南ア深南部 合地山、鶏冠山、三俣山、中ノ尾根山 2005年11月15〜17日
合地山と言えば南ア深南部でも特に山深いところにあり、主稜線から外れていることもあってあまり登られない山であろう。それでもネットで調べると白倉林道から日帰りで歩いた記録を発見し、笹で激藪かと思ったらそうでもないことが分かって挑戦の敷居が下がった。また、この付近では鶏冠山が残っており、どうせならいっぺんに2山を片づけるのが効率が良かろう。また、山名事典に三俣山という県界尾根と群界尾根の合流点ピークが掲載されたので、これも稼げるのでなおおいしい。
ルートとしては車を使う限りは白倉林道を歩くしかないだろう。問題は日程をどうするかで、強行1泊2日の場合は1日目で稜線までテントと水を持ち上げて鶏冠山を往復し幕営、翌日に合地山を往復して林道を歩いて車に戻ることになり相当な行動時間と体力が必要で、土日2日では月曜日の会社に出勤するのは難しいだろうと予想された。どうせ月曜に休むなら最初から3日間で計画しても良かろうと考え直すと、初日で稜線まで水とテントを持ち上げて幕営、2日目で合地山往復、もし時間と体力に余裕があれば鶏冠山も往復して幕営、3日目に鶏冠山を往復して下山か、前日鶏冠山に登った場合は下山のみだろう。
稜線までのルートであるが、水を持ち上げる労力を考えると西俣沢を遡上するのが得策と判断した。これなら最後の最後まで水を持つことなく高度を稼げるので体力的に有利であるからだ。なにせもう山は冬で防寒装備の重さが馬鹿にならないので、それに加えて水を担ぐのはきつい。もし林道終点まで歩いて中ノ尾根山経由とすると、標高約1500mから水を持たなくてはならない。沢コースの場合はどこまで水が出ているかにもよるが、悪くても2000mくらいまでは大丈夫ではなかろうか。中ノ尾根山経由で登って沢に下って水を汲むことも考えたが、この時期はどこまで下れば水が出るのかみえないことと、もしとんでもない傾斜で(地形図を見る限りはそうだが)下れそうに無かった場合は水無になってしまうのでリスクが高いと判断した。ま、その場合は沢から登る場合もヤバいのだが、下れなくても登れる場合はあるし、最悪は鞍部を諦めて中ノ尾根山に突き上げる適当な尾根に乗ってしまえば藪は分からないが危険は少ないだろう。もちろん、沢が平凡で簡単に稜線に突き上げられることを願うばかりであり、不安を抱えながらの計画となった。もしろくでもないルートだった場合は、2日目に必要な水を汲みに行くのは危険なため、できれば1回で2日分の水を汲んでしまおう。
時期としては涼しくなった秋を考え機会を狙っていたが、遅い夏休みの後半で好天が期待できそうなので実行することにした。11月中旬、それも冬型になるので相当冷え込むだろが、藪は枯れて藪漕ぎにちょうどいいし水の消費量を減らせる。バラ谷頭から中1日おいて、天気予報は冬型で太平洋側は晴れの予報を確認して林道に入った。どうも風邪が抜けきれず、できるだけ車の中で寝て回復してから出かけようと考え、日が高くなったお昼近くから登り始めることにした。どうせ初日は稜線に上がるだけであるからゆっくりしても問題なかろう。
林道入口側から見るゲート | 林道の内側から見る。左側の護岸を乗り越える |
前日、旧南信濃村で温泉に入って買い物をして旧水窪町に入り、真っ暗になってから白倉林道に入ると10年前の記憶は完全になくなっており、ゲートまでどんな道だったのか全く思い出せない。ダートになってしばらく走ってやっとゲートが登場、崖っぷちの付けられた道なので山側は壁、谷側は奈落の底でバイクでも突破は無理で、しっかり施錠されていた。ゲートの高さが低いので自転車なら持ち上げてゲートを越えることも可能であろう。戸中林道のゲートみたいにゲート前に入山届けのノートが置いてあったので見てみると、約2ヶ月前に西俣沢から三俣山に登った記録があり、西俣沢は荒れて尾根取り付きまで難儀したと書いてあった。荒れている感じ方は人それぞれだろうからあまり心配しなくてもいいかもしれない。台風が来て土砂が押し出して滝が埋もれることはあっても新しく滝ができることはないだろう。高巻きが必要な場所さえ無ければさして問題はないだろう。ただ、「尾根取り付き」というのが心配で、私はガイドブックどおりずっと沢を遡上する予定だが、どこからか尾根に取り付くコースがあるのだろうか。最後の沢のつめの危険度がいまいち分からないので、もし尾根コースがどこにあるのか分かればそちらを登ってみるのもいいかもしれないが、はたして分かるだろうか。分からなければそのまま沢をつめるか。
ゲート前は狭いスペースしかないので100mほど戻ったところにある広い駐車場に車を入れて寝た。夜間は思ったほど冷え込まずあまりの暑さに起き出して防寒着を脱いだほどで、体調は大丈夫らしい。
