北ア南部 抜戸岳、緑ノ笠、小笠、笠ヶ岳、クリヤノ頭 2007年7月27〜28日
うちの会社は何故か7月の最終金曜日はお休みである。以前は7月最終週から8月頭が有給休暇一斉取得日(世間でいう夏休みだが会社がくれる休みは1日のみ)でまとまった休みでお盆休みがなかったのが、今ではお盆が有給休暇一斉取得日になり、その代わりといっては何だが7月終わりに振替休日を持ってきたのかもしれない。理由はどうにせよ梅雨明け直後の時期に3連休がとれるのはありがたいことで、せっかくの機会なので3日間が必要な山行にしたいところだ。しかし、例年なら梅雨明けの時期だが今年は昨年同様まだ明けておらず、山屋にとっては悩ましい事態だ。天気予報も毎日コロコロ変わってアルプス級の山ではどこに登るのが一番天気が良くなるのか全く分からない。最初は前線が北上していたので南ほど天気が良かったが、週末が近づくと前線は南下との予報に変わって関東南沖合まで下がるとのことで、今度は北ほど天気が良くなるようだ。しかし日曜日はどこも雨の予報で1泊2日に計画を縮小し、最終的にはネットの天気予報で北のほうがまだマシと判断し、北アルプスを目指すことにした。
北アで未踏で藪が無い山といえば西穂の稜線と笠ヶ岳周辺だが、西穂は少し涼しくなってから行くことにして、先に笠に向かうことにした。笠ヶ岳は2001年7月下旬に登っているが緑ノ笠は未踏で、その後日本山名事典に小笠、クリヤノ頭が記載され、私にとっては都合3つの未踏峰がある。小笠は小屋の裏山なので問題なし、クリヤノ頭はDJFだけでなく藪屋ではないCVPも登っているので道があるのだろう。最大の難関は緑ノ笠で、ネットで検索しても登山記録は発見できないが、武内さん、DJFは無雪期に登っているので激藪というほどではないようだ。問題はいかに播隆平へ下るかで、2001年に笠ヶ岳に登った時の経験ではテント場付近からでは傾斜が急すぎて下るのは無理そうで、もっと手前の方が安全と考えた。現場に行って状況を見て判断するか。播隆平は緑一色の中に鹿道のような筋が縦横無尽に走り笹の海のように見えたが、降りてから緑ノ笠にとりつくまでも苦労するかもしれない。
ルートは緑ノ笠と小笠なら笠新道往復だが、クリヤノ頭があるのでクリヤ谷コースも歩かなくてはならない。笠新道を登りで使うか下りで使うか決めなければならないが、天候は金曜はバッチリ、土曜は下り坂らしいので天気がいい日に展望がいいコースを歩きたいので笠新道を登り、クリヤ谷を下ることにした。槍見温泉に下ってから駐車場まで登り返すのがイヤらしいが、タイミングがあえばバスを利用できるだろう。歩くと小1時間かかりそうだ。
久々に安房トンネルを抜けて平湯、新穂高と走り、スノーシェッド途中で深山荘の案内で左に曲がり、深山荘入口を通過して無料駐車場に入った。全体的には7割程度の車の入りで一番奥の区画以外なら空きがあるが、帰りのことを考えて手前の方に置いた。テントを張っている人もいて明日朝出発する登山者も結構いるらしい。関東では雨が降っていたがここまでくると星空だった。
新穂高温泉から見た笠ヶ岳の稜線 | 左俣林道入口のゲート |
翌朝、眠い目を擦って出発準備をしているうちにやっと体が目覚めてきた。空が明るくなってくると雲一つない青空が広がり、まるで梅雨明けしたような天気だ。展望の稜線歩きが楽しみだが、夏山ではお昼になるとガスが上がってくるのがほとんどなので、上に到着する時刻はガスって展望がないかもしれない。駐車場を出発してバス停を通過、左俣林道を上がっていくと笠ヶ岳山頂がクッキリ見えている。下方のとがったピークは緑ノ笠だろうか。さて、今日はあそこに登れるだろうか。穴毛谷右側のピークが穴毛槍だろうか。あそこはいつ登れるだろうか。
