上州武尊 前武尊、剣ヶ峰、家ノ串山、中ノ岳 2003年5月25日

 


 上州武尊は山に登り始めて数ヶ月後に登った、初めての本格的な山であった。当時は川場キャンプ場から前武尊、剣ヶ峰と越えて沖武尊まで往復し、帰りは結構遅くなった記憶がある。6月に登って山頂直下ではたっぷりの残雪が写った写真が残っている。この時は剣ヶ峰を通る登山道が健在でハラハラしながら歩いたのだが、数年後くらいに台風か何かで登山道が崩壊して剣ヶ峰は東側を大きく巻くようになった。

 当時の私の遊び方は今と違って無線は沖武尊でしか行わなかったが、山ランでは前武尊、剣ヶ峰が地形図記載だし、中ノ岳、家ノ串は山名事典記載であり、いずれも2000m以上の標高を誇り、高山をまとめて稼げる場所に変わった。ただし、剣ヶ峰は今でも登山道跡が残っているか不明であり、中ノ岳は登山道が山頂を通っておらず笹藪突破が必要であった。そこで高いところはまだ残雪があると思われる時期を狙うことになるが、あまり雪が有りすぎると剣ヶ峰が危険で登れない可能性があるし、遅すぎると雪が消えて中ノ岳の藪漕ぎが待っているので判断が難しい。結局は5月下旬に登ることにした。

車のデポ地点。このすぐ先で車道が終わる。右手のゲレンデを登った。

 前回の登山で武尊スキー場のゲレンデが前武尊直下まで延びているのを知ったので、今回はそれを利用する。武尊オリンピアスキー場を目指し、リフトから右に入る道を登ると再びリフト駅が現れ、左手には未舗装の道が上がっているのでそれに入る。しかし、ここが普通車でギリギリ通行できる程度のデコボコ道で、1速に落として走らざるを得ない。でも、最悪路面は長続きせず、直線区間が終わって右に大きく曲がり始めると快適な道になる。左に分岐する道を見送って道なりに行くがいっこうに高度を上げる気配が無く延々とトラバーズが続く。やがて左手に猛烈な傾斜で上がっていくコンクリート舗装の道を発見したが、まさか登れないだろうと諦めて引き返し、最初の分岐を曲がってきた。標高を上げるがすぐに道が不鮮明になってゲレンデにとけ込んでしまった。まあ、ゲレンデを上に上がっていけばどこかで登山道に出るだろうからここで寝てしまおう。一応、地図で見るとここで車道が終わり、登山道が始まるはずである。

こんな風に車が入っていた。歩いて損した! ゲレンデと前武尊 ゲレンデ脇、登山道始点の標識

 

 翌朝、登りだしたがエアリアマップに載ってる道が見あたらないのでガッカリするが、藪のないゲレンデなのでどこでも歩けるから適当に登ると、頭上の尾根上にでっかい建物が見えるではないか。いやな予感が当たってその尾根上に車道が・・・・。昨日諦めたコンクリート舗装の道の続きだった。標高差300m弱、約30分の時間損失だ。あのろくでもない道なのに山菜取りの車で賑わっていたのは驚きだ。部分的に雪が残っているが迂回可能で、ほとんどリフト終点まで車で入れるのだった。車道はOGNAほたかスキー場内で、地形図記載の車道から分岐し、1498m標高点ピークの尾根を僅かに北側に巻きながら高度を上げ、標高1650m程度まで車道が延びているようだ。そして車道終点には登山道の案内標識があった。

前武尊山頂 前武尊から見た剣ヶ峰

 登山道はゲレンデ脇で、いきなりの急傾斜から始まる。階段まで整備されているくらいだからここから登る人も結構いるようだ。すぐに武尊キャンプ場からの登山道と合流、こりゃ労力の大幅削減だな。ちょっとだけ残雪が現れるが緩んでザクザクなのでアイゼンは不要、逆に踏み抜くことが多く、できるだけ雪を避けて歩いた。そして登山道に変わってから30分程度で前武尊に到着してしまった。

