八ヶ岳 大同心(岩登りしないルート) 2003年8月10日
横岳から見た大同心(岬のような出っ張り) |
世間一般ではお盆休みが始まる8月9日土曜日は台風が日本を直撃した。木曜日は沖縄周辺、金曜日は四国が暴風域に入り、関西中心部を通って日本海沿岸に沿って北東に進み北海道襟裳岬をかすめて東海上へと遠ざかったが、土曜日朝に関西、日中は北陸を通ったため関東甲信越でも大荒れの天候となった。できれば北アの前穂から西穂を歩こうと考えていたが、まさか台風直撃コースでは3000m岩稜帯は危険すぎる。どこか低山でもと考えたが、朝から風雨が激しく無線はできないであろう。しかたなく土曜日は休養&移動日にして、日曜日の台風一過を信じて日帰りで出かけることにした。
問題の行き先であるが、なにせアルプスクラスで日帰りできる登り残しの山はそうは多くない。ほとんどは道がない、若しくは有無が不明な山ばかりだが、その中で稜線から問題なく行けるとの情報があって地理的に近いのが八ヶ岳の大同心だ。大同心が山ラン有効だなんてずっと知らず、誰かがお山の大将でリストアップされたのを見て初めて知ったくらいだから、すぐ脇を通ったことはあるが登ってはいない。JF9DJFの情報ではルートは全く問題なしとのことだ。まあDJFと私では危険地帯の経験の差はあるだろうが。美濃戸口からの標高差ならば余裕の日帰りが可能だろう。あの付近はまだレンタカーを使っていない頃に登ったため2回に分けているが、2回とも天気が悪かった。今回の山行でその分を取り返せるだろう。台風一過だったらの話だが。今年の雨乞岳は台風通過翌日だったのに雨だった。
土曜午後3時前に家を出発したが風雨ともに強く、カッパを着ないと外出できないほどだった。高速に乗ると強烈な南風が横から吹き付け車がふらついて怖いくらいだった。本当に明日は回復するよなぁ。八王子から先の山間部に入ってからは山に邪魔されて風は収まった。上野原ICから先は甲州街道を北上、そういえば大垂水峠は降雨規制で通行止めとのことだった。あんなところが止められるほどだからかなりな大雨だったようだ。その先もまさか通行止めになってないよなぁと心配しながら走ったが、甲州街道は大丈夫だった。国道52号線富士街道は身延町から先が通行止めと出ていた。釜無川も濁った水が流れていた。
甲府盆地に入っても風は収まったままで、甲州街道を離れて八ヶ岳中央高原を上がってもやはりほぼ無風、どうやら台風が遠ざかっていき影響が薄れてきたようだ。道路には水が流れた跡や吹き飛ばされた木の葉が散乱しており台風のすさまじさを感じさせる。心配していた美濃戸口バス停から先の林道も少し荒れてはいるがゆっくり走れば普通車の通行に問題はなかった。前回も駐車した林道が2又に分岐する所に駐車した。なにせ終点の駐車場は\1000/1日するから、わずか15分の歩きだったらタダの方がいい。酒を飲んで天候の回復を祈って寝た。さすが高度1500mは涼しくて快適だった。
翌朝は余裕の日帰りコースということもあってゆっくり起きても良かったが、4時を過ぎてから次々と車が上がってきてうるさく、前後に駐車する車もいて起きだしてしまった。こいつら、俺が何でここの駐車しているのか分かっているだろうか。有料でいいんならちゃんと奥に駐車場があるんだぜ。
夜中にトイレに起きたときは星空だったから大丈夫だろうと思ったが、夜明け直線直後でまだ暗い空だと色が分からないから晴れているのか曇っているのかわからない。しかし明るさが増すと快晴だと分かり、稜線にも雲はかかっておらず道がないであろう大同心に登るには絶好の天気だった。何せ危険地帯で慎重にルートを選ばないといけない場合、ガスで先が見えないとルートファインディングが困難だ。
