奥秩父 剣ガ峰、ゴトメキ、遠見山 2003年9月6日

 

 

 9月最初の週末は後藤さんと出かける予定になっていて、天気が良ければ北アの霞沢岳を考えていたのだが、残念ながら週末は北の方ほど天気が悪く、テント泊まりすると雨に降られそうだったので南の方で候補を探した。後藤さんの帰りが遅く、金曜夜の出発は夜11時近くと思われ、テント泊では適度な光岳を考えたが睡眠時間がゼロになりかねない。結局、土曜日は軽い山にして日曜日をメインにするしかなさそうで、南アでも無い限り1泊するような山は残っていないので日帰り2連発とした。

 問題の場所であるが、この時期はまだ暑いので最低でも2000mは欲しいところだ。数少ない2000m峰の残りは国師ヶ岳南部の剣が峰、北部の長峰、金峰山西側の飯盛山くらいしかなく、長峰まで回るのは時間がかかるので土曜は剣が峰、飯盛山でいいだろう。ここなら近いから車の移動時間も短くて済むし、登山時間も短いからゆっくり寝てゆっくり出かけても問題ないだろう。

 問題は日曜日だが、もし天気が良ければ富士山もいいかと考えた。私の山ラン稼ぎにはならないが後藤さんが無線を楽しむにはいいし、私が登ったときは視界無しで終わってしまったので天気がいいときに登って風景を楽しみたいという思いもあった。そこで一応日曜は富士山を優先と決めた。土曜は軽い山だから体力的には問題なかろう。

 夜11時近く出発、勝沼で降りて先週通った道を途中まで辿って大弛峠を目指す。ただ、今回は途中にある鶏冠山林道入口だ。ここは何度も通過しているので場所はわかる。ダム工事現場を過ぎて林道に入り、鶏冠山林道のゲート付近にある駐車余地で酒を飲んで寝た。そこでGPSのデータを入力したが、緯度経度資料にはゴトメキ付近の遠見山というコンサイス記載の山があることがわかり、飯盛山の代わりに登ることにした。これなら車の移動時間は不要になる。ただし、どちらも道がないので後藤さんは大弛峠から北奥千丈岳に登ることにした。天気予報では山梨でも土曜日朝は雨との予報だったが満天の星空だった。

 

鶏冠山林道入口ゲート 鶏冠山林道から見た剣ガ峰

 

 翌朝は薄い雲が広がっていたが、隙間から青空も見えるまあまあの天気になった。今日の山は軽い山なので荷物を減らしてアタックザックで出かけた。標高は大したことはないので防寒着は要らないだろう。このゲート前に正午集合と決めて後藤さんは車で走り去り、私は林道を歩き出した。

 この林道の先では治山工事か何かをやっているようで、ダンプカーやライトバンなど工事関係車両が鍵を開けて入っていった。そこを歩くのだから気分がいいはずはない。合計10台以上に追い越されただろう。道の状態は良くて普通車でも全く問題がない道だった。途中からは舗装になる。バイクでもあれば楽できるのだが。

 歩き出してすぐに、林道脇の木の上に2頭の動物を発見、木の上にいる動物といえば猿と相場が決まっているが、大きさは猿サイズだが全身真っ黒だった。そう、なんとツキノワグマの子供だった。ダンプや車がガンガン通る林道のすぐ脇に熊がいるのだから驚きだ。それも私が歩いていてもいっこうに気にする気配がない。距離は2,30mくらいだろうか、林道の谷側の木なので、木の上と言っても私の視線の高さだ。小熊がいると言うことは近くに親熊がいるはずで、襲われかねない状況なので静かにその場を去った。もちろん逆戻りするのではなく先に進んだのだが。これが大人の熊だったら山に登るのを諦めたかもなぁ。でも北海道のヒグマの鳴き声を聞いたり100m先の藪でガサゴソやってるのを目撃した経験からすれば、まだまだ危機感は低かったが。

 

琴川源流 シラビ平のゴトメキ方面入口


 あとは延々と林道歩きが続き、剣が峰とつながる尾根を乗り越すポイントをチェック、帰りはここから剣が峰に登るのだから。踏み跡、目印はなかったがツガの樹林で歩くのは支障がないようだった。その後は舗装になって傾斜が緩んでシラビ平に向けて淡々と歩く。林道脇にはあちこちで水がわき出して水を持ってきたのがばからしくなるほどだ。琴川水源の看板もあった。

