奥日光 峰山、三ヶ峰 2008年3月16日

 


 日光錫ヶ岳から西へと伸びる稜線は10年以上前のまだ残雪期の技術を充分身につけていない時期に登ったことがある。雪に埋もれた香沢林道を歩いて六軒山との尾根に上がり、ラッセルに苦労して笠ヶ岳に登り、三ヶ岳、沼上山と周遊した。その時は時間と体力の関係上、三ヶ岳のすぐ南側にある峰山は足を伸ばすことは考えなかったが、今となっては2000m近くある気になる山であるので挑戦することにした。下界は杉花粉でいっぱいだが、この時期の片品なら雪に覆われまださほど飛んでいないだろうという読みもあった。

 どこから登るかであるが、今は沼上山一帯はスキー場ができているのでリフト終点までリフトに乗れば楽勝だろうがそれではつまらない。登りはラッセルでの体力消耗を考慮してゲレンデを登っても下りは別の尾根を使いたい。面白そうなのは三ヶ峰から西に延びる太い尾根であるが、最後に沢を渡らなければならず、流れの太さが不明で気温が上がって雪解け増水も考えられる。次の策はスキー場のある尾根の1850m地点から真西に分岐する尾根で、ここも最後は沢を渡る必要があるが、地図を見る限りは小さな沢で雪に埋もれているかもしれない。少し心配なのが天気で、アタック予定日前日の金曜日に東京では雨が降ったので山では雪だっただろうが、量が多いとスノーシューでもラッセルがきつい。一番いいのは山も雨で翌朝の冷え込みでカチカチにクラストしていることだが、まだ雨になるほど気温は上がっていないだろうなぁ。

 今回は関越道で沼田まで入り、あとは尾瀬の案内看板を見ながら進めばいい。最近はあまり通っていない道だが以前は何度も利用しているのでロードマップを見るまでもない。取り付き予定の尾根へ至る道をどこで曲がるかはロードマップを見て判断する。沼田ICを降りて椎坂峠を登っていくとチラホラ残雪が見られるようになり一安心。追貝を通過して鎌田でサエラスキー場の案内で右折、高度を上げていく。夜中なのにやたら明るいエリアが見えるが、そこがスキー場らしい。ナイター営業でもやっているのだろうか。車道終点が巨大な駐車場になっているがホテルの真ん前であり、こちらはスキー場を利用するわけでもないのでUターンして除雪の雪の置き場所に駐車して寝た。

ここから登り始める 夜明け直後のゲレンデを歩く。背後は尾瀬戸倉
尾根上に上がる 真っ白な上州武尊

 

 翌朝、真っ暗な4時半に起床しヘッドライトを点けて5時過ぎに出発、今回から白色LEDに更新したが、チップLEDが1個しか付いていないのにやたらと明るい。単3電池1個で動くので小型軽量だが何時間持つのかよく分からない。まあ、私の場合は使ってもせいぜい早朝の1時間だからあまり気にする必要はないが。今日も使用時間は30分くらいである。ホテル手前の舗装道路を上がっていくとやがてスキー場のゲレンデに出た。まだ暗いが周囲は開けて雪で真っ白だからライトは不要、無人のゲレンデを上がっていく。さすが圧雪車で固められているし早朝で締まっているので登山靴でも全く沈まず快調に高度を上げる。ゲレンデ内ではスノーシューの出番は無さそうだが、リフトの駅が出てきて右手に上級者コースと思われる急斜面が出てきたので、ここから一気に尾根上に出ようとスノーシューを装着、踵を上げて登っていくが、斜度がきつすぎて圧雪車が入れないので踏み抜いて苦労する。素直に広いゲレンデを登れば良かったかなぁ。尾根上に出るとなんとここは立入禁止区域だった。スキーやスノボの跡があったけどなぁ。

このピークが沼上山。リフトのすぐ裏 沼上山山頂。KUMOは見あたらず

 

 そこから少しで最終リフト駅で、その裏のコブが沼上山のはずである。南斜面を僅かに上るが締まって登りやすくたやすく山頂に到着した。山頂は一面の雪に埋もれて前回登ったときにあったKUMO付きの切り株は見あたらなかった。もしかしたら撤去されてしまったのだろうか。ま、前回より1ヶ月も時期が早いので雪に埋もれているのかもしれない。一応GPSで位置を確認すると間違いなく沼上山であった。標識は皆無なので僭越ではあるが赤テープを付けておいた

沼上山から見た三ヶ峰 なんと足跡が残っていた
初めは唐松植林帯 小さいながら雪庇がある
自然林に変わる 無雪期の目印?
樹林の隙間から見た燧ヶ岳 樹林の隙間から見た至仏山

