南ア中部 権右衛門山、塩見岳 2008年7月26-27日

 


 塩見岳は言わずと知れた南ア中部の3000m峰で、昔の登山口は塩川だったが今では圧倒的に鳥倉林道がアプローチに利用されているだろう。しかし、他にも登山道がある。塩見新道である。鳥倉林道ができる前は塩見新道がメインルートになるかと思っていたが、登山口付近の大鹿村の山小屋が廃業したり、大雨でしばしば林道が通行止めになったりであまり使われないようだ。もちろん廃道になったわけではなく、ネットで調べるとこの7月にも塩見新道を使って塩見岳を日帰りした記録も見つかった。鳥倉から塩見に登ると途中に三伏山、本谷山のアップダウンがあって帰りも登りになって累積標高差は高くなるし、水平移動距離も長くなって意外に労力がかかるが、塩見新道は権右衛門山でわずかに登り返しがあるが、ほとんど行きは登りっぱなし、帰りは下りっぱなしである。登山口となる大曲の標高は鳥倉林道より低いが、結果的には鳥倉より楽に登れるだろう。それに少しだが東京から近いのもメリットだ。

 塩見小屋は幕営できないので、前回同様初日に塩見岳を越えて雪投沢のテント場まで足を延ばして幕営することにする。雪投沢は水が豊富で森林限界より僅かに下った樹林中に幕営できて落雷の危険も少なく、利用者も少ないのでなかなか快適な場所である。初日の塩見岳到着はお昼前なので展望は期待できないが、日曜日は日の出直後に山頂に立てるので展望を期待して良かろう。

大曲駐車場 大曲ゲート

 

 最近はクソ暑い日が続いて週末は標高が高く涼しいところに逃げ出したくなるような天候だが、大気の状態が不安定で雷雨が心配だ。この週末は梅雨前線が北陸から東北南部に停滞するとの予報で前線に近い北の方ほど天候が不安定だろうと南アルプス中部の塩見に登るにはちょうどいい。何度も通った道なのでロードマップを見る必要もなく三峰川沿いの林道入口到着、情報通りに通行止め、入って何かあっても責任は取りませんとの旨が書かれた看板が設置されているが車止めは手で動かせるようになっている。もとより林道走行で何かあっても自己責任だと思っているのでその先に進むが、たくさんの車が通行している様子で普通車で走っても不安はない。あちこちで土砂崩れの跡があるがちゃんと整備されている。これは大曲ゲートより先で各種工事をやっているためで、休日を除いて毎日工事用車両が通行するので大規模な崖崩れでも起きない限りは落石等があってもすぐに整備されると思う。たまに尖った石が落ちているのでタイヤで踏まないように注意する。けっこう長い林道で入口から約15km走ったところでゲートがあり、その手前で右下の駐車場に分岐する道があり、荒れた路面を下ると広い駐車場に到着、先着の車は2台だけだった。寝る前に先週にたためなかったテントをたたんでザックにパッキング。さて、今週は雨に降られずに済むだろうか。ここまで来ると空気がひんやりして快適に寝られた。

塩見新道取り付きの解説文

 翌朝、熟睡していたようで車が1台増えているのに全く気づかなかった。車の主はもう出発しただろうか。塩見岳までの標高差は1700mちょっと、幕営装備で私の足なら休憩込みで5時間といったところだろうか。これに林道歩きの1時間を加えて6時間と見た。5時出発でも山頂着は11時なので、のんびり歩いても午後の早い時間に雪投沢に到着できるだろう。雷雨の可能性を考えると早ければ早いほどいいが、あまりに早く到着してもやることがないしなぁ。