朝は遅くて構わないので8時くらいまで寝てからゆっくり起きて朝食を取る。まだ朝7時前だというのに林業関係者だろうか、ゲートの鍵を開けて林道を上がっていった(崩壊箇所の復旧工事業者だった)。その後もトラックが2台上がっていき、平日なので盛んに作業をやっているらしい。天候は最初はやや雲が多かったがいつのまにか快晴に変貌し、ちょっと早いが10時前に出発することにし、荷物をパッキングして背負うとずっしり重い。風邪気味なので防寒具が多いからなぁ。
黒沢林道分岐先の朝日山登山口 | 10年前、鹿の角を引っかけておいた造林小屋 |
ゲートでノートに記帳して長い林道を歩き出した。この林道は未舗装だが日常的に作業で使われているようだから普通車でも走れるほどで、先日の遠山林道の廃林道とは比較にならないほど歩きやすい。林道歩きはつまらないが廃林道歩きでゴロタ石の上を歩いたり土砂押し出しを高巻きしたりするような苦労はないのでマシだと言える。周囲の紅葉が目を楽しませてくれる。適度な間隔で造林小屋があり、急な天気の悪化でも逃げ込めるだろう。以前、某山下さんと中ノ尾根山に登ったときにここを歩き、林道脇で鹿の角を拾って軒先に引っかけた造林小屋もまだ健在だった。林道はほぼ登り一辺倒で標高もそこそこ稼いでくれるのでまあまあ効率的だ。ゲートから2.5kmで立派な橋が対岸に渡っていて黒沢林道が分岐、手書きの「黒沢山」の案内標識があった。そのすぐ先に朝日山登山口の標識があったが、こいつは10年前には無かったなぁ。そこそこ登られる山なのだろうか。
白倉橋。砂防ダムは右岸に道あり | 砂防ダム上流から白倉橋を見る |
こんな目印が点々とある | この数字の目印が多い(途中で消失) |
約2時間歩いて白倉橋に到着、ここから沢歩きに移るがまず休憩。メロンパンをかじる。西俣沢には砂防ダムができているが右岸に道ができていて簡単に乗り越えられ、河原歩きが始まる。この上部に林道分岐があって沢の左岸に林道があるが、以前歩いたときに既に廃林道化しており、今でも歩くのは面倒だろうから沢を歩いても同じだろうと考えた。沢は平凡で危険個所もなく、歩きやすい所を求めて右岸左岸と渡り歩きながら遡上を続ける。河原だから踏跡は増水でかき消されてしまうだろうから、人が歩いたと思われるルートは僅かしか感じられなかった。赤テープも見られるが数は少ない。少し上がると壊れた造林小屋があり、周囲にはワイアーロープが張ってあった。沢には数字が書き込まれたマーキングがあるが目印なのだろうか? あまり気にせずに歩きやすい所を適当に歩き続ける。ゴルジュのような両岸とも歩けない地形はなく、必ずどちらかの岸は歩きやすい状態が続き、高巻きの必要はなかった。
本流の水が枯れた場所。右手から沢が注いでいる |
ガイドブックで「水量の多い沢が右側から注ぎ込む」の記述があるが、それと思われる場所に到着、なんと本流は水流が細いどころかここで水が消えているではないか! まさか水がある方が本流か?と覗いてみたが、地形図と照らし合わせると傾斜からして本流ではあり得ない。目印はここまでで、この先は1カ所しか見られなかったが、みんな自信が無くて目印を付けるのを躊躇したのだろうか。まあ、どうにせよこっちは沢を遡上して適当に稜線に上がってしまってもいいので、地形図を見て沢の方向を磁石で確認し、傾斜等も勘案して本流を判断して遡上を続けた。少し上がると水流が復活して一安心。相変わらずの平凡な沢が続き危険個所は現れない。
まっすぐの沢。三俣山方面 |
右に分岐する沢。中ノ尾根山北鞍部方面 赤布が下がっている |
沢を遡る。危険個所は無し | まだまだ登る |
徐々に傾斜が増し、やがて同じくらいの太さの沢が2分し、ここで唯一の目印が現れ右手の沢に導いてくれる。地形図を見れば分かるが中ノ尾根山北鞍部に向かう沢は右側である。沢の入口は小さな滝で沢の中を登れないが、左の尾根でちょっとだけ高巻きして沢に下れる。この先で一気に傾斜が増すがまだ危険は感じない。水流は時々切れるが復活するパターンが繰り返していたが、ある程度から上では細いながらも水が続いていた。ただ、標高が上がって気温が下がり、凍結箇所が出てきたのがやっかいだ。また、1カ所だけ高巻きが必要な場所が出てきて急斜面を右に巻いてやり過ごす。どんどん高度を上げるが両側は急斜面で、このまま斜度が増したら沢を最後まで詰められるのか心配になってくる。
徐々に水流が細くなる | 最後の水場から上はガレ場に変わる |
ガレ場の右斜面を登りきると鞍部へ出る |
いよいよ稜線直下の崩壊箇所が見えてくると沢が2分し、右というか正面の沢が本流だろうが全面がガレキで埋め尽くされ水流はその下なので、合流点の細い水流で水を3リットル補給する。GPSの表示からすると予定の鞍部より南に位置しているが、沢を間違えただろうか?
