北ア南部 小嵩沢山、ジャンクションピーク 2007年4月29〜30日
小嵩沢山は長年とは言わないが数年間の懸案の山であった。場所は霞沢岳東のジャンクションピークから南に派生し東に曲がる尾根上で、尾根末端は島々集落である。霞沢岳登山道から遠く離れた枝尾根上にあるので、よほどこだわりを持つ人間以外が登る理由を見つけるのは難しい山だろうから、その名前を知っている人は数少なかろう。ここ数ヶ月はやっていないが、以前ネットで検索をかけても登山記録は1件もヒットしない堂々の武内級の山である。その武内さんは登っているとの話だがどんなコースで登ったのかは私は知らない。また、武内さんの後継者であるDJFは武内さんより先に登ったようで、ジャンクションピークから往復して山頂にはピンクリボンをくくりつけたが武内さんが登ったときには結び目しか残っていなかったそうだ。
ほぼ間違いなく笹に覆われた尾根であろうから常識的には残雪期にジャンクションピークから往復となる。しかし、以前、夏場に霞沢岳に登ったときにジャンクションピークの登りは夏道は北側を巻いていたのだが稜線上は猛烈な傾斜だったのを良く覚えており、残雪期は夏道は埋もれて急斜面となるため尾根を登らなくてはならないが、とても私に登れそうな傾斜ではなかった。地形図を見ても今まで登った中では一番傾斜がありそうな白馬大雪渓よりも傾斜があり、私の度胸で登れるとは思えなかったが、大型連休は登る人がいるだろうから足跡がついているのは間違いない。足跡の有無は精神的に全く違うのは昨年の経験で分かっているので、先人の足跡があればどうにか登れるかもしれない。そう考えて連休中にアタックすることにした。
問題は行程であるが、いくら先人の足跡があってもくそ重たい冬用幕営フル装備で急傾斜を上り下りできる自信はなく、徳本峠で幕営して軽装で小嵩沢山まで往復するのが安全策だろう。その場合、2日目で上高地まで下山できるか微妙な情勢で、念のため2泊を考えて食料調達を行った。ただ、天気予報は5/1は雨で、どうにか2日で降りてきたいところだ。そうなると2日目の負担を減らすために初日に急傾斜を突破してジャンクションピークかその先まで進んでおきたいところだがその自信はない。結局、2泊の予定として現場に行って全装備を背負って上り下りできそうか状況判断することにした。
木曽御嶽で連休第1弾の山行を過ごし、悪天のため1日松本郊外で休養して山行記録を書き上げ、竜島温泉せせらぎの湯で温泉に入ってから沢渡を目指した。さすがに夏山と違って駐車場の大半は空いており、沢渡上の市営駐車場の一角に車を置いて寝た。バス停の看板には4:50くらいから10〜15分毎に臨時バスが出る旨の張り紙があり、意外に早くから動けるようである。しかし、予定では初日は徳本峠まででそれ以上はおまけなので無理して早出する必要はなく、朝飯を食っている間に始発バスが出て行った。色々準備してバスに乗り込み、上高地バスターミナルで入山届けを書いて出発したのは6時ちょっと過ぎだった。何故か入山届けのコースには霞沢岳のルートが無く、当たり前だが小嵩沢山は山名表記はない。しょうがないので小嵩沢山を地図に書き込んでおいたが、こんな入山届けは初めてではなかろうか。しかし、霞沢岳の扱いがこれほど小さいとは思わなかった。まさか連休最初だと誰も入山者がいなくて足跡がない!なんてことはないだろうなぁと心配になるほどだった。夏山と違って登山者の姿はまだ多くないが、たぶん大半は槍穂だろう。どれくらい徳本峠に行くのかなぁ。
河童橋と焼岳 | 河童橋付近から見た奥穂 |
