八ヶ岳 杣沿尾根経由赤岳、横岳 2008年9月6日
この夏後半は天気が悪い。各地で集中豪雨、いや、今風の表現では「ゲリラ豪雨」が発生し浸水が多発。基本的な気圧配置が変わらず、南から温かく湿った空気が入り続けて上空には寒気が入っているのが要因だ。週末も天気予報では悪天が続き3週末連続で山はお休みで足がなまってしまう。しかし今週末も大気の状態は不安定で日曜日はもっと悪化するとのことで、土曜日午前中だけで登れる山を物色した。もちろんこのクソ暑い時期はアルプス級しか登る気は起きないし、半日行程で遠くまで足を延ばすのはもったいないので近場で済ませたい。そこで考え付いたのが海ノ口から横岳へ突き上げる杣沿尾根だ。ここなら韮崎ICから走っても遠くなく、しかも登山口の標高は約1750m、ネットで調べると駐車場もあるとのこと。別荘地内だが一般登山者も問題なく入れるようだ。美濃戸と違って人も少なそうでなかなかいいコースと言えそうだ。天気の状態にもよるが稜線がガスっていなければ赤岳往復もいいだろう。
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杣沿尾根登山口駐車場 |
杣沿尾根登山口(富士見岩遊歩道入口) |
韮崎ICを降りて国道141号を北上、海ノ口別荘地なので海ノ口から上がるのかと思ったらそれらしき分岐が無く、ロードマップで確認すると野辺山の少し先から分岐するようだ。現場に戻ると「八ヶ岳高原ロッジ」の案内看板の分岐がそれらしく、広い道を上っていく。八ヶ岳高原ロッジの先で道は右に曲がり砂利道になってしまい、戻って右に曲がる場所で左に分岐する少し細い道に入ったがすぐに太い道になりそのまま直進し、突当たりを右に曲がると杣沿尾根登山口があり、その100mほど先に登山者専用駐車場があった。10台弱駐車可能だが今は全く車は止まっておらず美濃戸とは大違いだ。空は満天の星空で天の川がはっきり見えていた。せっかくだからとデジカメで星空撮影に挑戦したが、私のデジカメの最高感度はISO800、シャッター速度の最長は15秒で、車の屋根に乗せてタイマーでシャッターを切って手ぶれを防止したものの、やはり感度不足で明るい星しか映っていなかった。もっと高感度が必要そうだ。ただ、その場合はノイズが問題になりそうで、最終的にはレンズの明るさがモノをいいそうだ。
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登山口に立つ地図 |
別荘地最上部の登山口。駐車場なし |
朝4時に起床するとまだ暗く、朝飯を食って出発した5時でも暗かった。道路上はライトなしで歩けるが樹林帯に入るとヘッドライトが必要だった。15分ほどでライト不要な明るさになり、別荘地の車道に沿って付けられた「富士見岩遊歩道」を登っていくが朝露に濡れた微妙に張り出している笹が足を濡らす。ちょっと刈り払えばいい道になるのだが。地形図では登山口が別荘地の最高点となっているが、実際はもっと上部まで別荘地が開発され車道も上に伸びており、本当の登山口は駐車場から10分ほど登ったところにあった。しかし駐車場は無いので今回のように下から歩く方がいいだろう。
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プレハブ小屋付近の遊歩道分岐。ここは直進すること |
廃林道に出る |
笹の中を緩く登るとプレハブ小屋が出現し、道が右に曲がって「富士見岩」の案内標識もそちらを指しているが、手持ちの地図では富士見岩の場所は不明で登山道上にあるのかわからない。直進方向には笹に覆われた踏跡があるがいかにも心細く、まずは太い富士見岩方面に行ってみることにした。しかし地図の破線とは違って直線的に登るのではなくまき気味で、富士見岩と思われる大きな岩を通過してからは完全に水平移動に変わり方角も北、どうみても杣沿尾根から離れていっている。プレハブ小屋まで戻って笹に覆われかけた踏跡に入ると見た目よりも意外にはっきりした道で間違いなく登山道だった。これで一安心だが今度はザック脇に刺していた団扇が無くなっていることが発覚、再度道を逆戻りしてまたもやプレハブ小屋を過ぎてようやく発見、ルート間違えを含めて30分近くロスってしまった。
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南八ヶ岳林道に出る。でかい標識が登山口 |
南八ヶ岳林道の登山口 |
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沢を渡る。ここが最後の水場 |
好ましいシラビソ樹林が続く |
廃林道に出て沢を横切って再び登山道に入り、次に出たまともな林道が南八ヶ岳林道だった。東屋があるちょっとした公園のような広場の横から再び登山道が始まり、沢を渡るとやっと杣沿尾根に取り付いて本格的な登りにかかる。下部で見られた笹はすっかり姿を消して深いシラビソ樹林が続き八ヶ岳らしい雰囲気だ。明瞭な一本道で間違える心配は無く淡々と高度を上げていく。思ったより気温は低くほとんど汗をかかないのはとても助かる。上空は薄い雲が日が遮られているのも大きいようだ。まだ樹林帯で稜線の様子をうかがうことはできないが、雲がかかっていなければいいが。
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浅間山〜奥秩父方面〜富士山の展望。北関東の山は雲の中で見えず(クリックで拡大) |
傾斜は全体的になだらかで、今回は日帰り装備で荷物が軽いこともあって足は軽く、休憩の必要を感じることなく高度を上げ続け標高約2700mで森林限界を突破、幸い、稜線は雲の下で展望が期待できそうだ。振り返ると甲府盆地は雲海に沈んで奥秩父の山々が大きな島のように浮かんでいた。