のんびり林道を歩いていると何人かに追い越されたが、今日は笠のテント場まで行けばいいので急ぐ必要はない。笠新道入口では水が出ていたので顔を洗い僅かに汗をかいた腕も洗ってから出発だ。水は合計1リットル持っているので補給する必要はない。今日の天気だと全部飲んでしまうかな? でもテント場の残雪は今年はいっぱいあるだろうからお泊まりでの水の心配はないだろう。林道を歩いていた登山者の半数以上が私と同じく笠新道に吸い込まれていった。笠ヶ岳は大人気だなぁ。でも緑ノ笠を目指しているのは私一人だろうなぁ。
笠新道入口 | 開けた場所も出てくる |
笠新道途中から見た槍穂 | 笠新道途中から見た焼岳、乗鞍 |
笠新道は樹林帯をジグザグに上がっていく。以前歩いたときは下りで結構急だったような記憶があるがそんなことはなく歩きやすい。樹林で日差しが遮られるので助かるが風がないので大汗をかかされる。気温20℃での登りだからしょうがない。1ヶ月前までは残雪期気分だったが今は真夏の山である。気温1桁なら気持ちよく登れるのだけど・・・・。笠新道は部分的に樹林が切れて視界が開けると正面には西穂のゴツゴツした稜線と、眼下には中崎尾根だ。森林限界に達していないが広く開けた斜面を登るようになると高山植物も多くなる。花が多いのはいいがこの天気では直射日光が厳しく、休憩しようにも日陰が無くて困る。立木を見つけてその影で休憩した。
杓子平に出ると稜線が見渡せる | 穴毛槍へと続く尾根。踏跡あり |
さらに登って尾根にはい上がると森林限界を突破、杓子平の一角に出た。ここが穴毛槍へと続く尾根だが、意外にも尾根を下る方向にはっきりした踏跡が付いているではないか。まさか穴毛槍まで続いているとは思えないが、どこまで続いているのだろうか。尾根上は灌木の藪なので踏跡の有無は大きな差だが、問題は途中のゲジゲジ帯で、岩屋さんでなくても下れるのかどうかだ。ここからでは尾根の頭から先は見えないので様子は皆目不明だ。今回は穴毛槍は計画に入れていないので遠くから尾根の様子を探って今後の計画立案に生かせればいい。
杓子平から見た笠ヶ岳、緑ノ笠 | 杓子平全景 |
抜戸岳へと登っていく | 抜戸岳山頂 |
抜戸岳から見た黒部五郎岳、薬師岳 | 抜戸岳から見た笠ヶ岳 |
杓子平は残雪が豊富で水の流れも聞こえていて、下から持ってくる水はもっと少なくて良かったようだ。先行者の姿も見えるが下ってくる人も同じくらいの人数か。小腹が減ったので少々休憩してパンをかじる。私と前後して登っている単独行の男性に追い越されるが、出発してまもなく追い越して快調に登っていく。青い空が夏を感じさせる。ほどなく抜戸岳稜線に到着、空身で山頂を往復しておく。前回来たときには雪のかけらもなかったが、今回は南側直下にまだ雪が残っていた。デポしたザックに戻ると追い越してきた男性に追いこされた。少し立ち話をしたが笠ヶ岳日帰りだそうで、西に見えるピークが笠ヶ岳だと教えると予想以上に遠くてガックリして、暗くなる前に下れるかちょっと心配していたが、まだお昼前なので充分大丈夫だろう。ここからは北ア奥地や黒部の展望が得られるので私は少し休憩し、男性は先に進んだ。少し雲が出ているが双六岳、三俣蓮華、黒部五郎、薬師岳などが見えており、雲の隙間から見えるギザギザしたピークは位置関係からすると水晶岳だろうか。徐々に雲が増えてきたが頭上は青空なので天候は大丈夫だろう。
抜戸岩 | 2710mピーク間鞍部。ここから播隆平へ下ることに |
