南ア南部 畑薙山 2009年11月2日
所要時間 7:03 ゲート−(0:36)−7:39 大吊橋−(0:13)−7:52 送電鉄塔−(0:34)−8:26 1403m標高点−(0:58)−9:24 畑薙山 9:45−(0:48)−10:33 送電鉄塔−(0:08)−10:41 大吊橋−(0:43)−11:24 ゲート
畑薙山は畑薙第1ダム湖畔にあり、茶臼岳から東に落ちる尾根上にあり登山道はない。標高は1800mを越え以前から気になっていたが、山の規模が中途半端なこと、南ア南部は東京からでも近くはないことなどから登らないままだった。そのうち登ろうとは考えていたが、今回の連休では月曜日の予報は朝方まで雨でその後回復とのことで行動開始時刻が遅れそうで、畑薙山なら短時間で登れるので登山開始が遅くても問題なくちょうどいい。
問題は畑薙第1ダム近くの工事現場で、通行可能時間帯は7:00〜17:00となっていた。できれば17:00前に入って早めに登り始めたいが、間に合わなくて7:00に入っても大きな問題はないだろう。どうせ半日の行程だ。
南ア南部の矢筈山から下山し、旧南信濃の神楽の湯に浸かって兵越を越えて静岡に入り、天竜で買い物をして東名で浜松〜静岡まで走って北上、途中で雨が降り始めた。工事現場は雨の場合は通行止めと書かれていたので今日はもうダメかもしれないがとりあえず進んでみた。そのうちに雨が本降りとなって通行止めの可能性が高い。PM5時を10分ほど過ぎて工事現場手前のゲート前に到着、正確にはゲートではなく車止めだったが既に道路を塞いでいた。ただし手で動かせるもので、現に目の前で下ってきた車は手で開けて通過し、車止めを戻して下っていったので、完全に通行止めではないらしい。まあ、それでも雨が降って崖崩れの可能性もあることだし、規則に従って少し下った安全な駐車余地で寝ることにした。どうせ明日はのんびり出発しても問題ないし。雨は夜間も降っていたが深夜に止んだようだった。
朝はのんびり起床、7時には朝飯を食い終わって出発できるように支度をし、6時半くらいに飯を食っていたらポツポツと車が上がっていく。たぶん東海フォレストの関係者か道路工事業者だろう。飯を食い終わり、まだ7時前だがもう車止めは開いているだろうと進み始める。最初の車止めは解放され、工事現場直前の次の車止めでは先行の軽トラが開け終わった直後で続いて通過、工事現場の向こう側にも車止めがあって、軽トラから人が降りて開けてくれて先に行けとの合図で通過した。車止めは3カ所あるがすべて施錠するようなタイプではなかった。工事現場は道路を走っている限りでは大した工事では無いように見えたが、遠くから見ると沢の上方から下まで崩壊していた。今は沢から落石が落ちてこないようでかい壁が作られている。
沼平ゲート前駐車場 | 沼平ゲート。この時間は無人 |
ダムを越えて沼平ゲート前駐車場に到着、数台の車が止まっているがこの早朝の時間では登山者の可能性が高いだろう。着替えて外に出るとまだ気温は高めで、まだここまで寒気は南下していないらしいが、そのうち寒くなってくるのだろう。出発時は長袖シャツだけで充分だった。空には少し雲が出ているが頭上は青空だ。ゲートの番人はまだ開業前で番号鍵の門が閉じていた。
ゲートの番号鍵。3桁って少なくない? | 畑薙山。山頂は雲の中 |
林道を歩いていくとガレをまとった畑薙山が対岸に見えてきた。このまま対岸に取り付ければ近いのだが、湖では渡れないので大吊橋まで行って戻るような形になる。後から車が追い越していったが、大宮ナンバー、三重ナンバー、それに水戸ナンバーだったと思うがレンタカー2台+1台だった。これってどんな車なのだろうか??