 私が駐車した目の前にはダム放流による増水注意の看板があるが、そこにマジックで塩見新道取り付きの説明書きがあった。大黒沢出合付近で林道が三峰川の左岸から右岸に移ったちょっと先に赤い堰があり、以前はそこに小橋がかかっていたらしいが今は橋が流されてしまったようだ。渡渉したくないならば大黒沢出合付近の橋を渡らずに、右に分岐する林道に入ってそのまま三峰川左岸を進むと赤い堰に出るとのことだった。渡渉するなら赤い堰付近の瀬を渡れとのこと。文章を読んだだけではイマイチ様子が分からないが、前回の黒檜山では三峰川は微妙に渡渉できなかったので、今回も徒渉は避けて左岸を進んだ方がいいと判断した。

巫女淵の延命水 旧塩見新道入口の標識。大黒沢工事で道は消えている
大黒沢工事現場林道入口 林道入口近くに標識がある

 

 林道に上がってゲート脇の人間通過用の隙間でゲートを通過、平坦でよく整備された林道を歩いていく。林道右手の斜面は沢が多く、巫女淵の延命水近くでは岩の割れ目から流れ出すわき水が多数あった。巫女淵の延命水も岩の割れ目から勢いよく流れ出しており、長時間手をつけていられないほど冷たい水だった。少々水をいただいたが本格的な補給は大黒沢でやることにして先に進む。大黒沢の塩見新道入口標識は昔と変わらない位置に立っているが、工事ですっかり道が消えている。その代わりに工事用林道入口に登山道の看板があり、塩見新道が消えてしまったわけではないことを示している。工事用林道を大黒沢に沿って上がっていくが登山道や標識が無く、入口まで戻るとなんと林道が上流に向かって右に曲がるところで直進すると、沢水の放水路に丸木橋がかかっており、その先に赤布が続いていた。ここにも案内標識があると完璧だ。大黒沢が最後の水場なので、手持ちの1リットル飲料があるが、水を1リットル補給した。これだけあれば大汗をかかされても大丈夫だろう。

大黒沢放流路を丸木橋で渡る 対岸の踏跡入口
三峰川左岸を高巻きする 鉄骨が並んだ堰?

 

 この先は少しの間、三峰川左岸を高巻きする。臨時の道らしく細くて踏跡程度だが目印多数で迷う心配はないが、余分なアップダウンがあってちょっと体力を使う。帰りは堰で三峰川を渡渉した方が楽かもしれない。高巻きが終わって広い三峰川河原脇の樹林帯に下り、土砂が押し出した沢を横切ってなおも薄い踏跡を辿ると左手の河原の中に赤い鉄骨が並んだ堰?が見えた。これが以前橋が架かっていた場所らしい。三峰川の流れは向こう側の右岸付近なので遠くて流れの幅や飛び石の間隔等は確認できないが、どうも流れは細そうである。

 ここからようやく山道らしくなり、斜面に取り付いて高度を上げる。まだ踏跡程度だが今までよりも1ランク明瞭になったように感じる。本当にこれがエアリアマップ赤実線クラスかと疑いたくなるような道で、塩見岳は百名山だからと百名山クラスしか登ったことがない人が歩くと不安になりそうな。藪があるわけではなく背の高い落葉広葉樹林で下草が無くどこでも歩けるので、薄い道の判別ができないと迷いやすいと言えよう。もちろん、我々藪屋の目から見れば明瞭な道である。しばらくは尾根上に道があるわけではなく斜面をジグザグに登っていくのも道がわかりにくい要因だ。

やっと登りが始まる 標高が上がるとシラビソ樹林に

 

 やがて小尾根に乗って標高を上げ、再び尾根を外れて斜面をトラバースしつつジグザグに登ったりする。新しく登山道を開いたと言うより、以前からある作業道か獣道を整備したように思える。標高1700mに達するとようやく尾根らしい尾根に乗り、真北に下る主尾根と標高2000m付近で北西に分岐する尾根に乗ったようだ。ここまで来ると明瞭な道が続くようになり、鳥倉ルートと同等とは言わないがエアリアマップ赤実線クラスとなる。主に落葉広葉樹の背の高い深い樹林で、たま〜にシラビソが混じる程度だ。夏だと日差しが無くて涼しいのは大助かりだ。林道歩きの気温は17℃前後だったが、標高が上がっているが時間経過で下界の気温も上がっており、相互に相殺されて気温は約17℃のままだ。まだ体を動かすには涼しいわけではなく、既にパンツまでびしょ濡れだ。こういうときのために「うちわ」を持ってきているので片手でパタパタしながら歩く。風があればうちわの出番はないが無風だと効果は絶大である。麦藁帽子にザックに刺さったうちわの姿は夏山でも私だけだろう。

