立山前衛 鍬崎山 2008年10月12日


 体育の日の3連休は1週間前から北アの坊主山と決めていたのだが、初日は寒冷前線の通過で本州は悪天、しかも前線通過後は冬型の気圧配置に変わって日本海側が氷雨の予想であった。初日は池の平まで入るだけなので雨を我慢してもいいのだが、あの標高では湿った雪の可能性が高いし、北風になると鞍部のテント場は強風となろう。ついでに翌日も朝方は前日の雨が乾かず濡れた藪漕ぎだろうし、あまり条件がいいとはいえない。しかし今週末を逃すと小屋が閉まって橋も外されてしまい、挑戦は来年以降に持ち越しとなってしまう。さんざん悩んだがリスクはできるだけ回避すべしとの結論に達し、今年の北ア坊主山は諦めることにした。

 しかし好天が予想される残り2日は有効に使いたい。雨の初日も貴重な移動時間として活用可能なので、土日では遠くて初日の睡眠時間確保が難しい地域に足を伸ばすのが得策だろう。そこで考えたのが富山の登り残した2000m峰である鍬崎山と大猫山であった。大猫山は最近地形図に名前が記載された2000m峰で猫又山から西に伸びる尾根上にあり、いつのまにか登山道も開設された山である。どんな順番で登るかを考えたが、上高地に出入りするバスの渋滞を考慮すると、行きは夕方に沢渡を通過して安房トンネルを抜けて神岡経由で富山に入って初日は鍬崎山に登り、2日目は大猫山に登って糸魚川経由で長野道に入るのがいいと判断した。

 鍬崎山は立山駅の南側に位置し、室堂に入るため立山駅に行く途中に登山口がある。登山道があるのでいつでも登れると後回しにしていたが、いよいよ出番が来たわけだ。松本ICで降りてからは何度も通った道なのでロードマップを見ることなく富山平野に突入、大山、立山方面目指して適当な県道を東に進み「家族旅行村」の標識で右に入り大きな橋で常願寺川左岸に渡り上流目指して走ると「らいちょうバレーゴンドラ」の看板が目に入ったので右に入る。真っ暗なのでどこにリフトがあるのか不明だが、でかい駐車場の突き当たりにゴンドラ乗り場があった。家でネットで調べたらゴンドラの始発は6:00だったので現場で確認したかったが外には運行時刻は書いていなかった。まあ、たぶん大丈夫だろう。あまりに広い駐車道で全く車は止まっておらず、どう車を止めればいいのか分からなかったので端の方に頭から突っ込み酒を飲んで寝た。まだ寒冷前線の影響が残って雲は多めだが風も弱く雲の隙間から星が瞬いていた。

リフト山頂駅

ここから歩き始める


 翌朝は5時に起床して朝飯を食べていると徐々に明るくなってきた。ライトを点灯した車がポツリポツリと到着して私の車付近に止まったので、おそらく私と同じく始発に乗って鍬崎山を目指すハイカーのようだ。この時期は5時半でも暗く、本当に30分後にゴンドラガ動き始めるのか心配になるくらいだが、15分くらい前にチケット売り場のシャッターが開いて照明が付いた。往復\1000也。明るくなった5時半に出発したのでは稜線到着は1時間半かかりそうなのでリフトを使った方が山頂到着時間は早くできるので使わない手はない。グルグル回るゴンドラなので運行時間中は五月雨式に出て行くのでよほど大量に人が詰めかけない限り待つことは無さそうだ。乗ってしまえばあっという間に山頂駅に到着。今日はここから出発だ。天気は基本は晴れだが薄雲があってすっきりとした晴れではない。

案内標識

立派な登山道

 さすが先週の坊主山とは違って明瞭な道があり足が楽だ。少し湿った道のようで湿地帯のようなぐちゃぐちゃな区間があり、そんな場所は縁を歩く。遠くに笠ヶ岳のように尖ったピークが見えるが、あれが鍬崎山だろう。まだまだ遠い。周囲は少し色づいたブナ林で雪の多さを物語っている。

瀬戸蔵山山頂 樹林の隙間から笠のような鍬崎山
ちょっと色づいたブナ林 大品山三角点

 ほどなく瀬戸蔵山に到着。山頂標識があるが樹林に覆われて見晴らしはイマイチであった。いったん下って登り返すと今度は立派な杉が多くなる。立山杉(種類ではなくブランド名?)だろう。しかし長続きせず再びブナが増えてくる。左手に電波反射板が出てくると大品山三角点で、その先の広場が本当の山頂らしい。どちらも広くて休憩にはいいがブナ林に囲まれて展望はなく、反射板のところまで出れば平野側の展望は得られそうだった。