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杣沿尾根上部は低い這松帯が続く |
三叉峰直下縦走路に出る |
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横岳は目の前だが後回し |
三叉峰から見た乗鞍岳 |
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三叉峰から見た槍穂 |
森林限界以上は傾斜がきつくなり、這松を切り開いた登山道を一気に登って三叉峰直下に到着、横岳は目前だが展望があるうちに赤岳を目指すことにした。といってもこれから赤岳山頂に立つにはそれなりに時間がかかるので、それまでガスが上がってこないとは言い切れないが。それでも体力維持のトレーニングにはなるだろう。稜線上は点々と人の姿が見えているが、時刻から考えれば行者小屋か赤岳鉱泉を今朝出発した人だろう。横岳の一連のピークを越えながら北アルプス方面を見ると乗鞍、霞沢岳、槍穂が雲海に浮かんでおり、後立山は雲の中らしく見えなかった。中央アルプスは雲がかかり始めているが北から南まで見えており、木曾御嶽は山頂付近のみ雲の上であった。上空は雲が覆っているが雨が降りそうな厚さはなく、天気予報では日中は晴れるとのことなので、時間が経過すれば青空が広がるのかも。
地蔵尾根分岐近くの最低鞍部を通過して小型風車が林立する赤岳展望荘を過ぎると本格的な登りが始まる。展望荘には監視カメラらしきものがあり、もしかしたらライブカメラなのかもしれない(帰ってからネットで検索したらライブカメラだった)。岩稜帯付けられたジグザグの道を登り、表面がでこぼこの岩の上を登りきると赤岳頂上山荘が目に入る。本当に頂上間近にある小屋で、下界からも見えそうだ。
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赤岳山頂の祠 |
赤岳から見た行者小屋 |
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赤岳から見た富士山 |
赤岳から見た浅間山 |
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赤岳から見たパノラマ展望(クリックで拡大) |
その僅かに先が赤岳山頂で、到着したときは無人だった。槍穂はどうにか雲に隠れず見えていたが中アは既に雲に沈み、南アルプスも白峰三山は雲がかかり始めていた。八ヶ岳は北部まですっきり見えているが、時間経過とともにガスが上がってくるだろうか。時間帯の関係か休憩中に登ってきた人数は10人にも届かず、思ったより静かだった。
のんびり休憩して下山開始。展望荘まで下った段階で振り返ると赤岳山頂にガスがかかり始め、ちょうどいいタイミングで下ってきたようだ。雲は南側と東側から押し寄せてきて、まだ横岳は雲の外だがいずれはガスに覆われてしまいそうだ。三叉峰に到着した頃にはとうとうガスに突っ込んで展望が無くなり、横岳山頂でも展望皆無だった。霧の向こう側、小同心方面から人の声が聞こえており、どうやら岩屋さんが登っているらしい。何度も横岳は登っているがクライマーが登っているのとかち合ったことは無い。しばらくして横岳山頂へと直接登ってきたのは女性で、ちゃんと岩屋さんらしく腰にジャラジャラと金物類をぶら下げていた。続いて登ってきたのは男性で、2人で登ってきたとのこと。大同心、小同心のクライミングの記事はネットで見ると冬季が多いが、岩は言われるほどもろくは無く夏でも問題なかったと言っていた。ルート取りによってはザイル無しでも行けそうだとのことだが、それは下から岩を見て的確なルートを見出せる眼力がある人の話だろう。核心部は思ったより短く、ちょっと物足りないと言っていた。
私が休憩中に杣沿尾根から登ってきた単独男性が到着、その後同じく杣沿尾根から登り赤岳を往復してきた若者もやってきたが、すぐに下っていった。赤岳まで3時間かからなかったとのことで、私よりも足が速い。でも山頂に到着したときには既にガスってしまい展望は楽しめなかったとのことで、やっぱり夏はできるだけ早朝出発がお得のようだ。
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何箇所かこの標識がある |
遭遇したカモシカ |
しばらく休憩して出発、三叉峰でまたもや杣沿尾根を登ってきた登山者(親子)と遭遇、これから横岳まで行ってから下るとのこと。こちらは単独男性とともに下山開始。途中までペースをあわせて話をしながらのんびり歩いたが、途中からいつものペースに戻して先行して下り、林道に出る直前で登山道にいたカモシカと遭遇。瞬間に鹿だと思ったが、その一瞬後に色からしてカモシカと判明、走って逃げ出したが20mほど先の樹林で立ち止まってこちらを凝視してくれたので無事デジカメで撮影できた。八ヶ岳でカモシカを見たのは今回が初めてだった。
林道を横切る沢で水浴びしてから登山口に向かった。登山口に駐車してあった車は私のを含めて4台だった。
所要時間
5:00登山口−(ルートミス等で20分以上ロス)−5:37廃林道−−5:41林道−−7:33三叉峰−−8:00赤岳展望荘−−8:23赤岳9:09−−9:23赤岳展望荘−−9:56三叉峰−−10:05横岳10:46−−三叉峰11:09−−12:36林道−−12:39廃林道12:44−−12:58登山口
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