 標高が上がると徐々にシラビソの勢力が増してブナ科の広葉樹の姿が少なくなる。前方から話し声が聞こえるようになり、男性1名女性2名のパーティーに追いつく。たぶん夜中に来た車の主ではなかろうか。歩きだして2時間以上が経過しているのでそろそろ休憩したいところだが、少し平坦な場所まで頑張ることにして小休止に入ったパーティーを追い越し、標高1970m地点でラジオを聴きながら休憩。天気予報では気温は晴れだが午後は北ほど雷雨の確率が高いと告げており、長野南部の午後の降水確率は20%だった。これなら降られずに済むかもしれない。

途中の隙間から見た黒檜山 シラビソ樹林は涼しい

 

 休憩中に追い越したパーティーを再び追い越し、なだらかな区間を歩いていると下ってくる2人組男性と遭遇、下界に止まっている車の1台の主に違いない。翌日の下山を含めて塩見新道で出会ったのはこの3人だけだった。この先も南アらしい深いシラビソ樹林が続き、三角点は知らずに通過してしまい、権右衛門山への登りが始まった。そろそろ休憩したいところだが、もうちょっとで権右衛門山まで行けそうなので粘ったが力尽きて標高2600m地点で再び休憩。あとは塩見山頂まで歩きとおそう。おっと、その前にオプションの権右衛門山山頂を踏んでおこうと思う。前回登ったときはガスっていて周囲は見えないしGPSも無く、到着した這松の平坦地が山頂だったか確認のしようがなかったが、今回は好天でちゃんと確認できるだろう。

権右衛門山を巻いたところから見た塩見岳 同じく南を見る
権右衛門山直下 ハイマツに覆われた権右衛門山山頂
権右衛門山から見たパノラマ風景(クリックで拡大)

 

 いつしかシラビソの高さが低くなり高度が上がったことを感じさせる。GPSを見ながら登り続け、権右衛門山を右から巻くように登山道が左に曲がって緩やかに登りきった最高点から空身で山頂に向かうことにした。GPSの表示では残り約70m、最初は今まで同様シラビソ樹林で下草も無く難なく山頂直下に到着、すると立った這松のお出ましだ。今日は半ズボンなのであまり激藪漕ぎはやりたくないがGPSの残り表示は約40mなのでそのまま突っ込む。しかしGPSの表示は誤差が大きかったようで、這松を20mも歩くと山頂と思われる一面這松に覆われた平坦地に出た。ここより高い場所は周囲には無く、間違いなく権右衛門山山頂だ。前回到達した光景と同一で、前回もちゃんと山頂に着いていたのだ。今回は展望はバッチリで塩見岳が鋭く頭をもたげている。ここには山頂標識や目印はないので何か残していっても良かったが簡単に登れるピークなので遠慮しておくことにした。登山道から往復5分程度なので、塩見新道を歩く際はぜひ立ち寄って欲しい。

権右衛門山直下の様子 三伏峠方面縦走路と合流

 

 登山道に戻ってザックを背負って緩やかに下り、登り返すと第1級の縦走路に飛び出した。さすがに道のグレードは月とすっぽんの差で、これぞ100名山の登山道だ。これでは塩見新道の道幅を見ると入るのを躊躇する登山者がいても不思議ではないだろう。でも、登山道があるマイナーな山を登っている人なら問題ないレベルであるが。

