中ア北部 大棚入山、水沢山  2003年11月1日

 

 中央アルプスは茶臼山から北部は急激に高度を下げて、権兵衛峠から経ヶ岳に突き上げて伊那盆地に消える尾根と、大棚入山を経由して日義村、楢川村を経由して大鉢森山へとかろうじてつながる尾根に分かれる。大棚入山は標高2300mを越えるが、エアリアマップを見る限りでは登山道はない。その西側にある水沢山も2000m峰だがこれも道はない。中央アルプスの主稜線はどちらの尾根をさすのかよくわからないが、せっかくの2000m峰だから登らない手はない。一度に2山稼げるのなら、私の2000m峰残り数からすれば効率がいい部類に入るだろう。

 道がないから適当に登るしかないが、まずはインターネットで登山記録があるか調べてみたら1件だけヒットした。それによると木曽日義林道から登ったが、水沢山は登れたが倒木が多くて大棚入山までは行かなかったとなっていた。詳細な記録は書かれていないが藪はないらしい。地図を見ると水沢山西側を巻いている林道が、車で入れる一番高い標高地点だ。この林道の最高地点から登ることにした。登山口の標高は1250mなので標高差は約1100m、日帰りとしては楽勝の部類に入る。ただし、倒木がどの程度あるのかが問題だ。まあ、藪漕ぎするよりはずっとマシだと思うが。

 文化の日の3連休は遠くまで出かけるか悩んだが、雪が降る前に2000m峰を稼ぐべく中央アルプスに的を絞った。体力が充実した初日は安平路山から奥念丈岳間の登り残しを片づける予定だったが、実行直前に天気予報が急変して土曜日の午前は雨になってしまい、笹藪漕ぎが待ちかまえているルートを歩く気はしないので、藪がないらしい大棚入山に変更した。塩尻まで中央道を走り、久しぶりに19号線を木曽福島に向けて南下する。夜中だから平均70km/h以上で快適に走れた。しかし走りすぎて予定していた林道入口を見落としてしまい、道の駅の先で木曽駒高原の案内を見て左折、ロードマップを見て現在位置を確認し、予定とは反対側から林道に入ることにした。しかしロードマップをよく見なかったため勘違いをしてしまい、木曽駒高原に行ってしまい、だいぶ時間をロスってしまった。やっと誤りに気づいて林道入口を探し当て、舗装された林道を最高点目指して走り、左手にゲートが閉まった電波塔への道が分岐するところが目的地だった。広くなっているので駐車には問題ない。まだ月が輝いて天候が悪化するように見えないが、明日朝はどうなっているだろうか。酒を飲んで寝た。

 翌朝、藪の状態が不明なので明るくなってから出発した。天気は思ったより悪くはないようで、曇っているが隙間が見える。これから回復するのか悪化するのかよくわからない。でもこの雲の高さだと山頂は雲の中かなぁ。尾根に取り付こうとすると廃林道があったのでそれを使うがすぐにおしまいになり、尾根に上がった。藪はなく左手は植林地帯、右手は自然林だ。すぐに自然林になって目印を付けながら適当に登る。傾斜は急で木に掴まりながらよじ登っていく。尾根は複雑に分岐するので目印がなければ同じ場所に下るのは無理だろうな。右から太い尾根が合流してくる。

 尾根が広くなると笹がお出ましだ。うう、インターネットの情報と違うぞ。しかし漕ぐほどの密度ではなく特に支障はない程度だ。古い道の痕跡だろうか、溝がほじくれている。その中を歩いたり、近くの藪が薄いところを歩いたりした。ところが徐々に密度が濃くなってきて、尾根直上は鬱陶しいくらいになってきたので藪が薄い北側に逃げると笹が切れた。少しの間、北斜面を登っていった。このまま笹藪だと先が思いやられるなぁと心配したが、これより先は背の高い笹は消え失せて膝くらいの密度が低い笹に切り替わり、快適に登れた。雨は降っていないが時々ガスが流れる。

 標高1650m付近だと思うが、傾斜が緩んでくるところで本日初めての目印が目に入った。林班界標識もある。この先は林班界らしく、尾根の上には標識や目印が点々と付いていた。笹が切れてシラビソ樹林に変わり、歩きやすい尾根だ。踏跡は部分的には登山道があるのではないかと勘違いするほどはっきりしている。いつの間にか雲の層を抜けたようで、霧が晴れてきた。

 急な登りが続き効率よく高度を上げ、傾斜が緩むと三角点が出現した。木が伐採され木曽谷が見えるようになっているが、下の方は雲に蓋をされて見えない。三角点は最高点ではなく、東に盛り上がりがある。地形図を見ると小ピークが2つあり、どちらも2010m等高線が通っているが、現場で見ると西側のピークが高いような気がしたのでそちらを山頂とする。

 この時期としては気温は高めだが、雲って風も吹いて少々寒いので防寒着を着込む。144,430メインでメンバーや石川さんを呼び出すが応答はなく、430メインを付けっぱなしにして6mを開始する。ワッチするとJF3XWM/3豊能郡が強力だ。しかしピコ6のメータがほとんど振れない。おかしい。送信してもメータはピクリとも振れない。これはメータの故障だな。あとで点検しないと。受信でSメータが振れなくてもいつも耳Sでレポートは送っているから問題ないが、送信で振れないと電池切れが分からないのは困る。辰巳さんとは無事59-59でQSOできた。あっちはガスって小雨模様だという。