こんな時間でも河童橋は人で賑わっており周囲の商店も営業しているのには驚いた。カメラを構える人が多く、梓川上流方向には西穂〜奥穂〜明神の真っ白な峰が屏風のように連なり絵になる風景だ。昨日の松本での雨が3000mでは全部雪になり、新雪が張り付いたばかりなのだろうから輝きはすばらしい。ただ、明日になればかなり岩が出てしまうだろうな。木梨平のキャンプ場はポツポツとテントがあるが、今の時間で気温は−6℃だから寒いなぁ。明神を通過して徳本峠分岐に入ると一気に人の姿が見えなくなる。この辺は昨日は雨と雪の境界だったようでうっすらと積もった雪には1人の足跡が見て取れた。これは今日付いた足跡に違いなく、先行者がいることが確実になり、もしかしたらジャンクションピークへの登りの足跡も期待できそうだ。
林道終点から登山道に入る | 足跡多数で安心する |
谷をまっすぐ登る | 振り返ると明神岳から西穂 |
峠に向けてトラバース | 徳本峠小屋 |
林道終点から樹林の登山道になると一気に積雪が増えて登山者の足跡がくっきり残るようになり、少なくとも数人の足跡があった。登るに従って積雪量が増えて古い足跡も見られるようになったが、予想以上にたくさんの人が入っているようだ。これならジャンクションピークのトレールはまず確実だろう。まさか徳本峠から大滝槍見台方面に行くのが主流とは思えない。しばらくは谷をまっすぐ登っていくがトレールがあるのでアイゼンも不要でステップを辿ればいいのでラッセルもなく楽でいい。振り向けば明神岳がすばらしい。あれに登れるようになるのはいつのことやら。岩の経験が必須であろう。後ろから何人も上がってくる姿が見え、今日のお客もそこそこいるようだ。やがてルートは左にトラバースして斜めに上がっていくがこれもステップが切れているのでアイゼンもピッケルも要らない。やがて徳本峠に到着、テントは張った跡はあるが今は張ってあるテントは無い。谷登りの途中で休憩したのでここは素通りしてまずはジャンクションピークの登りの様子をうかがいに行くことにした。
霞沢岳へのトレールも濃い | 鞍部から見たジャンクションピーク |
心配していた霞沢岳方面のトレールは、峠からの取り付き点が悪かったのか最初は1人だけの足跡だったがすぐに太いトレールに合流し心強い。鞍部から登りにかかるところでアイゼン装着を兼ねて休憩、なにせ急傾斜なので途中で休憩はできないだろうから。地形図を見ると核心部は標高差で100mほどで、それ以外はどうにかなりそうだ。下から見上げると何でもない傾斜に見えるが、見える範囲の最上部が問題の区間だろう。降りてきた人がいるので様子を聞いてみると最初の人はきついとは言ったが危険とは言わず、2人目のおじいさんは毎年登っているとのことだが全然問題なしとの回答だった。トレールもバッチリついているので行ってみればとのことで意を強くして出発できた。
傾斜はきついが樹林帯の広い尾根を登る | ちょっと地面が露出している部分もある |
ここは一直線に登る | ここまで来ると普通の傾斜 |
最初は大した傾斜ではなく、細い灌木が生えた尾根上を登っていく。尾根南側は雪庇が張り出し、その根元にはクレバスが隠れているので雪が半分消えた北側の樹林の中を登る。こういう場所はいつもの藪山と変わりがないので安心して歩ける。やがて猛烈な傾斜になるが、ここは直進せず一度右にトラバースして少し傾斜が緩んだ場所を上がっている。ここも樹林帯で裸の場所ではなく、もし滑っても遙か下まで落ちる心配は少なく安心して歩けた。その後も傾斜は急でも割と密な樹林中を登っていくのでハラハラする場面は皆無で拍子抜けしてしまった。結局、核心部の100mはなんと言うことなく通過、案ずるより産むが易しだった。ここさえ抜けてしまえばもう心配な場所はなく、ただ単にルートが長く体力と時間がかかるだけのルートなので気楽に歩けばいい。
最後は緩やかに登る | ジャンクションピーク山頂 |
ジャンクションピークから見た小嵩沢山 |
