北ア北部 七倉岳、北葛岳、船窪岳2002年8月31日

 

 

 七倉岳、北葛岳、船窪岳は後立山終点の蓮華岳から裏銀座起点の烏帽子岳の間をつなぐ場所に位置する山である。2000mを超える標高を持つが、後立山から南下する長大な稜線の中では標高が低く、鞍部と表現してもいい地帯であり、おそらく、この稜線でもっとも人が少ない地域であろう。裏銀座の起点はブナ立尾根であるが、車で入れるのは七倉ダムのゲートまでであるので実質的には七倉ゲートが登山口であり、七倉ゲートに来たほとんどの人が高瀬ダムまでタクシーで入ると言っても間違いでは無かろう。ほんの一握りの人が七倉岳、北葛岳に向けて登っていく程度だと思う。私もここは登ったことがなかった。武内さんはここを日帰りで登っただけではなく、七倉岳がコンサイス記載の山だと知らずに下山してしまい、駐車場に到着してから気付いてそのまま登り直したという。ここを1日2往復した人間は武内さんしかいないだろう。

 北アルプスも登り残しが少なくなってきた中、本当は前穂〜西穂の縦走をやりたかったのだが、九州西部に接近した台風によりアルプスは強風になると予想して岩場を敬遠して標高が低くて日帰り可能なこちらに転進した。結果的には大失敗で東京では強風が吹いていたのが北アは無風快晴で、終始槍穂が見えていたほどだった。

 8月終わりで一般的には夏山シーズンは既に終わっているが、七倉の駐車場は車が多く7割くらい埋まってたのは意外だったが、木陰の絶好のポイントに今回も置くことができた。酒を飲んで仮眠、AM4時起床、4:40出発。まだ薄暗く空の色が見えないが、昨晩から星空だったのでおそらく快晴だろう。問題は強風かな。

 七倉岳への登山口は初めての人には分からないような場所にあるので注意が必要だ。ゲートを越えてトンネルに入るが、そこは本当のトンネルではなくスノーシェッドで、それが終わって本当のトンネルに変わる前、入口から20mくらい歩いたところで右側に林道があり、標識がある。トンネルの途中にあるというのがミソで、七倉駐車場には七倉岳方面登山口の案内標識はない。たぶん知らない人は駐車場近辺かトイレ付近でさまようことになるだろう。

 

天狗の庭からの展望

 

天狗の庭から見た高瀬ダムと槍ヶ岳

 林道はすぐに終わって樹林帯をジグザグに登り始める。地面の下に山の神隧道が通っているはずで、まだ時間が早いのでタクシーの出入りもできずトンネル内は無人だろうか。平坦になると尾根に乗り、やがて胸突き八丁の急登になる。高度を上げるに従って木の高さが低くなって森林限界間近と感じられるようになり、傾斜が緩むと標高2300mの天狗の庭に到着、森林限界を突破して視界が開ける。天気は快晴、後ろを振り返れば、正面には唐沢岳、餓鬼岳、表銀座の山々、前穂〜槍、西鎌尾根、裏銀座の山々がズラリ勢揃いだ。

 

 なおも緩やかに登れば船窪小屋に到着、ログハウス風の太い丸太を組んだ構造だった。テントが1張り。まだ時間が早いのでここまで誰とも会わなかった。

七倉岳から見た針ノ木岳 七倉岳から見た蓮華岳 七倉岳から見た北葛岳
七倉岳から見た薬師岳 七倉岳から見た立山 七倉岳から見た船窪岳

 

七倉岳山頂。背景は表銀座

 船窪岳への分岐は小屋の横から尾根を巻くように付けられており、帰りに船窪岳へ向かうので分岐にメインザックをデポして北葛岳へと向かうことにするが、その前に休憩を兼ねて七倉岳で無線運用を行う。森林限界を超えているので眺めはすこぶる良好。北は蓮華岳、針ノ木岳が大きく、それより北側の山を邪魔してしまい見ることはできない。これも七倉岳の標高が低い影響が大きいだろう。西側は2週間前に歩いた立山〜薬師岳が手に取るように見えている。あの時はガスって周囲は何も見えなかったのが残念で、五色ヶ原があんなだだっ広い所だとは知らなかった。赤牛岳は不動岳の脇から顔を覗かせており、1ヶ月前の苦しかった赤牛岳を思い出さずにはいられない。そういえば赤牛岳の時は天気が良すぎてあまりの暑さにダウン寸前だったなぁ。やっぱり秋になると天気が良くても気温が下がり大汗をかかずに歩けるし、湿気が少ないので空気の透明度が上がって遠望が効いてよろしい。また、夏山シーズン真っ盛りと違って人も少ないし。

