北海道 北大雪 ニセイカウシュッペ山、大槍 2008年7月17日


 ニセイカウシュッペ山は北大雪の最高峰であり、ガイドブックによると展望もいいらしい。300名山なので道が悪いはずもなくいつか登ろうと思っていたが、今回の旅の天候サイクルの関係で立ち寄ることにした。本当はカムエクに登りたいのだが今年の夏の北海道の天候は不順で、天気図にオホーツク海高気圧が登場することが全く無く、梅雨前線北側は冷たい空気を持った低気圧群ばかりでその隙間の気圧の尾根の高気圧で1,2日しか好天が持たないバターンで、雨が降ると大雨ばかりであった。カムエクのような沢登りも混じった山行では大雨の翌日に入るのは無謀の極みであり、雨が上がって翌々日から入ると次の日はもう雨になってしまう天気周期が続いており、残念ながらカムエクは今回は登れそうにない。

 ニセイカウシュッペ山はその昔(10年以上前)「猫爺」が登っているはずであるが、記録の内容は全く覚えていない。たぶん今とは林道の出来具合も異なるだろうから現在のルートとも違うだろう。そんなわけでネットで最新の記録を検索しておく。すると中越から林道の入口があり、途中に車止めのゲートがあるが営林署に電話で番号を確認すれば教えてもらえるとのことであった。今回は旅の途中、十勝北部上士幌町の糠平温泉の公衆電話から電話して番号を聞いた。するとCVP氏のHPに書いてある番号と同じであり、鍵は少なくとも数年間は同じもののようだ。

林道ゲート(鎖) 番号鍵がかかっている

 カーナビを頼りに国道273号線を中越付近に向かう。この界隈は旭川紋別道の工事の真っ最中であり、林道入口はその工事現場を横切っているが国道沿いにちゃんと標識が立っていて見落とすことなく右折、工事現場は左に逃げるが登山口は直進だ。あとは案内標識に従って進んでいけばよく、普通車でも問題なく走行できる路面状況だった。鍵のかかった車止めは国道から数km入った奥にあり、電話で聞いた番号にあわせるとすんなり開いてくれた。あとは長い林道を延々と走行し、終点が登山口のある広場だった。平日ということもあり先客は地元ナンバーの2台だけだった。

林道終点の駐車場 登山口
廃林道?広い道 水田のようなぬかるんだ道

 登山道入口の入林届けに記帳し出発。山頂まで5.5kmの標識があり、以降は1kmごとに標識が立っていて目安になる。最初は登山道といっても廃林道らしく、なだらかで広い道が続く。しかし登っていくうちに水田のような水を含んで泥だらけになり、登山靴よりも長靴で歩いたほうがいいような道が続くようになり、左右の「岸」を渡り歩きながら進んでいく。これがノーマルな道の状態なのか、それとも今年のような多雨の時のみこんな状態になるのかは定かではない。たぶんニセイカウシュッペ山も火山性の山だと思うので地盤は火山礫や溶岩だと思うが、噴火活動を終えて長期間が経過し、樹林が発達して土の層が厚くなってこうなったのだろうか。周囲は白樺を中心とする落葉広葉樹林である。

 延々と泥だらけの道が続き、緩やかに高度を上げていく。そう、傾斜が緩いのも湿地帯のような道になる要因のひとつかもしれない。残り4kmの標識が出てくる頃にはようやく水田状態から脱却し、普通の湿った登山道になってくれて一安心。しかしこの後も断続的に「水田区間」が登場し、登山靴もスパッツも泥だらけになってしまった。登りはまだいいが滑りやすい下りでコケると衣類まで泥だらけになってしまうので要注意だろう。

尾根が細くなると道も細くなる 1742m峰と大槍
樹林の隙間から見るニセイカウシュッペ山

 道幅が狭まってくると廃林道ではなく本当の登山道に入ったようだ。ここまで来ると「水田区間」は僅かになって歩きやすいが、代わって濡れた笹のお出ましだ。登山道は良好なのだが少しだけ両側から笹が被った区間があり、今朝降った霧雨でたっぷりと濡れている。先人が歩いて露払いしてくれたはずだがまだまだびっしょりと濡れており、ゴアのズボンが欲しいくらいだが、こんなときのために持ってきた杖で笹の露を叩き落しながら登っていく。笹区間は稜線直上ではなく左に巻いている箇所で特に酷かった。これに「水田区間」も重なって最悪な場所もあった。

 途中、樹林が切れて展望が得られる場所では、表大雪はもちろん、東大雪も日高の山々も見えており、今日は今回の旅の中で最高の天気だった。雪渓を抱いた谷の向こうには緑のハイマツが広がる山頂が見えている。まるで北岳を取り囲むように流れる野呂川のように山頂を谷が取り囲んでおり、尾根は左回りで山頂へとつながっていた。

