南ア北部 三ッ石山 2003年11月9日

 

 三ッ石山は仙丈ヶ岳から西に延びる尾根上、つまり南ア林道長野側が張り付いている尾根にあり、登山道はない。しかし南ア林道を途中まで歩いて尾根に取り付けば簡単に登れそうな山である。そんなわけで事前調査はしなかったが、帰ってからインターネットで調べたら登山記録は皆無だった。ここも武内級の山と言えるのか。隣の地蔵尾根は標高2000mまで唐松の植林が続いていたので、もしかしたら同じような尾根かなぁと考えていた。だとしたらあまり藪はないだろうと、雨が予想された日曜日に登ることにした。何故か今年は週末のお天気が悪く、先週の3連休も最終日の黒沢山は雨だった。ゴアが雨具として登場する出番が多い。

 戸台大橋付近は駐車スペースがなかったので、戸台川を少し下った工事用出入口と書かれた細い道を河原の方に下ると広い駐車スペースがあった。ここなら安心して寝られるいい場所だった。明日行われる衆議院選挙関連番組をラジオで聞きながら酒を飲み、PM8時には寝てしまった。ちなみに私は不在者投票済みなので明日も安心して遊んでいられる。

 夜半まで月が出ていたようで外が明るかったが、日付が変わると雲に覆われたらしく暗くなった。AM3時は星は見えなくなっていて風が強くなってきた。起床した5時も風が強く星は見えなかった。どうやら天気予報通り下り坂だ。ラジオの天気予報では長野県地方は中部南部とも曇りで夕方まで時々雨。既に一雨来たようでフロントガラスに水滴が付いていた。さて、いつまで天気が持つだろうか。

 なま暖かい風が吹くなか出発、もちろん傘とゴアは忘れない。昨日の天気と正反対の低い鉛色の雲に気分が萎える。まだ雨が降っていない分だけマシだが、これで雨だったら諦めて帰っていたことだろう。車道に出るとウォーキングをしてるジモティーと遭遇、こんな天気なのにご苦労様。この人は戸台大橋で引き返していったが、こちらはここからが本番である。ゲートは無人で、今シーズンの北沢峠行きバスは営業終了と出ていた。南ア林道は自転車も通行禁止だが歩きは構わないとある。ここのゲートは厳重で、電動式で堰のような鉄板を上下させる方式だ。管理人が無人の時期では林業関係者でさえ入れないのではないか。それとも管理棟の鍵を持っていてゲート操作ができるのだろうか。

 最初は林道をダラダラ歩こうとしたが、面倒なので尾根をショートカットすることにした。歩きやすい落葉広葉樹林帯を選んで急斜面を登っていくと汗が出てくる。日中は気温の上昇が鈍いのかもしれないが、昨日の暖気が残って朝は暖かすぎる。傾斜が緩むと廃林道らしい開けた場所で、少し登ると舗装された林道に出た。面倒なのでこの先もずっと尾根のショートカットを続ける。落葉樹林のなかにぽつんとある松の木の根本に祠があったが、おそらく今となっては忘れ去られた存在だろうな。

 最後のヘアピンを突っ切って尾根に取り付くと、林道は尾根北側を巻きはじめて稜線から離れていく。尾根には何となく踏み跡があるが、古い作業道のようで横枝が生えた樹林の中を登っていく。これなら北側の自然林を歩いた方がすっきりしていたなぁ。やがて左半分が唐松植林地帯に変わり、自然林沿いの境界を適当に登っていく。途中にあるはずの三角点は気づかなかった。おそらく1440mの肩だと思うが雨量観測所が建っていた。この頃には雨が降り出し、強い南風にあおられながらも傘でしのいだ。

 この先も落葉自然林、唐松林が続き、明瞭な踏み跡はないが藪がないので自由に歩ける。風を直接受けないように稜線より少し北に下ったところを選んで歩いた。たま〜に目印が出てくる程度だが、明瞭な尾根なのでたぶん磁石を頼りに下山できるだろうと目印は付けずに歩いた。雨降ってたし。やがてシラビソが混じるようになり、いつのまにか広葉樹にとって変わってシラビソ樹林になった。こっちの方が葉っぱがある分、南風と雨を退けてくれるので助かった。

 長い登りが続いたがやっと肩のような場所を通過、1808mだろう。コーヒー牛乳のパックが刺さった枝を見て登ると1840mピークだ。シラビソに覆われている。目印に従って右手に下るが、いつになっても下ったままだし、右手にもっと高い尾根が見えているので間違いに気づいて1840mピークに戻る。その尾根に乗って下っていくと風向きがおかしい。先ほどまでは右から吹いていた風が左に変わっている。前線が通過して風向きが変わったのかなぁと勝手に納得する。そしてさっき見たコーヒー牛乳をまた見て、きっと同じやつが付けたのだなぁと考えながら肩に到着、尾根が分かれるので磁石で方向を確認したら、なんと西を向いて歩いている!! そんな馬鹿な。頭が混乱してしまった。まさかリグのスピーカで方位磁石の磁気が影響を受けて南北が反転しているのではとか、自分の行動を正当化しようとろくなことを考えない。こんな時はGPSで三ッ石山を呼び出して距離が離れるか近づくかで確認できるのだが、残念ながら樹林が深くて衛星初期捕捉ができなかった。でもやっぱ方位磁石を信用すべきだろう、元来た道を戻って三度1840mピークに立った。