駐車スペースから15分で林道終点地点の山小屋群で、駐車場の入りはまだ半分くらいか。出発準備をしている人の姿が見られた。大半は行き先は赤岳だろうか。私は大同心だけ登ればいいが、大同心は赤岳鉱泉から稜線に上がる場所と行者小屋から稜線に上がる場所の中間地点にあり、ルートをどちらにとっても大差はなさそうで、どうせならと周遊ルートを考えた。行きは行者小屋から地蔵尾根を上がり、横岳を越えて大同心に登り、帰りは硫黄岳を登って赤岳鉱泉経由で美濃戸口に戻る予定だ。横岳、硫黄岳はQSO済みなので無線は大同心しか行わない。1山なら430だけでもいいが、奥積さんの悲しむ顔が浮かんで6mもピコ6にDP、ケーブルフィッシャーを持っていくことにした。これらが無ければ1kgは軽量化できるんだけどなぁ。
登りは行者小屋経由なので南沢に入る。昨日の台風で増水が心配だったが、渡渉不可な所は橋が架かっていたし、橋がない所はどうにか渡渉が可能だった。ただし助走しないと飛べない距離の場所もあったからまだ水かさは増しているようだった。普段は乾いている登山道も沢になっていたし、美濃戸中山に登ったときに登山道から分かれた広い河原も川になっていた。その河原からはローソクのように飛び出した大同心らしき岩山が見え、あんなところに本当に登れるのか?と不安になる。まあ、登れなくて偵察になってもいいか、これだけ天気が良ければ山は楽しめるだろう。赤岳は雲一つ無い姿を現していた。
2時間で行者小屋到着、小屋の玄関にはいくつもの大ザックが置かれていたが、これは昨日台風で幕営を諦めて素泊まりした連中が、空身で赤岳往復しに行っているのだろう。もうここまで来れば赤岳は目の前、1時間くらいで行けるのではないだろうか。こっちの行き先は小屋から左に入ってすぐ上がる道に入る地蔵尾根だ。阿弥陀岳〜赤岳、横岳をやったときにここは歩いたことがあり、僅かに記憶もあった。展望の開けたところからは木曽御岳、乗鞍岳、槍穂から立山、剣、後立山まで全て見えるほど空気の透明度が良かった。これだけでも来たかいがあった。まだ濡れている岩場を鎖に掴まりながら登り切ると縦走路に出た。
ここから見る赤岳は圧巻で、これぞ八ヶ岳の盟主といった風格が漂う。頂上小屋もはっきり見え、登っている人の姿も見られた。右手には中岳、阿弥陀ヶ岳と続き、振り返ると横岳の一連の峰だ。南アは鋸岳が見えているが、千丈ヶ岳以東は雲の中だった。鋸は横岳、三角点峰、第1高点まで見えていた。懐かしいなぁ。清里辺りは晴れていたが奥秩父方面は雲の中で見えなかった。
さあ、稜線漫歩の始まりだ。心配していた西風もほとんど無く、日差しが強くて風が恋しいくらいだ。以前ここを歩いたときは濃いガスと強風で何も見えなかったが、どんな地形だったかまだ記憶があった。ピークを右に左に巻いて鎖場を上がり、3差路を通過した先が横岳の山頂だった。中央アルプスはやや雲がかかりながらも姿を現し、南越百までは雲海の上だ。残念ながら北や東の方は雲がわき上がって山は見えなかった。
縦走路から見た大同心 | 大同心から見た縦走路(踏跡有) | 大同心山頂(背景は赤岳) |
肝心の大同心だが、なんと踏跡が見えるではないか! 地図を見るとゲジゲジマークだらけで主稜線から西に降りられるか心配だったが、大同心へと続く尾根の斜面は問題なく歩けそうだった。あ〜あ、助かった。DJFの言葉に嘘はなかった。あれなら誰でも歩けそうだ。一方の小同心は横岳山頂から直接下る尾根なのだが、横岳直下はえらい急で、ザイルなしでも何とかなるかもしれないが危険が伴いそうな角度だった。とりあえず小同心は山ラン無効なので今回は登らないが、新コンサイスに掲載されたら何らかの対策が必要だろう。尾根を直接下るよりも大同心方面から藪を漕いで尾根を巻きながら取り付いた方が危険が少ないかもしれない。それでもかなりの急斜面をトラバースすることになりそうだ(後日、そのような踏跡を発見し、危険箇所もなく小同心にも登れてしまった)。