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ジャンクションピークから見た八ヶ岳 |
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ジャンクションピークから見た南アルプス |
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ジャンクションピークから見た中央アルプス |
ジャンクションピークでアイゼンからワカンに履き替え、南側の視界が開けて南アまで見えたのでデジカメで写真を撮影しようと下ったらクレバスに落ちてしまい腰まで雪に埋まった。ここはそれほど切り立った場所ではないので雪庇ができているとは思わなかったのが原因で、脱出にはちょっと苦労したが脱出そのものはいいのだが、手に持っていたデジカメのレンズに雪が付着してしまい、その水分でレンズが曇ってしまった。しょうがないので休憩時間を引き延ばして日向にデジカメを置いて曇りが取れるまで待った。できるだけ温度が上がるよう防水用の黒い手袋の上に置いたが、効果のほどは不明である。撮影した画像を見てボケなくなったのを確認して出発した。なお、南アは北の甲斐駒から白峰三山、塩見岳、荒川岳、赤石岳、そして聖岳か上河内岳まで見えていた。手前には鉢盛山と小鉢盛山。八ヶ岳は北から南までバッチリ見える。
トレールを外れて稜線上を南下する | でもまたトレールが出てきた! |
ここから先は霞沢岳に向かう人とルートが異なるので足跡がないはずだが、少しの間は「供用区間」らしく多数の足跡が尾根上を南に向かっている。地形図を見るとたしかにちょっとの間は南に向かってから西に下っているようだ。足跡が尾根から外れたところでこちらは尾根を直進する。昨日の雪は深いところで20cmくらいあり、今まではトレースのおかげで楽ができたがこれからはラッセルが待っている。こういう時のためにワカンの出番である。持ってきてよかったぁ。歩いた感じでは新雪の下は締まった堅雪で沈むことはなく、昨日降雪がなければかなり楽に歩けたはずだ。ワカンを付けるとアイゼンの時より潜る深さは半減し、体力を大いにセーブできた。残雪期に霞沢岳に登るような人は私のような藪山派ではなくアルピニストだろうからワカンよりもアイゼンがお供だと思うが、ワカンだって捨てたものではない。ちなみに今回の山行でワカンを使っていたりザックにくくりつけた人の姿は見なかった。
尾根は左が切れ落ちているようでこれから向かう小嵩沢山がよく見える。まだお昼前なので頑張れば今日中に山頂に立てると思うが、なんせこの重い荷物まで全部持っていくとなると、帰りもこれを担がなければならないから適度なところで切り上げた方がいいだろう。この超が付くほどの上天気なので少なくとも午後2時くらいまでは動くことにしよう。
これくらいのトレール | 目印が1カ所だけあった |
三角点峰向けて登る | 2384m三角点峰 |
踏跡無き尾根を直進すると左から多数の踏み跡が出てきた。まだ霞沢岳登山道が一緒なのだろうか。そのまま尾根を南下するが足跡が消える気配が無く、少なくとも2名以上の足跡に違いない。いくらなんでも霞沢岳にしては行きすぎで、ルートを間違えたか、私と同じが目的地なのかのどちらかだろう。でもまさか同一日に小嵩沢山に別行動の2人以上が登るなんてありうるのだろうか? その確率は限りなくゼロに近いだろう。戻った方向の足跡もあるのでたぶん間違えたのだろうか? 真意がどうであるのか分からないが、ワカンを履いていてもトレースがあるとずいぶん歩くのが楽なので非常に助かった。そのうちトレースは稜線を離れて右に巻いてしまったので地形図を確認して巻いても意味がないことを確認してからフカフカの雪が積もった稜線を直進した。ところがそろそろ2384m三角点峰に到着するというところで右からトレースが合流、たぶんさっきのものだろう。再び歩きやすくなり三角点峰に到着、ピークが2つあるが東側の方が僅かに高いが三角点の痕跡は皆無だ。例のトレースは小嵩沢山には向かわず南に向かっているので行き先は小嵩沢山ではないことだけははっきりした。やっぱ霞沢岳の間違いだったのかなぁ。ラッセル無しで行けるかなとの甘い期待はやっぱり無理だった。こんな山に登るのは武内さんやDJF級しかいないからなぁ。
