もあったかもしれない。私の経験上、雪の上で寝る場合、気温よりも背中の雪から伝わる冷たさの方が寒さを増幅する。そのため、夏も使うロールマットの他に薄手の断熱マットを持っていって折りたたんで4枚重ねくらいにして使い(面積が減って半身くらいの広さ)、ザックも敷いて全身分をカバーするのだが、今回はこれでも寒かった。しょうがないので久々にゴア上下を着用、でこぼこがあるので足のほうに敷いていたザックを上半身に移動してやっとそこそこ暖かくなった。この気温ではテント内でも水は凍りつくのでシュラフの中に入れてある。夜9時の気温は-10℃で夜明けまでこの気温が続いた。

夜明け直前の木曾御嶽 槍ヶ岳から朝日が昇る
夜明け直前の白山〜別山東尾根(クリックで拡大)
別山から見た夜明け直前の北アルプス(クリックで拡大)

 4時前に目覚ましで起床、気温は-6℃まで上昇していた。この時期は日の出後は急激に気温が上がるので歩き出せばたぶん防寒着など不要になるだろう。飯を食ってザックに水、軽食のパン、ワカン、ヘッドランプを入れてアイゼンを装着して出発。もう周囲は充分明るく進路は明瞭だ。雪は締まってアイゼンでもほとんど潜らない。

2370m峰から見る東尾根 2370m峰を下る
2324m峰からの下り 2160m峰は目の前

 昨日の自分のワカン跡を追って2370m峰を越えて2324m峰へ。ここから2160m峰までもったいないほどの下りが待っていた。そこそこの傾斜で帰りの登りが苦しそうだが下りは快調だ。新雪は部分的に締りが無いので、できるだけ汚い雪面を繋げて歩いたが、傾斜が急なところは尾根上の新雪地帯を歩いた。部分的にハイマツや笹が出ているところもあったので風で飛ばされて積雪が少ない場所らしい。

小さな2140m峰を登る 2140m峰から見た次の2160m峰。雪庇上を登った
2160m峰から見た2140m峰 2163m峰から見た2110m峰

 下ると小さな2140m峰で雪庇が発達しているが、南側ではなく北側に張り出している。この尾根は全体的に北側に張り出しているのは稜線で風が巻くからだろうか。やばそうな場所はてっぺんを避けて歩くが問題ないところは見晴らしがいいてっぺんを歩いた。次の2160m峰から2163m峰にかけての登りは急で少し笹が出ているのが本当の稜線と思われるが、雪庇の方が傾斜がゆるいのでそちらを登る。2163m峰で問題の2110m峰が間近に見られるが、どうやら稜線上はまだ雪が付いているようで通過できそうだ。あとは接近して現場で判断するしかない。

2110峰にかかる 登り始めてすぐの露岩は右を巻く
露岩を越えて次の登り。危険なし 2110峰てっぺん

 鞍部に下って2110m峰の登りにかかると最初に露岩が登場、これは直進は不可で左は絶壁で進めないので自然に右から巻くが、うまい具合に歩きやすい場所で問題なく岩の上部に出られた。その先が核心部かと思われたが、別になんてことない稜線で危険箇所は無く、雪を伝わって問題なくピークに出ることができた。やれやれ、これ以降は等高線が混んだ場所や痩せた場所は無いので危険箇所は焼滑まで無いだろう。

2110m峰からの下り 2070m鞍部。雪庇崩壊に注意

 2070m鞍部への下りもどうということはなく、僅かに笹が顔を出した雪面を下って鞍部に到着、ここからはだだっ広く低いシラビソが点在した尾根を登っていく。今までの雪質からしてワカンの出番は無かろうとここでデポすることにしてシラビソが無い広い雪原のど真ん中に並べて置いた。これで遠くからでも目立つだろう。