横岳を越えて次の小ピークで道を外して大同心へと向かった。道にはロープが張ってあるがガスって道を間違えないためのものだろうと、周囲に誰もいないのを幸いに潜っていった。斜面は岩があったりザレ場だったり花があったりと様々なので適当に歩きやすい所を選んで下っていくと踏み跡がはっきりしてくる。あとは踏み跡を辿るだけだ。コマクサが多いので踏まないように足下を注意する。ガスっていたらどうしよう?と思っていたが、晴れて視界がいいときに見てみると、どこでも適当に歩けるからガスっていても方向さえ間違わなければ問題なさそうだ。小ピークから真西に進めばいい。足に触れる草木があるので雨や朝露に濡れた時間はスパッツがあった方がいいだろう。山頂は小広い平らな場所だった。稜線と結ぶ尾根以外は絶壁で、やはり一般人は縦走路からの往復しかできないと感じた。
さあ無線だ。430で一声出しサブチャンを一通りワッチするがそれらしい声は聞こえず、メインを付けっぱなしにして6mを組み立てワッチ、久しぶりにJQ1BXG/0鬼無里村を見つけてQSOを始めたとたんに430で7K1CVP/0上伊那郡中央アルプス烏帽子岳からCQが出て、6mでしゃべりながら430のサブに移りワッチを継続、BXGとQSOが終わってから鈴木さんを呼んだところ1発で返事が返ってきた。烏帽子岳とのことでどこの烏帽子岳なのか聞いたら、中央アルプス念丈岳東の烏帽子岳だった。なんとシブい所だ。中央アルプスは念丈、奥念丈周辺しか残っておらず、夏の藪漕ぎはイヤなので烏帽子と合わせてこの秋にでも行こうと考えていたが鈴木さんが登っているとは。烏帽子までは笹はないとのことで、ただこの先から笹も出てくるし、念丈まで2時間はかかるとのことで今日はここまでにしようかなぁと言っていた。やっぱ涼しくなってからが正解だろう。
再び6mに復帰し、聞こえている局のお声がけ、JO2RBH/0黒姫山、JG3XTZ/3篠山市、JE3PUG/1山田郡、JR4EUD/4神石郡等とQSOした。今日はEスポで8エリアが開けていたが局数は少なくバンドがごちゃごちゃにになるほどではなかった。奥積さんと引っかけるために10分ほど空振りCQを出したが、主稜線に邪魔されて弱いからか、はたまた無線機の前にいなかったからか声はかからずじまいだった。ま、CVPとQSOできたからいいか。
1時間近く山頂にいただろうか、あまり腹は減っていなかったがそろそろエネルギー切れの時間なので軽く飯を食って出発した。ロープを越えていくので人がいる前では堂々と現れるわけにもいかず、硫黄岳方面からの人の列を見て急いで上がったら単独の男性にバッタリ会ってしまった。そっちに道があるのですかと聞かれたので、あっちは岩のルートですと答えておいた。あ〜、変なこと言われないでよかった。
夏山らしく徐々にガスが上がってくるようになり、縦走路の下りで真っ白なガスに突っ込んで、こっちから大同心の写真を撮影しようと思っていたのに残念だった、と思ったらガスが切れる時間もあって無事写真撮影できた。こっちから見ると簡単に登れそうに見える。なんだ、硫黄岳の方からにすればよかったかな? そうすれば早めに安心できたかも。この下りではあちこちにコマクサが見られた。このロープはコマクサが踏み荒らされないように張ってあるようだ。
