中ア北部 北沢山 2009年11月7日

所要時間 6:24 モノレール基地−(0:30)−6:54 電波塔−(0:59)−7:53 北沢山 8:12−(0:42)−8:54 電波塔−(0:16)−9:10 モノレール基地

 日本山名事典に記載された中アの2000m峰は全て登り終わっているが、1900m台の未踏の山がある。それが北沢山で、位置は権兵衛峠と経ヶ岳の中間付近であり、常識的には権兵衛峠からの往復であろう。とはいえ夏道は無く、経ヶ岳の植生から考えて笹薮の可能性が大であり、藪漕ぎを回避するなら雪が積もった時期を選ぶべきだろう。しかしその時期は権兵衛峠の車道が通行止めであり、無雪期なら不要の労力が加わることになる。どちらをとるかの天秤となるが、私の場合は藪漕ぎ覚悟で無雪期に出かけることにした。なお、今年の積雪期にDJFが北沢山に登ってHPで記録を公開しているが、それによれば少し笹が顔を出していたが大半は埋もれてスキーが使えたそうだ。

 権兵衛トンネルが使える今の時代は、権兵衛峠に行くならばトンネルの木曽側出口近くで旧国道につながる部分から旧国道に出るのがウネウネ道の距離が短く道幅も広くて得策だ。東京から向かう場合は当然ながら伊那ICが近いので権兵衛トンネルを抜けて逆戻りするような格好となる。今週末は気温が高めでトンネル近くの温度表示は0度を上回っていたが、旧道は日影で白く霜が降りた区間もあり、滑らないよう注意しながら進んでいく。峠を通過すると通行止めの看板が出ているが、こちらは峠からちょっとだけ北にずれるだけなので大丈夫だろう。どこで通行止めなのかの案内はなかった。

モノレール基地 モノレール基地反対の駐車余地

 北上すると道路脇に建物が登場し、モノレールが上に向かっている。ここから上にあるのは電波塔のはずで、そのメンテナンス用だろう。その先に踏跡が無いか少し偵察してみたが周囲は一面の笹原でモノレールくらいしか藪漕ぎせずに済むルートはなく、モノレール基地反対側の広場に車を置いた。今週頭は寒かったが今日は暖かく長袖シャツ姿で出発だ。

モノレール沿いに登る。黒い管が送電ケーブル 100m毎に標識あり

 モノレールの出だしはえらい傾斜で、乗り物で上がるのならいいが歩いて上がるには骨が折れる。いきなりTシャツになって上がっても汗をかかされる。モノレールと並行して送電ケーブルが敷設されているが(たぶん6600V)、こいつの横を歩くのはちと気持ち悪いのでレールを跨いで逆側を歩いた。もちろん実際は絶縁はしっかりとしていて感電するはずはないのだが(漏電していたらブレーカが落ちるだろう)。モノレールに沿って100m毎に標識が出ていて基地から中継所まで700mだそうだ。

電波中継所。DJFの時よりパラボラが減っている 中継所横の草付き
中継所から見た大棚入山 木の向こう側に北沢山

 モノレールの終点は電波中継所の敷地内で、建物の前に「駅」があった。建物の東にはヘリポートらしき平地があり、建設当初はこれで機材を運搬していたのかもしれないが、設置後は大型機械の搬入はほとんど無いだろうからモノレールがメインとなったのだろう。建物西側が樹木が伐採され更地になっており南側の展望はいいが北側は離れたところに木が茂っており、肝心の北沢山は樹林越しにしか見られない。山頂付近は樹林が開けて緑の絨毯のようになっているが、これは草付ではなく笹の海を意味する。まあ、雪が無い時期だからしょうがないな。

最初は低く薄い笹 1806.5m4等三角点

 電波塔から道無き尾根を西に向かうが、笹に突入するとすぐに1806.5m4等三角点があった。その先は予想に反して低くて薄い笹の生えた尾根で。もし山頂までこのレベルの笹なら無雪期でも楽勝で往復できそうだ。薄い踏跡もあり境界標識もあって人臭い。目印もあってこの稜線を歩く人は他にいるようだ。

薄い踏跡あり 目印もある
1850m峰南端から見た木曾御嶽。雪が見えない 1850m峰南端から見た乗鞍岳。雪僅か

 しばらくはさして濃くない笹が続き、緩やかに登って1850m峰南端に到着。少しだけ樹林が薄まって南側には中ア中部の山並みが、西には木曽御嶽、その北には僅かに白いだけの乗鞍が見えていた。この前の雪はほとんど溶けてしまったようだ(北斜面はかなり残っていると思うが)。ここからでは樹林が邪魔してそれより北の北アは見えない。

1850m峰の笹はこの状態が続く 1850m峰の露岩

 長い1850m峰の真中付近の尾根左側に高さ3m程度の露岩があり、登れば見晴らしがよさそうだったがやめておいた。1850m峰北端から緩やかに下る頃から徐々に笹が濃くなってくるが、何となく獣道があってそれを追えると足に絡みつく笹が減って歩きやすい。笹の高さは腰ほどで、笹の種類は何だか知らないが、根曲竹のように茎が硬いタイプではなく細くて柔らかいタイプなので上越国境や志賀高原よりはずっとマシと言える。山頂まで笹の種類は同じだった。

