南ア深南部 鎌薙ノ頭

 

 

 鎌薙ノ頭は南ア深南部の不動岳に登る途中にあり一度山頂を踏んでいるが、日本山名事典に記載されたため無線をやりに再度登ることになった。リハビリの大根沢山から2日経過し、疲労も筋肉痛もそこそこ取れてきたので足慣らしにはちょうどいいだろう。本当ならバラ谷ノ頭と合わせて縦走したいところだが、なにせ体力は100%ではないし、年末の時期では日が短すぎて明るいうちに帰ってくるのは至難の業だし、なんと言っても鎌薙の巻道で時間がかかると予想されたので、もったいないが鎌薙ノ頭だけやることにした。水窪は遠く、どうせ日帰りの山にするなら関東から遠い山の方が効率はいい、と言ってもバラ谷ノ頭でまた来なくては行けないが。それに鶏冠山と合地山も残っているので、数度は東京から見て「地の果て」まで来る必要がある。

 

登山口のゲート

 炭焼山から下って南信濃村で温泉に入り、兵越を逆戻りして静岡に入り、水窪市街地で奥積さんにメールを送ってダムを目指したが、なぜか標識を見落として行きすぎてしまい、別の林道でダムを目指したが林道が崩壊してダム方面だけ通行止めになっていて逆戻りし、正しい道を入った。ダム湖では釣りをしている人の姿が見られたが今頃は禁漁なのでは?と考える。心配していた未舗装区間も普通車で問題なく走れる路面でゲートまで到着、土曜だというのに営林署は営業中のようでゲートが開いていたが、作業終了後に施錠されるのは確実なので入るのは止めて、少し下の作業小屋前の平地に車を置いてねぐらに決める。作業の車が下った後は車の往来はなく静かだった。

 冷え込むかと思われた夜間はそれほどでもなく、まだ暗い4時に起床して食事を取り、ゲート前に車を移動して5時に出発、予想通りゲートは閉まっていた。まだ真っ暗だが1時間ほどで明るくなり、その頃にはちょうど林道歩きが終わる頃でヘッドライトで歩いても問題ない。最初は雪明かりで明るかったが徐々に雲が増えて暗くなり、そのうち白い物が舞い始めたではないか! 寒気が入ってくる予想ではあったが静岡の天気予報は晴れで快晴を予想していたが甘かったらしい。もっと明るくなると稜線は雲の中にあるのが見え、こりゃ霧氷で真っ白な世界かなぁ・・・。

 いつも通りにいい道で、ゲートさえなければ普通車で走れるほど整備されているから日常的に作業で使っているのだろう。傾斜はなかなかで自転車だとほとんど押して上がることになるだろう。

 

黒法師岳旧登山道への林道分岐 林道分岐先の黒法師岳新登山口

 ゲートから6.5km標識地点が黒法師岳等高尾根登山口へ至る林道支線の起点であり、見覚えのある廃屋もそのままだったが、新しい標識ができていて黒法師岳登山口は林道本線のもっと先を示していた。あれ? 登山道が付け変わったのか?と思ったらその通りで、林道支線から50m程度先に新しい登山口標柱が立っており、しっかりした道が尾根に上がっていた。こっちの道の方が今までの登山道より近道かも知れない。

 

不動岳(鎌薙ノ頭)登山口

 不動岳(鎌薙ノ頭)登山口はここより500m先で、林道が大きくカーブして沢を越え、もう少し標高を上げて道幅がとっても広くなった場所がそうである。ゲートから7kmの標識があるがいつの間にかコケたようで木の切り株の上に立てかけられていた。ここにも黒法師岳登山口と同じ形式の標柱があって不動岳登山口と書かれているので迷う心配はないだろう。少し手前に小さな沢があるので水を得られるのはうれしいところだ。

 ここまで約2時間、いよいよ本格的な登りが始まり体が発熱するのでオーバーミトンやマフラー、長袖シャツをザックにしまう。ついでにヘッドライトもだ。相変わらず雪が舞っているが積もるような降りではなく心配なさそうだ。斜面に取り付いて伐採地をジグザグに高度を上げて植林地に入り、目印を頼りになおも高度を上げる。植林帯は下草や笹が全くないのでどこでも歩けるからかえってルートがわかりにくい。