 古ぼけた東屋が現れると峠で、国師が岳方面と黒金山方面の分岐標識が出てきた。国師方面は入口の踏み跡は薄いし、黒金山方面もなんか細いなぁ。往年の名コースも大弛峠の車道が開通してからはその役目を終えたのだろう。心許ない踏み跡を南に入った。しかし樹林にはいるとしっかりした道になり、間違える不安は感じられない。先週の鶏冠山で見たのと同じ種類の比較的新しい標識も設置されているので、完全に放置されているのではないらしい。しかし倒木がいくつも道をふさぎ、跨いだり潜ったりだ。

 

ゴトメキ山頂

 なだらかに登ると広場に出て、そこがゴトメキだった。妙な名前だが一応ピークである。ここは山ラン無効だが、もしかしたら新コンサイスに出ないとも限らないので一応QSOしておくことに(ちなみに山名事典に掲載されました)。ゴトメキで驚いたことは、何と指導標識の一つに「遠見山」があったことだ。エアリアマップには道がないのだが、実際には道があったのだ。これは大収穫だ。

 この時間なら吉原さんがいるだろうとワッチするといました、いつもの御在所だった。すぐに奥積さんにも捕獲され、今日明日の予定を伝えた。さすが奥秩父2000m峰のロケーションは良く、59オーバーで入感していた。一方の吉原さんは苦しいようで、半分くらいしか話の内容が分からないようでラグチューできる状況ではなかった。まだ後藤さんの電波は聞こえなかった。奥積情報によれば大和さんは乗鞍から出ているようで、既につながったという。目的の山はやったと言っていたそうなので、おそらく3000m峰の大日岳から出たのだろうか。かなり風が強いらしい。そういえばこっちでも強烈な西風が吹いて木がざわめいて音が聞き取りにくい。樹林中だから直接風は当たらないが乗鞍だときついかも。

 さあ、道があるなら楽勝だ、遠見山に向けて出発だ。今までよりは薄い踏み跡だが、はっきりと踏み跡だと判別できるし赤テープもある。しかしピークを越えて鞍部に出ると道が消え失せてしまった。周囲を探してもどうしても分からなかったので、尾根を適当に登ることにした。ツガの樹林なので藪はないから適当に歩ける。ピークに立つと再び標識が現れたがルートはどうなっているのだろう? 下りはどこでも歩けるような疎林で踏み跡はどこにあるのかわからないが、とにかく尾根を歩けば遠見山に出るので気にせず歩いた。最低鞍部からは踏み跡がはっきりとしてそれを歩いて遠見山に到着した。

 

遠見山山頂 遠見山山頂標識

 

 三角点があり、赤地さんの達筆標識が出迎えた。あらら、赤地さんは既に登っていたのか。なかなかやるな。不思議なことに登頂月日は塗りつぶして書き直されており、本当は最初に書かれた日に登る予定だったのが何らかの理由で登れなかったため、後日登ったらしい。無線は奥積さん捕獲のためCQを出したら先にJE3PUG/1沼田市が呼んできて、次に奥積さんに捕獲された。PUGは3エリアや7エリアからのリクエストで沼田にやってきたとのこと。いつもはこちらが声をかけるのだが珍しくも反対の立場だった。後藤さんが運用していたため(でも奥積さんより弱かった)声をかけ、思ったより林道歩きが長いので集合時間を1時間半遅らせる旨を伝えた。北奥千丈岳は猛烈に風が強く、釣り竿先端が折れてアンテナがこけてしまったそうだ。今は花崗岩の上に2エレを置いて運用中とのことだった。

 後藤さんとのQSOも終わりの頃に430ハンディー機から大和さんのCQが聞こえたので急遽430に移行、指定周波数が聞き取れずにサブチャンをグルグルやって433.02で発見、1発でつながった。乗鞍の摩利支天で建物の影で運用中とのこと、モービルの混信でとぎれとぎれだがガスと強風で屏風岳は断念したがここで3箇所目だという。ということは2山は大日岳と朝日岳だろうか。特に朝日岳はこんな天気でもないと登れないし。あとはどこに立ち寄るのか、混信が激しくて聞けなかったが、できるだけヤバい所に登ってくれるといいが。