1884m峰へと緩る 1884m峰てっぺん。ここから笹が深くなる
笹に埋没しながら微かな獣道をトレース 他にも無雪期に歩く人がいるようだ

 1884m峰へと緩やかに登るとてっぺんは笹に覆われているが、少し立木が減って御嶽や乗鞍が見通せた。ここで尾根は右に曲がって下るが、この先が今回のルートの核心だった。笹の密度が上がって完全に笹薮状態となり笹の高さも胸くらいまであり、笹に埋もれて遠目には見えないほんの微かな獣道を辿るようになる。このレベルの笹薮になると僅かな獣道でもあるのと無いのでは大きな差を生じる。獣道がある場所では笹が絡み合うことが無く、手で掻き分けるときれいに笹が左右に開いてくれて楽で歩行速度はかなり速いが、全く獣道が無い純度100%の笹薮に突入すると根元から絡み合って掻き分けようとしても笹が離れず、無理に突入しても足に絡んでなかなか前に進めない。おまけに一部朝露で濡れた地帯まで登場、ゴアを着るか微妙な濡れ方で、こんな笹薮の中でゴソゴソ着るのも面倒なのでそのまま進んでいった。幸い、濡れ地帯の距離は短く我慢の範囲内だった。

1900m峰付近。笹濃い 1900m峰先の稜線は左(西)斜面が笹が薄い

 1900m峰手前では獣道を失い、少し濡れた猛烈な笹藪漕ぎとなった。てっぺんで尾根が右に曲がると僅かな間だが笹が枯れて歩きやすくなるが長続きしない。しかし、この先は尾根のてっぺんより西側が笹が低くて密度も低くずっと歩きやすいことに気付いてルート変更、動物も同じようで尾根上に無かった獣道がこちらには付いていた。

最後の登りが始まると西斜面も激藪化 上空が開けてきた

 山頂への最後の登りが始まると尾根西側の笹も背が高くなって高密度化し、どこを歩いても同じ藪漕ぎ状態なのでルートを外さないよう尾根に戻り、微かな獣道を選んで進んでいった。傾斜がきついうえに藪がきついのでかなりの苦労で、ここは雪で藪が埋もれた時期に歩きたいところだ。登りでは僅かにある獣道を追いかけるので精一杯で気付かなかったが、下っているときに無雪期に付けられたと思われる目線の高さに付けられた目印がいくつかあったので、無雪期に藪に突入する物好きは私だけではないらしい。ただ、この辺は視界さえあれば下山用目印は不要な簡単な地形で、目印を付けるよりも獣道を追いかけるのに精神エネルギーを使った方がいいだろう。

北沢山山頂(南を見ている)。中央の凹みに三角点あり 北沢山から見た経ヶ岳へ続く尾根
北沢山三角点 北沢山から見た焼岳、笠ヶ岳
北沢山から見た中ア中部
北沢山から見た南ア(クリックで拡大)
北沢山から見た槍穂

 傾斜が緩むとそれまでまばらにあった木がきれいさっぱり無くなり一面の笹原に変貌、今までは身の丈だった笹の高さは進むに連れて胸、腰、腿と低くなり、真ん中のちょっとだけ笹が切れた場所では膝丈まで低くなっていた。そしてその笹が切れた場所に三角点があった。間違いなく北沢山山頂だ。近くに木が無いので展望は良く、逆光気味でディテイルが見えないが南アがずらりと並んでいた。中アは手前の大棚入山から将棊頭山への尾根が高いので木曽駒までしか見えない。北アは槍穂は見えたがそれより北は経ヶ岳へと続く尾根の向こう側だった。11月だというのに槍穂でさえかなり黒くなっているのにはちと驚いた。

 近くの木にDJFのリボンがかかっていないか探したが見当たらず、帰ってからネットで確認したら笹につけていたのだった。でも山頂付近の笹にもリボンは見当たらなかったので強風で千切れてしまったのかもしれない。周囲はことごとく笹の海で三角点のごく近傍しか座れる場所は無いので、三角点脇に小さな断熱シートを広げて休憩した。今日は無風快晴、日差しが暖かかった。

山頂直下の目印 青空に映える電波塔

 帰りも同じルートなので気は楽だが、あの笹藪をまた掻き分けるのはちと気が重いのは仕方ない。三角点付近を離れるとすぐに笹の高さが高くなり、首の高さまで没するようになるが登りと違って視界があるので楽だ。下りは重力の助けがあるので獣道を気にせずに強引に下ることができ、これまた楽だが傾斜が無くなると往路同様獣道探しに精を出す。1884m峰へ到着すればそれまでより1段笹が薄くなり、やっと核心部を抜けられた。笹が消えるわけではないが激藪ではなくさほど苦労せずに進むことができ、獣道なのか薄い踏跡なのか分からないが筋を追っていく。露岩脇を通過して長い1850m峰から下って樹林が開ければ電波塔に到着。往路同様モノレール脇で笹を避けて車道まで下った。

 このように北沢山は無雪期でも充分登れることは分かったが、途中には予測通り深い笹藪が待っていた。雪がある時期なら笹は埋もれて藪漕ぎは無いが車道が通行止めで余計な高度差を足で稼がなければならず、どちらを選ぶかはそれぞれだろう。「楽しむ」という意味では雪があった方が圧倒的にいいと思うし、「楽をする」の方向では藪を漕いでも無雪期に軍配が上がると思う。

 

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