 屋根付きの日本武尊の銅像が建つ山頂だったか前回の記憶が無いのが情けない。ここは早朝で無線のお客がいないから帰りに無線をやることにして先を急ぐ。問題は次の剣が峰で、前武尊から見るととても登れそうにない凄いガレと傾斜、こりゃ登れないかもと半分諦めの心境になるほどだ。しかし、前回はそこを登ったはずなんだなぁ。鎖と格闘した記憶がある。登山道はは東を巻いており、その途中で山頂方向への踏跡が残っていないかと捜したが無く(だって稜線上にあったはずなので巻道が始まったら道があるはずがない)、藪も酷いので諦めて巻道を辿り、北側の稜線に戻るところに剣が峰方向に立ち入れないようにロープが張ってあるのを発見。おお、昔の道があった証拠だ!

剣ヶ峰の鎖場 剣ヶ峰山頂。背景は前武尊 剣ヶ峰から見た家の串、中ノ岳、沖武尊

 

 問題は今でも剣ヶ峰への廃道を通行できるかどうかで、岩稜の危険地帯と予想されるのでザックをデポして空身で出発する。いきなり鎖のかかった岩場をよじ登る場面だったが、意外に登りやすくて2箇所の鎖は使わずに簡単に山頂にたどり着けてしまった。実際は通行止めにする必要なんか無いくらいの道だったのだ。岩稜帯のてっぺんなので見晴らしが良く、まだらに残雪をまとった沖武尊を中心とする山頂群が並んでいた。肝心の残雪が必要な中ノ岳はイヤらしいことに残雪があまり見られず笹藪との格闘が約束されてしまった。

尾根東側は残雪が多い 家の串山から見た剣ヶ峰 家の串山から見た中ノ岳、沖武尊
家の串山山頂 残雪はここまで。あとは藪漕ぎ 中ノ岳山頂。笹+ハイマツ。背景は沖武尊

 

 まだAM6時半なのに無線の応答は1発であり、短時間でデポ地点に戻れた。家の串山までの稜線は安全な登山道でたっぷりの残雪で楽しめ、山頂は素通りしてまずは中ノ岳へ向かう。中ノ岳直下の分岐点が山頂への最短ポイントであり、GPSで山頂までの距離を測ると約100m。これくらいなら藪の強行突破もできるだろうと覚悟を決めて、少しだけ残った雪田をよじ登り、末端から笹藪に突入した。出だしは強烈な藪だったが進むと意外と隙間があって薄いところを選んで登る。やっと傾斜が緩んでそろそろ山頂かと思ってポケットからGPSを取り出そうとしたら無い!! 笹藪に絡め取られて落としてしまったに違いないが、あの藪だと下りで同じルートを通るのは至難の業、GPSが見つかる確率は低いだろうと悲観的想像しかできなかった。

 GPSは帰りに探すことにしてまずは最高点を目指す。山頂から東へ延びる尾根と合流すると雪田が登場し快適に歩けたが最後まで続かず、雪が消えからは再び笹の海に潜って山頂へ到着。深い笹藪で目印も何もない。こんな中で無線はやる気無いので雪田まで戻って運用した。

 GPS捜索があるので早めに無線を切り上げ、下山しながら慎重に探したが藪を抜けても発見できず、ザックを置いて空身で再び藪に突入して山頂まで行っても見あたらず。また下っても見あたらず。こりゃ無理かなと考えつつも3往復目の下りで藪に突入したすぐのところで発見!! あ〜よかったぁ。最初の部分が一番藪が酷かったので突入早々に落としたらしい。時価2万円の損失が防げた。このGPSは榛名山周辺の藪山でも1度紛失、往復して枝に絡み取られていたのを発見したが、どうも群馬の藪とGPSの相性がいい??

 時間があるので沖武尊まで登ってもいいが、空気の透明度もイマイチで遠望が楽しめないので行く意味は半減と判断しパス。元来た道を戻りながら家の串山、前武尊で無線を運用、無事奥積さんと交信できた。



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