緩やかに下って切通しのような抜戸岩をすり抜け、最初の2710mピークへと登る。この稜線は森林限界を超えているので歩いていて気持ちがよく、いかにも夏山らしい雰囲気だ。笠ヶ岳山荘の赤い屋根が徐々に大きくなってくるが、こちらはこのまま進むわけには行かない。緑ノ笠へ向かう最初の難関は播隆平へいかにして下るかだ。まず雪が付いているかどうかが問題で、今回は念のため6本爪アイゼンを持ってきたが、大量に残っている場合は12本爪+ピッケルが必要な傾斜だろう。いやらしいことに2710mピークを越えると稜線直下に残雪があるではないか! どこまで続いているのかビクビクしながら覗き込むと、幸いにして稜線直下しかなく、あとは播隆平に降りてからしか雪は出てこないようだ。ただ、谷沿いに雪が残ってそれを横断する可能性もあるのでアイゼンは持っていくことにした。ピッケルの代わりに今回はストックだ。
ガレ場を下る。急だが危ないところはない | 振り返るとこんな感じ |
ガスの中から緑ノ笠が姿を現す | もうすぐ播隆平 |
さあ、緑ノ笠へ向けて出発だ。地形図を見ると播隆平の北東側一帯が最も傾斜が緩そうで、現場で見てもどこも同じような傾斜でガレた斜面が続いているので、深い谷が無い場所を選んで下り始めた。一面がお花畑だったらどうしようと思っていたが、花もあるが植物が無いザレが多くて植生を痛める心配はなかったが、場所を選ばないと足場が悪くてずり落ちてしまう。砂礫地帯ではなくなるべく岩盤上を選んで歩くが、地形との兼ね合いもあって時々草つきを利用する。まもなく播隆平に降り立つというところで最後は3,4mの岩壁になって降りられず、右に迂回してハイマツの尾根を越えると今度は岩を伝わって降りることができた。やれやれ、これで一安心だ。帰りはこのルートに戻ってこないと登れないので地形を覚えておく。
雪が残る播隆平。藪は無かった | 池の畔で子連れの雷鳥発見 |
前回、播隆平を見下ろしたときは緑一色で鹿道のような筋が縦横無尽に走っていたような記憶があるが、今回は雪解け直後のようでまだ草は伸びておらず、枯れた草の上を自由に歩け藪は皆無だった。途中、小さな尾根を乗り越えるところがハイマツ帯だったので、最短距離で藪を突っ切るのはやめて右に迂回して草つきを歩いた。すると目の前には2つの池が登場、雪解け時期限定の池かもしれない。池のほとりにはライチョウの親子がおり、子供はもうヒヨコ大より大きくなって少しなら飛べるようになっていた。帰りに通ったときも同じようにライチョウがうろついていたので、ここが生活の場らしい。ほとんど人が来ない場所なので安全だろうな。
緑ノ笠取り付きはハイマツの海 | ハイマツを少し登って振り返る |
踏跡までたどり着くと楽になる | これくらいはっきりした踏跡 |
緑ノ笠は一面のハイマツに覆われているので、できるだけハイマツ漕ぎの距離が短いルートを探す必要があるが、山頂北側に尾根があるのでそれが第1候補だろうと北側から回り込むと、なんと上部にはハイマツの中に踏跡のような筋が見えるではないか。しかし下部は立ったハイマツの海で踏跡の形跡はなく、踏跡にたどり着くまではハイマツとの格闘が必要だった。ここまでは半ズボンで歩いてきたが、この格好でハイマツを歩いたら足が傷だらけになってしまうのでゴアのズボンを履いた。ついでにストックは邪魔なので近くの石に立てかけてデポしていく。ハイマツの薄そうなところを探したがどこも同じなので、踏跡が見えた稜線のやや東側を登り始めた。ハイマツは猛烈というほどではなく、高さは胸くらいなので手で押し分けて登ることができた。数分でハイマツが寝てきて踏跡に到着、本当に踏跡だったのは驚いた。これだけ明瞭なのだから、緑ノ笠に登る人は少なからず存在するようだ。
緑ノ笠向けて登る | 緑ノ笠山頂 |