 

 さあ、ここからが本当の山登りである。最大の問題は雪質であるが、今までのように圧雪はされていないし、三ヶ峰直下は北向きの尾根なのでラッセルがきつそうだ。何せまだ3月中旬だから締まっていなくて当然である。しばらくは水平の稜線が続くので先週同様そこそこ締まっていてほとんど踏み抜きがない。それよりも古い足跡が残っていることに驚いた。私が前回登った時はまだスキー場は無く、このエリアの山は藪山マニアしか注目しない秘境と言ってよかったが、スキー場のオープンでメジャーになったのだろうか。トレースがあるということは、その上を歩けば踏み抜きにくいので大助かりであるが。幅が広い赤テープも点々と残っているが、私が登った時代のものと思われる木の幹の消えかけた赤スプレーが印象的だ。所々で踏み抜くがその割合はかなり少なく、先週同様に快適に進んでいく。これなら充分余裕を持って三ヶ峰は到着できそうだ。三岳のように凸凹もないし藪も無い。所々で木が少なくなって日当たりがいい場所ではカリカリにクラストして舗装道路を歩いているようだ。

 1850m付近で地形が広がり下りで要注意だが、今は自分の足跡が残るので目印を付ける必要はない。それに今回はここで分岐する南側の尾根を下る予定だ。この尾根は前回歩いたときに間違えて下ってしまった尾根だが、今度はここを最後まで下る予定だ。前回の経験からすると、下りは何も考えないで直進すれば自然にこっちに引き込まれるはずだ。ここまで来ると古い足跡はいつの間にか消えていた。天候か時間の関係で諦めて引き返したのだろうか。

人の足跡が消えて動物の足跡のみ もうすぐ三ヶ峰

 

 この先で尾根の傾斜が増して登りがきつくなると同時に、雪の締まりが悪くなって膝まで踏み抜くようになる。股まで潜る場合は下に幼木が隠れている場合で、こうなるとスノーシューが木に絡んで脱出が大変だった。雪が柔らかいので足下が定まらず、スノーシューがズルズル滑ってピッヶルに力を分散してどうにか切り抜ける。アイゼンで蹴り込みながら登った方が良かっただろうが履き替えるのが面倒だった。この区間は距離にして100m程度で、傾斜が緩むと再び歩きやすくなった。

三ヶ峰山頂。白い標識がGさん標識 35年以上前のGWV標識
Gさん標識の裏にDJFご一行の落書き 三ヶ峰から見た日光白根、笠ヶ岳、錫ヶ岳

 

 周囲は深いシラビソ樹林で、傾斜が緩んでくるとそろそろ山頂の雰囲気が出てくる。いったん平坦になって山頂かと思いきや、僅かに先に土手のように盛り上がった場所があり、左手から回り込むように登りきると2度目の三ヶ峰山頂だった。残念ながらKUMOは無くなっているが群馬特有のGさん標識とGWVの標識は健在だ。前回登ったときにどんな標識があったのかは当時の写真を見ないと分からないが、新しい標識は増えていないような(写真判定ではやっぱこの2つしかなかった)。当時、私が付けた円形のアルミ板標識はほとんど文字が消えていた。たしかこの下にKUMOがあったはずで、フィルムヶースを止めていた針金は残っているが環はあるがフィルムヶースは無くなっていた。Gさん標識の裏にはDJFとIASの落書きを発見、なんだ、DJFはもう登ったのか。残念。山頂も樹林に覆われて視界はなく、僅かに隙間から笠ヶ岳見えた。手招きしているように見えるが往復すると3時間はくだらないだろうから止めておこう。ま、笠ヶ岳はもう一度登ってもいい山だな。

三ヶ峰中間鞍部に下る 峰山向けてなだらかな尾根に乗る
峰山の尾根から見た笠ヶ岳、錫ヶ岳 峰山の尾根から見た皇海山
薄くなった目印が続く 小さな雪庇区間のみ樹林が開ける

 

 しばし休憩してから本日の目的地、峰山に向かう。広い稜線を下って最低鞍部で方位磁石で南南西に進路を振ってなだらかな斜面を下る。下りはじめは尾根を成していないので尾根に乗れるよう周囲に注意しながら下っていくとドンピシャで尾根がはっきりしてきた。この尾根を歩く人もいるようで古くて消えかけたピンクのスプレーが点々と見られた。緩やかで広い尾根なので邪魔な木があるところは微妙に避けて歩けるが、踏み抜きが多くなって疲れること。東側にはミニ雪庇が出現するようになり、木が無くて日当たりがよく雪が良く締まって歩きやすいのでできるだけ雪庇の上を歩いた。雪国では雪庇は発達して端に寄りすぎると「空中歩行」になって雪と一緒に転落する危険があるが、ここの雪庇はごく小さくて横に張り出していないので安心である。

