南ア北部 黒河山、二児山、南ア南部 尾高山 2003年9月20日
本当に今年の夏(もう秋か?)は天気が悪い。特に週末は全滅状態で、平日は晴れても週末になると台風が来たり雨が降ったりとアルプスの山が遠い。消化不良で胃もたれしそうだ。悪い予報になっても何とか我慢して山に行くことは行っているが、1泊が必要な本格的な山を雨の中登ったり藪漕ぎしたりする元気はなく、日帰りばかりが続いている。今週末は1日休めば4連休なのだが大変天気が悪く、台風の影響で前線が刺激されて土曜日から雨、月曜には関東に接近するという。これでは4連休にして山に行っても雨風でとんでもない。土曜朝のみもしかしたら雨が降らないかもしれないので日曜日を捨てる覚悟で出かけた。出発時点での日曜日の降水確率は70%だった。
問題の行き先だが、暑い間の期間限定2000m峰に登るのだがなにせ残りが少なく日帰りで行ける山の選択は悩ましい。今回は北から前線が南下してくるので南ほど天気の崩れが遅く、できれば長野南部にしたい。そこで浮かんだのは2,3週間前に登った笹山〜小黒山に続く黒河山と二児山だ。ここは標高1700mまで林道で上がれるので標高差500mで済むので労力は少なく所要時間も短いから雨が降る前に降りられるかもしれない。問題は藪の程度だが笹山のように背の低い笹なら、距離は笹山〜入山よりも短いから簡単だろう。しかし笹が雨で濡れていたら最悪だが。もし時間が余ったらさらに南下して尾高山でも稼ごう。1日3山は少ないが、残り僅かな2000m峰が稼げるのだ、文句は言えない。それに黒河山、二児山はおそらく武内さんしか申請していないだろう。
あと、もう一つ問題が。眼鏡がないこと。先週の山行で眼鏡を踏んでしまいフレームが曲がってしまったが、そのため会社にいるときにレンズが外れて床に落ち割れてしまったのだ。火曜日に修理に出したが直るのが日曜日とのことで山行に間に合わなかった。まあ、運転用の度が強い眼鏡があるので使えるが、近くを見ると頭が痛くなってしまうのでポイントで使うことになるだろう。道があれば出番はないかもしれない。
黒河山、二児山は登山道はないので黒河林道から適当に登ればいいが、インターネットで検索したら2件ヒットし、1件は北川牧場から、もう1件は黒河牧場から入っていたが、黒河牧場の方が標高が高いのでこちらがいいだろう。藪があるとは書いていないから樹林帯だろう。これはいいぞ。牧場内の林道を終点まで入ったと書かれていたが、牧場は車両進入禁止の看板があったはずなのでそこから歩けばいい。そこでさえ標高は1700mもあるのだから。
金曜日、仕事を終えて風呂に入って出発、諏訪ICで降りて国道152号線を使い高遠経由で分杭峠を越え、黒河林道に入った。2週間前に後藤さんと通ったので入口はバッチリだ。まだ舗装工事中で通行止めの表示があったが、前回も通れたので大丈夫だろうと入ってみると案の定問題なし、前回より工事が進んで走りやすくなっていた。北川牧場分岐を通過し、ダートに変わってトラバース道になると黒河牧場入口だ。看板を見ると車両進入禁止となっているのでそこに車を置いて寝た。しかし、実際は車両の草地への乗り入れ禁止と書かれていて林道部分は車で入っても良かったのだった。ゲートは施錠されていないから手で開けられた。
翌朝、起きると灰色の雲が立ちこめていたが雨は降っていない。天気予報だと昼前から雨と言っているからできるだけ早く出発した方がいいだろう。朝食を取ってパッキングを済ませ出発した。このコースは短いし標高もさほど高くはないので防寒装備等は置いて軽量化した。一面の空だが雲は高いようで、恵那山は頭を出していたり、中ア稜線はガスが絡んでいたが基本的には見えていた。
ゲートを手で開けて砂利の林道を歩き始めるとすぐに足場パイプの第2ゲートが現れる。これも手で動かせるので問題なし。これが実質的な牛のゲートになっているようだ。またぎ越す。ここから先は林道は牧場の一部となり、牛が道にも出現する。牛はおとなしく人間を襲うことはまずないと思うが、1mの近距離を通過するのは怖かった。牛はこっちにガンを飛ばしていたが動く気配はなかった。これは牛科のカモシカと同じ行動だ。林道には牛糞があちらこちらに落ちていた。
林道は右に左にウネウネしていて、上部の状況が見えるときはショートカットして牧草地を登った。そこは牛糞よりも鹿の糞の方が遥かに多かった。20頭くらいの鹿の群が逃げていく。鹿と牛に草が喰われるので背丈は芝生のようだ。上部に行けば行くほど鹿の領域となっていた。ほとんど鹿の放牧場だ。牛糞と鹿の糞を踏まないよう眼鏡が必要だった。