緑ノ笠山頂南側にケルンがあった | 緑ノ笠山頂付近から見た播隆平 |
踏跡を辿ってなだらかに登ると最高地点で、ハイマツの海かと思ったら地面が出ていて山頂っぽい雰囲気だった。ただし人工物はない。踏跡はまだ南に伸びているので、まさか第4尾根を下っていくのかと思って追ってみたら、わずかに行って下り始めたところにケルンがあって行き止まりだった。まさかこんなところにケルンがあるとは。踏跡はやっぱり人間のものだった。目の前には穴毛槍の尾根が見えるが、杓子平からの最初の下りはここから見る限りは岩壁帯で、ザイルと岩の技術無しでは下れそうになかった。ここから見えない南側に安全なルートが無い限りは、私の腕前では杓子平からの往復は不可能そうだ。
播隆平から稜線を見上げる | 雪渓右側の枯れた谷を登った |
復路で踏跡を正確に追ったが、やはりハイマツが立った地帯は踏跡は薄く、ハイマツの下に隠れてから消えてしまい、最後はハイマツを漕いで草付に出た。ガレ場の上りは下ってきた場所よりも少し手前の枯れた谷を登ったが、特に危険箇所も無くすんなり稜線に到達できた。やれやれ、これで今回の最大の目的地を制覇できたので、残りはおまけだな。
デポした荷物をパッキングしていると笠ヶ岳日帰りの男性が下ってきた。まだ午後1時なので明るいうちに駐車場までたどり着けるだろう。次は槍とか奥穂日帰りでもどうぞと薦めておいた。
テント場水源の雪渓末端 | 豊富な水が流れていた |
水場から見た播隆平 | 水場から見た緑ノ笠 |
水場から見た穴毛槍へと至る尾根 | 水場から見た穴毛槍 |
テント場から見た穂高 | 笠ヶ岳のテント場 |
テント場から見た水晶岳〜北ノ俣岳 | |
テント場から見た双六岳周辺 |
もうテント場はすぐそこなので急ぐ必要も無く、最後の傾斜を登ると広いテント場に到着、まだ数張しかないが今日は金曜日だから数はあまり増えないだろう。どこでも好きな場所に張れるが、念のために風除けの石が積まれた場所にしておく。今はほぼ無風だが、夜中に風が出ないとも限らない。水場は目の前の雪田末端にあり、冷たい雪解け水が豊富に流れ出していて残雪期のようにガスで溶かす必要がないのはありがたい。これだけの水量なら24時間営業かな。小さな雪田だと気温が上がる日中しか水が流れ出さないことが多い。水場で濡れタオルで体をぬぐって水浴び代わりとすれば、汗でべたついた肌がすっきりして安眠に貢献する。
小屋の裏側の小山が小笠 | 小笠山頂。ケルンがでかい。背景は穂高 |
暗くなるまで時間があるし、ガスが上がってきて笠ヶ岳に登っても展望を楽しめないのでしばらくテントで昼寝、夕方が迫ってガスが薄くなったタイミングで小笠と笠を目指した。小笠は笠ヶ岳山荘のすぐ裏にある岩が積み重なった築山のようなピークで、八ヶ岳の高見石そっくりであった。自然に積み重なったというより人工的に積み上げたのではないかと疑いたくなる。東側はハイマツも何も無いので適当に登ると巨大なケルンが林立する山頂に到着、こんなピークでも登る人がいるんだなぁ。ま、小屋の裏山だから暇つぶしにはいいのかもしれないが。ガスが時々かかるが日中よりもその頻度は低く、もう少し待てばガスが完全に晴れそうだ。
笠ヶ岳山頂を目指す | 三角点峰 |
笠ヶ岳山頂 | 山頂標識。背景は槍〜奥穂 |
少し待てば展望が期待できそうなので笠ヶ岳に向かう。小屋はもう夕飯が終わったころだろうか、外でビール片手に語り合う人の姿があった。ポツポツと下ってくる人もおり、後ろを見るとテント場から登ってくるパーティーの姿もあった。崩れた石が積み重なった斜面が続くので足跡は残らず、慣れないと登山道がどこにあるのか判別しにくいが、逆にどこでも歩けるので安全な場所を歩けば問題なかろう。ジグザグに登りきると祠がある肩に到着、三角点は南に出っ張ったところにあるのでそちらに向かい、久しぶりの笠ヶ岳山頂に立った。
