ICレコーダ 2007年12月版
みなさんは山に登ったときの記録を付けているでしょうか。私の場合、後日読み返してこんな山だったのだなぁと懐かしんだり、同じ山に後から登る他の人の情報にと記録を書いています。記録を書く上でメモを取るのが基本ですが、近年になってICレコーダが登場し便利になりました。どの程度使える物かレポートします。まず、私のICレコーダ遍歴を。
メーカ |
型名 |
メモリ [MB] |
電池 |
質量[g]
|
PC 接続 |
ファイル 形式 |
その他 |
オレゴン科学 | VR399 | 不明 | 単4×2 | 43(電池無) | ○ |
独自仕様 (PC転送時WAVに変換) |
アメリカ製。湿度で液晶が故障した |
オリンパス | Voice Trek V-20 | 128 | 単4×1 | 54(電池込) | ○ | WMA | 製造中止。2年で故障 |
オリンパス | Voice Trek V-30 | 256 | 単4×1 | 46(電池込) | ○ |
WMA、 MP3(再生のみ) |
製造中止。現用機 |
ICレコーダの何が便利か?
歩きながらメモれる
これが最大のメリットです。紙に書く場合、メモるのに意外に時間がかかります。それに歩きながらだと上下の揺れでまともな文字にならないので立ち止まらなくてはならない。出発時刻を書くときなどは、逆に最初に時間を書いてしまってそれに合わせて出発する始末でけっこう面倒なものなのです。要所要所での所要時間をメモっているとその時間も馬鹿になりません。その点、ICレコーダは録音ボタンを押すだけでスタートストップが操作でき、片手さえ空いていれば歩きながらでも録音できますので時間ロスがありません。
とりあえず雨でも大丈夫
紙の場合は少しでも雨に濡れると後日紙がガビガビになったり、ボールペンで書いた文字がにじんだりするので手帳を雨に濡らさないようにしないといけませんし、濡れた手をタオル等で拭いてからメモらなければなりません。その点、ICレコーダなら大丈夫。防水ではありませんが紙よりは水に強く、直接雨に濡れないようにビニール袋にでも入れておけば大丈夫です。雨の日の山頂で無線交信する場合も、ICレコーダに録音しておき、下山後再生してログに書き写せますのでたいへん便利です。
冬の記録に便利
手がかじかむ冬にメモるのはとっても大変。指が動かず解読不能な文字になってしまいますし、手袋をしたままではメモのページがめくれない。こんな時こそICレコーダ。ただしどこまで低温に耐えるかの保証がない。冬のアルプスだと動かないかも? これはデジカメにも当てはまりますが。過去の経験では-10℃までは動きました。
合計数時間以上、数100件録音が可能
今時のICレコーダは数時間以上録音可能は当たり前で、件数も数100件のレベルです。私の経験では日帰りの山では多くても70件程度で、3泊4日でも使い切ることはありません。録音時間は合計しても1時間もないと思います。それこそ会議の録音でもしないと使い切れないレベルです。無線の場合は交信内容を録音したりと使えます。相手がどのくらいの強さで聞こえていたかを具体的に聞かせてあげることが可能で、相手にウケること請け合いです。
フラッシュメモリなので電池切れでも録音が消えない
大体の機種はフラッシュメモリに録音データを格納するので電池切れになってもデータは消えません。データを消すには消去操作をしなければなりません。
パソコンに保存できる
これも大きなメリットです。PCに入れてしまえば検索も楽ですし、画像と比べればデータ量は少なくディスクスペースを喰いません。手帳と違って紛失の心配も少ないですし(ただしPCのHDD破損でデータがぶっ飛ぶ可能性はあるのでバックアップが必須)、他の人にメールで配布もできます。PC接続できる機種は若干高価になりますが、それを補って余りあるメリットがあるので、購入の際はPC接続OKの機種をお勧めします。
以上のようなメリットがあり、私はICレコーダを使い始めて数年経過しましたが、今では手放せない存在になりました。歩きながら録音できるので、登山道途中の様子や出会った動物なども手軽に録音できます。もう手書きメモ帳には戻れません。PC接続も便利でデータ整理が簡単になり、登山記録をまとめる上で大変便利になりました。
短所
何かと便利なICレコーダですがデメリットもあります。
周囲に人がいると恥ずかしい
これが最大の欠点か。人前で独り言をブツブツいうのはもの凄く恥ずかしい。特に単独行が多いと。これはどうにもならないか。場所によっては録音をやらない場面も発生しました。まあ、今の時代は携帯電話が当たり前の世の中なので、モノに向かって一人でブツブツしゃべるのに慣れた人の方が多いかも?