ジャンクションピークと穂高 | 2350mピークを下る |
鞍部付近から2重山稜が始まる | 緩んだ新雪が重い |
まだ時間も体力も余裕があるのでもう少し先に行ってみよう。少し下ると鞍部で付近は2重山稜となっていて、どう歩けばいいのか分からないので南側に乗り移った。その向こうもこれまた2重山稜で今度は北側が正解らしく傾斜が急な斜面を緩んだ雪にズルズル滑りながら稜線に這い上がった。この後も山頂まで2重山稜が頻出、いったいこの尾根はどうなっているのだろうか? まあ、中央の谷は浅いので乗り移るのは簡単であるが。
進路を僅かに左に振ってはっきりした尾根を下っていく。そういえば今回のコースは非常に顕著な尾根で目印の必要は最初からあまり考えていなかったが、これだけ新雪が積もっていたらワカンの沈んだ後がくっきり残るのでたとえ複雑な地形でも目印は不要だ。これは目印をくくりつける時間が不要なので時間が節約できてうれしいことだ。そうそう、残雪期で同じコースを往復する場合、下りの場所では歩幅を狭くして足跡を付けると帰りの登りで歩幅があってラッセルしなくていいのでとても楽になるのは覚えておいた方がいい。それともこれは常識? 単独行なので何が世の中の常識なのか全然分からない。
雪が緩んで足を取られることもあるがガンガン下り、2236m肩でふと思いついた。もうアイゼンは不要ではないか。よく考えれば地形図を見る限りではジャンクションピークから先は緩やかな地形が続くのでアイゼンを使う可能性は低く、ジャンクションピークでデポすれば良かった!! 今頃気づいても遅いのだが、このまま無駄に背負うのはしゃくなのでここで置いていくことにした。これだけはっきりした地形なので見落とす可能性は非常に低いが、万が一を考えてGPSに緯度経度を登録し、木に赤テープを巻いた。これが今回つけた唯一の目印となった。
最低鞍部向けて下る | 最低鞍部 |
最低鞍部付近から見た2350m峰 | 最低鞍部から登りにかかる |
また2重山稜出現 | 2284m峰で幕営体制、その先はアタック |
そろそろ時刻は午後2時で、暖かいうちに幕営体制に入って水作りを始めた方が燃料節約のためにいいだろう。これだけの深さで新雪があれば今回はさぞかしきれいな水が得られるだろうと期待する。鞍部から登って最初に平地が出てくるのは2284m峰で、ここも2重山稜の複雑な地形だが木の隙間があって日当たりができるだけ良さそうな場所を選んでテントを設営することにした。稜線より少し谷側に下がったところだし樹林が深いので強風の心配はなさそうだ。テントを張って水の容器に日光で柔らかくなった雪を詰めて温度が高いテント内に入れる。これで多少はガスを節約できる。本当はもっと日当たりがいいところならビニール袋か何かに入れて日に当てておけばかなり水ができるのだがこの樹林では仕方がない。
このままここで休んでいてもいいのだが、まだ暗くなるなでに時間があるので、空身で小高沢山まで往復してしまおう。地形図を見た直感的距離ではおそらく片道1時間といったところだろう。ここから先は荷物が軽いので体力の消耗も少ないだろうし、もうアップダウンはあまりないので体力的にきついが充分可能だろう。この天気ではゴアは不要なので防寒具を持ってアイゼンが無いので念のためピッケルを持って出発した。