 さあ、まだ先があるので無線は1局でおしまいにして出発した。標高差は300mちょっとなので何事もなければ楽勝だが、この先が倒木帯なのだろうな。案の定、歩き出していきなり倒木帯が始まる。稜線は風が強いからだろうか、場所によってはシラビソが何重にも折り重なって倒れている。それらを乗り越えたり潜ったり、時には巻いたりしてやり過ごす。でも一貫してシラビソ樹林が続いて藪がないのは大変助かる。これに灌木の藪が出てきたらやっかいだろうなぁ。目印等は皆無だが、獣道らしき筋が所々で現れる。動物たちも倒木を逃げるようで巻いている箇所がいくつもあった。

 進むに従って倒木が減ってきて、後半は歩きやすいシラビソの尾根を淡々と歩けば良かった。ただ、2重山稜もあり(たぶん標高2200mくらい)、目印を慎重に付けながら登るのを怠らない。最後に突き上げたところが2320mピークで、文字が読めないがプレートがかかっていた。久しぶりの人工物である。そういえば水沢山より先には林班界標識は無かったなぁ。

 この先はまずは笹。膝丈くらいなのでどうと言うことはないが、ちょっと濡れているのでイヤなところだ。少しならいいだろうとゴアを履かないで我慢して通過。左手が切れ落ちるようになると高山帯の様相になり、石楠花や栂の幼木のお出ましだ。部分的に濃いところもあるが、獣道は南を巻いているところもある。藪っぽいところを抜けると草付きの気持ちいい尾根に変わり、振り向けば2320mピークが見える。登り切ったところが2360mピークで、北側はハイマツだった。南側は開けて休憩にはいい場所だ。笹とシラビソ樹林が混じった尾根を下り、緩く登り返すと腰ほどの高さの笹原の続く大棚入山山頂だった。

 山頂は一面の笹原で、西側に草付きがあって休める。三角点が無いかと笹をゴソゴソやって捜したら、ほぼ最高点にあった。山頂付近の木には目印があるだけで山頂標識は無かった。ここもKUMOが似合うだろう。笹の中にストックが落ちていた。置き忘れか? 目印にと枝に引っかけた。天気はいつのまにか回復し、日差しがさんさんと降り注ぎ快適だ。濡れたズボンも乾きそうだ。ただ西風がちょっと冷たいが。

 笹の上を避けて草付きに待避し、144,430で声を出してから6mを運用、JR1IQL/0松本市移動の浅野さんとと7L2LTO/3神埼郡とQSOできた。浅野さんは実家がある高山で法事ついでの移動だそうだ。法事は明日だけなので、今日と明後日は無線三昧とのことだった。LTOは福井に行く途中だそうで、遠くまでご苦労様。その後430で石川さんを呼ぶとかろうじてつながり、2.5WでどうにかQSOできた。

 下山は目印を頼りに忠実に尾根を下った。特に林班界標識が無くなった後の尾根は広がっているので目印がなければ車から外れた所に下っていた可能性が高い。主尾根ではなく枝尾根に見える細い尾根に下る箇所もあった。ようやく林道が見えてきて車に到着した。車には唐松の葉が積もっていて、見ている間にも風に乗ってパラパラと唐松の葉が落ちてきた。もう少しで完全に落葉するな。

 着替えを済ませてガイドブックで温泉を捜すと、すぐ近くに日帰り入浴可能な秀山荘温泉があることがわかり、そこに向かった。まだ午後2時前でフロントに人がいないくらいだが、掃除をしているオジサンを捕まえて無事入浴できた(\500)。浴槽は酸化した鉄分で真っ茶色、かなり高温で私でも10秒も浴槽に入っていられない程だった。たぶん夕方には適度になるのかな。飲料用の源泉もあり、飲んでみると炭酸飲料のように二酸化炭素の泡が感じられた。成分表では温泉1リットルに1500mgの二酸化炭素が含まれているそうだ。なぜか飼い猫がたくさんいた。汗と埃を洗い流してさっぱりし、明日の目的地である摺古木自然園を目指した。

 大棚入山は思ったよりも簡単に登ることができラッキーだった。林班界が走る尾根はどれなのかわからないが、そこを選べば笹藪に突っ込むことなく水沢山に登れるのではないだろうか。中アは何故か笹が多いが、この尾根は2320mピークまではほとんど笹がないので助かった。さて、山ランメンバーでは次にこの山に登るのは誰だろうか。


6:10車−6:51笹藪−7:01笹藪突破−7:07背の低い笹−7:13林班界標識−7:58水沢山三角点−7:59水沢山山頂着−8:27水沢山山発−9:47 2320mピーク−10:01 2360mピーク−10:09大棚入山着−10:57大棚入山発−11:04 2320mピーク−11:14草付き−11:19 2320mピーク−12:13水沢山−12:36林班界標識−13:02車

 

大棚入山、水沢山 写真集


 

山域別2000m峰リストに戻る

 

ホームページトップに戻る