2070m鞍部から見た南白山 快適にクラストした広い尾根を登る
南白山山頂 南白山から焼滑へと続く尾根
南白山北鞍部から見た別山方面

 広い尾根を適当に登りきると南白山山頂の僅かに北側に出て、南進して南白山山頂に到着。やっぱり山頂標識は無かったが古びた赤布が1枚だけかかっていた。ここにピンクリボンや「布KUMO」がかかるのは近い将来だろう。下手をすると今年中かも? この積雪ならあと2週間くらいは大丈夫だろう。残念ながらなだらかでだだっ広い山頂で、低いシラビソが邪魔して展望は得られなかった。

2040m肩を下る 2094m峰〜2090m峰のなだらかな稜線
尾根が狭まる2050m付近 2000m最低鞍部手前
2050m肩から見た2094m峰
最北の2090m峰から見たパノラマ展望(クリックで拡大)

 まだここは焼滑までの中間地点なので、休憩せずに先に進む。もうこの先は大きなアップダウンは無く、なだらかな稜線が続いている。2140m肩までは低いシラビソが続き、急激に高度を下げて2094mピークの一連の高まりに登るとシラビソも少なくなり大展望が開ける。いよいよ最低鞍部の2000mに下り、急な尾根を避けて少し笹が出た右側の斜面を巻くように稜線に出ると焼滑は目の前だ。山頂直下で右に分岐する日照岳へと続く長大な尾根も雪が乗って快適そうだが、これはあまりにも距離があって細かいアップダウンが連続し、苦労しそうだ。でも面白そうではあるな。

焼滑への最後の登り この上が焼滑山頂
日照岳へと続く尾根 焼滑山頂。背景は白山
焼滑から見た木曾御嶽 焼滑から見た乗鞍岳
焼滑から見た白山〜別山(クリックで拡大)
焼滑から見た南〜東の展望(クリックで拡大)
焼滑から見た北アルプス(クリックで拡大)
焼滑から見た北尾根方面

 少し高度を上げるとシラビソ樹林が開け、広大な明るい雪原に到着。ここが焼滑山頂だ。山頂付近はシラビソが無いので目印も無く、周辺のシラビソを見たが目印等は発見できなかった。360度の大展望で別山が遠いのが悲しい。別山からここまで1時間半強かかっているので、帰りは登りになるので2時間半程度かかるだろうなぁ。山頂から少し離れるがシラビソの幹に赤テープを巻いた。さて、どれくらいの期間、文字が消えずに残るだろうか。

2000m鞍部手前は笹が出ていた 2090m峰群へと登り返す
大白川は雪なし 奥に見えるのが南白山
南白山近くから見た別山へ続く尾根 2080m鞍部へと下る

 さあ、お帰りだ。危険箇所が無いので心配皆無なのはいいが、とにかく累積標高差で600mくらいはありそうな登りが疲れそうだ。せめてもの救いは雪質が良好でアイゼンでも沈まないことか。最低鞍部を越えて登り、南白山で再び登るが面倒なので右から巻いてワカンをデポした鞍部で回収。ここで思いもしなかった心配事が発生。登山者巡視用?のヘリが別山上空でウロウロしているではないか。まずいのはテントが飛ばされないかだ。ヘリのローターから吹き降ろす風の強さは半端ではなく、テントをしっかりと地面に固定していれば問題ないが、今は春山なので4隅はペグを雪に埋めて踏み固めただけで、日中で気温が上がると雪が緩んで固定力が無くなってしまう。風対策で石垣の石にも紐を結んであるが、大した大きさの石ではないのでヘリの強風でテントが煽られたら石がずり落ちてしまうだろう。まさか、私のテントがヘリがやってきた原因だったりして・・・・。しかしこの鞍部からではいくら急いでも1時間半はかかるだろうから何もできないな。

2110m峰から見た別山 2110m峰西側の露岩下
2163m峰へと登り返す 2163m峰から見た2324m峰
2324m峰への登り 1か所だけ急な場所がある
2324m峰から見た2370m峰 2370m峰から見た別山

