南ア南部 栂村山、青田山 2003年11月23日

 

 栂村山はほぼ無名の山といって良かろう。インターネットで調べると具体的登山記録は無く、ルートの中に栂村山があるだけ、ようは見出しだけあるが中身がないものしか見あたらなかった。私が奥茶臼山、前茶臼山に登ったときでさえすぐ近くに栂村山があるのを知らなかったくらいだから、一般登山対象とはならないのであろう。

 ただし、登るにはさほど苦労が無い山ではある。栂村山南側直下まで国道152号線地蔵峠入口から青木林道ができており、それを歩けばいい。ただし、この林道は入口にゲートが設置されていて車で入ることはできず、治山作業だか林業作業か知らないが、頻繁に車が出入りしているのでそれに追い越されるのはなんとも悔しいものである。しかも終点まで11〜13kmあったと記憶している。数年前に奥茶臼山、前茶臼山に登ったときはこの林道を使ったが、馬鹿正直に林道を歩くのは手間がかかるため、尾根を登って大幅なショートカットをした。藪がない尾根で歩きやすかったと記憶している。青木林道終点手前が栂村山南直下で、シラビソが広い範囲で立ち枯れ日当たりの良い場所だった。

 今回もそこから登ってもいいが、またあの長い道を歩いて栂村山1山では面白くない。そこで今回は「裏口」から攻めることにした。栂村山北側には青田山があり、その西側に林道がある。これをたどって栂村山と青田山に登ろうというわけだ。ゲートの有無や林道の荒れ方等、はたしてどこまで車で入れるのか全く情報がないが、最低でも1173m地点までは入れるだろうと予想した。うまくいけば終点まで入れるかもしれない。そうすれば青木林道よりも大幅な労力削除が可能だ。

 国道152号線沿いの高森町A-COOPで買い物を済ませ、松川町から県道を通って小渋川沿いに出て毎度の国道152号線に出て南下、小渋川を渡って左の分岐に注意しながら進む。エアリアマップではすぐに分岐があるはずだが、それらしき道に入ったらすぐに行き止まりで、もう1つ先の分岐はしっかりと「北の原」の標識もあって左折する。地図で見ると青田林道まで複雑な分岐の繰り返しでたどり着けるか心配であったが、途中までは「松下家」を目標にし、その後はメイン道路と思われる道をたどった。工事中で未舗装の区間を越えると再び舗装になり、牧場を越えると高原状になる。そのまま直進(南)方向にはダートが上がり、左手もダートが下っているが、メイン道路はどう見ても左の道である。雰囲気は1173m地点と思われたがGPSで確認するとまさにそのとおりで、直進が青田林道に間違いない。こんな風に書くと簡単に行けそうに見えるが、集落内には分岐がたくさんあってとても迷いやすい。とにかく、メインの道をたどって高いところ目指すのが肝心である。最上部の牧畜農家前を通れば正解である。

 ちょっと見ると普通車で大丈夫かいなと感じる道であるが、それなりに車が入っている雰囲気である。入れるところまで入ろうと乗り入れた。すぐに道が2分岐し、左手は行き止まり標識、直進は踏みつけられてフリーパスと化したワイアーロープの車止めだが、ここは直進である。最初は尾根西側を巻く岩っぽい砂利道でガタガタだが、高度を上げるに従って唐松植林帯になって路面も良くなり安心して走れるようになる。いくつか分岐があるが轍が濃い道が正解である。青田山北西斜面をジグザグる道で廃屋と化した造林小屋を見る。1480m付近のカーブ前後がぬかるんで2WD車ではスタックの恐れがある。一度は突破したが帰りが不安なのでUターンして再び泥濘を抜け、造林小屋前の平地に駐車した。考えてみれば登りで突破できたのだから下りなら問題ないのでそのまま行けるところまで入っても良かったのだが・・・。空気が乾燥した晩秋でぬかるんでいるのだから湧き水による泥濘で年中こんな状態なのだろう。林道入口とこの泥濘だけが悪路で、他はとってもきれいで走りやすい林道だった。

 造林小屋前の平地は伐採された枝が散乱し、植林された唐松の枝が横に張りだし車を突っ込めないので邪魔な枝をどかし、ナタで唐松の枝打ちをして車を入れた。林道入口から約4km、1時間以上の歩きの節約になった。今夜が寒気の底なので冷え込むだろうなぁと思いつつ、酒を飲んで寝た。