いよいよ最後の沢を詰めるが、これがまた急なガレ場で足下が不安定でピッケルが欲しいくらいだ。しかも徐々に傾斜が増して下手に滑るとそのまま止まらず落石と一緒に滑り落ちそうで、水で重さが増した大ザックを背負いつつ慎重に登っていく。しかし、これ以上はマジで危険と思われるくらいの傾斜になり、上を見てももっと傾斜がきつガレ場でとても登れそうにないので左右どちらかに逃げることにした。左は絶壁で登れそうになく、右手も急斜面だが少し我慢すれば笹の斜面になって安全圏内になるので右に進路を取る。傾斜は猛烈だがスタンス、ホールドが適度にあって水平移動できそうで、できるだけ階段状の場所が多いところを選んで進むが、1カ所だけ足下がポッカリと落ちて、もろい石が崩れたら人間ごと谷底に真っ逆さまだ。距離はたった1mくらいだが命にかかわるので諦め、やばい傾斜だがまだマシと思われる上部に慎重に登り、横に移動してどうにか笹地帯に取り付けた。これじゃ明日水を汲みに来られるかどうかわからないなぁ。ガイドブックでは水場として書かれているが、もしかしたらこの笹の中に安全なルートがあるのだろうか。何となく踏跡があるが、人間の道なのか鹿道なのか分からない。
僅かな隙間にテントを張った |
低い笹をかき分けて登るとすぐに鞍部に到着、どうやら私は沢を間違うことなく正確に登ってきたようだ。いつのまにか天気は悪化し、上空は一面の雲に覆われて時々霰が落ちてくるようになり冷たい西風が強かった。目的の場所まで到着したのであとはテントをどこに張るかだが、稜線上は笹が切れて張れるところがあるのだが西風がもろに吹き付けてNGなので、稜線東側でテントが張れそうな場所を探した。北側のピークを巻くように東側を歩くと1カ所だけ笹がない狭い場所があり、1人が寝るだけのスペースはあるのでそこに決めた。この付近は鹿だろうか、小便のにおいがするのでテリトリーのマーキングが近くにされているのかもしれない。もし熊だったら最悪だが、もうこの時期でこの高さでは餌がないだろうから鹿だと思うことにしよう。もう暗くなるまで時間がないので急いで設営し、中に入れば天国である。防寒具を目一杯着込んで酒を飲んで寝たが、この日は寒さを感じることもなく快適に眠れた。西風がゴーゴーと音をたてているが稜線に遮られてテントの揺れは皆無、時々霰が当たる音がした。
翌朝は5時過ぎに起床、気温はマイナス6度、今朝は冷えている。今日の予定はまず合地山を往復し、戻った時刻と疲労をみて鶏冠山に行くかどうか判断することにした。予想としては合地山往復は休憩時間を除いて4時間といったところだろうか。おそらくお昼前には戻ってこられるだろうから鶏冠山に行かないとするとマッタリする時間が長いなぁ。
僅かに白くなった中ノ尾根山北斜面 | シラビソ樹林と低い笹を歩いて中ノ尾根山を巻く |
外に出ると中ノ尾根山北斜面はうっすらと白くなっていたが、霧氷というより笹に降りた霜だ。凍っている間はいいけどあれが融けたらズボンがびしょ濡れになるからやだなぁ。最初からゴアとロングスパッツで武装する。ザックには防寒具と水、食料を入れて出発だ。霜が降りた笹の上をトラバースするので滑ること! しかしトラバースは直ぐ終わって昨日沢から上がった鞍部に到着、笹原の中に踏跡が続いており最初はそれを上がり、適当な場所から左にトラバースする。中ノ尾根山まで登ってもいいが、どうせ東尾根に降りるのだし、中ノ尾根山は傾斜が緩やかなので巻くのも苦では無かろう。北斜面は一面の笹原だが巻き始めるとシラビソが濃くなって笹が薄くなり獣道が出てきたので利用させてもらう。うまい具合に等高線に沿って走っており、目印を付けることなく歩く。これだけはっきりしていれば帰りも分かるだろうし、藪はないのでこのルートを正確に辿らなくても戻れるし。
中ノ尾根山からの踏跡と合流 | 2186m峰付近 |
笹尾根を歩く | ピンクの紙テープ目印 |
