奥秩父 大弛峠から朝日岳,金峰山,丸山
日本山名事典により増えた2000m峰の一つに丸山がある。金峰山と大日岩の中間地点にあり、登るなら大弛峠より金峰山を越えて往復した方が楽であろう。たったこれだけでも半日がかりの山行になってしまうがしょうがない。しかし、今回はオマケをつけて山行の意味をもう少し持たせることにした。交信回数No.1の奥積さんを連れて行くことにしたのだ。奥積さんは普段は自宅で無線機の前に1日中座っているだけなので足弱であることは間違いなく、金峰山程度なら適度な日帰りになるだろうし、南アルプス3000m峰よりの運用の足慣らしにもいいだろう。無線では金峰山が属する甲府市は甲府盆地の底に沈んで電波の飛びは悪く、てっぺんで運用すれば呼ばれるに違いない。
大弛峠駐車場 |
直前まで天気予報は暗雲漂う状態だったが、前日になって突然方向転換して土日ともそこそこの天気になったので出発、相模湖駅で待ちかまえて奥積さんを積み込み、少しだけ中央道を使って勝沼からいつもの道を使って峠に向かった。雨が上がるのは土曜朝の予報だったのでまだ雨が降っており、標高が上がるとガスも出てきて視界が悪くて慎重な運転が必要だった。林道に入ってすぐが工事現場で舗装が剥がされていたが、泥沼ではなく砂地だったので安心して通行できた。それ以後は全線舗装で昨年の工事現場もきれいに舗装されていた。峠には車が3台だけと静かで、舗装された駐車場の一番奥に陣取った。霧雨が降りしきり傘無しではすぐ濡れるくらいの降りだが朝には止むことを信じよう。私の車で2人寝るのは初めてで、運転席側の後部座席を展開してねぐらを作り荷物を整理して場所を確保したが充分であった。酒を飲んで4時間半の仮眠に入った。
充分明るくなった5時半ちょっと前に目が覚めるが、外はガスが流れていた。霧雨と言うほどではないが長時間当たると濡れるくらいで、はたして運用は大丈夫か心配になる。しかし予報は雨の心配はないといっており、時間の経過と共に天気は良くなるとのことで朝飯を食って出発した。もちろん傘にゴアを持ってである。既に2組先行して出発していた。
高度は2360m近くあるので高度差は大したことがない。シラビソ樹林に開かれた登山道を奥積さんを引き連れてゆっくりと歩く。無線機材は私が全部背負っているが、滅多に山に登らない奥積さんには自分の体を持ち上げるだけもきついかもしれない。樹林に入ればガスで濡れる心配もなく、木で露になった水滴が時々落ちてくるだけ、しかも何となく空が明るくなってきたようだ。一時的に青空も見え、どうやら雨雲ではなく稜線付近に雲が絡んでいるだけらしい。時間経過と共に薄まる期待もできよう。
2447mピークまでがまとまった登りで、朝日峠までは細かなアップダウンだ。朝日峠から再び登りになり、石が積み重なり見晴らしが良さそうな尾根を通過、先行の1組目を追い抜いて朝日岳山頂に到着した。ガスで何も見えないがGPSで距離を見ながら歩いたので現在位置はバッチリであった。ここで半分ガスが切れて雲海が広がっているのが見えた。もちろん上空は青空で、雲の上端すれすれらしく、金峰山は雲海の下で見えなかった。
ここから下って鉄山を巻き、緩やかに登っていくと山頂北の尾根に乗る直前に待望の森林限界を超える。しかしガスで何も見えないのは残念だ。奥積さんは雉打ちのため遅れているが、この先はどこでも歩けるから高いところ目指して歩いてくれば到着できるだろう。巨岩が積み重なる尾根をマーキングを見ながらルートを辿り、岩の屋根を潜ったところが山頂だった。
金峰山山頂 | 五丈岩 | 金峰山から見た南ア北部 |
11年降りの金峰山もガスで視界無し、でも前回よりは空は明るく待っていれば晴れそうな気配がある。運用場所を物色すべく最高地点の岩場等に登ったが岩が巨大すぎてポールを立てるのは難しそうなので、奥積さん到着後に山頂南側の、もう少し小さな石の積み重なりでアンテナを立てることにした。矮小なダケカンバにポール根元を縛り付け、岩にポールを支えさせて反対側にコケないようステーを1カ所だけ張ってOK、ほぼ無風なので適当な設営のみで間に合った。そうしているうちにガスが切れる時間帯もあって、初めて間近に五丈岩を見ることができたし、雲が絡んでいるが南ア北部も見えた。
奥積さんの運用時間は長いであろうから急いで丸山に行く必要はなく、どのくらい飛んで呼ばれるか確認してから出発することにして奥積さんの第1声、やっぱ1発目は空振りだったが、数回のCQでいきなり3エリア固定局からお声がかかった。さすがのロケーションである。JA3WPN植野さんともつながり、先週の日光白根より強い信号で金峰山のロケの良さがうかがえた。今週は鳥羽で無線の集まりがあるので関西方面の移動局は少なかったが、交信できた局の強さは日光白根を超えていた。
運用を初めてしばらくして知り合いの滝沢さんがやってきてお互いにビックリ。山頂で知っている人と偶然顔を合わせることは滅多にないが、まさかその相手が滝沢さんとは。昨夜から峠にお泊まりとのことで、先に駐車していた車の1台がそうだったわけだ。明日は北奥千丈岳のお手軽コースだそうで、このまま峠で泊まるとのことだった。
金峰山西側の稜線(右端が丸山) | 丸山山頂 |
滝沢さんと色々しゃべってから丸山に向けて出発した。標高差300m下って登り返すもったいないルートだがしょうがなく、ガスで隠れたり晴れたりする天気の中、ギザギザの尾根を細かいアップダウンを繰り返しながら標高を下げ、金峰山荘分岐を通過して尾根から外れるところで森林限界が終わって樹林に入る。どんどん下っていきなだらかな長い尾根に乗り、それが急激に下がり始める肩が丸山山頂だった。樹林に囲まれ視界がないタダの肩なので普通の人なら休むこともせずに通過するだろう。こちらはGPSがあるからずっと手前から山頂の位置を把握していたので問題ないが。無線機の電源を入れると奥積さんが出ていたので声をかけ、片づけて金峰山に戻った。
お昼近くの金峰山は大賑わいで、奥積さんの周囲にも飯を食う人だかりがあったが、五丈岩北側の平地が人気の場所だった。たぶん大弛峠の駐車場はいっぱいで山梨側に向かって縦列駐車の列ができているだろう。奥積さんはまだマイクを手放さず、何だかんだで5時間以上運用して撤収した。ちなみにこんな長時間山頂にいる登山者は皆無であろう。
下山時も登りがあるのは精神的にも疲れる。朝日岳の登りでは日差しが出てきてしまい暑かった! 朝日峠から先のアップダウンも疲れる。やっぱ単純な道の方が楽だ。峠に戻ると6mのヘンテナを組立中の人がおり、奥積さんとQSOした局だった。滝沢さんは車中でくつろいでおり、少しの間ラグってから私と奥積さんは下界に向かった。奥積さんは明日は用事があるので帰らなくてはならないのだからしょうがない。牧丘の温泉で汗を洗い流し、塩山駅で奥積さんを降ろして乾徳山登山口に向かった。