稜線東に張り付いた硫黄岳小屋を通過し、だだっ広い石の散らばった尾根を硫黄岳に向けて緩やかに登り返す。高さ3mはあろうかという巨大ケルンが何本も立っているから、ガスってもいい目印になる。やはり日帰りの軽い装備なので登りも楽々だ。先週は最後の方は苦しかったけど。
2度目の硫黄岳山頂はやっぱりだだっ広かった。三角点は東に下ったところにあるので今回も割愛、山頂で写真のみ撮影する。ここまで来ると天狗岳等も間近だ。あそこは何年前に登ったんだろうか。季節運行の麦草峠のバスの便が少なくて時間的に厳しく、いくつかの山は後回しにしたんだったっけ。北八つは天狗に邪魔されて蓼科山しか見えないがガスはかかっておらずいい夏山を楽しめそうだ。南ア鋸岳は既にガスで覆われて見えなかった。北ア方面も松本付近の雲が上がってきて見えなかった。
前回無線をやった避難小屋脇を通過し下山にかかる。峰の松目もQSO済みなのでパス、赤岳鉱泉へ向けて下る。振り返ると硫黄岳はなだらかではなくきりりと締まったとがったピークに見えるから不思議だ。すぐに樹林に入って涼しい下りになる。上がってくる人が多く、今日はどこまで歩くのだろうか。そろそろお昼の時間だからあまり遠くはないか。硫黄岳はこっちでいいのかと聞かれたり、上の天気はどうかと聞かれたりする。
赤岳鉱泉ではたくさんの人が休んでいた。テント場では既に2,3張りのテントが設営されており、設営中のパーティーもあった。親子連れの姿もあった。小屋の連中もここでお泊まりの連中か?? 小屋は行者小屋よりも大きいから人数も多いのか。
さて、あとは車まで歩くだけだ。まだまだ上がってくる人は多く、日陰で涼しい登山道でも今年初めての夏山の人も多いのだろう、あちこちで休んでいる人が多かった。標高が下がるに従って気温の上昇が感じられるが、急な下りもなくずっと日陰も続いてあまり汗はかかなかった。沢沿いの登山道より林道の方が急だったかも。
最後の橋を渡ると林道で、工事車両数台が止まっていて何やら導水パイプの設置工事をやっているようであった。林道は大きな石ころもあり、普通車で通れないことはないがオフロード車でないと苦しいかも。ま、どのみち車止めがあるので入れないけど。車道になってもまだまだ上がって来る人の姿は多い。美濃戸山荘に到着してもこれから登り始めようとするグループが多く、林道でも上がってくる人がたくさんいた。バスで来た人かな。しかしまあたくさん上がってくるのには驚いた。今夜は山小屋はいっぱいじゃないかな。
ようやく車に到着し、着替えを済ませて出発、途中コンビニでタオルを購入し(前日の温泉で忘れてきてしまった)、昼飯を食って武川村の武川の湯に向かった。ここは村外者\500で周辺よりもちょっと安い(普通は\600)ので最近利用している。甲州街道から近く、広くてなかなかよろしい温泉だ。外に出ると暑かった。やっぱこの天気では下界は暑い。甲府盆地に降りてから買い物をしたがこれまた暑かった。東京も暑いだろうから今夜は雁ヶ腹摺山登山口の大峠で寝て早朝に帰ることにし、真木交差点から上がったが、なんと台風の影響でテニスコートから上が通行止め、標高は約1000mでやや涼しさに欠けたが沢沿いに下ったところでもうちょっと涼しくなったのでそこをねぐらに決め、念のため足に虫除けスプレーを吹き付け、乾電池式蚊取器を付けて、窓を少し開けて寝たが刺されることはなかった。翌朝は渋滞無しで東京に戻り、会社に向かった。
5:11車−5:25美濃戸山荘−5:31南沢分岐−6:43美濃戸中山取付点−7:01展望良好な場所−7:07行者小屋−7:54縦走路−8:23三叉路−8:36横岳−8:48大同心着−9:49大同心発−10:11硫黄岳山荘−10:27硫黄岳−10:38峰の松目分岐−11:14赤岳鉱泉−11:47林道終点−12:17美濃戸山荘−12:34車