 2110m峰、2163m峰、2140m峰を越えて本格的な登りとなり、ゆっくりと登り返す。さすがにあの丸山岳の重荷を背負った登り返しではないので足はずいぶんと軽いが、まとまった登りなので焦りは禁物だ。締まった古い雪面もアイゼンを効かせて登っていく。いつのまにかヘリは飛び去ったが山頂はどうなっただろう。2324m峰で別山山頂が見えてきて人が立っているのが分かった。2370m峰から最後の登りで別山に無事帰還。山頂にはショートスキーの単独男性1名だけだった。時刻から考えると今朝チブリ避難小屋を出発した連中はとっくに山頂に立っている時間だし、今朝市ノ瀬を出発した組はまだ別山には届かない時間だ。この男性は避難小屋からだろうか。詳しい話は聞かなかったが、なんと以前、スキーで南白山に登ったことがあるという。いや、物好きはいるもんだ。

 テントは飛ばされることなく無事に雪面にへばりついていた。たたんでパッキングを済ませ背負うとやっぱ重い。ただ、この重荷は三ノ峰への下りだから大した問題ではない。三ノ峰へと下り始めると今朝は無かった足跡が2つ、私とは逆周りで三ノ峰から別山へ登ってきているではないか。まっさらな稜線に足跡を付けられるかと思っていたのがちょっと残念。この稜線は天気さえよければ難しいところはなく、先行者のトレースが無くても問題ない。

テントは健在だった 三ノ峰へと下る
今朝登ってきた2人分の足跡 ちょっと沈むが好展望の雪稜が続く
別山を振り返る 別山平。ガスられたらやなところ
分厚い氷と化したエビのしっぽ 別山平から三ノ峰へと下る

 一応、アイゼンを付けて出発。これさえあれば下りで適当に足を置いても滑る心配はない。もっとも、傾斜はそれほどきつくないが。ところどころで新雪を踏み抜くこともあるが、概ね雪はいい感じに締まっていた。2208m標高点がある平坦地では一部地面が出ていたが、その他はまだまだ雪が付いていた。最低鞍部でアイゼンからワカンにチェンジ、これは先人の足跡に踏み抜きが多くなったからだ。さすがワカンでは踏み抜き皆無で順調に高度を稼ぐ。一部雪が硬く締まって下りはアイゼンがあった方が良さそうな雪面があったが、先人はエッジを効かせて突破していた。こちらは登りだしワカンの歯があるので問題ない。

鞍部より登りにかかる 沈んだ先人の足跡。私はワカン装着
鞍部を振り返る 三ノ峰が見えてきた
最後の登りは笹が出かけていた 三ノ峰山頂。背景は別山
三ノ峰から見た別山

 傾斜が緩んで三ノ峰かと思ったらもう一段の登りが待っていてがっかり。僅かに笹が顔を出した広い尾根を登りきると、意外にも地面が顔を出した三ノ峰山頂が待っていた。振り返ると白い別山が高い。下山に使う杉峠へと続く尾根はかなり低い位置に見えているが、南にあるはずの二ノ峰、一ノ峰はだだっ広い尾根に隠れて見えなかった。休憩は避難小屋で取ることにして写真撮影して出発。

避難小屋向けて南に下り始める 鞍部に建つ三ノ峰避難小屋
入口が雪に埋もれているが出入りに問題なし 避難小屋から見た三ノ峰方向。山頂は隠れて見えない

 半分出ている夏道を歩いたり雪の上を歩いたりして2095m峰との鞍部に下ると、避難小屋の前は完全に雪が消えて地面が出ていた。避難小屋は雪に埋もれているかと思ったが予想外だ。チブリ避難小屋も同様だったので、やっぱ避難小屋は雪が付きにくい場所に設置されたようだ。単独男性が休憩しており、空身で三ノ峰を往復するようだ。装備からして日帰りのようだが、翌日の足跡で小池登山口から登ってきたことがわかった。まだ十分時間があるので、ここで荷物をデポし、防寒着と水、食料、ワカン、アイゼンを持って一ノ峰を往復することにする。小屋の前にでかいビニール袋で荷物を包んでアイゼンを装着して出発。地図を見ると三ノ峰からの下りは急そうだからだ。地図では夏道は東斜面に付けられているが、たぶん今の時期は雪の急斜面で危険だろう。