奥は上千枚山。これも雲の中 | 登りで使う尾根。いい感じに紅葉 |
畑薙大吊橋遠景 | 大吊橋。対岸まで100m以上 |
畑薙大吊橋は相変わらず長い。落ちればタダでは済まないが構造的に簡単には落ちないようになっているので安心して渡れる。ただ、強風時にはどれくらい揺れて恐怖を感じるのだろうか。人間は簡単には落ちないがデジカメ等は手を滑らせれば湖まで一直線だから橋の上での撮影はやめておいた。下が沢ならともかく湖では回収不可能だ。
送電鉄塔直下で登山道と別れる | 鉄塔を過ぎたところ |
初めから目印がお出迎え | 概ねこのような植生が続く |
橋を渡ると登山道はすぐ巻き始めると思ったらしばらくは尾根に沿って上がっていく。送電鉄塔直下で尾根を外れてトラバースし始めたので、登山道を逸れて尾根をそのまま登る。送電鉄塔より先は道は無いが、予想通り藪が無い樹林帯で目印もあり、楽々登ることができる。下から見た感じでは紅葉した落葉樹がほとんどのように見えたが、尾根上は緑の針葉樹が大半を占めていた。
ずっと歩きやすい尾根が続く | 切り株にかかったワイアーロープ |
踏跡は割と明瞭で時にはジグザグったりもしており、登山道と言っても差し支えないような区間もあるが、部分的には踏跡が消えて藪が無いことも相まって慣れない人だとどこを歩けばいいのか迷うかもしれない。藪が無いのだからどこを歩いてもいいのだ。登りは上を目指せば山頂にたどり着くことができる。
これが下部で一番多かった目印 | これは最後まで続いていた目印 |
ありがちなテープ | 古い赤ペイントも |
上は色が抜けた赤布、下は緑テープ | こんなのが落ちていたが正式登山道? |
目印は真新しいものは見かけなかったが、様々な種類を見ることができ、けっこう多くの人がこの尾根を利用しているようであった。一番新しそうなのは黄色い荷造り紐で、尾根下部では頻繁に付いていた。かなり古そうな赤ペイントも見られたがいつのものだろうか。今回は地形が明瞭だったし目印も賑やかだったので、自前の目印の登場機会は無かった。
1403m標高点で傾斜が緩む | 以後はなだらかな尾根が続く |
1403m標高点でヤレヤレ峠から上がってくる尾根と合流し広い尾根に乗る。帰りは尾根入口がちょっとわかりにくいが、目印があるので大丈夫だろう。もし直進してヤレヤレ峠に下っても下は登山道があるから問題ないし、峠に至る尾根も私が上がってきた尾根と傾斜は同じ程度なので危険はないだろう。ここからは踏跡が明瞭になるかと思いきや、逆に薄くなって消えてしまった。藪が無い広い尾根でどこでも好き勝手に歩けるからみんなルートが分散するからかもしれない。
1500mガレ | 1500mガレから見た畑薙湖 |
緩やかに上がっていくと1450〜1550m付近は2重3重稜線のように複雑な尾根になり、どこを歩けばいいのか何ともわかりにくい。登りは上を目指せばいいが下るときはよく周囲を見ながら尾根を外していないか確認した方がいいだろう。私は南寄りを歩いたが、ここは地形図にあるガレの上を通過するので展望がいい。徐々に冬型の気圧配置が強まっている真っ最中で、大無間、小無間の稜線は完全に雲の中に隠れてしまい、大根沢山も山頂部は雲の中だった。こちらは日が当たっているのだが、徐々に南西の風が強まってきており、そのうちに風向きが北寄りに変わってくるのだろう。眼下にはダム湖が広がり、対岸には東海フォレストの送迎用マイクロバスが走っているのがはっきりと見えた。今日は平日だがどれくらい客が入っているだろうか。もう11月で稜線上の小屋はすべて閉まっているはずで、これから縦走しようという登山者はまずいないのではなかろうか。
1650mガレ | 1650mガレから見た大根沢山。山頂は雲の中 |
1650mガレの先の凹地 | 凹地より先で尾根が狭まりルート明瞭化 |