 翌朝、起きてみるとガラスの水滴は凍らないままで、予想よりも冷えていなかったのだろうか。でも、この日は飯田の最低気温が-0.5度で、ここは標高1400mちょっとだから5度くらい低くてもおかしくない。もちろん外は霜が降りていた。お湯を沸かして朝食を取って、明るくなってから出発した。

 外に出てもそれほど寒いとは感じなかったのは意外だった。とはいえいきなりTシャツは寒いので、最初は防寒着フル装備である。斜面をジグザグる林道は無視して唐松植林帯を直登、下草が全くないので快調に登れる。標高1500m付近で林道に出てからはそのまま林道を歩き、帰りがけに青田山へ取り付く場所を考えながら歩く。唐松が終わると若干笹が出てくるが、次はシラビソ林になって再び笹が消えた。たぶん1620m付近だと思うが、何の標識だったか忘れてしまったが尾根にとりつけそうな踏み跡らしき雰囲気の場所があった。まあ、藪がないからどこからでも取り付けるが。

 エアリアマップを見ながら歩いたので細かい地形は分からなかったが、1653m標高点を過ぎてジグザグるところで地形図に書いてある林道の他にさらに尾根を登る林道が分岐し、そちらの林道の方が轍が深く、本来の青田林道は車が入った雰囲気が感じられなかった。そこで轍の深い林道をたどったが尾根を乗り越えているので明らかに地形図記載の林道ではないので、ここから尾根を登ることにした。

 最初は藪の無い苔生したシラビソ樹林で、順調に歩ける。傾斜が急になってくると同時に突如として間伐地帯に突入、自然林なのだが太い木を残して他は伐採され、それが地面に放置されているので、いわば「人工倒木地帯」である。足の踏み場もないほどで、いちいち越えていくのは鬱陶しいことこのうえない。しかしかなり広い範囲で伐採を行っているようで、少し横にずれても続いており、隙間を縫ったりまたぎ越えたり。傾斜が緩んでも同じような伐採地が続くが尾根の右側(西側)は伐採されていないので、境界の尾根を歩いた。

 やがて唐松の植林地帯に変わり、1934mピークと思われる高まりに到着、尾根が広がって主尾根がどこなのかわかりにくくなるが、右手の植林帯がそうであった。やがて再び尾根がはっきりし、やや開けた唐松林を登ると頂上付近のみシラビソが藪のように繁ったピークに出て、ここは左を巻いた。唐松の尾根を南下すると正面には栂村山らしいピークが見えてくるが、手前は凹地になっていて、右手が主尾根のようだ。地形図を見ると1970mピーク群だったのだろう。帰りのために目印を付けながらそちらの尾根に移ると目印と薄い踏み跡が現れた。なーんだ、こっちの尾根がルートなのか。帰りはここをたどればいいか。

 2020mまでは唐松林の明瞭な尾根で、それ以上は尾根ではなくただの急斜面になり、帰りが心配になるが紫色のビニール紐が点々と付いているので下りも大丈夫だろう。登り切ったところが三角点のある肩であり「栂村山 2113m」の標識がかかっていた。地形図を見ると確かにここを指して栂村山とされているが、我らが武内資料ではここの南にある2160mピークを山頂としている。GPSで調べると277mであり、尾根を南に登ると鹿避けの柵が出現、柵に沿って東に登っていくと南側は立ち枯れたシラビソ樹林になった。ここは青木林道を歩いたときに終点付近で広がっていた光景に違いない。あ〜あ、あの時栂村山に気づいていればわざわざ1日かけて登りなおさなくても良かったのだが。最後に急な登りをこなすと東西に長い山頂に到着、GPSの指示に従って東よりを山頂とした。ここは標識はないがテープ等は何カ所にも見られ、壊れたストックが落ちていたくらいだから訪れる人はそれなりにいるらしい。

 ここでとうとうICレコーダが電池切れ。昨日から再生時に時々電池切れマークが点灯していたが、いよいよ録音中に落ちるようになったため、新品電池と交換することに。しかし電池を入れ替えたのに電源が入らない。まさか間違えて古い電池を持ってきてしまったのだろうか? でも古くても最低限電池切れマークくらいは表示されるはずで、何も表示されないのはおかしい。電池を取り出して見てみると、なんと液漏れしたのかそれとも湿気で錆びたのか分からないが電極が腐食していた。それをこそげ取って入れ直すと今度はOK。よかったぁ。