最初は密林状態 | その先で樹林が開ける |
展望が開けると槍穂がド迫力! |
この先も相変わらず気温が上がって湿った雪のラッセルが続く。沈み込みが浅いところでは1,2cmだが日当たりが悪く沈むところでは15cmくらいボコっと潜り体力を搾り取られる。ワカンのおかげかほとんど踏み抜くことはないが、埋もれた木があってまれに踏み抜くと脱出に苦労する。ほとんどは深いシラビソ樹林が続くが幕営したすぐ先と小嵩沢山直下の2カ所くらいで樹林が切れて視界が開け、明神、前穂から槍、赤岩、大天井、そして常念、蝶と続く山並みが連なる。この尾根から見える盟主はなんと言っても前穂で知らない人は槍ヶ岳と間違えそうだ。その槍も見えているが遠いので小さく迫力を感じられない。
なおもなだらかな尾根を歩く | 2322m峰 |
2340mピークへの登り | 2340mピーク |
最後の2重山稜。開けている | 最後の2重山稜から見た木曽御嶽 |
最後の2重山稜から見た槍穂 | 最後の2重山稜から見た赤沢山〜大天井岳 |
2重山稜を右に左に移りながら緩やかなアップダウンを繰り返し、山頂手前の2340mピークでぐっと高度を上げる。ピーク付近はなだらかなので僅かに北を巻いた。もうここまで来れば山頂は目の前だが樹林が深くて視界はなく、GPSの距離だけが正確な情報を教えてくれる。テントから山頂まで1.4kmくらいあったのがもう200mを切っている。もう少しである。
最後の登り | 小嵩沢山山頂 |
DJFのピンクリボン残骸 |
やっと2重山稜から解放されてはっきりした尾根を登り切ったところが残雪に覆われた小嵩沢山山頂だった。深い深い樹林で何も見えないと予想していたが、三角点の測量か何かで伐採したらしくシラビソではなくやや細いダケカンバが生え、東側はそこそこ開けて松本市街地を見ることができた。その手前は懐かしい黒沢山であるが、真っ黒に見えてもまだ多少残雪はあるだろうか。まさかあれから1年で小嵩沢山に登れるとは我ながら感心である。山頂標識の類は無いがピンクリボンの結び目だけ残っていた。間違いなくDJFのリボンだろうが、強い季節風でちぎれてしまったらしい。私の落書きを追加できないのが残念なので久しぶりに自分の赤テープを巻いてきた。ここは武内さんも登っているはずなので、私の知り合いでこの後登りそうな人は皆無、このテープを目にする人が登場するのはいつの日のことだろうか。ただ、今回の山行で残雪期なら比較的楽に登れることが分かったので、藪山に興味がある人はこの記事を参考にして挑戦してみるのもいいだろう。たぶん年間に登る人は十指に満たないだろうから(そもそも小嵩沢山の名を知る人はほとんどいないが)達成感も格別である。
山頂付近のみ少し風があるので持ってきた防寒着をめいっぱい着込んで休憩し、山頂を辞した。帰りはほぼ下りになるので行きより楽だが、長時間雪の上を歩いて体力を消耗しているので僅かな登りでもきつい。この頃は頭の回転も悪くなっていたようで帰りのことを考えて行きで歩幅を調整して歩かなかったので帰りの登りも半分ラッセルだった。這々の体でテントに戻り本日の行動は終了。1日にして小嵩沢山まで到達できたのだから上出来だろう。これで明日の早い時間には下山できるので下界で虫干しできる。
