針ノ木岳/蓮華岳 大沢小屋への近道(仮称:大沢小屋荷上げ道)   カウント:画像読み出し不能  2024年7月11日初版作成、2024年8月9日追記


2024年8月9日追記:荷上げ道終点付近の笹がはみ出した区間は刈り払いされ歩きやすくなりました。その他の草がはみ出した場所は私が2024年8月3日に軽く刈り払いました


概要
 扇沢〜大沢小屋間は一般的に使われている登山道(夏道)の他に大沢小屋への荷上げ用の作業道(ここでは「大沢小屋荷上げ道」と仮称する)が存在する。大沢小屋荷上げ道は篭川沿いに付けられていて、登山道と比較して距離が短くて所要時間は短く労力も少なくて済み、道の濃さは登山道と遜色ないレベルであり利用価値が高い。ここでは大沢小屋荷上げ道のルートを解説する。正式な登山道ではないが、針ノ木小屋のHPでは赤沢等の増水時の迂回路(作業道)として紹介されている。


初めに
 針ノ木岳や蓮華岳に登る際は、一般的には扇沢駅から車道を突っ切るような登山道を進んで、関電トンネル入口手前で車道から左に離れて赤沢岳の麓をトラバースしながら鳴沢、赤沢等を横断する登山道を歩いて大沢小屋に達する。

 しかし大型連休から6月にかけての残雪期には篭川右岸沿いを登る冬ルートが使われる。地形図を見れば分かる通り、篭川沿いには標高1600m付近まで主に右岸に車道(未舗装)が存在し、右岸の標高1620m付近までは登山道並みの道が存在していて、冬ルートはこれを利用する。その先の右岸には道は無く藪に覆われているので、ここから雪渓末端まで雪が途切れる季節になると冬ルートは賞味期限切れとなり、赤沢岳麓をトラバースする夏道に移行する。

 両者を歩いたことがある人なら分かると思うが、篭川沿いの冬ルートの方が距離が短くて細かなアップダウンが無いので所要時間も短く、消耗する体力は少なくて済んで効率的である。

 この冬ルートは6月〜7月に篭川沿いの残雪が減って藪が出てしまうと使われなくなるが、実は少しルートを変えると無雪期でも使える道が存在して大沢小屋で夏道に合流することができる。この道は大沢小屋が人力による荷上げに使っているので、大沢小屋まで最小限の労力で済むように道が付けられているのだ。冬ルートに近いルート取りなので夏道よりも距離が短く所要時間も短くて済み、沢沿いなので夏道よりも涼しいのも利点であり、私は残雪期だけでなく夏山シーズンでも利用している。なお、この道の入口に針ノ木小屋の車が止まっているのを見たことがあり、針ノ木小屋関係者も使っているようだ。

 なお、大沢小屋荷上げ道は毎年6月第一週に開催される針ノ木岳慎太郎祭(山開き)で使用されることもあるので、存在を知っている人は少数ながらいると思う。でも大多数登山者はその存在を知らないだろう。夏道よりも確実に楽をできるルートを使わない手はない。


大沢小屋荷上げ道のルート解説
 扇沢から大沢小屋まで、登りの場面を想定して解説する。ルートの地図を以下に示す。赤線が実際に大沢小屋荷上げ道を歩いた際のGPSトラックログで、緑色の破線が登山道である。登山道は山肌を迂回するように付けられているのに対し、大沢小屋荷上げ道は沢沿いを最短距離で結んでいる。



@扇沢駅から林道入口(標高1490m)まで=夏道


 登山口は扇沢駅南側のゲート横である。登山ポストがあり夏山シーズンには臨時の登山相談所が開設される。




 登山道を少し上がると舗装道路に合流するが、これはゲートがあった車道の続きである。




 車道を50mくらい歩くと短い橋を渡ってコンクリートの壁が登場し、この裏側に登山道の続きがある。車道を歩いてもいいのだが、登山道はジグザグの車道をショートカットするように付けられているので効率的である。




 再び車道に出ると車道の反対側に登山道の続きがあるが、大沢小屋荷上げ道を利用するためにはここで車道を左に上がるのが正解で、登山道をこのまま進んでしまうと大沢小屋荷上げ道起点の林道入口をバイパスしてしまうので注意。




 車道の左を見るとこんな感じ。この記事を書いている時は工事が行われていたので看板が出ているが、工事が完了すると看板が撤去されるのでこの看板を目印として利用しないように注意。緩やかに右カーブした車道の約100m先に林道入口がある。




 林道は未舗装で案内標識は無いが、付近には他に林道は存在しないので間違うことは無いだろう。なお、写真に写っている工事用の看板やユニコーンは工事が終わると撤去されるので、これらを目印として利用しないように注意。