完全防水ではない
主目的は会議録音なのでアウトドア仕様ではなく、防水ではありません。直接雨に当たらないようにしましょう。前述のようにビニール袋に入れるのがいいと思います。紙のメモ帳はこうはいきませんね。湿気にも注意。私の初代ICレコーダは湿気で液晶表示がおかしくなってしまいました。
電池切れに注意
ちなみに何故かICレコーダには電源スイッチが無く電源が入ったままです。一番電気を喰うのは再生で、スピーカを鳴らすエネルギーが一番大きいので、できるだけ再生はしない方が電池が長持ちします。再生する場合も音量は最低にしましょう。録音中もそれなりに電気を喰います。待機モードが一番電気を喰いませんが、ここで電池切れマークが出ていると録音途中で落ちることがあるので電池の換え時でしょう。予備電池は必須ですが、ほとんどの機種が単4電池で、携帯音楽プレーヤ等と予備電池を共用できます。
誤消去に注意
1度だけやってしまいました。電池交換の時に。私の機種は消去ボタンが側面最上部にありますが、電池交換の際はそこを握ってしまうのです。これは機種固有の現象だと思いますが、みなさんも気を付けましょう。メモと違って消去すると痕跡も残りません(;_;)
購入時の注意点
ストレージクラス対応(PC接続可能機種のみ)
大半のPC対応ICレコーダはUSB接続ですが(メモリカードのもあるようだ)、問題はドライバです。ドライバと呼べるのは他のアプリケーションと組み合わせて動くものと認識していますが、実際にはドライバではなく「アプリケーション」として提供されるものもあります。その時問題になるのがタイムスタンプ。まともな「ドライバ」だったらエクスプローラで見ると外部ドライブとして認識され、PCに転送されたファイルのタイムスタンプは録音された日時になるのですが、「アプリ」の場合はタイムスタンプが転送した日時に変わってしまいます。外部ドライブとして認識されるドライバを持っている場合は「ストレージクラス対応」などと標記されます。購入の際は、値段が高くなってもストレージクラス対応の機種にしましょう。録音した年月日がPC上で見えるのと見えないのでは全く使い勝手が違います。以前使用していた機種はストレージクラス対応ではないので、しょうがないからPC画面をキャプチャーするソフトを使って録音一覧リスト(これは正しい録音日時が表示される)を画像に落とし、録音データとともに保存するようにしています。今使用している機種はストレージクラス対応なので楽です。
データ圧縮度
録音した音声データは、8ビット8KHzサンプリングでそのまま馬鹿正直にメモリに格納すると8KB/sでメモリを消費し、メモリが16MBの場合は約35分でメモリが満杯になります。しかしデータを圧縮して記録すれば何倍も長く録音でき、機種によっては16MBでも10時間以上録音できる製品もあります。しかし、圧縮率が高くなると音が不自然になる欠点があります。一昔前のデジタル携帯電話の声のようなものです。これは人間の音声を効率的に圧縮するアルゴリズムで、逆に言えば人間の音声以外は通りません。色々な音を録音したい人の場合は注意が必要です。
ただ、今はフラッシュメモリの価格が下落し、\5000程度の最低価格帯のICレコーダを除いて内蔵メモリ容量は最低でも数100MBありますので、圧縮度が高い独自フォーマットを採用した機種は最低価格帯のICレコーダを除いてほぼ消えてしまったと思います。WAV、WMA、MP3等の一般的なファイル形式で録音され、自然な音で録音されます。ビットレートは3段階程度(LP:長時間録音用/SP:標準/HQ:高音質)で設定できるものが多いと思います。山でメモ代わりに使うだけなら最高レートで録音してもメモリを使い切る心配は全くありません。