林道終点は池があり、砂利がフェードアウトして芝生状の草地に変化していた。ここまで普通車でも注意すれば走れる路面で、標高はなんと2050mだった。100mも登らずに黒河山に到達してしまうのだ。笹山以南に登る場合もここを出発点にするのがいいだろう。GPSで見ると笹山は南部に500mだった。真東に林道があると思ったらけっこう北上していた。下山時に稜線からはここは樹林で見えず、降りる場所が分からないハズなので久しぶりにGPSに位置をメモした。これでお帰りも安心だ。目印を付ける必要がない。
雨の心配があるのでその前に黒河山をやってしまった方がいいだろうと考え、二児山を後回しにして黒河山に向かうことにした。草地の東端まで行ってから適当に鹿道を辿って稜線を目指す。草地の次はシラビソ樹林で、笹山ではほとんど枯れていたがこっちはそこまで鹿の食害が進んでおらず細いシラビソが密生していた。その中に人間の踏み跡と変わらない立派な鹿道がついていた。それらを適当につないで稜線に上がると鹿道よりグレードが落ちる踏み跡とテープがあった。まあ、踏み跡と言っても稜線を通るタダの鹿道だろうが。ここまで藪無し。その後も藪のない樹林が黒河山まで続き、三角点の鎮座する黒河山山頂にあっさり到着した。
樹林に囲まれ視界がないのは予想の内だが、視界があれば南アの展望台なんだけどなぁ。笹山でも見た標識にKWVもあった。こんな山にこそKUMOや達筆標識が似合う。南側に上空が開けた部分があるので2エレくらいなら上がりそうだった。430と2mメインで一声出してサブチャンをワッチするが聞こえないので6mをワッチ、DPにピコ6、しかも1エリアは3000m峰の壁が存在するので弱い。それでも1局だけ香取郡からCQが出ていてそこそこ強く、無事QSOできた。雨が心配でできるだけ早く二児山に向かいたかったのでこれで撤収した。
ここから二児山までは一貫してシラビソ樹林を歩く。目印が点々と付けられているのでそれを頼りにしたり、尾根を外さない範囲で自分なりに歩きやすい場所を歩いた。一部だけ細い木が密集して歩きにくい所があるが、そんな場所は尾根直上を避けて少し下を迂回した。縦横無尽に鹿道があるので利用した。1箇所だけ肩の部分で小さな岩だが展望がいい場所があって二児山までの様子が見えた。草付きか笹の尾根が見えたのだが、それは尾根の西斜面であって稜線上はずっと樹林だった。この付近のみ黄色の目印だった。
二児山までは小さなピークが連続しなかなか到着しない。真面目にGPSをつけながら歩けば残距離がわかってニセピークに騙されないが、ここはGPSを出すほどではないので有視界飛行でずっと歩いた。やっとまとまった登りが始まって山頂直下でシラビソ幼木中の切り開きを歩いて(ここのみ体に葉が触れて濡れてしまった)、小広い二児山山頂に到着した。既に少し雨が降り出したがまもなくやんだので傘を使わなくて済んだ。
ここも樹林に囲まれて視界はなく、手製標識がかかっていた。今度はKWVや笹山にあった標識はなかった。ここまで来なかったのかな? こちらの方が黒河山より明るい感じで、無線をするには向いていそうだ。これはツガの大きな木は枯れて幼木と世代交代中なので日当たりが多少はいいからだろう。でも何10年かすると木が成長して薄暗くなってしまうか。
144、430で一声出した後6mを運用、今度はJP2NJS吉原さん/3蒲生郡@綿向山を発見、今週も無事にQSOできた。それどころか吉原さんとラグっているところをJA3WPN植野さんに捕獲された。3エリアの固定まで飛ぶんだなぁ。やっぱ西にはロケがいい地域だ。その後、何とかJG1OPH奥積さんを捕まえるべくワッチをし、強そうな局を探し、QSOを引き延ばして奥積さんを間接的に引き込む作戦を立てた。笹山等の経験からこっちでCQを出しても奥積さんの所ではスキャンで引っかかるような強さでは届かず、誰かとQSOしてその相手を奥積さんに発見させた方が確率が高いと判断したからだ。そしたらJR2ULS/2南牟婁郡を呼ぶ奥積さんの弱い信号が聞こえ、QSOが終わってからULSを私が呼んで奥積さんに私の存在を間接的に伝えた。さらにワッチすると今度は奥積さんがJI?4KKE/4とQSOに苦しんでいる様子を発見、こっちは両方の信号が51〜55で聞こえるがお互いに苦労しているようだった。さっきのULSより奥積さんが強く、これなら気づくかもしれない。やっとRS交換が終わってお互いに信号が取れなくなったので、オンフレで奥積さんを呼ぶと無事つながり、QSYしてQSOできた。よかったぁ。