テント内で水作りをしたが予想以上にゴミが多く濁っていたのには驚いた。あんなに真っ白な新雪なのに不思議だ。しょうがないのでいつもより長時間水を放置して上澄みだけ使用した。帰ったらポリタンを洗わないとなぁ。ガス節約のため暖房を兼ねたろうそくでゆっくりと晩酌用のお湯を沸かしたが、ろうそく2本でコップ1杯の冷水が20分ほどで沸騰した。ちょうど1杯のお湯割りを飲み始める頃に火に掛けると、飲み終わる頃にお湯が沸くのでちょうど良く、ガスを節約できてちょうどいい。それに照明にも使えてヘッドライトと違って電池の消耗がなく、残量は一目で分かり、使った分だけ軽くなるというか、使い切ればゴミも出ない優れものである。酒を飲み終わって寝袋を2重にして寝たが、この日は思ったより気温が下がらず明け方でもテント内温度が0℃で、これでは2重寝袋では暑くて夜中に起きてしまった。あーあ、こんな気温になるのが分かっていれば寝袋1個荷物を減らせたのになぁ。ちなみに1つの寝袋は厳冬期用、もう1つはダウンの3シーズン用だ。
最低鞍部から登り返す | 今日も快晴! 空の青さが深い! |
翌朝、3時45分に起床してのんびり朝食を取って撤収、5時過ぎに出発。気温が0度では思ったよりも雪の締まりはなく、踏み抜きはなくてもラッセルは待っている。まあ、日当たりが良かった場所だけはよく締まっていたが、なんせこの樹林だからそんな場所はほとんど無いのが残念だ。最低鞍部への下りは比較的開けた尾根なので雪が締まっていたが下りでこれでもメリットはねぇ。登りにかかって肩に到達すると来たときと同じ格好でアイゼンがデポしたままだった。これで荷物が増える、いや、正確には元に戻るのか。なおも登り続けて三角点峰通過、昨日から足跡は増えていないらしい。僅かに下り緩やかに登っていくとジャンクションピーク。私はずっと尾根直上を歩いてきたので分からなかったが、三角点峰まで続いていた足跡の主が稜線を巻いて歩いている区間のどこかで霞沢岳へと西に下るトレースが分岐しているようだ。霞沢岳へと向かう単独行の人がやってきたので、間違ってこの尾根を直進しないように注意しておいた。まあ、霞沢岳へのトレールの方が濃いだろうから大丈夫とは思うが。
林道の雪もすっかり消えていた | 小梨平キャンプ場 |
ジャンクションピークでアイゼンに履き替え急傾斜区間を下るが、登りで楽勝だったので下りもステップを利用すれば簡単だった。ほとんど前向きで下ることができ、短い距離で2カ所だけバックで下った。下部の区間はちょっと緊張したが昨年の残雪期に歩いたところと比較すれば大したことはない。傾斜が緩めばもう核心部はおしまいで、あとは淡々と下ればいい。行きでは小屋からピークを越えて最低鞍部に至ったが、最低鞍部へと直接登ってきた足跡が多数あるのでそれを下ることにした。今日もぞろぞろと登ってくるが、今日のうちに霞沢岳を往復するようだ。徳本峠の小屋も賑わいそうだ。谷沿いの傾斜が緩むまではアイゼンを効かせてわざとトレースを外して歩き、膝への衝撃を雪に吸収してもらう。傾斜が緩むとアイゼンを外してまたまたザックが重くなる。まだポツポツと登山者がやってくる。林道終点で汗くさいTシャツを着替えておく。梓川沿いの遊歩道に出ると日当たりも良くなり長袖シャツでは暑いのでTシャツになるが、周囲の観光客はみんな防寒着なので段差が大きい。気温は7℃、昨日朝が-6,7℃だったから13,4℃高く、落差が大きい。昨日は私もダウンジャケットを着て歩いたのが嘘のようだ。
河童橋公衆トイレ西側の廃林道が六百山登山口 | 登ると堰堤があるので左に迂回 |
堰堤を回り込む | 堰堤が終わるとはっきりした踏跡がある |
残雪があるが道はしっかりしている | まだまだ道は続くが偵察はここまで |
今年の秋は六百山をやる予定なので登山口の確認をすべく、河童橋近くの公衆トイレ西側の廃林道に荷物をデポして上がってみた。ここが六百山入口のはずで、上には堰堤が見えている。登ってみるとこいつは越えられないので左に回り込んで上部に出ると土石流センサーかなにかの配線がありはっきりした踏跡が確認できた。途中まで上がってみたが踏み跡は続いており、そのうちにガラガラの谷に出るはずだ。どうやらこれで間違いなさそうだ。さて、次回来るときには無事登れるだろうか。もっとも、最近の山渓でこのコースが紹介されたので今まで以上に入る人も増えて多少はコースが濃くなるかもしれないけど。