 ここを西にたどれば三ッ石山のはずだ。よく見るとその方向は倒木地帯で、栂の幼木と世代交代中なので思いっきり藪だった。雨で濡れた葉っぱを潜り直進しようとしたが、あまりにも藪が酷いのでやや北側に迂回しながら進んだ。ポツリと目印もある。下山時は大きく北側を巻いたがそれが正解である。鞍部から登りにかかっても栂の幼木が続くが隙間がでてくるので尾根上を歩ける。再びシラビソ樹林に入って急な登りをこなすと肩に出て樹林が切れる。その先は尾根が細くなり岩っぽくなってきて、昨日の小日影山の危険地帯を思い起こさせる。しかし、よくよく見れば手がかり足がかりは多いし、落っこちそうな崖と言うほどでもない。濡れた岩で滑らないように慎重によじ登った。それを過ぎると傾斜は相当きついがシラビソ樹林で安全に登れた。ようやく尾根らしくなったが左に屈曲、こりゃ下りできついなぁ。間違わないように周囲の木の特徴を頭にたたき込む。

 シラビソ樹林を登っていくと時々赤布を見るようになり山頂の一角に到着、左に折れたところに三角点が鎮座していた。標識は皆無、シラビソに覆われて視界も皆無だった。あまり人が来た雰囲気はない。もっと人が来ても不思議ではない位置にあるのだが。目印は赤布の他に白いテープ、ピンクのテープが北の方に続いていた。後で地図を見たら北側に太い尾根が延び林道のトンネルで交差しているので、ここから登るルートらしい。林道歩きが延々と続いて味気ないかもしれないが、もしかしたらこのルートの方が楽だったかなぁ。

 昨日と違って気温が低くTシャツの上にゴアではやや寒いくらいだ。それでもまだみぞれになるほどの気温ではなく、手袋なしでもちょっとかじかむ程度で済んだ。今日は汗を洗い流すために温泉に入るのではなく体を温めるために温泉に入りたい気分だ。先の栂の幼木漕ぎで水が染みこんだようで靴下やパンツが濡れてしまった。あとは下山するだけなので我慢するか。

 いつの間にか雨が止んだようだが、葉っぱから水滴が落ちてくるので雨と変わらない。430で一声出すが応答が無く、6mも広範囲で悪天だろうから移動局も全国的に少ないだろうとQSOに苦労しそうな予感が。案の定ワッチしても弱い局が1局のみでとてもピコ6では応答が期待できないレベルだ。ちょっとだけ期待していた吉原さんの声も聞こえなかった。しょうがないのでCQを出したら意外にもすぐに地元局から応答があってQSOできた。

 この天気ではこれ以上無線を続ける気力は涌かず撤収して下山を開始した。難関は山頂直下の細い尾根への取り付きだ。地図で見ても分かるように途中まではただの斜面で尾根地形ではない。それでいて肝心な場所には目印がないので、方位磁石で西を確認しながら慎重に下っていく。はっきりした尾根が左手に下っているがこれは途中で消える運命にあるので無視だ。急斜面を下っていくと足下に主稜線が続いているのが見えてきて一安心、登りでおっかなびっくりだった岩場も下りではなんてことはない。普通は下りの方が怖いはずだが、昨日もそうだったが何故だろう?? 幼木地帯を巻いて1840mピークに出れば藪はおしまい、尾根を外さないよう磁石を時々チェックしながら淡々と下っていった。雨は完全に止んでゴアは不要だったが体温で少しでも乾かそうと着たまま歩いた。車道に出てそのままショートカット、最後の車道歩きでゴアを脱いだが今度は雨が落ちてきたので傘をさした。無人のゲート脇を通過、ポツンと止まっている車に戻った。

 あまり汗をかかなかったので中央道の渋滞を避けるため温泉はパス、杖突峠を通過(茅野市側トンネルで気温6度)し、小淵沢ICから中央道に乗って帰った。甲府盆地は薄日が感じられるくらいの明るい曇りだったが、例の如く笹子トンネルを抜けると小雨が降るようになって気温が下がり、とても山登りに出かける気分にはなれない天候だった。これでは選挙の投票率が伸び悩むのもしょうがないのかなぁ。ちなみに、私の選挙区は東京18区、民主党菅代表vs自民党鳩山候補の注目区であり、月曜日の新聞で投票率を見たら離島を除いて東京都内では最高の投票率(といっても63%)だった。


6:11出発−6:19戸台大橋−6:27斜面に取り付く−6:49車道を横切る−6:55祠−6:57車道を横切る−7:01車道を横切る−7:15雨が降ってくる−7:19雨量観測所−8:27 1840mピーク−8:32尾根を間違えて戻る−8:37 1840mピーク−8:43逆方向に歩いているのに気づき戻る−8:47 1840mピーク−9:23三ッ石山着−9:48三ッ石山発−10:13 1840mピーク−10:45雨量観測所−10:52車道−10:54車道−10:57車道−11:06車道−11:14戸台大橋−11:22車

 


三ッ石山 写真集(雨が降っていたので枚数が少ない)

 

山域別2000m峰リストに戻る

 

ホームページトップに戻る