笠ヶ岳から見た播隆平、緑ノ笠 | 笠ヶ岳から見たクリヤ谷コースの稜線 |
笠ヶ岳から見た槍穂 |
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笠ヶ岳から見た北ア奥地 |
笠ヶ岳からの展望は言うまでもなく遮るもののない大展望で、東には槍から奥穂、西穂のごつごつした稜線が連なり、焼岳、白谷山、十国山、そして乗鞍へと続く。乗鞍の右には木曾御嶽。乗鞍の左は鎌ヶ岳付近の山並みで、左は小鉢盛山と鉢盛山だ。霞沢岳と六百山の左には大型連休に登った小嵩沢山。北半分に目を移すと北ア奥地の山々だ。北鎌尾根の左には燕岳から北燕岳、東川岳、餓鬼岳、そして唐沢岳。双六岳と樅沢岳の間には南真砂岳が見えており、双六岳の上には白い野口五郎岳。その左のごつごつしたピークが水晶岳でもっと左には赤い色の赤牛岳。さらに左には立山と剣、大日岳。手前には鷲羽岳が見えている。双六のやや左が三俣蓮華岳で、西に眼を向けると黒部五郎岳、北俣岳、右に戻って薬師岳と続いて立山へとつながる。西には白山の山並みも。飛騨の低い山々が連なるが、いったいどれがどの山なのか全く分からないのが残念だ。どれくらい遠くまで見えているのだろうか。残念ながら南アルプスや中央アルプス、八ヶ岳は雲で見えなかったが、これだけ楽しめれば文句は無い。
夕暮れのテント場 | 日の出前のテント場 |
午後6時40分近くに下山開始、下りは速くテント場まで10分もかからなかった。ラジオで天気予報を聞くと富山は曇り時々雨、岐阜飛騨は曇り時々晴れ、長野も曇り時々晴れの予報だが午後はにわか雨とのこと。今は風もなく雲ひとつ無い快晴だが、これから前線が南下し北から天候が悪化するので、明日の出発は早いほうがよさそうだ。酒を飲んで寝たが、夏用ダウンシュラフ+ダウンジャケットでちょうどいい暖かさだった。ダウンジャケットにするかフリースにするか悩んだがジャケットを持ってきてよかった。
夜中は月明かりでテント内も明るかったが、寝坊して4時前に起床してテントから顔を出すと星が見えない曇り空だった。まだ笠山頂は雲の下なので雨の心配はなさそうだが、昨日夕方のような遠望は期待できないだろう。飯を食ってテントを畳んで5時前に出発、歩きだしてすぐに槍穂稜線の向こうから朝日が登ってきて山肌をオレンジ色に照らし出したがすぐに雲の中に入ってしまった。雲は徐々に低くなってきて、最初は見えていた槍が雲に入り、やがて奥穂も雲に沈んだ。こりゃ思ったよりも天候の崩れが早いかも。まあ、私は下山するだけなので途中で雨に降られて濡れても大した問題はないからマイペースで歩けばいいか。
朝焼けに照らされて笠ヶ岳に向かう | クリヤ谷コースに足を踏み入れる |
笠ヶ岳が高くなっていく | このピークは西を巻く |
昨日に続いて2度目の笠ヶ岳山頂に立ち、少し写真を撮って下山開始だ。クリヤ谷コースは歩く人は少ないらしいがエアリアマップの赤実線だから問題はなかろう。ガラガラの石のコースをガンガン下っていくと前方に3人ほどの登山者の姿が眼に入った。ほう、私の他にもここを歩く人がいるんだ。小屋泊まりの人だろうから、小屋で止められなかったということはこのコースは問題ないはずで一安心。時々笠を振り返りデジカメで写真撮影しながら下っていく。先行者も写真を撮りながらでペースが上がらないのでいつのまにか私が先頭になった。左手遥か下には穴毛槍のとがった姿が見えているが、杓子平からの下りは光線の当たり方が悪くてはっきりと見えないが、やっぱり崖っぽく見えるから下から登るしかなさそうだ。でも下からも危険箇所があるかなぁ。来年以降の課題だが、たぶんDJFが先に登ってHPに掲載してくれるだろう。