森林限界に到達 振り返ると権右衛門山
塩見小屋 塩見小屋付近から見た塩見岳(山頂は見えない)

 

 ここを過ぎるとまもなく森林限界で、標高2700mで這松帯になって視界が開けた。雲が多いがまだ展望があり、塩見岳山頂まで持ってくれるといいのだが。塩見小屋は素通りして風通しがよく冷気が気持ちいい岩稜帯歩きが続く。雷鳥がいないかキョロキョロしながら歩いたが、今回の山行では見つけることはできなかった。今は午前11時で今日鳥倉を出発した人はまだここまで到着しないだろうし、塩見小屋に宿泊した人は当然下山してしまった時間帯なので、この付近を歩いている人は昨日三伏小屋で宿泊した登山者だろう。下山する人が多いが登ってくる人もまだまだいる。私の疲労もそれなりなので1時間で標高差300mくらいしか稼げないペースで歩いているのだが、それでも軽装の登山者を追い越すこととなった。

岩稜帯の気持ちのいい道が続く これは右から巻いてしまう

 

 塩見岳東峰直下の岩場は鎖を付けるほどではないのだが、岩に慣れない登山者には手間取る場所のようで下山してくるパーティーが渋滞していた。私も急ぐわけではないので岩に腰掛けて通過を待ち、もっと上にいる別パーティーが降りてくるのも待とうと思ったがあちらが待機してくれるようなのでホイホイと登っていく。ホールド、スタンスは多いし、滑っても遥か下まで滑落するような地形ではないので緊張感はない。岩に不慣れな人がイヤらしく思える区間は3,40mで、それを過ぎれば普通の岩稜帯の道になる。

なんと谷には残雪が見えた もうすぐ西峰
塩見岳西峰 塩見岳西峰から見た東峰
塩見岳東峰から見たパノラマ展望(クリックで拡大)

 

 最後の登りでなだらかな稜線に乗り、僅かで塩見岳西峰到着。人が多く(といっても10人くらいだったが)のんびり休むのにはよろしくないので無人の東峰に向かう。といっても僅か数分の距離なのであっというまに到着。雲が多いが南アの山々はそこそこ見えている。期待していた北アルプスは全く見えないが、明日の朝に期待しよう。ここまで来れば雪投沢のテント場は近いので心置きなくのんびりできる。1時間以上長居してしている間に私が途中で追い越した良く焼けた若いあんちゃんがやってきてしばらく話をしたが、まだアルプスを歩きだしてさほどたっていないようだった。今回は鳥倉からまず赤石、荒川を往復し、今日は塩見を往復、あす下山らしい。さすがに鳥倉の駐車場は混雑していたそうだ。最初は塩川からの入山を考えていたのだが、役所に電話して聞いたら鳥倉コースを勧められたという。まあ、今の時代だとそうだろう。来週は後立山を考えているとのことで、北部まで天気が良くなるといいな。今日は北陸地方はあまり天気が良くないらしいので、後立山北部は雲の中か雨だろう。

東峰から下り始める 延々と続く仙塩尾根
北俣岳山頂 途中で猿の群れと遭遇。小猿多し

 

 充分展望を楽しんでから雪投沢に向かう。途中の細い尾根にはカモシカの足跡があり、とんでもない砂礫の斜面を横断していた。さすがカモシカだ、人間には真似できない。北俣岳から下り始めると左手の小尾根に動く物体を発見、よく見ると子連れのサルの群れだった。サルも塩見岳登山とは時代が変わったなぁ。実際は登山が目的ではなく柔らかい高山植物が目当てなのだろうけど。サルに高山植物を荒らすなと話しかけても無意味なので静かに登山道を下っていった。サルの群れはとんでもない傾斜の小尾根をスルスルと下っていた。こりゃカモシカ並みだ。

雪投沢分岐 ハイマツ帯から樹林帯へ下る
樹林帯にも数カ所テント場あり 雪投沢。細いが水汲みには充分な水量

 

