乗鞍北端? 安房山 2003年6月8日

 

白谷山から見た安房山

 

 

 安房峠周辺には道がない2000m峰がいくつかある。峠の南側には安房山、北側にはアカンダナ山と白谷山だ。道があるという話は聞いたことがないが、山ランの記録を見ると加納さんご一行が7月に安房山に登っていることが判明、どうやら無雪期でも登れる程度の藪らしい。一方のアカンダナ山と白谷山は山ランで登っている人はいなく、ネットで記録を検索しても山スキーで登った記録は数件あるが、無雪期に登ったという記録はなかった。でも藪の様子は安房山と同じようだろうから、安房山が無雪期に登れるならアカンダナ山、白谷山も登れるかもしれない。

 黒戸山から下山してもまだ11時。う〜ん、これだと黒戸尾根でも甲斐駒日帰りは可能だったなぁなんて考えたが明日の予定も考えればそんな馬鹿なことをやって体力を消耗するわけにもいかない。大岩山登山口は日向山と同じだからすぐ近く30分もあればついてしまうだろうから、時間調整と偵察を兼ねて燕頭山登山口の林道に入れるか見に行くことにした。と思ってまたもや誘惑が頭をもたげた。これだけ時間があるなら一般道を使って遠くまで移動できるではないか。長野まで安価に行く行くチャンスではないか。だったら安房峠周辺に決まりだ。

 20号線を北上し、塩沢温泉(@\600)で風呂に入って諏訪市内でウロウロして買い物を済ませ松本を迂回して波田町から国道に入った。真っ昼間を過ぎて上高地から帰ってくる方向の方が多い時間帯なので渋滞もなくすんなりと沢渡を通過、前にバスがいてつかえることもなかった。相変わらずトンネルが狭くて大型バスが対向車線から来ると端に寄ってないとカーブは危険だった。釜トンネル前で上高地方面に直進しようと信号待ち中のキャンピングカーがいたがマイカー規制を知らないのだろうか。こっちは左折して安房トンネル方面に進み、右に入って安房峠に向かう。ちらほらとすれ違う車が見られ、山菜取りだろうか駐車中の車も点在していた。焼岳登山口駐車場は大繁盛し、大型バスまで止まっていた。もう雪が消えているらしい。あそこは火山ガスで樹林が無くて日当たりいいからなぁ。その先の林道はまだ冬季通行止めで除雪されておらず雪が溜まって道路を塞ぐ部分も見えた。どうやら金をかけて除雪するようなことはしないで自然消滅を待つようだ。今夜のねぐらはここが候補だ。峠まで行って安房山に踏み跡があるかどうか確認しに行ったが、運悪く雨が降り出してしまい偵察はできなかった。まあ藪漕ぎ覚悟で来たのだから道が有ろうが無かろうが頑張ってみるが。ただ、できれば藪は乾いていて欲しかった。この雨で明日は藪漕ぎだったら上下ゴアで完全防備しないといけなくなった。

 林道分岐に戻って落雷を避ける意味で木が張りだした下に車を置いて寝る体勢を作って歯磨きし、雨が弱まったのを見計らって外に出た。4時くらいが一番激しい降りと雷だったがそれ以後は雷は聞こえなくなり雨が降ったり止んだりの繰り返しだった。まだ暗くなる前に酒を飲み始めて8時前に寝た。小用のため夜中起きると満天の星空で明日は快晴の予感だった。

 少しでも藪が乾くようにと若干遅めに動きだし、飯を食う前に峠に移動すると京都ナンバーのユーノスの脇にテントが一張り。そりゃユーノスじゃ中で寝られないからなぁ。こっちは車の運動性能は犠牲にして生活環境向上に当てているから待遇は逆だ。あの雨の中をテントではちょっとね。こっちは車の中で高いびきだ。