美女平から室堂へ上る台地 ここは写真欠品

唯一の鎖場。とくに危険はない 逆光の笠ケ岳、じゃなくて鍬崎山

 大品山を下って鞍部を通過すればまとまった登りの始まりだ。相変わらずブナ中心の樹林帯だが時々左手が開けて毛勝三山や大日岳の稜線が見える。標高が上がると剱岳も姿を現す。剱は昨日の雨が雪になって白くなっていると考えていたが真っ黒のままでちょっと拍子抜けだ。正面には鍬崎山が見えるがモロに逆光なのでほとんど写真が撮影できなかった。

登ってきた尾根 徐々に木の高さが低くなってくる
鍬崎山山頂 鍬崎山から東に延びる稜線

 途中で傾斜が増すとグングン高度を上げて大品山が低くなっていく。この標高と傾斜にしてもまだ湿地帯のようなぐちゃぐちゃの道が続くのはちと下りが滑りやすそうでいやらしい。ブナにダケカンバが混じりだし、やがて針葉樹も混じるようになり高山の雰囲気が出てくる。山頂が近づいて傾斜が緩むと森林限界を超えて展望が開け、露岩が点在する鍬崎山山頂に到着した。数人を追い越したがいつのまにか私が先頭になっていたようで山頂は無人だった。

鍬崎山からのパノラマ展望写真(クリックで拡大)
鍬崎山から見た立山〜剣岳北方稜線(クリックで拡大)

鍬崎山から見た乗鞍岳(左)、木曾御嶽(右)


 森林限界だけあって展望はすこぶるよく、立山を西から見る形になって各ピークがよく見える。とくに越中沢岳は近く、あの反対側の木挽山に登った6月が懐かしい。今は稜線は一面のハイマツで到達は難しいだろうな。8月に登った薬師岳もデカく、双眼鏡で覗いたら山頂の神社がはっきり視認できた。その右手には黒部五郎岳だが、この方向ではカールは見えないので色々な方向から黒部五郎岳を見たことがある人でないとそれとは判別できないかもしれない。北ノ俣岳のすぐ右は乗鞍、その右は木曽御嶽だが、もっと右に雲海から頭を出しているいくつかの山はどこなのか不明だ。間違いないのは白山くらいだな。毛勝三山から西に延びる尾根には大明神山、それと重なるように大猫山の尾根が見えるがどこが大猫山なのかよく分からない。ま、明日登ればはっきり分かるようになるだろう。スゴ乗越の向こうに見えているのは烏帽子岳、ニセ烏帽子と三ッ岳だった。

 山頂ではなんだかんだで1時間ほどくつろいで、展望を楽しんだり他の登山者と話をしたりした。やはり地元の人が多いようで話をした1人は富山市(もしくはその近く)の人だった。1年ほど前から山登りを始めたとのことで、ガイドブックでは登り5時間半と書かれていて帰りはゴンドラの最終時刻に間に合うか心配していたが、実際は3時間で登れてしまって拍子抜けだったそうだ。エアリアマップを見たら5時間10分になっていたなぁ。著者は少し余裕を見たコースタイムを設定していると思うので、各自でかかりそうな時間は地形図を見て累積標高差や距離から自分なりの時間見積もりが必要だが、それができるようになるには1年では難しいかな。もう1人は大品山で間違って家族旅行村方面へ下る道に入ってしまったそうだが、なんと途中でカモシカが道を塞ぐように登山道に立っていたそうだ。デジカメにはその姿がデカデカと記録されていた。フラッシュを光らせても逃げなかったそうで、さすが肝っ玉が太いカモシカ様だ。これを契機に道がおかしいと戻って大品山から正しいルートに入ったそうだ。

下山開始 山頂を振り返る
鞍部手前から見た大品山 気持のいいブナ林

 下山は同じルートを戻る。まだまだ登ってくる人がいて、本日のお客は合計3,40人といったところだった。やや雲が増えてきたがさほど悪化しないで済み、ゴンドラで麓に下っても日差しがあった。駐車場は車が増殖して数10台くらいだったが、駐車場があまりに巨大なのでまだまだ空きはたくさんあった。温泉は少し上流に遡った「ウェルサンピア立山」に。今話題?の厚生年金施設らしいが利用者は多く賑わっていた。ゴンドラ駅で帰りがけにもらった割引券で\700が\500に。広くてきれいな浴場だった。上市に向かう途中で新しくできたスーパーがあったのでそこで買い物を済ませ、明日の大猫山向けて馬場島を目指した。


所要時間
6:14ゴンドラ山頂駅−−6:41瀬戸蔵山−−7:10大品山−−7:21鞍部−−9:06鍬崎山10:30−−11:48大品山−−12:13瀬戸蔵山−−12:34ゴンドラ山頂駅 

 

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