峰山山頂 峰山の標識

 

 雪庇区間が終わって傾斜が緩むとピークに到着、テプラが貼られた小さな標識が出迎えてくれた。ここが峰山山頂である。Gさん標識はなくGWVも無くちょっと寂しい風景だ。南に続く尾根には目印があり、南から登ってくる人もいるようだ。ここも樹林で展望はなく、さっきの雪庇区間が錫ヶ岳や皇海山等東側の展望が得られるだけだった。

峰山直下から見た三ヶ峰 すれ違った大パーティー

 

 帰りは自分の足跡を追って三ヶ峰に戻ったが、途中で上着を落としてしまい探しに戻って5分程度ロスった。戻った三ヶ峰も無人であった。再び休憩し、下りにかかった。10分ほど下るとなんと登ってくる人出現! やっぱスキー場開設でここもメジャーデビューか。スノーシュー初心者13人パーティーだそうで、今日は山頂は賑やかになりそうだ。スノーシューの活躍にはいい場所だけど展望がないのがちょっとなぁ。ぞくぞくと登ってくる中にいにしえの日本風ワカンの2人の男性が登ってきたが、今の時期にワカンだから踏み抜いて苦労していた。まだこれでも私等が付けたトレースを歩いているのでマシなはずだが、スノーシューと比較すると難儀していた。やっぱワカンは4月前半以降だな。

登りで使った南側の尾根を下る あちこちに熊棚があった

 

 1850m付近で残留組の最後の2名と立ち話し、スキー場への尾根と分かれて直進する尾根に入った。この尾根も藪は隠れて基本的には歩きやすいのだが、気温が上がったせいか雪が締まっておらず膝まで踏み抜いて下りでも体力を使う。スノーシューで踏み抜くとスノーシューは面積が広いので乗る雪の重みもワカンより重く足を抜くのに一苦労だ。これが軽い雪だったら問題ないのだが。選択に失敗したかなと思いつつもスキーヤーがスイスイ滑るゲレンデの端をトボトボ歩くのよりは無人の尾根を歩く方が性に合っているさとそのまま歩いた。この尾根にはあちこちに熊棚が見られ熊の生活範囲らしいがまだ足跡は見あたらなかった。

お隣に沼上山 雪が減って笹が現れるが低くて薄い
鹿道も見られた 林道を横断
谷を下る 最後は除雪された車道に出た

 

 高度を下げると徐々に雪が減って笹が出てくるようになるが、この付近の笹は足首程度の高さで密度も低く無雪期でも全く問題無さそうだ。鹿道もあるようだった。ま、この状態は上の方までは続かないだろうから無雪期に三ヶ峰に登るのは根性が必要だろう。尾根が広がってはっきりしなくなってからは進路を左に振って歩きやすい場所を拾いつつ沢の方に下るようにする。このように下っていけばどこかで地形図の破線と出会うはずだ。まあ、破線の道が実在するかどうかは分からないが、沢沿いに下っていけばスキー場の取り付き道路近くまで出られるだろう。小尾根を下っていると突如として雪に埋もれた林道が横切っており、どうやら破線の正体は林道らしい。このまま林道を歩いてもいいが巻くように逆方向に向かっているので、そのうち交差するさとこのまま直進、杉の植林帯の急斜面を下っていくと雪に埋まった小さな谷に出てそのまま谷を下ると、小さな沢の向こう側に再び林道出現。今度は林道を辿るがまたもや巻くように遠回りに歩かされそうになったので外れて直進的に下ると送電鉄塔が出現、その巡視路と思われる雪に埋もれた道を辿っていくと除雪終点の車道に出た。ここでスノーシューを脱いで車まで歩いた。

 帰りの温泉は鎌田の「寄居山温泉センター」。片品村が運営する施設らしく\500。日曜午後でほぼ貸し切り状態だった。山の中では杉花粉は全く感じなかったがここまで下ると目の花粉センサーが大いに反応していた。

 

 

所要時間

5:12車−(0:13)−5:25ゲレンデ−(0:58)−6:23沼上山6:36−(1:50)−8:26三ヶ峰9:04−(0:35)−9:39峰山9:44−(0:40)−10:24三ヶ峰11:02−(0:36 ただし10分くらい立ち話した)−11:38 1850m地点−(1:04)−12:42林道−(0:13)−12:55除雪終点−(0:11)−13:06車

 

 

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