東尾根が近づくと尾根に乗る前に目印が出てきたので、尾根直上ではなくやや北側に踏跡があるようだ。ただ、この付近は笹が無くシラビソ樹林なのでどこでも歩けるので目印を気にする必要はないが。下っていくと徐々に笹が増えるが高さは膝丈程度で問題外であるが、笹に隠れた倒木がやっかいだ。先日のバラ谷頭の笹より密度が高いので倒木が隠れていても見えず、足をぶつけることになる。2186m峰ではシラビソが深くなって笹が消えるが、その先の下りでまた笹が現れる。この先で尾根が広がって踏跡もばらけるようで鹿道が縦横に走りどこを歩けばいいのかわかりにくくなるのだが、そういうところで肝心の目印がない。どうやら付ける方も自信がないようだが、自分の帰りのために付けるのが目印の目的だろうから、わかりにくい場所こそ付けないと意味がないと思うが。こちらはGPSという「最終兵器」があり、合地山の他に2186mピーク、2104m肩、1940m鞍部の緯度経度が入れてあるのでほぼ直線に歩ける組み合わせで磁石さえあれば大丈夫だからいいけど。ちなみに目印の中には武内さんのように「自動消失」する紙製テープも見受けられた。最初はトイレットペーパーか?と思ったが、残り方を見るともう少し硬い紙のようだった。既に地面に落ちた物もあったが一番頻繁に現れたので参考になった。
中ノ尾根山北斜面から見た2551m峰 | 2186m峰付近から見た合地山 |
できるだけ尾根直上を歩くようにしたが、場所によっては踏跡は左手を巻いているところもあったようだ。まあ、笹が出てきてからは樹林が薄くなって視界が開けるし、笹は膝丈なのでルートを外れてももがくようなことはないが、そこそこの密度になってきて足の抵抗は大きいし、倒木が見えないで足をぶつけるのが最大の難点だ。一番イヤなパターンは隠れた倒木に足を引っかけてバランスを崩して前のめりになった姿勢をリカバーしようと足を前に出したらさらに倒木があって思いっきり足をぶつけることで、通常の歩きより勢いよく足を出すので痛みも半端ではない。特に右膝はこれで倒木に強打し、その後2日間くらい深く膝を曲げると痛みが走る状態が続いたのにはまいった。左の膝も同様にぶつけたし、たかが膝丈でも笹で隠れた倒木はやっかいだ。
2104m肩 | 肩から南へ下る |
踏跡、目印と笹原が続く | まだまだ笹原 |
2104m肩で右に曲がると薄い樹林に倒木の笹原を緩やかに下っていく。踏跡は左の樹林と笹原の境界付近にあったが、そうとは知らずに笹原の真ん中を適当に歩いた。そのうちザックが木に引っかかって引き戻され、GPSがもぎ取られていないか確認したら無くなっており、周囲を探したが見つからなかったので肩まで戻って笹原の中を探したが、ventureは緑色で笹原に落としたら見つけるのは至難の業だ。往復しても見あたらず、最後にザックが木に引っかかった付近をもう一度探したら黒いひもを発見、引っ張ったらGPS本体が出てきて大喜びした。それ以降、GPSのひもをGPSを収容している携帯電話用のカラビナ付き小型ポーチに結びつけ、藪に絡め取られてもザックごと引っ張られるように変更した。GPSは無くても歩けるが、なんせ2万円の機械だからもったいなくて無くすわけには行かない。
最低鞍部 | 合地山P1へ向けて登る |
幼木地帯が出てくるが意外に空間が多い | 合地山P1山頂 |
だだっ広いが視界のいい笹原の尾根を下っていくと最初の鞍部に到着し、そこで笹が消えてシラビソ樹林になるので足の抵抗が消えて急に歩きやすくなった。ここが最低鞍部かと思ったが、ピークを越えた先に本当の鞍部が現れ、そこからP1へむけて本格的な登りが始まる。シラビソ樹林中は笹原とは比較にならないほどはっきりした踏跡があり、意外に訪れる人が多いように思える。やがてシラビソの幼木地帯が現れてこりゃ藪漕ぎかと思いきや、思いの外隙間が多く、最初だけ潜り込んでしまえばどうということは無く、踏跡は相変わらずはっきりしている。再びおとなしいシラビソ樹林に変わって標高を上げ、傾斜が緩むと合地山P1に到着、鬱蒼としたシラビソ樹林で日当たり皆無で寒い! ここは最高地点でもなく三角点もないので標識はなかった。
P2向けて登る | 合地山P2山頂 |