だだっ広い2095m峰を下る この付近は東の雪壁上
2095m峰を振り返る すぐ下には二ノ峰との稜線が

 南下すると最初だけ足跡があったが消えてしまい、だだっ広い尾根を適当に下っていく。やはり東斜面は急なので広い尾根を南に下っていくが、尾根が広すぎてどこが中心なのかよくわからないくらいだ。今は晴れているからいいがガスっていたら下りはヤダなぁ。尾根が細くなってくると左手の傾斜も見えるようになるが、稜線ではないのに雪庇なりかけのような雪壁になっていた。まあ、バックで降りられないことはないが、この先にもっと下りやすい所があるかもしれないので無理する必要はないと先に進む。平坦な稜線はすぐ下部に見えており、そこには明瞭なトレースが付いているではないか。ということは私が下ってきたルートとは別のところに足跡が続いていたということか。まさか東の急斜面を歩いたのだろうか。 

雪壁南端の笹との境界を下る 下ってきた斜面。写真ではわからないがかなりの傾斜
稜線向けて笹原をトラバース 稜線に出た

 いったん傾斜が緩んで岬のように突き出した肩から先は雪がほぼ消えて笹原が広がり急激に高度を落としている。これなら笹に掴まって急斜面でも下れるが、少し稜線から外れて笹を漕がなければならないので、もっと稜線に近い所に出られるよう、雪と笹藪の境界を下ることにした。壁の続きなのでかなりの傾斜でバックで下ることになったが、半分笹が出ているので笹を手掛かりにできるし、高さは10m程度ですぐ下は緩斜面の笹原なので、もし滑ってもけがの心配はなく、安心して下ることができた。傾斜が緩むと笹藪を左にトラバースして無事稜線に出られた。ここでアイゼンからワカンに履き替えると踏み抜きが無くなって快適になる。

二ノ峰からのトレースはここで引き返していた 鞍部より二ノ峰へ登る
1940m小ピークは左を巻いた 二ノ峰山頂。背景は三ノ峰
二ノ峰から見た南方面(クリックで拡大)

 稜線には足跡があったはずだが少しの間見られず、最低鞍部付近で引き返しているのを発見した。ということは銚子ヶ峰方面から北上してきてここで戻ったということか。雪壁に恐れをなしたのか、それとも単に時間切れで戻ったのかは不明だが、ここまで来て三ノ峰に行かなかったのはもったいないなぁ。足跡の数は2人のようだった。溶け方からすると昨日のものらしい。つぼ足でかなり潜っており、苦労の跡がうかがえる。これがワカンだとほぼ沈まないのだから、ワカンの効果は絶大だ。二ノ峰へは緩やかに登り返し、シラビソが点在するピークに到着。しかしなぜか山頂標識がない。ここは夏道が通っているはずなのだが・・・・と思ったら下山後に気づいたのだが、夏道は山頂直下西側を巻いていて正確な山頂は通っていなかったのだった。山頂にはかなり古びた赤布が1つあるだけだった。

一ノ峰へと下り始める この辺から傾斜が出て、写真外右の夏道を下った
ここはワカンを滑らせて快調に下る 鞍部から見た一ノ峰
鞍部から見た一ノ峰と野伏ヶ岳へと続く尾根

 地形図を見ると二ノ峰の下りも急そうだが、ワカンは楽なのでヤバそうになったらアイゼンに履き替えることにしてそのまま下り始める。初めは緩斜面だが途中で尾根を右に外れて急激に高度を下げるところでなんと夏道が出現、先人の足跡もジグザグの夏道を歩いている。こっちはワカンを履いている都合上、雪の上の方が歩きやすいので、夏道をショートカットして雪が乗った笹地帯を歩いたりもした。少し傾斜が緩むと夏道は雪の下に埋もれ、いい感じの傾斜の雪面をワカンを滑らせて快調に下るが、帰りにこれを登るんだよなぁ。

