上越国境 上ノ倉山、大黒山 1998年4月29日
1774.7m三角点峰から見た上ノ倉山、大黒山 |
群馬/長野/新潟3県境近くの白砂山から群馬/新潟県境の三国峠間の県境尾根には登山道がないが、上ノ間山、忠治郎山、上ノ倉山、大黒山という2000mを越える高山がある。以前、無雪期に白砂山に登ったときに確認したが、この尾根は強烈な笹藪に覆われ歩けるような状態ではなく、残雪期しか考えられなかった。上ノ間山は白砂山からさほど遠くないので残雪期なら簡単に往復できそうだが、その先の3山はちょっと遠そうだ。それでも上ノ間山でさえほとんど登る人はいないだろう。
ここ数年、GWは北関東、東北南部、上信越国境付近の道のない藪山に残雪を狙って登っているが、今年はこの界隈を狙ってみた。最初は野反湖から登ろうかと思ったが、距離が長くアップダウンもあるので反対側の三国スキー場から登る計画を考えた。これは武内さんの辿ったルートを参考にした結果で(ただし、武内さんはスキー場から県境尾根に直接取り付いている)、少なくともスキー場ゲレンデまでは道があるので少しでも藪漕ぎを節約できるだろう。もちろんその後はルートなどあるわけないが、残雪の上を歩くので踏跡が有ろうと無かろうと関係ないが。
全く雪が見えない三国スキー場 |
東から見た三角点峰 |
久しぶりに三国トンネルを抜け新潟に入るが周囲に雪はほとんど無く、三国スキー場に到着すると遥か上のゲレンデ最上部にも、その上のピークにも、県境尾根の北斜面でさえも雪がほとんどないではないか!! 今年は積雪量はそこそこあったが、春先が温かくて急激に雪解けが進み、大型連休開始だというのに県境尾根の雪まで消えてしまったらしい。でも今さら引き返すわけにもいかず、どこまで行けるか分からないが、藪の状態を見ながら行けるところまで行ってみることにした。
これじゃいきなり藪こぎかもしれないと心配しながらゲレンデ最上部まで登ると、心配していた通り全く雪は無く、いきなり道がない笹藪尾根の登りになる。しかし、同じようなことを考えるパーティーがいるようで、踏跡もない藪の中に点々と赤布がぶら下がっており心強い。藪はうるさいが手強いと言うほどではなく、強烈になったら撤退しようと思っていたのに中途半端な状態が続いて登れてしまい、1774.7m三角点の尾根に乗ってしまう。もしかしたら尾根に出たら踏跡が出現するか?と期待していたが裏切られ、相変わらずの中途半端な藪と赤布が続く。三角点峰は森林限界の様相で視界が開け、三角点も確認できた。忠治郎山をはじめとする山々はまだまだ遠い。
1774.7m三角点ピーク山頂 | 1774.7m三角点ピークから見た780mピーク |
1780mピーク直下から見た1774.7m三角点ピーク | 1780mピーク直下、藪が続く |
1780mピーク直下は灌木の強固な藪で、左右に迂回したり、場合によっては強行突破したりと本格的な藪漕ぎ状態だった。ただし、ここも森林限界ギリギリの植生で樹木や笹が頭より低くて視界が得られるので助かった。ここを過ぎると一面の笹原で、遠くから見ると草付きのような緑で気持ちよさそうに見えるが、踏跡皆無の笹藪なのでえらい苦労させられる。こんな所にも赤布があって人の痕跡はあるが踏跡の痕跡は全くなく、ここまで完璧な笹藪は初めての経験かもしれない。錫ヶ岳に登ったときの栃木/群馬県境稜線でさえも踏跡程度はあったのに。1852mピークの登りも延々と笹との格闘が続き、さすがに登り+笹は体に応える。
ピークに登って水平移動になればマシにはなるが、相変わらず深い笹藪と赤布が延々と続く。次の1850mピークを下った鞍部は笹+名前不明の灌木の連合軍で、灌木は背が低いが枝が密集してガードが堅く、突っ切ろうにも跳ね返されてしまい、それこそ足が地に着かない「空中散歩」だった。今回の藪の中では一番手強かった。
30年も昔の標識 今でも会はあるだろうか | 1890mピーク、赤布あり |
突破して県境尾根に乗り踏跡が出現するかと期待したが大外れで、これまた赤布はあるのだが踏跡皆無の笹藪だった。もう勘弁してくれと言いたくなるが、もうここまで来たら時間切れギリギリまで粘ってみるしかない。ただ、赤布の他に標識が出現し、今までの尾根よりも少しは歩く人が多くなったはずだが人の気配は全くない。ゴミすらない。1890mピークへの登りでやっと残雪が現れて一安心だが、当然ワカンを使うような雪質ではなく、ザックに付けたワカンが馬鹿らしく思えてくるのだった。ピーク一帯は残雪に覆われて歩きやすいが、なだらかな地形なので下りは要注意だろうが、目印があるのでこのまま進む。
残雪の歩きやすい尾根はすぐに終わり、鞍部から再び笹藪の登りに戻ってしまう。登りにかかるとやや笹の高さが低くなるが、傾斜がきつくなって笹を踏んづけてよじ登るので滑りやすく、笹に掴まって登っていく。ここは雪が残っていたら傾斜がきついからビクビクものだろうな。ある意味雪が消えていて良かったと思う。
上ノ倉山北直下から見た県境尾根 |
上ノ倉山〜大黒山稜線の残雪 | 笹に覆われた上ノ倉山山頂 | 山頂標識群 |
登り切ると上ノ倉山北西のピーク(大黒ノ頭)に到着、再び残雪が現れて笹との格闘から解放された。しかし既に12時を回っており忠治郎岳を往復する時間はなく、上ノ倉山と大黒山の2つにスケールダウンを決意した。上ノ倉山への登りはおおよそ残雪で覆われて楽に歩くことができ、山頂に到着した。踏跡もない、こんなマイナーな山頂なのに標識があるのには驚きだ。我らがヒーロー、KUMOが生き残っており、GWV、MWVの標識と並んでくっついていた。周囲の雪は消えて完全な笹藪で三角点捜索は難航したが「主三角点」とかかれた三角点もどきが横倒しになっているのだけは発見できた。かなり執拗に笹をかき分けて三角点を捜したのだが、ご本尊は発見できなかった。時間がないのでちょっとだけ無線をやって大黒山へと向かう。
上ノ倉山北直下から見た大黒山 | 大黒山山頂 |
大黒山への稜線には残雪があったので藪との格闘もなく大黒岳山頂付近に到着するが、だだっ広い山頂ではっきりとした最高地点はよくわからなかった。一応、最も高そうな場所で無線をやったが、周囲に山頂標識はなかった。たぶん間違ってはいないと思うが、もし間違っても標高は変わらないだろうから問題なかろう(今ならGPSがあるので安心できるのだが)。
下りは県境から外れた先の尾根で藪漕ぎが待っており、帰りに登りも混じって期待通りの疲労度だった。ゲレンデに出ると「ヤレヤレ」と同時に「ヨレヨレ」状態になっていたのも当然だろう。まさかこの時期にほとんど雪が無くて10時間もの藪漕ぎを強制されるとは思ってもみなかったが、逆にこの長距離長時間藪漕ぎでもどうにか歩けることが分かり、昔の大学ワンゲル並みの山行ができることが分かって収穫でもあった。もう2度とゴメンだけど。