合地山P2山頂標識 |
鞍部に下って深いシラビソ樹林を登り返し、また幼木が出てきたかと思ったがさっきよりさらに隙間が多く問題外で、登り切ったところに「合地山P2」の山頂標識があった。ここも深い樹林で視界はなく、日当たりが悪くて休むのに寒い山頂だが、こういうことを考えてアタックザックではなく大ザックに防寒着を詰めてきたので、持ってきた防寒着を全て着て地面にひっくり返った。苔むした平らな山頂なので水がないことを除けばテント泊にはもってこいの場所だった。
傾いたテント | 中ノ尾根山北側から見た池口岳 |
今日はできれば鶏冠山も往復したいので、体力を回復させるべく30分ほど休んで出発した。目一杯着ていた防寒着も歩くにしたがって体温が上昇し、少しずつ脱いで最後はいつものTシャツに腕カバーの姿になった。笹原も行きでトレースが分かっているので不安なく歩いた。歩き始めて1時間ほど経過したので少々休憩し、中ノ尾根山を再び巻いてテントに戻る。まだ12時前なので日没前までに鶏冠山往復ができそうなので挑戦することにしたが、当初はテントの中でひっくり返って休憩しようかと思ったもののテントは稜線東斜面にあってもう日差しが無く寒そうなので、そのままパスして2551mの登りの途中で日当たりが良く西風が当たらない場所を見つけてひっくり返った。ガレの脇に登山道があり見晴らしがいい。日差しがいっぱいで目をつむっても太陽の明るさを感じるほどで、風が当たらないから非常に暖かくて快適だった。元気を取り戻して歩き出す。
2551mピーク山頂 | 2551mピークから見た三俣山(背景はシラビソ高原) |
2551mピークは登りは急だが山頂は意外に細長くて広く、お隣の三俣山に向かって下っていく。開けた樹林で藪もなく歩きやすいルートを適当に歩くが踏跡もちゃんとある。三俣山山頂は樹林が無くなって草付きの明るい山頂で、文字が消えた山頂標識があった。鳥獣保護区で狩猟禁止の看板もあるが、ここまで鉄砲撃ちが来るのか疑問だが。
三俣山山頂 | 三俣山からなだらかな尾根を下る |
所々笹が切れて樹林になる | 藪っぽく見えるが実際はそうでもない |
膝丈の薄い笹原が続く | まだ鶏冠山は遠い |
日当たりが良くて晴れていると気持ちいい! | 鶏冠山。最後の登りにかかる |
岩場は右手を巻く | するとはっきりした踏跡+フィックスロープあり |
さあ、鶏冠山までアップダウンが続くなだらかな尾根歩きであるが、藪の状態はどうであろうか。まずは緩やかに下ってほぼ水平に歩くが、笹は今までと同じく膝丈程度で密度は低く踏跡もしっかりしているし、踏跡の程度は合地山より濃いので歩く人は多いようだ。時々樹林帯に入ると笹が切れてシラビソ樹林で歩きやすくなるが倒木も出てくる、といってもこれも合地山よりも少なくて問題外である。アップダウンの程度も合地山の尾根と比較すれば屁でもなく、低い笹で視界はいいし開けた笹原が多くて今日のように晴れていれば日差しもたっぷりで稜線漫歩だ。やはり夏よりも秋がふさわしい尾根だろう。途中、カモシカを見かけるがそそくさと逃げてしまった。山頂へのまとまった登りの手前で草付きがあり写真撮影、途中に岩が見えるがうまく乗り切れるか気がかりだ。その岩場はすぐに登場したが、やればそのまま登れそうだったが単独行で無理してけがをする危険を冒すわけにもいかず、とりあえず右手に巻いてみると樹林に入って問題なく歩けるようになり、東へ延びる尾根を越えるとなんとフィックスロープが張ってあるではないか! やはりここを歩く人は多いようだ。無雪期のこの時期にフィックスロープは無用の長物なので、おそらくは残雪期に縦走したパーティーが残した物だろう。
鶏冠山山頂(南峰) | 鶏冠山山頂の標識 |