 やがて落葉樹林帯に入り、標高を上げていくと笹のお出ましだが、そこそこまともな登山道があるので笹藪漕ぎは必要なく、踏跡を辿るだけだ。ただ、標高が上がるに従って雪の量が増え始め、笹の葉にうっすらと積もるようになり、体に触れる笹のため濡れるようになったので上下のゴアを着た。気温は−5℃を下回るようになり、ゴアがあっても汗だくになるようなことはなかった。それどころか風も出てきてゴアなしでは寒いくらいになり、手袋をしていても手が冷たくなってきたのでオーバーミトンを取り出したほどだった。積雪は徐々に増えていったが1cm程度で歩くのに支障はなかった。

 

登山口近くの檜の植林帯 標高が上がると笹が出てくるが道がある
ガスに入るとうっすらと雪化粧 山頂直下 吹雪いて寒かった!

 

鎌薙ノ頭山頂 林道から見た鎌薙ノ頭、丸盆岳

 山頂直下の急な登りは雪で滑りやすく笹に掴まって体を引き上げ、傾斜が緩んだところが鎌薙ノ頭であった。山頂標識はないが地形的に山頂に違いないし、GPSもここが山頂だと教えている。狭いが笹が切れた平地があり幕営もできそうだ。雪交じりの冷たい西風が猛烈で、シラビソの影に隠れるように笹の上にシートを広げて無線の体勢を整える。気温は−7℃で風があるから体感温度はずっと低く、体の熱が逃げない内にありったけの防寒具を着込んだ。6mのDP張りは手が冷たいので手袋をしたままで、紐を縛るのに苦労する。よほど6mは割愛しようと思ったが、せっかくの荷物なので運用しないのはもったいなかった。

 ワッチすると強い局がいないのでCQを出すと2局目で奥積さん登場。今日はつながった。ここまで来るとロケもいいので59オーバーの強さだった。奥積さんと交信できればもう用はないのだが、次から次へと呼ばれてしまい、吹雪の中4,5局とQSOしてしまった。その間に気温が下がって−9℃! 寒気がどんどん侵攻してきたようだ。雪は止んできたのだが風は相変わらず強いままだ。

 あまりの寒さに飯を食うのも面倒だったが、エネルギー切れでバテたくないのでパンをかじり(凍ってなかった)お湯を飲んで下山開始。最初の下りで滑るので4本爪の軽アイゼンを付けて快調に歩くと徐々に周囲の風景から雪の白さが失われてゆき、いつのまにか雪雲の層から抜け出して周囲の山が見えるようになった。みんな白くなっているかと思ったらそんなことはなく、標高1900m以上だけが白いようだった。あの寒さが嘘のような景色だ。風も弱まり気温−5℃でも歩いていて暑さを感じるようになり、Tシャツに腕カバーの出で立ちでガンガン下り続け、とうとう林道に飛び出した。林道に積雪は皆無だった。
 7kmも延々と続く林道は、遠目に見ると傾斜がきつそうだが下りで歩いてみるとさほどではなく、今までのTシャツでは体が冷えすぎて寒くなり、長袖シャツに帽子が必要になった。途中、バードウォッチング用と思われる望遠鏡を3台、三脚に並べた3人組が林道脇に陣取って鎌薙ノ頭方面を見上げていたのに出会った。渡り鳥の調査だろうか? 体を全く動かさないで+2℃の気温はきついだろうなぁ。それ以外に人を見ることはなくゲートに到着した。

 

山王峡温泉しらかば荘(営業は15:00まで)

 まだしらかば荘の温泉に間に合う時間だったので、軽く着替えを済ませて車を走らせ駐車場に車を突っ込んだ。営業終了時間が早くて(15:00)間に合わないことばかりが続いたのでここに入るのは初めてで、営業しているか心配だったがちゃんとやっており(\400)、無人の浴室を独り占めだった。−9℃の後の温泉は格別だった。

 

 

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