一ノ峰へと登る 一ノ峰山頂標識が出現するが地形図上の山頂は東ピーク

 鞍部から一ノ峰への標高差約60mの登りにかかる。夏道の白い筋は稜線直上より右側(西側)に付いているが、雪の上の方が歩きやすいので尾根直上から左側の雪原を歩いた。鞍部近くだけちょっと笹が出ていたが、あとはずっと気持のいい雪原歩きが続く。どういうわけかここは高い木がなく見晴らしがいい。ピークが近づくと右を巻くような夏道に乗り、山頂標識が立つピークに出たが、どう見ても目の前にある藪に覆われた東ピークの方が高そうだ。地形図を引っ張り出して確認すると標高点は東ピークに書かれているので、ちゃんと山頂に立つことにする。灌木と笹の藪で、入口は灌木が濃く、隙間を見つけて入ってしまえばその後は大した藪ではなかった。

山頂標識から見た一ノ峰山頂 ここから取り付く
一ノ峰山頂
一ノ峰から見た南側(クリックで拡大)
一ノ峰から見た北側(クリックで拡大)

 てっぺんは笹と低い灌木に覆われ、標識も目印もなかった。ここも高い木がないので基本的に見晴らしはいいが、地形がなだらかなので特に南から西の方は近場の山は隠れてしまって見えなかった。ここでしばし休憩したが、烏龍茶のペットボトルに入れた水を常緑樹の灌木の隙間に置いたまま忘れてきてしまった。どなたか、山頂に行かれることがあったらゴミを回収してきて下さい。お願いします。

二ノ峰への登り 三ノ峰への登り。夏道は稜線右の斜面に埋もれている
上部の汚い雪の帯が雪壁 雪壁の左端(南)を目指す
雪壁左端。笹との境界を登る ここを登った
雪壁直上 2095m峰への広大な斜面

 さあ、帰りはまとまった登りが待っている。一ノ峰から鞍部へのみ下りで、二ノ峰、三ノ峰へは標高差約150mずつを登り返す辛い時間が待っている。それでも背負った荷物は軽装なので、どうにか足が出てくれる。三ノ峰への雪壁は下りと同じルートで笹地帯との境界部を突破した。笹の中は雪が柔らかいのでワカンのままでも雪に蹴り込め足場の雪が崩れることはなかった。上部の広い雪原に出てしまえば適当に広い雪原を登るだけ。ピークを越えると避難小屋に到着、さすがに先客のザックは既に消えていた。時間的にはこのまま避難小屋に泊ってもいいのだが、昨日の寒さが身にしみてもっと標高を下げて暖かく寝たいと考え、テントが張れそうな適当な場所を探しながら下ることにした。地形図を見ると標高1500m以下にならないと尾根が平坦にならないが、まあ下りだったらさほど体力は使わないだろう。水の確保を考えると新雪がないと困るが、昨日の様子からして標高1500m程度なら問題なさそうだ。

北斜面をトラバース 尾根に出ると夏道が半分出ている
傾斜がきつくなるとほとんど夏道 先端は1900m肩
下ってきた尾根 1900m肩からの下り
1900m肩から見た南方面(クリックで拡大)

 避難小屋を出発して足跡を追うと、まずは北斜面をトラバースして尾根に取り付く。恐ろしい急斜面になるかと思ったらルートは傾斜が緩い所を選んでいて、危ない場面はなく無事尾根に出た。尾根は日当たりがよく、基本的に古い残雪は消えうせているようだが柔らかい新雪が積もり、先人の足跡はズボズボ潜っている。こちらはワカンを履いたままであるが、日中で雪が緩んでそれでも沈む。傾斜が急な部分は半分夏道が出ていた。標高が1950mを切ると傾斜が緩んで新雪の量が増え、ワカンが活躍する。この付近はまだ高い木は無く視界が開けており、稜線で吹いていた冷たい西風がもろに吹きつけそうなものだが、なぜかほとんど無風で暖かかった。このぶんならこの辺の雪堤上にテントを張っても問題なさそうだが、もう少し下がってブナ林の中の方が安心できるだろうと先に進む。