これでとりあえずの目的は終了、下山開始。そのとき、一時的だが日光が雲の隙間からこぼれ、天候が回復するかもと淡い期待が。まあ、大局的に見れば下り坂だろうけど少しでも雨の降り出しが遅れた方が助かる。お帰りは細いシラビソの密集地で尾根を一つ西に外してしまったが、どのみち林道に降りるとき西に行かなくてはならないのでそのまま南下、ただし妙なところに下ると困るのでGPSを取り出して林道終点をセットした。笹原に変わってから小さな尾根を越えるとピタリ林道終点だった。さすがGPSの威力。意外にもあのシラビソ樹林でも電波がとぎれることがなかった。インターネットで見た黒河山の記事ではほとんどGPSは受信できないと書かれていたがetrexシリーズではない機種だったのだろうか。その後は林道大幅ショートカットで車に戻った。往路ですぐ脇を歩いてガン飛ばされた茶色の牛はゲート脇で寝ていた。そういえばゲート外の林道にまで牛糞が落ちていたが、どこか秘密の抜け穴があるのだろうか。車のそばに牛がうろついていたら近寄れる勇気があるかどうか自信がない。
さあ、まだお昼まで時間がある。尾高山なら車からすぐなので雨が降ってきても傘を持って登れるだろうと、林道を進んで国道152号線に出てさらに南下、地蔵峠を通過して標識に従ってシラビソ高原方向に進む。数km先に落石ありと書かれていたが、通行止めとは書かれていなかったので心配しながらも入ると道の脇に落石が避けられていた。夜間は通行止めと書かれていたが、落石の影響だろうか。尾高山登山口には立派な案内標識があり、近くに駐車場もありすぐに分かる。大沢岳にいく遠山林道がここから始まるが、ここは歩く機会はないだろうなぁ。少し前から雨が断続的に降り始め、マイクロバスで来た団体はゴアを着て出発していった。こっちは車内で昼飯を食っているうちに雨が小降りになり、傘を持ってアタックザックで出発した。標高差400m、ゴアを防寒着代わりにして防寒着も持たなかった。当然、登りでは汗をかくからTシャツに半ズボンの出で立ちのままだった。
さすが道は良く、眼鏡なしでも問題ない。背の高いシラビソ樹林で雨が遮られるため森の中では傘は要らなかった。畳んで手に持って歩いた。すぐに大集団に追いつき追い越した。やっぱゴア上下を着て登るのは暑いだろうなぁ。関西訛りのしゃべりだがこんな変な山に来るとはどういう集団だろう? ここは有名じゃないよなぁ。前尾高山と書かれた小ピークを越え、ダラダラと標高を稼ぎ、最後の人登りで岩が出た山頂に到着した。ここは上空のみ開けているが周囲はシラビソ樹林で視界はなかった。まあこの標高ではねぇ。しかし雨が本降りになってきて上空が開けた山頂では雨がもろに当たるので無線がやりにくい。少し奥に平らな樹林中の広場があったのでそっちに移った。DPを張ると知多郡移動が強く即QSO、それで撤収した。あの雨じゃ長時間粘れない。一応144、430で一声出したりワッチしたが関係者はいなかった。この辺りは430の「電波の谷間」らしくサブチャンでもほとんど入感無しのガラガラ状態だった。
下りは濡れたシラビソの根で滑りやすく、1度は思いっきり背中からたたきつけられるほど豪勢にコケてしまった。眼鏡をしていても注意を怠ると根を踏んでしまう。細い根でもよく滑るから困ったもんだ。大集団とすれ違い、山頂にいた2パーティーを追い越して既に本降りの駐車場に到着した。本当は御池山、炭焼山にも立ち寄ろうと考えていたが、この雨では気力が萎えてしまい次回とした。
国道152号線は細く、対向車に気を使わなくてはならないので飯田経由で帰ろうかとも考えたが、地図を見ると152号が圧倒的に短距離だし信号皆無で渋滞はないしでそのまま来た道を戻った。夜間と違って対向車の接近が分からず神経を使った。山間部に慣れない連中は前が見えない場所でもど真ん中を通ってくるから困る。雨とガスで薄暗いのだからライトくらい付けてくれればいいものを。
雨はやむことなく降り続け、渋滞を避けるための時間調整で大月から乗ってもザアザア降りだった。珍しくも小仏トンネル渋滞はなく、高井戸先頭に11km渋滞なんて珍しいパターンだったが、時間調整で渋滞解消後調布ICに到着し、難なく帰り着いた。
5:43牧場入口−5:56牛と遭遇−5:59鹿の群れを見る−6:02ショートカット−6:24林道終点−6:30稜線に出る−6:37黒河山着−6:53黒河山発−7:07見晴らしのいい岩−7:55二児山着−8:38二児山発−8:40二児山西峰分岐−8:49念丈倶楽部の看板のある小ピーク−9:16牧場に出る−9:21林道終点−9:43牧場入口
11:33シラビソ峠登山口−12:04前尾高山−12:39尾高山着−12:54尾高山発−13:08コケた−13:47登山口
黒河山、二児山、尾高山 写真集