メモリ容量
今までの経験では64MBもあれば、最高品質で録音してもメモリがいっぱいになることはありません。ということは、今の時代に流通している機種なら、どれでも支障ないと言えるでしょう。少し調べてみましたが、主要メーカの低価格機種(7千円前後)でも128〜512MBが主流でした。もっとお値段が高いものだと1GBとか乗っている機種もありますが、山で使う分にはあまりにも多すぎてもったいない。
携帯音楽プレーヤ機能
ICレコーダは録音するだけでなく、録音したファイルを再生することもできますので、基本的には音楽ファイルの再生も可能です。ただし、どのファイル形式に対応するかは機種によって異なり、一般的なMP3形式が再生可能な機種がどの程度あるのかは調べたことがありません。少なくとも7千円程度の低価格機種ではダメなようです。携帯音楽プレーヤでは当たり前のイコライザ、ランダム再生、各種リピート機能もあるとは限りません。英会話学習に使うような可変速度再生や、区間を選んでのリピート再生機能などは充実していますが。
ちなみに、私が使っているICレコーダは携帯音楽プレーヤとしても使用可能ですが、専用機より使い勝手が悪いためレコーダとしてのみ使用し、音楽鑑賞は携帯音楽プレーヤでやってます。これも小型軽量化、低価格化が進んだからこそできることでしょう。携帯音楽プレーヤはICレコーダより安価なので、別々に購入しても高機能ICレコーダを購入しても価格的には大差ないと思います。
逆に携帯音楽プレーヤで録音できる機種もありますが、私が知っている限りでは録音ボタンが付いていてもワンタッチで録音はできず、メニューに入って録音モードに切り替える必要があり、ICレコーダの操作に慣れてしまうと使いにくくて耐えられません。この点ではICレコーダで音楽プレーヤを兼用する方がまだ使いやすいです。オリンパスのVoice Trek V-30ならレコーダ機能とプレーヤ機能の切替はスイッチ一つです。
電池と電池の持ち
以前は大半のICレコーダは単4電池2本でしたが今はどうなのか? 現在使用しているレコーダは単4電池1本で、電池の持ちは毎週土日に使って約1ヶ月程度です。もちろん機種によって異なると思いますが、やたら短いものはないと思いますので、予備電池を持っていけばあまり気にする必要は無いと思います。個人的には少し大きくなっても構わないので単3が使えるといいんですけどね。そうするとヘッドランプ、デジカメ、無線機と全て電池が共通になるので使い回しできます。予備電池も1種類持てばいいので軽量化できるのですが。なお、中には充電式電池を使用すると持ち時間が減る機種もありますので要注意。これは充電式電池の電圧は乾電池より0.3V低いことが原因で、充電式電池を考慮して設計された機種なら低い電圧でも動き電池の容量いっぱいまで使いきれますが、乾電池使用を前提とした機種では充電池の電気がまだ残っているのに電池切れになってしまいます。オプションで充電式電池がある機種なら安心です。
私の経験では、山の中でICレコーダを使っている人を見たのは数人程度で、ハンディーGPS利用者と同程度と見られ、まだまだ普及が進んでいないと思われます。もっとも、ICレコーダは登山記録を書かない人には無用の長物なので、どれほど広がるのか予想できません。でも、記録を書く人にとっては強い見方です。デジカメほどのお値段はしないので導入してはいかが? 1万円程度でストレージクラス対応USB接続のICレコーダが購入できます。