 5時半近くなって安房峠を出発、送電巡視路を利用して鉄塔を通過、その先のコンクリートの巨大な筒?で朝のお勤め、そこからいよいよ安房山への挑戦だ。コンクリート筒の造成で尾根を削ったらしく、法面が整形されているのでその境界を登ることにし、とりあえず東側の辺に近づいた。すると予想外に左手にはっきりとした踏み跡が続いているではないか! この辺りで道が向かうところと言えば安房山しか考えられない。これは世紀の大発見かと期待をふくらませながら踏み行った。確かにこの道は上に向かっていて、尾根にとりつく急斜面では縄ばしごまである丁寧さで踏み跡と言うには立派すぎる道だ。尾根に乗るといっそう道がはっきりし、完璧ではないが笹の刈り払いもされている。笹が濡れているからゴアが必要だったがもうちょっとだけ笹を払えばゴアも要らなくなるくらいの道だ。これだったらエアリアマップで赤実線クラス。こんな道が存在しているのにインターネットで検索しても引っかからなかったなぁ。どちらにしてもラッキーなのには間違いない。周囲の笹藪の濃さからすると藪漕ぎすると道がある場合の4,5倍は時間がかかるだろう。でかい倒木はチェーンソーでまっぷたつになっているし、個人で整備したとは思えないから以後もずっとこんな道である続けるのだろうか。

 トラロープが現れたりと至れり尽くせりの道で、急傾斜を登り切ると山頂の一角に出た。南北に長い山頂の真ん中に三角点があり、その南側が開けているのでそっちで休むことにした。そこでビックリの光景が。藪の山頂だと思っていたのが風力発電用?の小型風車が乗った2基の鉄塔がそびえ、3階建ての高さがあるでかい建物があるではないか。周囲には小型重機があり、ヘリの荷上げ用ネットも見えるからこれらの資材は空輸してきた物らしい。とすると今までの道は作業員が通うために整備したのだろうか。目印がついているから昔から踏み跡程度はあったのかもしれないが、工事のためここまで道を整備したのかもしれない。しかし、これは一体何の施設だろうか。インターネットで検索したが発見できなかった。

 残雪は稜線東側のみで1ヶ月もすれば消え失せるだろう。目の前には噴気がまっすぐ立ち上る焼岳が大きい。焼岳もほとんど残雪は見られず、今日もたくさんの人が登っているのだろう。上空は一面の青空、雲一つ無い快晴で6月ではあるが「五月晴れ」の言葉がピッタリだ。北アの峰々に登ってる連中もいい展望に満足していることだろう。

 さて無線だが430で一声出した後はワイアーDPで6m。山下さんがいないかワッチしたが見あたらず。荒海山なら聞こえてきそうなものだがまだ出ていないのだろうか。それとも250以上で出ているのかな? JP2NJSは聞こえていて鈴鹿の鎌ヶ岳移動だった。呼ぼうとしたら奥積さんに先を越されてしまったのには笑えた。奥積さんは53とレポートを送っているがこちらは55で標高で勝っているようだ。奥積さんのQSOが終わって呼ぶと応答あり。お隣の雨乞岳周辺でヘリが旋回しており、どうやら遭難の捜索が行われているらしいとのことだった。あの付近は登ったことがないのでいつかは行きたいところだ。遭難は避けたいけどね。周波数を移って奥積さんとQSOし、JH3FYC/3綾部市とQSOして下山とする。

 誰も登ってこないだろうと思ったら、もう少しで縄ばしごのところで4人パーティーが登ってきた。その様相からして山菜取りだが。コンクリート塔でも山菜取りとすれ違い、私のゴアの濡れ方を見てげんなりしていたが、私の他に4人上がっていったから露払いされていますよと答えた。

 峠に降りてアカンダナ山への踏み跡や目印がないかしつこく探したが見つからなかった。やっぱ藪漕ぎしか無いらしいが、安房山と同等の笹藪だとすればかなり厳しいだろう。武内さんなら突っ込むと思うが私にはその元気はない。やっぱ残雪期に楽をして登るのが一番だろう。来年にでもやろうかな。というわけでアカンダナ山は諦めることに決定した。


 しかし、予想外にも安房山には立派な道があったのは驚きだ。この情報が広がるとあの道も良く踏まれ、謎の建造物建設工事が終わっても夏道が存在し続けられるのではないだろうか。

 

安房山 写真集

 


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