雲の隙間から日が差す。背景は焼岳 | 穴毛槍への尾根の危険箇所 |
稜線を大きく下ると稜線の西側を巻くようになり、森林限界を下回って低い樹林と笹になった。笠新道と違い体に触れる草木が多く、半ズボンで歩いていると足が笹に触れて傷だらけになってしまうのでスパッツを付けた。それ以前に朝露で笹が濡れているので防水目的の方が大きかったが。私が下山トップなので、これじゃ露払い役だなぁ。このまま西を巻き続けるが、クリヤノ頭は連なったピーク群の南端なので、大きく下り始めるところで稜線に登山道が戻らない場合は藪漕ぎで山頂に登らなければならないが、あまり藪山に登らないCVP氏が登っているので踏跡くらいあるのかもしれない。そういえば今回は事前にネットで調査してこなかったので、クリヤノ頭に登ってHPに記事を掲載しているDJFとCVPの記事を読み直してこなかったから詳細は覚えていない。でもたぶん登れるだろう。エアリアマップでは登山道は西側を巻いている。
雷鳥岩。登山道西側に立っている | 雷鳥岩を過ぎるとクリヤノ頭が姿を現す |
一連のピークを巻き終わって右手にでかい岩が立っていたが、これが雷鳥岩だろうか。いったん下った先にピークがあり、GPSのお告げによるとこれがクリヤノ頭だ。やはり登山道は西側を巻いているようで、山肌の緑色絨毯はハイマツだなぁ。ただ、てっぺんまでハイマツが続くわけではなく下の方だけがハイマツで、途中から岩が出てくると草付きの様に見える。もし踏跡が見つからない場合はできるだけハイマツが短いところを登るしかない。
ここから藪に突入 |
私がとりついた所より南側がハイマツが低かった(下りに撮影) |
岩直下から下を見る。短距離だが藪 | 岩を左から巻くと森林限界 |
山頂のケルンが見える | ケルンの棒にはDJFのリボン |
鞍部から登り返して西側を巻く道に入り踏跡が無いか探したが見当たらず、南に回りこんで岩稜帯を下り始めてしまい、クリヤノ頭へ登る道がないことが確定、ザックをデポして登山道が山頂西側に回りこむところまで戻り、藪が薄そうなところを探すがどこもハイマツかシラビソ低木で強固そうな藪だ。まだハイマツの方がマシだろうと大きな岩の真下から踏み込むとハイマツに積もった埃が花粉のように舞い上がりマスクが欲しいくらいだ。今は乾いているからいいが朝露で濡れていたら志賀高原の池ノ塔山みたいに真っ黒になってしまう。逆目のハイマツを押し分けで枝に足を乗せてノロノロ進むと今度はシラビソ低木帯だが、こちらは高さ1mくらいは枝がなく、しゃがめば障害物がなく楽に進めた。すぐに岩に突き当たり、先が見えないがまず右に回り込んでから左に迂回すると上部に出ることができた。ここまで来ると樹林が切れて草付きと寝たハイマツになり歩きやすくなった。何となくあるような無いような踏跡を辿って最高地点に到達すると、意外にもケルンが積んであり、てっぺんには枯れ枝が刺してあった。そしてその枝にはDJFのピンクリボンが。昨年10月の日付なのでまだ古めかしさはない。目の前には穴毛槍があるが、逆光で詳細が見えないのが残念だ。
帰りは岩の下からはハイマツの背丈が低いところを辿ってまっすぐ西に下ると、最後はツガの低木を掻き分けて登山道に出た。登山道から見ると一番厄介な藪に見えるのだが、このツガを乗り越えてしまえばその後は楽だったのだが、そんなことは登りで分かるわけはないのでしょうがない。