一貫して南の縁付近を登っていくが、尾根上はどこも背の高い薄い樹林でどこでも歩きやすい。1650mのガレも縁を歩いて展望を楽しむ。その先は地形図にない凹地があり、ここも南の稜線を歩いた。この先は尾根が収束して少しまとまった登りとなるが、相変わらず藪のやの字も無い快適な尾根歩きが続いた。風が吹き出してから徐々に気温が下がり始めたようで、少し尾根の北側に寄って(なぜか南西の風だった)風を避けながら進んでいく。
山頂が近づくと尾根が広がる | 畑薙山山頂 |
沼津カモシカの赤布 | 唯一文字が読める山頂標識 |
文字判別不能の標識 | これも文字が消えかけ |
傾斜が緩んで山頂が近い雰囲気が現れ、なおも進むと平坦地の中に少しだけ樹林が開けた場所があり、地面に三角点が出ているのが目に入った。ここが畑薙山山頂であった。新しそうな標識はなくすべて古ぼけた木星の標識ばかり3つが木に付いていた。そのうち文字が読めるのは1個だけであった。赤布もぶら下がっており見てみると沼津かもしかのものだった。これは久しぶりに見たなぁ。なんせ最近は南ア南部はほとんど来ていなかったからなぁ。周囲は深いシラビソ樹林で全く展望はないが、山頂付近は頭上が開けているので日差しはある。水場は無いが平坦地でありテントを張るにはちょうどいい場所だった。少々休憩して下山を開始する。
帰りは尾根が広がる部分で注意しないといかんと考えてはいたが、ガレに沿って下ってしまったため1600mで南の尾根に引き込まれそうになり、左手にガレが見えるようになって異常に気づき、ロスった時間は数分で済んだ。これもちゃんと方位磁石を確認して歩いていれば防げたミスだ。それ以前に目印を頼りに歩けば問題なかっただろう。その程度の頻度で目印は現れていた。1403mで右に進路を振って目印を頼りに最初は慎重に下り、尾根が明瞭になってその先にも目印が続いているのを見て安心して下り始める。いい傾斜で下っていくので効率的だったし、ここまでくれば尾根が広がったり分岐してわかりにくい場所はほとんんど無いし、背の高い樹林で尾根の先が見通せるためルートファインディングが楽だった。
鉄塔に出ればもう登山道で、フィナーレは畑薙大吊橋だ。冬型が強まってきたようで行きは無風だったのが今は南から強風が吹き付けて吊橋が揺れている。それでも覚悟していたほどには猛烈な風ではなく、安心して渡り始めた。しかし湖の上は陸上よりも風が強く、橋の端より真ん中の方が風による動揺が大きく、左右ではなく上下に大きく揺れるのは歩きにくかった。手放しで歩ける状態ではなく常に片手はワイアーを掴んで安全確保しながら進んだ。風のピークで揺れが大きいときには立ち止まってやり過ごす必要もあり、冬場にここを渡るときには風は要注意だ。
無事吊橋を渡り終われば林道歩きのみ。この時間は散策を楽しんでいる観光客の姿がチラホラ見られた。天候は基本的にいいのだが、稜線の高い場所は相変わらず雲に覆われたままで、上千枚山も雲の中だった。ゲート前駐車場に到着すると何台か停まっていたが朝方と同じ車かどうかまでは覚えていなかった。こんな平日でも着替えている間に次々と車やバイクがやってきては引き返していったり、ゲート近くで写真を撮ったりしていた。
畑薙第1ダム駐車場。なぜか満杯 | 通行規制の工事現場。谷が崩壊している |
帰りがけに畑薙第1ダム駐車場を見てみたがほぼ満杯状態で、ちょうど出発していった東海フォレストの送迎バスは6,7割埋まっていたので、意外にお客がいるらしい。この時期はダム堰堤がバス乗り場になっていた。工事現場を過ぎて畑薙ロッジ近くに移転した白樺荘で入浴。旧白樺荘は無料だったが今度は\500、以前の無料というのが不思議であり、今の価格が妥当な線だろう。まだ真新しいピカピカの建物だった。営業時間が長くなったのかと思いきや、入浴はPM5:00までとなっており、この付近で少し厳しい日帰り山行をやった場合は入浴時間に間に合わすのは難しそうだ。この日が新装開店というわけではないと思うが大いに賑わっていた。
2000m未満山行記録リストに戻る