 無線は430で荒船山の局とつながった。この人も6mをやっているが、私と同様6mもやっているが6mは人がいないし、430の人口が減ってきて今は適度になったので430でやっていると言っていた。こちらは快晴だがあちらは雲海の雲の中でガスっているとのことだった。

 

北葛岳から見た七倉岳

 

 岩っぽい尾根を降りて広い斜面を登り返すと北葛岳だ。ここで蓮華岳方面から登ってきた若者と会ったが、時間的には針ノ木小屋出発でしょう。この日は船窪小屋泊まりとのこと。もう1人後から登ってくる人がいて、その人は今朝扇沢を出発して今日の内に七倉に下山するそうで、私と同じくらいの強行軍だ。そっちの人は私が船窪岳を往復している間に通過したようで姿を見なかった。ここでは2mで長野市内の局とQSO。その昔は山歩きをしていたという2文字コールのOMでした。

 メインザックデポ地点に戻り、船窪岳へ向かう前にテント場で水補給。どうやら昔はここに小屋があったらしいが、斜面の崩壊が進んで今の場所に移転したようだ。ところがこの水場は危険地帯にあった。七倉岳と船窪岳間の南斜面は大崩壊地になっているが、その中に水場があるのだ。正確に言うとガレのど真ん中ではなく最上部で、ちゃんと道があるが最後の数mはフィックスロープがない。もうちょっとロープを張ってくれるとありがたいのだが。岩の上に砂が乗って滑りやすいので注意が必要で、できれば水汲みの際はサブザックを背負っていって、水はザックに入れて両手を空けておいた方が安全だろう。もし滑落したら這い上がることは不可能、タダでは済まない。でも水は良質で、非常に冷たくタオルを洗うにも手が痛くて満足に洗えないくらいだった。

 水場へは登山道から往復15分程度と結構下るが、テント場から小屋まで行くよりも断然近く、烏帽子方面から縦走してきた場合はここで水を補給する方がずっと楽だ。テント場から小屋まで20分ほど登らなくてはならず、看板には小屋でテント場代\500払うようにと書いてあるが、現実問題としては烏帽子から到着したら小屋まで往復する労力はかけられないだろう。翌日、テントを畳んでから小屋に料金を払いに行く方が現実的だろう。テント場は樹林の中の砂地で6,7張りくらいのスペースがある。

 テント場から大きく下って最低鞍部にいたり、登り返した樹林帯の中のピークが船窪岳である(知らなかった)。足場の悪いところもあるが、梯子やロープが張ってあって問題なかった。ここは標高が2300mもあるが周囲の山よりも低いので電波の飛びが悪く、144/430でも1局くらいしか聞こえないほどで、湯の丸山移動の局が出ていなかったら交信できたかどうか。

 このピークに船窪岳の看板があったが、エアリアマップではその先の2459mピークが船窪岳になっており、常識的にはこんなコブ程度のピークに名前が付いているとも思えず、きっと2459m峰が船窪岳に違いないと勝手に思いこみ、2時間近くかけて往復してしまった。ハンディーGPSがあればこんなへまはしなかったのだが、当時はまだ購入していなかった。

 

 七倉岳へのきつい登り返しを終えてメインザックを回収すればもう登りはなく下り一本で安心できる。最後の休憩を兼ねて船窪小屋で350ccを購入し、小屋前のベンチでダベっていた2人+1人の男性陣の話の輪に加わった。そのうち1人は北葛岳で会った若者で、あと2人はどこから来たのか聞いてないが、た常識的に考えれば七倉からだろうか。30分ほど休んでほろ酔い気分で下山を開始すると、直後に熟年夫婦が登ってきた。つい最近、ここまで登ったのだけれど、疲れてしまって烏帽子岳まで縦走できなかったのでリベンジとのこと。ということで、この日の船窪小屋は5人のお泊まりだったようだ。真夏の時期の週末に何人くらい宿泊するのが普通なのか分からないが、5人ってことはないよなぁ。やっぱり秋だなぁ。

 船窪小屋から2時間弱で下山できたので、まだ明るい時間帯に下山でき、葛温泉の高瀬館で(@\500)汗を洗い流した。ここは烏帽子小屋、野口五郎小屋を運営しているので廊下には写真がいっぱい飾ってあるのがうれしい。

 

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