再び稜線に戻り笹と樹林の尾根を登り切ると笹が切れて小広い草付きの山頂に到着した。ただし周囲は樹林に囲まれているので展望がないのが残念だが、なかなか立派な山頂標識もあり山頂の雰囲気がある。鶏冠山は双耳峰で南峰と北峰があり、こっちは片割れの南峰だが最高峰なので山頂といえよう。山名事典でも南峰の標高を鶏冠山の標高としているのでここを山頂としていいだろう。ここまで来たからには北峰に立ち寄ってもいいのだが、こちらはタダのピークハンターで山頂に立つことが目的だから余計なピークに登る意義を感じられないので行くのはやめておいた。たぶん2度と来ないだろうなぁ。山頂は日当たりが悪いので少し戻って日当たりのいい笹原でひっくり返って休憩した。
2551m峰南から見る中ノ尾根山 | 中ノ尾根山北斜面の笹原を山頂目指して登る |
来たルートをそのまま戻り、三俣山で無線を行ってからテントに戻る。どうやら水は補給しなくても持ちそうなので危険な水場に下る必要はなく、もうやることはない。このままここで泊まってもいいが、まだ時間はあるし、鹿の小便の臭いが気になるし、狭くて傾いた場所なのでいい場所へお引っ越しした方がいいので、中ノ尾根山に登って幕営することにする。移動する前にテントを稜線上の日当たりのいい場所に持っていって底を乾燥させ、少しでも鹿の小便の臭いが薄まるようにしてからテントを畳んで中ノ尾根山に向かった。ルートは最初ははっきりしているが登るに従って踏跡が薄くなりそのうち消滅するので、あとは適当に笹原を上目指して登ればいい。何せ登りは適当に登っても高いところを目指していれば山頂に到着するので細かいことを気にする必要はないので気楽だ。
中ノ尾根山山頂 | 平日なので堂々と山頂真ん中で幕営した |
そのうちに何となく踏跡が出てきたのでそれに従って歩いていると傾斜が緩んで山頂に到着、ここは約10年前に登っているのだが、その時はまだ雪が残っていて地面が見えなかったので三角点を見るのは初めてである。地形図で分かるように山頂はなだらかで広く、ほとんど笹原だが山頂近辺は笹が切れてテントを張るのに都合がいい。深いシラビソ樹林で視界はないが、風が遮られてこれまたテントにちょうどいい。今夜は水平な場所で幕営できるので快適だろう。テントを設営して中に入るとまだ鹿の尿の臭いが強いが、鼻は臭いに麻痺しやすいのでそのうちに気にならなくなった。でも明日はどっかの沢でテントを洗わないといかんなぁ。酒を飲んで一人祝杯をあげ、暗くなってから寝た。この日もよく冷えて夜中はカイロを2個使っても寒さで起き出してしまうほどだった。こりゃ寝るときに使う防寒着を持ってくるより夏用ダウンシュラフを持ってきて2枚重ねにした方が良かったなぁ。
夜中は寒さでよく眠れなかったが、いつの間にか寝たようで腕時計のアラームで目が覚めた。朝の気温は−7℃、テント内の水は凍り付いているが、これも予想のうちで朝飯に使う水はシュラフの中に入れておいたので調理に問題はない。まだ真っ暗なのでろうそくをつけてガスコンロを炊いて暖房しながら飯を作り、飯を食えば体が暖まり、その熱が逃げないうちにテントを撤収した。もう周囲は充分明るく、ここから林道終点まではまともな登山道があるはずなのでルートファインディングや危険個所通過の心配もない。2日前に登った西俣沢を下ってもいいのだが、この時間のこの気温では間違いなく沢のしぶきが凍って石が氷でコーティングされ極端に滑りやすくなり渡渉が難しくなるし、下りで滑りやすいと慎重に歩く必要があり時間もかかるだろうから、普通の道を歩いた方がつまらないが時間も体力も使わなくて済むだろうとの判断である。
山頂から北に向かう踏跡 | 中ノ尾根山を下りて尾根を南下 |
半分笹に埋もれた踏跡が多い | 中ノ尾根山を振り返る |
中ノ尾根山山頂から目印と踏跡を辿って下っていくと最初は樹林内ではっきりしていたものが、徐々に開けた樹林になって笹が深くなり、踏跡が笹に埋もれて分かりにくくなってきた。もちろん、普段から藪山に慣れた人なら問題ないレベルであるが、整備された登山道しか歩いたことがない人だとルートを失いかねない。場所によっては踏跡の上に笹がかぶって遠目から見ると僅かにへこんで見えるだけの部分もある。合地山や鶏冠山の尾根も笹があったが高さは膝丈しかないし密度も低かったのが、中ノ尾根山を境にして笹の勢いが増して密度はとんでもなくなるし、徐々に背が高くなって人間の背丈ほどの場所も出てくる。密度が高いのでルートを外れると足にかなりの抵抗を受けるので、ルートを外れたことがすぐに分かるという利点もあるが。ルートが分からなくなった場合は、ここまでは踏跡で間違いないと分かるところまで戻り、周囲をよく見て笹が凹んだ筋を見つけるか、足探りで抵抗が少ない方向を探すのが効果的だ。踏跡は笹で隠れていてもちゃんと存在し、踏跡は笹がないので足にかかる抵抗はずいぶん少ない。