南に延びる尾根上には小槍がそそり立つ 登ってきた尾根を振り返る
1742m峰を巻く 大槍向けて登る
大槍直下分岐から見たニセイカウシュッペ山

 徐々に森林限界を超えて樹林が薄くなるとお花畑も見られるようになり目を楽しませてくれる。ここまで来るとやっと「水田」から開放され歩きやすくなった。大槍を巻いて再び稜線と合流した場所で右手に明瞭な踏跡が分岐していたが、いったいどこに向かうのだろうか。大槍に登るルートがあるのだろうか。ここまで来ると山頂まで1kmを切っており、しかも反時計回りに歩いての距離なので直線的にはもっと近く、山頂に立つ人の姿がはっきりと見えた。

1860m峰巻道から見た大槍 1860m峰巻道を進む

 次のピーク(1860m峰)も巻いてしまうが、巻き道の途中にちょっとだけ岩が露出した区間があり、そこでナキウサギの姿を見かけることができた。相変わらず地上に出ている時間は瞬きするほどの短時間だけで詳細な姿を見られたわけではないが、ウサギというよりネズミに近いように思えた。鳴き声はまるで鳥で、知らない人なら確実に鳥の鳴き声だと思うだろう。「ピッピッ」という短く鋭い声で、一度聞けば覚えるような特徴がある鳴き声だ。

 巻き終わって稜線に再合流したところから1860m峰へ登っていく踏跡が分岐しており、これもどこに行くのか謎だ。まさかお隣の比麻良山まで続いているのだろうか・・・。翌日、比麻良山に登ったらそちら側からニセイカウシュッペ側へと尾根上に踏跡が見えていたので、たぶん両者はつながっているのだろう。Uターンするように左に曲がってなだらかに登りきったところがニセイカウシュッペ山頂(三角点)だった。

ニセイカウシュッペ山 1879m三角点 ニセイカウシュッペ山 1883m標高点
ニセイカウシュッペ山からの360度パノラマ写真(クリックで拡大)
ニセイカウシュッペ山から見た東大雪〜北大雪南部(クリックで拡大)
ニセイカウシュッペ山から見た日高山脈(クリックで拡大)

 山頂一帯は寝たハイマツしか無いので展望は申し分なく、西の雲海の上に浮かんでいる山はたぶん暑寒別岳だろう。北側は手塩岳のみ雲海の上。南は表大雪が大きすぎて遠くは見えず、東大雪との隙間に日高が見えていた。この標高(1900m弱)にしてこの植生だと、本州ならここより標高がさらに1000m高くないと見られない光景で、北海道の冬の厳しさをうかがわせる。先客の男性2名は私より出発が1時間半以上早く、既に展望を満喫したようで交代するように下っていった。こちらは昨日のウペペサンケの疲労もあり、展望を楽しんだ後はしばしお昼寝。日当たり良好だが気温は低く、ダウンジャケットを着てザックの上にひっくり返った。

 下山の前に最高点を踏んでおくことにする。現場に行けば分かるが、三角点の設置された広場よりも東側が高く、そこに向かって踏跡が伸びている。標高差は数m程度しかないだろうが、やっぱり正確な山頂は踏んでおきたい。踏跡入口にザックをデポして踏跡を辿ると、1分もしないで最高点に到着。周囲は寝たハイマツなので山頂同様展望良好だ。

大槍への踏跡入口 踏跡を離れて稜線を登る
山頂直下 大槍山頂

 帰りは大槍に立ち寄ってみることにする。大槍が日本山名辞典に記載されているのか調べていないが、もし記載されていたらもったいない。記載されていなくても大した距離ではないので無駄ではないだろう。大槍北東鞍部から分岐する明瞭な踏跡に入り、踏跡が稜線から離れてトラバースし始めるところで稜線に取り付く。稜線上にも薄い踏跡があり藪は無く快適に歩け、少なからず大槍に登る人がいるようだ。しかし、トラバースする道はいったいどこに続いているのだろうか? お花畑を突っ切り、最後の一登りで狭い大槍山頂に到着。ハイマツが切れて地面が出ており高度感抜群だ。残念ながらガスがかかり始めており北側しか展望は得られなかった。

 以降は同じルートを戻るしかなく、「水田」に足を突っ込まないよう注意しながらのんびりと下った。下りの途中で山頂付近に雲がかかるようになり、私が登った時間が展望を得られる最後のチャンスだったようだ。今年の北海道は好天が長続きせず困ったものだ。


所要時間
 5:51 登山口−−7:50 大槍分岐−−8:10 ニセイカウシュッペ山 8:54−−9:10 大槍分岐−−9:16 大槍−−9:20 大槍分岐−−10:46 登山口


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