奥日光 高薙山 1997年5月4日






 5/3〜5/5の連休後半戦は、高薙山(約2200m 塩谷郡栗山村)、巣神山(約1220m上都賀郡足尾町)、小法師岳(約1600m 上都賀郡足尾町)に行ってきた。朝方の雨とガス、そして日帰りでもかなり長時間の行動で疲れましたがなんとか成功!



 高薙山は日光の山の中でも2000mを超える高さを誇りながらも全く見向きされない知られざる藪山である。同じ藪山でも錫ケ岳等は県境稜線にあって中には縦走する人もいるようですけど、高薙山は枝尾根の末端にあって先は行き止まり、山としてはイマイチの感が強く、誰もよりつかないんだろう。でも、私は栃木の2000m以上の山は道の有無に関わらず全部登るのが目標で(当時の話)、高薙山が最大の難関として課題にだったのでずっと興味を持っていた。そして藪が雪に埋もれているはずのこのシーズンを狙い挑戦することにした。

 初日は雨の予報だったので前夜は萬屋(アマチュア無線仲間の自宅)で飲み会に参加、ゆっくりと出かけたのが失敗だった。だって夕方まで雨なんか降らなかったのだから。天気予報が思いっきり外してくれました。よってこの日は電車での移動のみ。実家の車を借りて夜中に高薙山の登山口(金精トンネル入口)に到着、その頃に雨が降ってきた。まいったなぁ。これじゃ今日のうちに登った方が良かったじゃないか!

 2日目。朝から雨&ガス(T_T)。でもラジオを聴くと午前中には回復するとの予報、結構な強さで雨が降り続いていたが、天候の回復を信じてカッパ(この当時はまだゴアを買っていなかったらしい)を着て出発。でもガスはとても嫌だったなぁ。だって高薙山って登山道はないし(猛烈な薮)、主稜線からぽつりと離れた場所にあって入山する人は皆無に近いから雪の上の足跡も無い、目印もない、おまけに尾根が何カ所かで屈曲してただ真っ直ぐ歩けばいい訳じゃなくて分岐点を正確に判断する必要があるから。これって周囲の視界がある場合は割と簡単にできるが、ガスって何も見えないときは地形図と磁石と自分の技術力だけが頼りの、マジでとっても危険な世界である。道があっても危ないのに道がない所じゃ遭難のリスクがえらく高くなってしまう。なお、今の時代ではハンディーGPSがあるので緯度経度を入れておけば割合簡単に屈曲点がわかってしまう。

 途中の温泉ケ岳までは夏道はあるし、雪の上に足跡も残っていて問題なし。所々夏道が出ていたが、温泉ケ岳に近づくと一面の雪原に変わる。シメシメ、これならきっと藪も埋もれて楽に歩けるぞと思ったら温泉ケ岳の巻き道が雪に埋もれ、急傾斜の雪原をトラバースすることになって結構スリルがあった。下はずっと先まで急斜面が続いていたので笹原らしく木が無くて、滑落したら止まりようがない。一歩一歩慎重に。帰りはこのトラバースがいやで県境に沿って温泉ケ岳を乗り越えた。

 なんとか急斜面の巻き道を乗り越えるといよいよ藪尾根の分岐点。ここから先は今までのような道はなく、当然ながら足跡も見あたらない。難航が予想されたが予想通りに難航、樹林とガスで先が見えなくてダラダラした尾根だと現在位置の確認が困難で、歩いた時間から距離を想像して位置を推測したりする。おまけに今年は残雪が少なく、薮が出ているところが何カ所もあって、ワカンをはいたまま2、3カ所は藪こぎさせられたり、ジャングルのようなツガの幼木の密林を突破したりと苦労させられた。いくら残雪といっても県境稜線を東に越えた枝尾根では木が埋もれるほどの積雪は期待できないらしい。さらに、気温が高くて雪が柔らかく潜り、予想以上に時間がかかってしまった。

 それでもどうにか枝尾根を東に下っていく。所々はツガの樹林で雪も下草もなくて歩きやすい部分もあり、鹿道もあって糞があっちこっちに。小さな雪庇を歩いたり北側に逃げたりとガスの中を尾根に沿って歩いていく。一番迷ったのが北側に分岐する枝尾根を探り出すことで、これこそ視界があればなんてことないんだけど、ガスって先が見えないと疑心暗鬼だ。一カ所怪しげな所があったが歩行時間から考えてまだ分岐点まで到達していないだろうと先に向かうと、確かにまだ水平の尾根が続いていたり。やっと最後のピークから先は下りであることを確認して尾根を北へと下るとちゃんと地図通りに目的の尾根に出ることができて一安心。これで第一関門突破! 急な雪面を木に捕まりながら鞍部に下る。ずっと雪庇ができていたけど、はたして無雪期はどれくらいの藪なんだろうか?

 鞍部から先は時々赤い目印を見かけるようになり、たぶん金田峠から登った人が付けたのだろう。もしかしたら私の知り合いが登ったときの物かも? なにしろこんな山は登る人間は極端に少ないし、わざわざ東京から登りにやってくる人はいないだろう。まあ、私も元栃木県民じゃなかったらこんなところには登らないだろうけど。

 鞍部より先はずっと登りになるのであまりコースを間違える心配がなく、藪っぽい尾根を外さないように周囲の地形に注意しながら歩けばいい。そして1カ所もルートを間違えずに山頂に到着\(^_^)/。所要時間4時間で雨とガスのため途中での休憩無しだった。山頂付近は雪が無くてシャクナゲとツガの薮を漕いでの登頂で、しっかりと三角点も顔を出していた。

 帰りは同じルートを逆戻りするだけだが、予報と違ってやっぱり雨とガスのままで視界がない。自分の足跡もはっきりとは残らないのでこれまた地図と磁石と首っ引きで、それでもあるピークから下る尾根にたどり着くのに3回もあっちへ下ったりこっちへ下ったりと磁石を頼りにルートファインディングしたし、あるピークでは分岐点を通過して南に行くはずがいつのまにか北に向かっていたり(この時は頭が混乱して相当焦った)肝を冷やした場面がいくつもあったが、何とか無事に生還できた。しかしまあ、やっと安心できる温泉ケ岳まで来てから急速に天候が回復してガスが晴れたのは複雑な心境。薮尾根を歩いているときに晴れてくれればどれだけ楽だったか。でも最後に自分が歩いてきた稜線を丸ごと全部見ることができたので勘弁するか。

 なお、高薙山は私の仲間数人が登っているが、私が知っている範囲ではいずれも無雪期に金田峠から猛烈な藪との格闘の末山頂に到達している。半端な残雪とどちらがいいのか判断に苦しむが、少なくとも金田峠の方が距離は少なく、無雪期に狙うならそちらの方がいいだろう。


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