 シラビソに覆われて全く視界はなく、せっかくの快晴でも日光が届かない寒い山頂であった。防寒着は全て着込んで無線の準備、144,430は応答が無く6mを覗いてみると徳島県美馬郡移動1局のみが強力だったのでお声がけ、JR5GYFも一緒だった。南アルプス市をリクエストされたが、今の時期は寒すぎるし北沢峠まで歩かなくてはならないので来年6月までお預けだ。徳島なら仙丈ヶ岳で楽勝だろう。さらにワッチすると先ほどは出ていなかったJP2NJS/2三重郡雲母峰を発見して無事QSO、林道からではなく下から登ったそうだ。昨日も出ていたのだが時間帯が合わずにQSOできなかったことが判明した。奥積さんの消息を聞くと今日も昨日も声を聞いていないとのことで、どこかの手伝いでお出かけらしいとの情報を聞いた。一体どこで何をやっているのやら。

 奥積さんとはつながらなかったが吉原さんとQSOできれば充分であり、寒さも手伝って早々に撤退することにした。時間があれば木曽御嶽山中腹にある小三笠山でも立ち寄りたいと考えたこともあるが。帰りは踏み跡のある尾根を歩いたが、尾根がだだっ広くなるところで進路を北に振りすぎて結局は主尾根に戻ってしまった。しかしそのままでは人工倒木地帯との格闘を免れないので左手に巻き気味に下り、伐採地帯が終わってから尾根に戻った。

 すぐに林道が尾根を乗り越える場所に出て、長野ナンバーの車が止まっていた。やっぱ4WD車ならここまで入れるわけだ。どうも雉打ちしていたらしい。長野ナンバーと言うことは地元車ではないが、鉄砲打ちだろうか。そのまま尾根を南下、シラビソから落葉樹林に変わっても藪は出てこず快適な尾根歩きを楽しむ。青田山南鞍部では明瞭な作業道が横切った。そこから適当に斜面を登っていくと薄い笹の登場。鹿道?をつないで登り、左手に笹がない地面が見えてくると進路を変えてそちらに向かい笹が切れ、あとは高まりを目指して歩くと青田山山頂だった。

 山頂標識はなく、三角点がぽつんとあるだけだった。おっと、目印テープくらいはあるが。北側に少しだけ視界が開け、分杭峠が見えていた。明るい広葉樹林で日差しが暖かい。6mをワッチするとどういうわけだか福岡県筑紫郡移動局が聞こえるではないか。ダメモトで呼んでみたがやはりダメだった。でもこんなところが聞こえるとは何らかの異常伝搬が発生していたようだ。CQを出すとJQ2CKB/2山梨県東八代郡御坂町大栃山とJF3XWM/3豊能郡がQSO中。辰巳さんは昨日もQSOしているが、どっちがCQを出しているのだろうか。CKB牧野さんがCQの主で呼ぶと応答があった。続いてワッチすると辰巳さんのCQが出始めたのですかさずコール、本日も無事QSOできた。

 これで言うことはない成果が得られたので撤収、磁石で北西を確認し斜面を下っていくともくろみ通りの位置で林道に出て、そのまま下って車に到着した。

 帰りがけに鹿塩温泉にでも浸かっていこうとしたが、この連休中は山塩館は立ち寄り湯はやっていなくて2回連続で入れなかった。強塩泉がどんなものなのか楽しみだったのになぁ。他にも入浴可の温泉はあったが、駐車場は満杯状態で混んでいそうなのでパスした。他にも温泉はあるからいいか。

 今回の「裏口ルート」は大成功だった。これから奥茶臼山を目指す人は青木林道ではなく青田林道を利用するのがベストである。奥茶臼山、前茶臼山、栂村山、青田山とワンデイ4山が可能で、しかも林道終点近くまで車で入れ、林道歩きは少なくて済む。こんなおいしいルートがあるとは思わなかった。前回にこっちから入っていれば栂村山、青田山もできたんだけどなぁ。なぜ気づかなかったのか、今となっては不思議である。やはり、ガイドブックのみ信用するのではなく、地図を見て自分でルートを考える習慣を付けるべきか。



6:16車−6:25林道−6:57青田林道分岐−7:00尾根に取り付く−7:09伐採地帯−7:45踏み跡−8:03三角点着−8:07三角点発−8:11鹿避けの柵−8:18栂村山着−9:19栂村山発−9:30栂村山三角点−9:39往路を外れる−9:50主尾根に戻ってしまう−10:02林道−10:11鞍部−10:28青田山着−11:24青田山発−11:33林道−11:36車

 

栂村山、青田山 写真集

 

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