A林道入口から林道終点(標高1590m)まで


 林道は一本道なので入ってしまえば迷うことは無いだろう。最初は普通車でも走行できるような普通の林道であるが、先に進むほど道の両側から草がはみ出すようになり、廃林道のように見えるようになる。ただし路面はそれほど悪くはない。上記写真のような状況だが、大沢小屋が営業している時は大沢小屋の軽ワゴン車が上がっていくのを実際に見たことがある。




 標高1520mで短い橋で篭川左岸から右岸へ移る。この先は篭川と鳴沢の合流点で、残雪期はここから雪が現れる。最初の左ヘアピンカーブで林道をショートカットする道が右に分岐している(ピンクリボンの目印あり)ので、これを利用するのが良い。




 再び林道に出てジグザグって高度を上げて堰堤を越えると路面が泥濘んだ区間があるが、林道の右側に登山者用迂回路(踏跡)ができている。泥濘に足を踏み入れると場所によっては足首位まで沈むので止めておいた方がいい。




 次の急な左カーブが林道終点で、大沢小屋の車はここまで入る。なお、林道はまだ先に続いているが崖崩れ等があり完全に廃林道化しているため車両の通行はここまで。廃林道化した区間は人間が歩けるような道に整備されて大沢小屋荷上げ道として今でも利用されている。


B林道終点から梯子がかかった堰堤(標高1600m)まで


 林道終点から先にも実際には林道が続いているが、右カーブして一段高い位置に移ると法面側が崩れて完全に廃林道化している。このカーブ区間をショートカットする道が林道終点から延びているのでこれを利用する。廃林道に乗って上流側に進むと大きな堰堤が登場する。残雪期は雪が高く積もって堰堤を簡単に越えることができるが、無雪期後期に雪が減ってしまうと長いアルミ梯子が架けられるので、これを登って堰堤を越える。


C堰堤から橋(標高1620m)まで


 堰堤を越えると沢に沿って登山道並みの明瞭な道がまっすぐ延びているので、それを辿ればよい。この道が直角に右に曲がったところが篭川本流に橋がかかっている場所である。ここは岩の間を流れが抜ける場所で川幅が狭くなっている。この橋はアルミ梯子を利用した仮設のもので、通常の設置期間は7月中旬〜11月くらいまでである。

 この場所は赤沢出合に近く、冬場に積もった雪が雪崩により赤沢を伝って篭川まで押し出す場所で、例年なら残雪期は山のような大量の雪が覆っていて川の流れはその下であり、橋が無くても対岸へ渡ることができる。周囲の雪が消えてもここだけは遅くまで雪が残ってスノーブリッジとして利用可能であり、橋がかかるまではこのスノーブリッジを利用する。

 問題はこのスノーブリッジが消えてから橋がかかるまでの期間、およそ6月中旬から7月中旬までである。この期間は雪解け水で増水しているため、橋が架かるはずの場所で登山靴を浸水させずに対岸へ渡るのは非常に困難である。

 この場合、橋が架かるはずの場所より上流にある砂防ダムの下流側直下を渡渉するのが良い。この砂防ダムから流れ落ちる水は幅が広く、下流側では流れが広範囲に分散して流れは浅くて飛び石がたくさん利用可能である。2024年6月時点では一番水量が多い流れにアルミ梯子の仮設橋が架けられていたのにはびっくりした。毎年同じ場所に同じように仮設橋が設置されるのかは不明である。

 なお、針ノ木雪渓の雪が溶け切った真夏以降のシーズンなら、水量が減って橋無しでも対岸へ渡ることが可能になる。でもこの時期には橋がかかっているはず。


D橋から大沢小屋(標高1670m)まで


 最初は篭川沿いを上流へと上がっていき、堰堤を高巻きするためにジグザグって高度を上げる。この付近は廃林道の様で幅が広い平坦な道だが、人間が歩く幅以外は草木に覆われている。




 標高1600m付近で廃林道から離れて右斜めを上がっていく。ここから大沢小屋の間が道のレベルが一段下がり、両側から笹がはみ出すようになるので雨が降ったり朝露が降りた時間帯は上半身は雨具があった方がいい。大雨が降ると沢になるようで足元は土ではなく石が多くなる。

2024年8月9日追記:2024年8月3日の時点で邪魔な笹が刈り払われていました! 追加で私も刈り払ってきましたので、数年間は快適に歩けると思います。




 正式な登山道に合流する箇所は大沢小屋のすぐ北側で、登山道の反対側は幕営地入口付近である。よって下山時に夏道側から荷上げ道に入るには、大沢小屋を通過して幕営地入口とは反対側に延びる涸れ沢のような道に入るのが正解である。上の写真が登山道から見た荷上げ道入口を撮影したものである。

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