尾瀬 笠ヶ岳、小笠、悪沢岳、小至仏山、至仏山 2007年9月15日
9月には2回の3連休があり最初の連休が巡ってきた。3日を有効に使うには少し長い行程を組むか遠い山にするかどちらかであるが、天気予報が良くなくて好天が期待できそうなのは初日の土曜日だけだ。沖縄付近に台風、日本海に秋雨前線の気圧配置は本州では暖かく湿った南風が入り、下界の天気はよくても稜線はガスに覆われるパターンであり、天気の大崩れはないと思うがガスで何も見えない確率が高い。日帰りの前提で場所を考えた結果、未踏である尾瀬の笠ヶ岳に向かうことにした。ここは登山道があって簡単に登れるが、今の時期はマイカー規制で鳩待峠まで車で入れないのが面倒でずっと後回しになっていたが、日帰りには適度だろう。鳩待峠行きバスの始発はAM4:40、峠着AM5:15と、今の時期ならちょうど明るくなった頃に出発できるからピッタリである。
戸倉第一駐車場 | 建物の反対側がバス停&タクシー乗り場 |
鳩待峠 |
いつものアルプスに出かけるのと比較すれば近いのは大助かりで、走行距離は約200kmで戸倉の駐車場に到着、無人自動式ゲートで\1000/24時間だった。えらい広い駐車場で満車になることはなさそうな感じで、今の時間はガラガラで10台に満たない車しか止まっていなかった。夜中にポツポツと車がやってきて4時に起きたらもう動き出している人も見られたが、始発は小型バス2台でさばける程度の人数だったようだ。バスは全員が乗車できるまで台数は増発するらしく、前に止まっていたバスの最後の乗客が私だった。乗車券は自動販売機で発売されているが、不思議なことに往復券が無く、帰りの分は必ず峠で購入しなければならない。ゲートが開くのが5時なのでタクシーとともに約10分ゲート前で待って出発、まだ薄暗い鳩待峠に到着した。上空は曇っているがたぶん雲海の雲で、ある程度の標高に達すれば太陽が見えるだろう。問題はその標高が稜線より高いか低いかであるが、現場に行ってみないと分からない。
鳩待峠を見下ろす | 景鶴山が見えた(下山時) |
尾瀬ヶ原も見えた(下山時) | ガスの中、木道を黙々と歩く |
登り始めてすぐに看板があり、至仏〜山ノ鼻間は登り専用で使うよう案内されている。すれ違いで登山道以外を踏み荒らされるのを防止するためだろう。最初に山ノ鼻まで歩いて周遊してもいいのだが、今回は笠ヶ岳がメインであり至仏はおまけで、ついでにガスのため至仏で展望が得られるとは限らないから立ち寄る必然性も低く、先に笠ヶ岳に登ってしまう方がいいと判断してそのまま歩いた。歩き始めてすぐに軽装の男性に追い越されたが、たぶん山岳ランナーだろう。峠に到着した人のほぼ全員が尾瀬に向かって下っていったので後続部隊は全く姿が見えない。さすが100名山で道は良く、最近笹を刈ったばかりで半ズボンでも体に触れる草木は皆無だ。残雪期に付けられた目印がちらほら見られるが、高いものだと地面から5,6mもの位置に付いており、雪の多さを物語っている。
笠ヶ岳分岐 | 悪沢岳山頂 |
悪沢岳山頂のKUMOに付いていたはずの電線 |
植生がブナからシラビソに変わり、オヤマ沢の標識を越えるとオヤマ沢田分岐に到着、ここから笠ヶ岳に向かって左に入る。残念ながらこの標高でもまだ濃いガスの中で周辺の山々は見ることができず、湿った強い南風が吹いていた。ここから先は道が悪くなって濡れた笹が両側からはみ出しているのかと想像したが、今までの登山道と全く変わらぬ良く整備された登山道が続いていた。利用者は至仏山へと向かう人よりずいぶん少ないはずだが、これだけ整備してくれるとはありがたい。10分ほど歩くと樹林に覆われた小さなピークを越えるがそこが悪沢岳だった。標識が立っており、近くの木には「KUMO」(山頂標識)が付けられていたに違いない灰色の電線が巻かれていた。標識本体は取り去られてしまったようだ。最近はKUMOを見かけていないが、今年の冬場にでも北関東の低山でお目にかかれるだろうか。
所々ぬかるんだ登山道を緩やかに下り、緩やかに登り返して樹林帯を抜けて草付きになった場所で右手に顕著なピークが出てきた。これが小笠であり登山道はピークを通っていないが登山道脇に山頂標識が立っていた。標識脇から細い踏跡がてっぺん向かって伸びているので本当の山頂は帰りに立ち寄ることにする。
笠ヶ岳南を巻く | 稜線西側から山頂を目指す |
尾瀬笠ヶ岳山頂 | 上州武尊もガスの中 |