 来た道を戻り(といっても行きに道が分からなかったところは帰りも分からなかった)、車道を歩いて剣が峰へと取り付いた。やはりシラビソ樹林で適当に歩けた。しかし部分的に幼木が生えている場所もあって、歩きやすい場所を探して左へと回り込んだ。目印は無いが登りは高いところを目指せばいいので気楽だ。

 

林道から剣ガ峰への取付場所 剣ガ峰山頂

 

 登り切ると樹林が切れて低い笹原が出現し、そこが山頂だった。そしてここにも達筆標識があった。う〜む、なかなか赤地さんも渋いところを攻めるなぁ。日付は遠見山で消されている方と同じだったような。私のように2つつなげて登る予定だったのだろうか。無線はJR1GNH/1館山市を呼んだのを奥積さんに捕獲された。館山市でも強風とのことで、前線に向かって暖かい南風が吹き込んでいるのだろう。既に後藤さんは運用を終えたようで聞こえなかった。

 下りはショートカットで西の尾根を下ることにした。適当に歩いていればどこかで林道に出るのであまり神経質になる必要はない。笹があるのでゴアの下を履いた。しかしすぐに笹は消え失せ、下草のない急斜面の唐松林に変わった。これが林道まで続いたので、こっちの方が歩きやすい。林道に出た地点は林道補修用砂利採石場脇だった。

 あとは林道を歩くだけだが、例の熊を見た場所だけが気がかりだ。まさかそこに長居していることは無いだろうが、やはり不安だ。どこだか詳細には覚えていなかったが、現場にくると見覚えのある風景ですぐに分かった。そして何と木は別だったがやっぱ近くに熊が木の上にいた。今度は半分葉に隠れてはっきりした姿は見えないが、あの異様に黒い物体を完全には隠しきれていないので一目で分かった。今度は小熊なのか親熊なのか分からず、あまり妙な態度を取って熊に襲われるのはイヤなのでそしらぬ顔で現場を通過した。しばらくは熊も静観していたようだが(固まっていた?)、ある程度距離が離れるとガサガサと木を降りる音がし、荒い鼻息が聞こえて遠ざかっていく音が聞こえた。やはりツキノワグマは基本的にはおとなしい動物だった。しかしまあ、数時間も同じ場所にいるということは、何らかの生活拠点があるのだろうか。

 そこから数分でゲート到着、後藤さんの車が止まっていた。

 さあ、問題はこれからの予定だ。この風が明日まで続くようでは富士山に登っても無線はできないが、収まって天気良くなるのだったら行ってみたい。情報源は後藤さんの携帯があるのでまずは下界で買い物をしながらi-modeで情報を見ることにした。牧丘町営の温泉で汗を洗い流し(といっても強風で寒いくらいで汗はほとんどかかなかった)、塩山市内のスーパーで買い物後、後藤さんが天気予報を見たが風の状況と天気図は見えなかった。残念ながら甲府盆地は風が弱く、富士山の様子は傘雲がかかっているので強風だと知ることができるが、明日の状況はわからない。南西の風が吹いているので、もしこのまま風向きが変わらないと富士吉田側から登ると富士山にブロックされて風が無くてもお釜に出たとたんにとんでもない風だとわかるかもしれない。その点、御殿場側だと登山口にいながらにして風の状態が分かるが、そこまで行くのに時間がかかるし、帰りも時間がかかる。それにどのみち風が強くて断念した場合の行き先がない。

 後藤さんと相談の結果、リスクを犯してまで行くよりも別の山に行こうと言うことになり、以前から気になっていた小黒山から笹山に転進することにした。ここは塩見登山口の鳥倉林道に近い場所で、大鹿村までの移動になる。一宮御坂ICで中央道に乗り、諏訪ICで降りて国道152号を南下した。

6:56鶏冠山林道入口−7:03熊を見る−7:07林道分岐−7:45剣ヶ峰取付点−8:19琴川源泉−8:26シラベ平東屋−8:26ゴトメキ方面分岐−8:47ゴトメキ着−9:06ゴトメキ発−9:26遠見山着−10:03遠見山発−10:25ゴトメキ−10:40林道−11:18剣ヶ峰取付点−11:36剣ヶ峰着−12:03剣ヶ峰発−12:11林道−12:32熊を見る−12:39鶏冠山林道入口

 

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