1700m付近から見上げる。南斜面は雪が少ない 1550m付近から見上げる
標高1500m付近。雪はかなり少ない 1481m峰の西で幕営

 標高1900mから先は再び尾根の傾斜が増して急激に下るが、ここまで来るとかなり雪が消えてほぼ完全に夏道が出ている区間も多くなってきた。それでも時々出現する新雪はボコボコに踏み抜くのでワカンのまま歩いた。1671m標高点で尾根を離れて左を巻いて下部に出て、振り返るとでかい崖のピークになっていた。これじゃ巻くわけだ。この先からブナの樹林が始まり、そろそろテントを張るのにいい場所を物色しながら歩いていく。もうワカンも不要だろうと外したが、それまでに夏道が出ている区間をだいぶ歩いたので歯を固定するリベットにガタが来ていた。以前のワカンだとそんなことは無かったのだが。これからは注意しよう。

 1481m峰を越えて西側の微小ピークとの鞍部北側で雪に覆われた緩斜面が登場し、時間もいいのでここで幕営を決定。周囲はたっぷりの新雪に覆われていて水の確保も問題なし。雪を均して水平にした上にテントを張って、周囲のブナにシュラフや防寒着をひっかけて虫干し。この標高では夕方も暖かかった。残った酒を飲んで寝たが、夜中の最低気温は-1℃、これだと充分暖かかった。

登山道を西に下る 原ノ平を見下ろす
六本檜か? 上小池へと下る登山道
標高1500m付近から見た南の山並み(クリックで拡大)

 翌朝はのんびり起きて飯を食いのんびり出発。昨日日中より雪が締まっているのでワカンはザックにくくりつけたままだ。少し下ると上小池方面の登山道が分岐、南斜面に道が付いているのでほぼ雪は無いので足跡があるのかよくわからなかったが、このまま稜線を杉峠方面に進むと残雪の上には足跡がなかったので昨日の人は上小池から往復したようだ。昨日の長靴のジモティーの話ではこの時期の林道は一般車は入れないので杉峠ルートはトレースは無いだろうと言っていたがその通りだった。しかし道が荒れたりしているわけではなく、今まで同様に良好な登山道が続いていた。

なおも良好な登山道が続く 真新しい熊の足跡
時々残雪が現れる 小さなアップダウンが続く

 もう大きなアップダウンはないが、微妙なアップダウンが連続する。深いブナ林が続くが今は落葉しているので視界は良好だ。断続的に残雪が登場するが、夏道を失うような大きな残雪帯は無く、迷うことなく稜線上を進んでいく。途中、残雪上に稜線を横切る真新しい熊の足跡があったが姿は見えず。カモシカの足跡は頻繁に出てくるが、これまた姿は見えず。

広大な残雪帯に出る。杉峠手前のピーク 1343.7m三角点峰
三角点峰の西側をトラバースすると夏道発見 ショウジョウバカマが咲いていた

 細かなアップダウンが多く、現在地を把握しないまま適当に進んでいったが、緩やかなピークに登ると一面の残雪に覆われた場所に出た。主稜線から飛び出した右手(北側)には顕著なピークが出現、地形図で確認したがこれは杉峠北側の1343.7m三角点峰に間違いない。杉峠は主稜線のピークを越えた先で、そこから三角点峰のある尾根西側を巻いてこちらに戻ってくるので、峠まで行かずにここから西を巻くことにする。広い残雪帯で夏道は不明だが、とにかくこの尾根を下ればいいので細かいことは気にしなくていいだろう。稜線上は雪が消えて藪が出ているので、夏道があると思われる西側にトラバースしつつ下っていくと雪が消えた斜面に明瞭な夏道があり、なかなかの頻度で赤布が現れて心強い。