中ノ尾根山南から見た深南部南部 |
西尾根登山道から主尾根に取り付く場所 直進が黒沢山方面か? |
樹林が切れた笹原になるので視界が開け、南方には深南部南部の山々が見えてくる。先日登ったバラ谷頭はかなりなだらかで平らな山頂に見え、盟主の黒法師岳は笠ヶ岳と呼びたくなるような尖った姿で遠くからでも判別しやすい。黒沢山はすぐ近くだが、もっとも笹が深いエリアで大変だろう。登山道は尾根直上ではなく西側についており、そこからでは合地山は見えないのが残念だ。笹原の中に踏み込んで尾根に上がれば見えるが、なにせこの時間では笹は真っ白な霜に覆われており、藪漕ぎすると衣類が霜まみれになってしまい、融けるとびしょびしょになるのでやめておいた。
西尾根に入る。まだ笹が続く | ガレから林道終点が見える |
シラビソ+笹+目印 | やっと笹とおさらば |
ルートは中ノ尾根山南側のピークから西に延びる尾根にあるので、最初は南に下ってから西に直角に下っていく。道が曲がるところには中ノ尾根山の案内標識があるが、まっすぐの方向にも踏跡があって、もしかしたら黒沢法面へ向かう主尾根に乗るルートがあるのかもしれない。前に間違って主尾根に乗ったときはもの凄い笹藪でもがいた記憶がある。枝尾根に乗ってもまだ笹が登場し、登山道と言うより踏跡に分類した方が良さそうな道で、目印を頼りにルートを見失わないように下っていく。ガレの脇を通る場所では視界が開け下方には林道が見えてくるが、そこまで下ったら林道歩きだな。2つ目のガレの横を下り終わると突然笹が終わってシラビソ樹林に入り、以降ははっきりした道が続くようになり1級の登山道へと変貌した。ここだけ見ると登る人が多いように思えるのだが、笹地帯の踏跡の濃さを見る限りでは、少なくとも黒法師岳よりは登山者数は少ないように思えた。黒法師岳の等高尾根の道は踏跡レベルではなく立派な登山道だったからなぁ。
下っていくと植林帯→広葉樹林に変わる | 林道終点の登山口。標柱がある |
林道終点から続く廃林道。途中に沢があるらしい | 林道終点の小屋。施錠されておらず常時利用可能 |
小屋内部 | 小屋内部 |
シラビソ樹林帯から唐松植林帯、紅葉落葉樹帯へと変貌すると林道と小屋が見えてきて、林業作業道?で林道に降り立った。あとは長い林道歩きが待っているが、その前に小屋を拝見させてもらう。小屋は施錠されておらず、真ん中にストーブがあって3方の壁に沿ってベンチが設置してあったので、3人はそこに寝ることが可能だ。もちろんコンクリートの床にもマットを敷けば寝られるだろう。もし山中で幕営を考えていない場合は利用価値が大きいだろう。ストーブに使う薪(枝)は僅かだが小屋の横に在庫があるが、周囲から拾ってくるのが礼儀だろう。水場は無いが、林道の続き(廃林道化して車は通行不能だが歩きは可能)を歩くと5分くらいで沢があるらしいし、林道をちょっと下ったところにも小さな沢があるので水を入手できる。
今日の行程は登りが無く下りだけだったので、既に1時間以上歩いたのに疲労は感じないのでこのまま林道歩きに突入することにし、約2時間ちょいと思われる最終行程に突入する。林道は今までの登山道と比較すれば傾斜は緩やかで、運動密度も落ちるようでTシャツでちょうど良かったのが寒くなり、シャツを着てフリースを着て・・・・と歩いていても時間経過と共に寒さを感じて着る物が増えてきた。これが登りならずっと体の発熱量が多くTシャツのままで歩けただろうな。
西俣沢左岸の廃林道入口 |