この先は草付が続き、濃いガスがモロに体に吹きつけて寒いくらいだ。ここまで来れば笠ヶ岳はもうすぐのはずだが霧で何も見えない。鞍部から草付を登り返しにかかるとガスが切れて目の前にピークが姿を現した。これが笠ヶ岳に違いないが、登山道は山頂めがけて登らずに南斜面をトラバースしてしまう。草付きなので山頂に直接登ることはできるだろうが、もしかしたら西側から山頂への登山道があるかもしれないのでそのまま登山道を歩き、稜線が落ちて登山道とぶつかる地点に笠ヶ岳山頂への案内標識があった。よかったぁ。時々ガスが晴れて青空が見えるようになり気持ちよく登ることができた。ここの登山道は表土が流出して岩盤が露出してしまったようで、主に岩の上を歩いた。笠ヶ岳山頂も岩が点在する場所であるが、森林限界を超えて高い木がないので展望は良好だが、今は山頂付近のガスは切れても周辺のガスが切れず、奈良俣湖方面が見えるだけだった。こりゃ至仏山に登っても何も見えないかなぁ。でもここまで来たのだし、このまま戻っても時間が余るだけだから寄っていこうか。
小笠直下で細い踏跡に入る | 小笠山頂 |
小笠から見た笠ヶ岳 | 湿原は秋の気配 |
小笠に向かって下り始めたところで反対からやってくる登山者とすれ違ったが、おそらくは私と同じくオヤマ沢田代からの往復だろう。小笠直下で空身になって小笠山頂を目指したが、1分もかからずにてっぺんであっけなかった。山頂標識が立っている周辺だけが藪が無く、少しでも稜線上を動けば背の低い潅木群が待ち構えている。今までよりガスが薄くなってきたようで、行きでは全く姿が見えなかった笠ヶ岳の尖ったピークが出てきた。なるほど、これは笠ヶ岳の名が付いてもおかしくない格好だ。そういえば知名度、標高とも北アの笠ヶ岳が全国各地の笠ヶ岳の総本山と思うが、尾瀬の笠ヶ岳は本家と同じく小笠まではあるがさすがに緑ノ笠は無い。笠のガスは切れたが至仏山の方向は厚いガスの向こうだった。
オヤマ沢田代から小至仏山へと登る | 小至仏山山頂 |
オヤマ沢田代に戻ってガスの中を至仏山に向かう。木道が広くなって休憩できる場所ではたくさんの人が休んでいたが、鳩待峠の標高が約1600mでここがおよそ2100mなので普通のハイカーなら1時間半くらい歩く行程だろうか。でももうちょっと行けば小至仏山なので休む場所としては半端かなぁ。その小至仏山山頂もたくさん休憩している人がいたが、ガスで何も見えなかった。小至仏山へと登る道は蛇紋岩質で、その植生は今年6月に登った早池峰山そっくりだ。規模としては早池峰の方が大きいと思うが、ガスった中の写真ならばどちらだか判別できないだろう。
ガスが切れて至仏山が姿を現す | 小至仏山方面はまだガスの中 |
小至仏山から下っていると徐々にガスが切れるようになり、至仏山が姿を現すようになった。このまま晴れてくれるのか、それとも晴れは一時的で今が一番いいのか不明だが、晴れているのはこの辺だけで周囲の山は雲の中で尾瀬ヶ原もガスで見えない。鞍部から登り返して相当へばっている人を何人も追い越したが、これくらいの山だと本格的登山というよりハイキングの部類に入りそうなので、足が強い人ばかりではないらしい。至仏でこの状態では標高差1500mのアルプス級は登れないかもなぁ。
このピークが至仏山山頂 | 至仏山山頂 |
至仏山から見た尾瀬ヶ原 |
最後に小ピークを越えたその向こうが本当の山頂で、石製の太い角柱の山頂標識が鎮座していた。休んでいるのは20人程度で思ったよりも混雑していない。南風が強くて石の影で休憩していると徐々にガスが消えていき、やがて尾瀬ヶ原全体が見えるようになったが、山の方は燧ヶ岳と景鶴山は顔を出したが、その他は雲に沈んだままだった。谷川連峰もオキノ耳とトマノ耳が出ているだけであった。今日はほとんどの山は登ってもガスで見えなかったに違いない。
今日の行程は標高差が少ないので帰りも楽チン、休憩する必要も無く鳩待峠に到着した。売店で帰りの乗車券を購入、鳩待峠と戸倉間のチケットはバス、タクシー共通となっていて同じ券でどちらでも乗れる。バスのダイアの隙間の時間帯は乗合タクシーが便利で、今はちょうどそんな時間なのでタクシーを選択、人数が揃うまで売店前のベンチで待ち、集合の声がかかってワンボックスカーのタクシーに乗り込んで駐車場に向かった。
所要時間
鳩待峠−1:10−オヤマ沢田代−0:10−悪沢岳−0:31−小笠直下−0:22−笠ヶ岳分岐−0:09−笠ヶ岳−0:30−小笠−0:38−悪沢岳−0:07−オヤマ沢田代−0:19−小至仏山−0:25−至仏山−0:32−小至仏山−1:01−鳩待峠