大きな谷に出ると目印が消失 谷上部をトラバース
谷の対岸に出る。そのままトラバースするのが正解 夏道に辿りつく

 しかし大きな谷の手前で夏道は雪に埋もれ、次の赤布は視界の中に入ってこなかった。地形図を見ると巻くように破線が通っているので、高巻き気味に傾斜が緩い所を通過した。すると谷の向こう側に一部だけ夏道が出ており赤布がぶら下がっていた。その先の緩斜面帯も一面の残雪で夏道不明だが、ここも尾根西を巻いて下っていく。しかし雪が消え傾斜がきつくなる斜面まで来ても夏道がなく、先は灌木藪だ。地形図をよ〜く見るともっと標高が高い所を巻くようなので、残雪を踏みしめて登り返し、尾根が近づくと赤布が見えて一安心。もう夏道が尾根上に乗るところまで下っていたようだ。谷を越えてもあまり高度を落とさないようトラバースするのが正解らしい。

広い尾根を適当に下るが・・・ 二重山稜真ん中の湿地で夏道を探す

 あとは稜線を辿ればいいので残雪を拾いながら歩きやすい所を選んで適当に下って行ったが、2重山稜の真ん中に湿地帯が出現したところで周囲に夏道の気配が無くなり焦った。まさか尾根を間違えたかと方位磁石を取り出して進行方向を確認するが間違いなく正しい方向に向かっていた。ということは夏道は尾根上を僅かに外れた場所にあるのかと灌木をかき分けて北側に寄るとちゃんと道があった。よかったぁ。

1249m峰は左をトラバース その後もいい道が続く

 この先はたまに雪が出てくるがほぼ夏道を下ることになった。1249m峰は左から巻くよう道が付けられていたが、トラバースする個所は雪の重みで道が荒れるのかかなり道形が薄くなっていて、道を外したかと心配になるほどだった。それも巻き終わって稜線に戻るとしっかりした道に戻った。

太い枝が折れた杉の巨木 登山口
西俣谷川沿いの林道と合流 県道からの分岐

 途中でちょっとばかり休憩したが、標高が下がったのでTシャツのままでも快適な気温だった。周囲の落葉樹も芽吹きを迎え、別山での白い世界がウソのような春の様相だった。そのまま夏道を辿って林道に降り立ち、西俣谷川沿いの林道と合流するところで車止めがされていた。そこにはなにやら建物があり、西俣谷川沿いの林道にも車止めがあったのでここまで一般車は入れるらしい。三ッ谷川沿いの林道をテクテク歩いて県道に出るところには施錠されていないロープの車止めがされており、一般車進入禁止かと思ったら山菜採集禁止の看板がかかっていたので山登りで入る分には問題ないようだ。あとは舗装された県道を歩くが僅かに登りになってイヤらしかった。

 市ノ瀬の駐車場に到着すると出発時より少し車の数が増えていたがガラガラで、連休が本格的に始まる明日の5月2日からが本番のようだ。シュラフやテント等を虫干ししながら荷物整理をし、白峰温泉へと向かった。

 下山してからデジカメの2GBメモリーカードを車に積んだノートパソコン(いわゆるネットブック)に刺して内容をコピーしたが、撮影枚数は499枚と3日間で過去最高だった。それだけ天候に恵まれ、春山のすばらしさを感じさせる風景だったということだろう。


所要時間
4/29
6:29市ノ瀬−−6:56登山道−−7:55水場標識−−8:16尾根に乗る−−9:15 1750mで休憩 9:40−−10:14チブリ避難小屋−−11:12 2180mで休憩11:34−−12:10御舎利山12:41−−12:53別山(幕営)

4/30
4:59別山−−5:55南白山5:57−−6:45焼滑6:45−−7:36南白山を巻く−−7:42休憩7:59−−9:10別山10:08−−10:47鞍部10:56−−11:17三ノ峰−−11:24避難小屋11:59−−12:18鞍部−−12:30二ノ峰−−12:44鞍部−−12:56一ノ峰13:11−−13:18鞍部−−13:45二ノ峰13:51鞍部−−14:21三ノ峰避難小屋14:46−−15:52幕営地点

5/1
6:13幕営地点−−6:29上小池分岐−−7:28杉峠手前ピーク−−7:35夏道に出る−−8:02湿地帯−−8:34休憩8:58−−9:24林道−−9:49県道−−10:09市ノ瀬

 

 

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