バスターミナルに到着すると新島々行きのバスに乗客が乗り込んでいる最中で、まだ午前の早い時間なので大した人数ではないが整理番号順で呼び出していた。どこで整理券を発行しているのかと聞いたら切符の販売窓口だというので行ってみると、沢渡駐車場行きは整理券不要でバス乗り場は一番端の7番だという。な〜んだ、そういうやり方なのか。私の他にも全く同じことをやっていた人がいたのでみんな迷うのだろう。わかりやすいところに案内看板があるといいのに。まだ時間が早いのでバスは満員にならず出発、10分おきに循環しているのでほとんど待ち時間もないようだ。ただ、問題は道路の渋滞で、路線バスやタクシーの運転手は道の様子を知っていて大型バスとのすれ違いが可能な場所を熟知しているのでいいのだが、外部からやってくる観光バスの運転手はそれを知らないので変なところで対向車が来てすれ違いに時間がかかって後ろが詰まって渋滞というのがパターンである。それと上高地の駐車場のキャパシティーは小さく、外部の観光バスで満杯になると駐車場待ちの列ができてこれまた道をふさぐ。週末は観光バスも通行規制した方がいいのではなかろうか。今回もすれ違いで時間がかかった。
沢渡駐車場に戻ってから着替えながら濡れた物の虫干し。気温が高く真夏のようで濡れた(正確には凍った)テントもすぐに乾いた。上高地へ、上高地からのバスがひっきりなしにやってきて、大型観光バスもどんどん上がっていく。バス停の管理をやっている人が携帯電話で上高地に電話をしてあちらの駐車場の入り具合を確認していたが微妙らしい。いっぱになると渋滞が始まるか。1時間ほど虫干しと片づけをやり温泉へ。やっぱりここなら波田町の竜島温泉だろう。\500の日帰り専用施設で、島々を過ぎて道が大きく左カーブするところで右に入る細い道と案内看板がある。対岸には水力発電所があり、その先に温泉がある。広い駐車場と平屋の建物、浴室も広々としていて露天風呂もあり、なんと言ってもめちゃ込みしないのがいい。風呂の後は買い物と洗濯だが、買い物は波田駅近くのスーパー(アップルランド)が最寄りのおきまりコース、そして気づかなかったのだが東側の駐車場に24時間年中無休のコインランドリーがあるではないか! 長期休暇中は洗濯が必要となりコインランドリー探索が欠かせないがこんな所にあるとは知らなかった。ただ、\100硬貨の両替機がないのでスーパーのサービスカウンターで両替してもらう必要があるが。明日は雨なので乾燥機も使って汚れ物は全て洗って乾燥しておいたため、これで連休後半も問題なし。問題はどこへ登るかだ。黒部にトライするのもよし、当初の妙高もいいし、常念南西の中山も懸案事項だ。
所要時間
4/29
上高地BT−0:49−徳本峠分岐−0:24−林道終点−0:58−休憩−0:41−徳本峠−0:16−鞍部(休憩)−0:51−ジャンクションピーク(休憩)−0:06−霞沢岳登山道と分かれる−0:31−2384m三角点峰−0:21−2350m峰−0:16−2235m肩(休憩)−0:12−2130m鞍部−0:30−2284m峰(休憩&テント設営)−0:19−2320m峰−0:07−2322m峰−0:10−2340m峰−0:15−小嵩沢山(休憩)−0:37−2284m峰(幕営)
4/30
2284m峰−0:16−2130m鞍部−0:22−2235m肩−0:23−2350m峰−0:19−2384m三角点峰−0:37−ジャンクションピーク(休憩)−0:32−鞍部−0:40−林道終点(休憩)−0:14−遊歩道−0:46−六百山登山口(偵察)−0:04−上高地BT