デポしたザックを背負って下山開始、今度は尾根を離れてクリヤ谷へと下っていく。ここも足に触れる笹があるので朝露で濡れるし足が切れるのでスパッツが役立った。小さな沢で土石流が発生したようで、沢沿いの登山道に土砂が堆積して倒木もあったが、目印の赤テープがぶら下がっているのでルートを見失うことはなかった。今日は雲って日差しがなく気温もまださほど上がっていないので標高が下がってもそれほど暑くないのは大助かりだ。でも冬と違ってTシャツ半ズボンで歩いても汗が出てくるが。ずっと沢に接近して登山道があるわけではないが、基本的には沢沿いのコースなので枝沢を渡るところで水が得られ、汗で濡れた顔や腕を洗ってすっきりできる。冬と違って濡れタオルが大いに役立った。ポツポツと登ってくる人とすれ違うようになり、15,6人の大集団もいてそれなりに歩く人はいるようだ。
錫杖岳の大岩壁 | 錫杖岳への踏跡入口 |
やがて右手に巨大な岩の壁が見えるようになるが、これが錫杖岳らしい。とても登れそうにないような様相だが、登るルートがあるんだなぁ。滝が連続する沢とクリヤ谷が合流するところに赤いテントが張られているのが見えるが、岩屋さんのベースだろうか。その岩屋さんか分からないが、沢沿いに赤いザックが見えたので登っている人がいるようだ。私が挑戦するのは今年の秋だな。ここの入口は明瞭な踏跡があるので分かるだろう。ここを過ぎると今まで以上に登山道が立派になりスパッツは不要になった。
クリヤ谷コース登山口 | 新穂高温泉無料駐車場は路肩まで満杯 |
まだまだ下りは続き、ポツリポツリと登りの人とすれ違う。ダラダラした緩やかな登山道でなかなか標高が下がらないが、ようやく最後に標高を下げるようになり樹林を通して県道と民家が見えるようになった。人家というか温泉旅館の裏側で林道に飛び出して登山道が終わった。ここには電話機が無い電話ボックスが立っているのが目印だ。駐車スペースは無く、県道に向かうと道幅が広いところがあるのでここに駐車するのだろう。舗装道路を歩いて県道に出て橋を渡ると槍見温泉バス停で、時刻表を見るとあと7,8分でやってくるというタイミングの良さ。今の格好では汗臭いので自販機の裏側で急いで濡れタオルで体を拭いて着替えてパッキングを済ませたらバスがやってきた。かなり座席が埋まっているのには驚いた。バス停2つ分、乗車時間はわずか数分だったが、大ザックを背負って坂を上ったら小一時間かかっただろう。\160の価値はあった。
深山荘バス停で降り、無料駐車場に向かうと取り付け道路の路肩にもびっしりと車が駐車してあり大盛況だ。さすが土曜日。駐車場の整理員と思われる人が車で待機しており、やってきた車を別の場所に誘導するのだろうか。曇り空だが荷物整理をする間にテントを虫干し、30分ほどかけて着替えと車内整理をし、テントをたたんで出発。駐車場整理員に1台分のスペースが空いたことを伝えて駐車場を出た。走り出してすぐに雨が落ち始め、絶好のタイミングで下山できた。帰りの温泉は平湯の「ひらゆの森」。いつの間にか改装されて真新しくなっていた。
所要時間
7/27
駐車場−0:11−新穂高温泉バス停−0:11−左俣林道ゲート−0:52−笠新道−1:40−2100mで休憩−1:04−4杓子平−0:19−2500mで休憩−0:42−抜戸岳分岐−0:05−抜戸岳−0:03−笠新道(休憩)−0:40−2710mピーク間鞍部11:35−0:27−緑ノ笠(休憩)−0:30−2710mピーク間鞍部−0:16−テント場
7/28
テント場−0:23−笠ヶ岳−1:10−クリヤノ頭直下−0:07−クリヤノ頭(休憩)−0:04−登山道−1:27−錫杖岳分岐−0:16−休憩−0:28−登山口−0:06−槍見温泉バス停