 尾根の小鞍部で右手に踏跡が降りており、ここが雪投沢入口だ。這松の森林限界帯には砂礫の平坦地がいくつかあってテントを張るのによさそうに見えるが、ここより少し先までトラバース気味に下ると樹林帯に変貌し、その中にもテント場がある。そちらも方が雷雨が来たときに安全だし、水場により近いのでお勧めだ。数箇所テントを張れる場所があるが雨が降っても水が流れてこない場所を選択、テント設営を終えてもっと先にある水場に向かう。もっとといってもテント場から往復5分程度なので大した労力ではない。最後のテント場を横切って踏跡を辿ると樹林が切れて石が転がった河原に飛び出し、冷たい水が流れる沢があった。源頭に近いのでゴウゴウと流れているわけではないが水汲みには充分な量が流れている。長時間手を入れていられないような冷たさで、沢に浸けたタオルを絞るのも一苦労。汗まみれだった全身をタオルで拭いて気分爽快! 水を3リットルほど汲んでテントに戻った。

 テントに戻ればやることがなく、ラジオを聞きながらお昼寝。夕方近くになって起き出して外を見ると甲府盆地方面は入道雲が沸き上がって遠雷の音が聞こえるが雲は西に向かってくることはなくこちらの上空は雲が多いながら晴れたままだった。夜中にちょっとだけ雨が降ったが僅かな時間と雨量で済んだ。夜中に起き出すとテントに木の影が映っており、テントから顔を出すと月が出ていた。快晴ではなく一部雲がかかって星が隠れたエリアがあり、稜線上は雲に覆われているようだ。さて、日の出の時刻には晴れてくれるだろうか。

白峰南嶺の向こうから日の出 尾根が赤く染まる
お花畑に自分の陰 塩見岳上空に雲が出始める

 

 3時に起床し飯を食べてまだ暗い中をヘッドランプを点灯して出発。樹林の中は暗かったが森林限界に出るとどうにかライト不要で歩ける程度であり、ライトを消して岩稜帯を登り始める。やや風が強く長袖シャツに長ズボンのジャージの姿だったが気温そのものはあまり低くなく、少し登ると風に当たっても暑いくらいになりTシャツ姿に変身。北俣岳への登りで左手の白峰南嶺の向こう側の雲海から朝日が昇り周囲は赤い光に包まれた。見上げる稜線には雲はなく、このままの状態なら山頂で大展望を楽しめそうだ。振り返ると白峰三山にも雲はかかっておらず、その左手遠方には槍穂から大天井岳と思われる山並み、もっと左には昨日全く見えなかった中央アルプスが並んでいた。

雲海に浮かぶ富士山 今日は笊もすっきり見えた
北俣岳から見た北アルプス(クリックで拡大)

 

 しかし時間経過と共に頭上に雲が出だし、北俣岳に到着する頃には時々塩見岳山頂にガスがかかるようになってきた。山頂に到着する頃にはすっかりガスに包まれる可能性もあるので北俣岳で北アルプスの写真を撮影しておく。既に荒川岳の稜線には雲が張り付いて山の姿は見えなくなっていた。雲海に浮かぶ富士山の姿が素晴らしい。フタコブラクダの笊ヶ岳も見えていた。

 1時間程度で到着すると予測していた塩見東峰はもう少しかかって到着。残念ながら既に山頂はガスの中で視界は全く無くなってしまった。今の時期の早朝は稜線上では風が吹いてガスに覆われるのがパターンであり、おそらく時間経過と共にガスが晴れて視界が得られると思うが、東京への帰りの時刻が遅くなると中央道での大渋滞が待ちかまえている。夏休みの期間は特に酷く、山以上に疲れてしまうのでできれば避けたいので早めの下山が肝要だ。東峰で1時間ほど粘ったが一瞬ガスが晴れただけで、周囲の南アの稜線にはベッタリと雲が張り付いたままだった。塩見岳西峰は塩見小屋に宿泊したと思われる登山者でそこそこ賑わっていたがこの天気では残念だろう。