2日前にワゴン車で入っていった工事業者の車は白倉橋より少し上がった場所に止めてあり、北側ががれた場所の治山工事をやっていた。この時刻で北斜面だから気温はまだ−5℃を下回っているはずで、工事をやってる人はめちゃくちゃ寒いだろうなぁ。ご苦労様。崩壊面へのモルタル吹きつけか何かをやっているようで、トップロープで安全確保して作業を行っていた。それ以降は業者の姿はなく、無人の林道を淡々と歩いた。工事現場のすぐ下に西俣沢左岸の廃林道入口があるが、林道は自然落石で埋まったのか人工的に盛り土されたのかわからないが、土砂で埋もれて車は入れない。
まだまだ林道歩きは続く。途中、立派な角を持つ牡鹿を見かけるが、写真を撮る暇もなく逃げられてしまった。平日なので登山者の姿もなく淡々と歩くだけで、路肩の距離表示だけが残り距離の目安だが下りだと看板の裏側しか見えないので分からなかったりする。先日の遠山林道よりは短いし巻く距離もさほどではないので、無駄に歩いている感じがないだけマシだ。やがてゲートが現れ左側の岩を乗り越えてゲートを越え、後から登る人のためにノートに詳細を書いておく。黒法師岳に登るときに利用される戸中林道のゲートにあるノートにもいろいろ書いた覚えがある。ノートに記帳している間に工事業者がゲートから上がっていった。車に戻り昼飯を食い、林道が舗装になる場所で白倉川を渡る橋を対岸に渡って河原に降りてテントを洗って乾燥させたが、臭いはだいぶマシになったが完全に抜けない。こりゃ下界に降りても数日は風通しがいいところにさらして臭いを抜かないといかんなぁ。竜王温泉しらかば荘で風呂に入り、3日分の垢を洗い流した。平日の日中なので私が本日初めての客らしく風呂がぬるいが、客が私1人では無駄なお湯を使うのももったいないのでちょいと工夫して風呂を仕切り、少ないお湯で1人分の面積だけ暖まるようにしたのだが、その後別のお客も来たので2人ならいいかと盛大にお湯を追加して浴そう全体のお湯の温度を上げた。風邪気味の体に熱い風呂が心地よかったなぁ。
11月15日
9:54白倉林道ゲート−10:37黒沢林道分岐−10:40朝日山登山口−11:55白倉橋(休憩)−12:13発−12:42廃林道終点−13:10 標高1610m地点で目印が無くなる(休憩)−13:17発−13:39沢分岐を直進(休憩)−13:47発−13:56沢分岐を右−14:19沢分岐を右−14:35沢分岐を右(高巻き)−15:01最後の水場(休憩)−15:13発−13:25ガレから右の笹斜面に取り付く−15:30稜線−15:37幕営
11月16日
6:23テント−6:27中ノ尾根山北鞍部−6:35東に巻く−6:45東尾根に乗る−7:00 2186mピーク−7:19 2109m肩−7:31 GPSを探す−7:41最低鞍部手前の小ピーク−7:45最低鞍部−7:59幼木地帯−8:15合地山P1−8:20P1-P2鞍部−8:30合地山P2(休憩)−9:00発−9:06P1-P2鞍部−9:13合地山P1−9:30最低鞍部−10:04 2104mピーク−10:11 2123m地点で休憩−10:25発−10:44 2186mピーク−10:59巻き道に入る−11:09巻き道終わり−11:15テント−11:20 2251m峰南斜面(休憩)−11:50発−11:55 2251mピーク−12:00三俣山−12:05カモシカを見る−12:41 2181mピーク−12:52岩を右に巻く−12:55稜線に戻る−13:01鶏冠山南峰−13:04発−13:06日当たりのいい場所で休憩−13:31発−13:34巻き道−13:37巻き道終了−13:44 2181mピーク−14:27三俣山休憩−14:47発−14:55 2251mピーク−15:02テント着−15:34テント発−15:55中ノ尾根山(幕営)
11月17日
6:40中ノ尾根山発−7:03西尾根分岐−7:20笹が終わる−7:58林道終点(写真撮影)−8:02発−8:23西俣沢沿い廃林道入口−8:27白倉橋−9:01鹿を見る−9:22朝日山登山口−9:24黒沢林道分岐−9:53ゲート