西岳もガスに沈む 塩見小屋よりも下ると雲から出た。山頂は雲の中

 

 下山もガスの中で開始。少し標高が下がれば雲から抜け出すと思うが、それが森林限界以下なら今度は樹林で展望はないが、昨日そこそこ楽しめたから諦めはつく。昨日込み合っていた岩場は今日はガラガラでポツリポツリと登ってくる人がいる程度だったが、午前中は三伏小屋から往復する登山者で賑わうだろう。塩見小屋で雲から出たが周囲も雲が湧いて展望はなかった。三伏峠への縦走路を離れて塩見新道に突入、少し入ったところに「この道は塩見新道で三伏小屋へはいけません」と書かれた標識が取り付けられていた。

 権右衛門山を巻いて下りにかかり、深い樹林帯を延々と下り続ける。日曜日なので今日登ってくる人はいないだろうと思っていたが案の定無人で静かな登山道のままだった。標高2000m地点の小さな肩で休憩し、水と食料を体内に補給。体を動かしていると汗が出てくるが休めるとかなり涼しい。今日の関東の天気予報は曇り後雨だが、長野南部は基本的に晴れている。標高1700mで尾根に別れを告げて左にトラバース、藪もないのでこのまま斜面を直線的に下ってしまおうかとも考えたが、どのみちあの赤い堰はトラバースの方向である下流側にあるのでそのまま登山道を歩いた。樹林の隙間から白い河原が見えてくると水の流れも聞こえてくる。

赤い鉄骨を対岸に向かう この石で対岸に渡った

 

 斜面が終わって樹林から日差しの強い河原に降り、赤い鉄骨が並ぶ堰に沿って右岸に向かい、三峰川の流れを見ると以前黒檜山で三峰川を渡渉した場所よりも水量が少ないように見えた。堰のすぐ下流に適度な飛び石が点在し、1箇所だけ渡れそうな組み合わせがあったのでそこを飛ぶことにする。水流は弱いし深さは浅いので、涼みを兼ねて靴を脱いでジャブジャブ渡ってもいいのだが、靴を脱いだり履いたりする時間と手間が面倒だ。手馴れた人なら問題なく飛べる距離だが不慣れなオバサンでは無理かなぁ。もちろん靴を脱いで渡れば問題ないが、そうでない場合は行きと同じように大黒沢の工事現場から三峰川左岸の迂回路を歩くのがいいだろう。

林道から鉄骨へ下る踏跡入口 ゲート近くのスズメバチの巣

 

 林道へ上がる場所には明瞭な踏跡があり、林道から下る箇所にはピンクリボンがぶら下がっているので取り付き箇所はすぐ分かるし、それ以前に河原に並んだ赤い鉄骨の列が目立つので見落とす心配はないだろう。日曜日なのに大黒沢の工事現場には人が入っていた。巫女淵の延命水を飲んで林道を歩き、ゲート手前で橋を渡った右側の崖に何か丸いものがぶら下がっているのを発見。肉眼では何だか判断がつかなかったがデジカメで撮影した画像(光学6倍で撮影しピクセル等倍で切り出した)を見るとスズメバチの大きな巣だった。

下山時の大曲駐車場 三峰川沿いの林道入口。自己責任でどうぞ

 

 駐車場に到着すると昨日止まっていた2台は消えうせて夜中に来た1台はそのまま、その他に新たに5台止まっていた。おそらく昨日の午前中、私が出発した後に歩きだした人のものだろう。テントが2張りあったが、時刻からしてこれは登山者の物ではなくキャンパーだろう。こちらは虫干しのためにテントを組み立てて日向にひっくり返し、着替えや車の荷物整理を行った。三峰川沿いの林道は軽トラと1台すれ違っただけで塩見新道同様静かだった。


所要時間 後日記入予定

 

山域別2000m峰リストに戻る

 

ホームページトップに戻る