北ア南部 中崎山 1744m 2009年5月23日


 先週末、DJFがとうとう穴毛槍登頂に成功した。どうやら稜線の雪が落ちた時期ならば私でも登れそうな感触が得られたので、谷筋に雪が残って歩きやすそうな時期に挑戦しようと考えた。ただし、あのDJFでさえ下山時に滑落しそうになるほどの傾斜だそうだから、私の実力ではかなり注意を要するだろう。そこの雪が消える時期を狙えばいいだろうが、谷全体の雪が消えてしまうとゴロゴロの石ころだらけで歩きにくかったり灌木藪も考えられるので微妙なところだ。とりあえず、土曜日だけは天気が持ちそうなので出かけることにした。もちろん、私の実力からして少し背伸びが必要なルートなので、何が何でも登ろうと決意していたわけではなかった。

土曜朝の無料駐車場最上段。ガラガラ 新穂高。ガスからやっと抜け出ている程度

 新穂高の無料駐車場はガラガラで、最上段の駐車場にある車は1台だけだった。天気は小雨で明日の朝には上がってくれないと困る。パッキングをすませて酒を飲んで寝て、翌朝起きると雨は降っていないが低い雲が谷全体を覆って今にも雨が落ちてきそうな雰囲気だ。天気予報では回復すると言っているが、現場でこの空模様を見ると平地はそうかもしれないが山間部はもう寒気の影響が出ているのではと考えさせられた。このままの天気だと穴毛谷は完全に霧の中で、視界はさほど得られないので目的のルンゼを正しくトレースできるか非常に不安である。さんざん悩んだあげく今回はリスクを考えて穴毛槍は延期とし、近くの適当な未踏の山でお茶を濁すことにした。思い浮かぶのな中崎山しかない。穴毛槍と比較すると格段にグレードが落ちるが、他に未踏峰がないのでしょうがない。西穂周辺という線もあるが、ここは奥穂を含めて一気に縦走で片付けるつもりだし、この天候で登っても展望皆無だろうから今回は眼中になかった。

 中崎山のルートであるが、地形図では破線が出ていたはずだが、手持ちの古いエアリアマップでは記載がない。ただ、以前に奥丸山に登ったときに中崎山の案内標識があって中崎山まで道があったんだと驚いたことがあり、どこかに夏道があるはずだ。ただ、その入口はどこなのか知らないので、まずは西尾根末端から登り、途中で夏道に合流することを期待しよう。

左俣を越える。ガスがめっちゃ低い 左俣林道のゲート
林道わきの斜面 藪は薄く適当に上を目指す

 断水で閉鎖中のアルペン浴場前を通過、蒲田川を渡って左俣林道ゲートを越えて林道に入り、すぐ右手の斜面に取り付いて上を目指す。幸い、この標高では笹は皆無で高い背の落葉樹林帯なので、雨で濡れたシダ類を避ければ藪はなく、上部の林道に出てそのまま林道を突っ切って斜面を登る。中崎尾根末端付近は尾根が広く、どこが尾根の中心なのか全く分からない。もしかしたら冬ルートの踏跡や目印があるかと思ったが、見かけることはなかった。ただし藪は無いので適当に登っていける。北アのこんなところで道の無い尾根を歩くことになろうとは・・・・。既に雲の層に突入したようで周囲はガスがかかっていた。まあ、この樹林では晴れていても展望は無いだろう。ガスが濃くて時刻は既に6時を回っているというのにデジカメのシャッター速度が遅すぎてブレるので、画質がざらつくが感度を最高値に上げた。

急斜面帯。藪皆無で歩きやすい 傾斜が緩むと岩屋登場

 少し標高を上げると植林帯になり、傾斜がえらく急になって歩きやすいところを拾ってジグザグに登る。傾斜が緩むと巨大な露岩が登場、岩屋のようになって雨がよけられる広さがあった。この先はしばし苔むしたシラビソ樹林となり、木の隙間を縫って標高を上げる。シャクナゲが見事な花を咲かせており目を楽しませる。

苔むしたシラビソ樹林になる 再び藪が消える
夏道登場 夏道の標識。奥丸山まで7.5km

 このまま藪っぽくなっていくのかと思ったら、再び少し明るい植林帯に変貌し、これまたいい傾斜で登っていく。下草のない歩きやすいところを選びつつ登っていると、突如として右(南)から登山道が出現した。よかったぁ、本当に夏道があったのだ。これでこの先は雨に濡れた藪の心配をしないですむ。登山道は尾根直上よりも僅かに南側でジグザグを切っているようであった。顕著なほど明瞭でもないが薄くもなく、エアリアマップの赤破線程度ではなかろうか。少なくとも日があるうちならルートを外す心配はないだろう。たまに赤布も登場、あまり高い位置のものは無かったので、やっぱり無雪期に付けた物らしい。まあ、雪がある時期なら直登するだろうけど。

登山道脇のシャクナゲ 倒木も手が入れられている
巻き道から離れる場所 尾根向けて登る

 このままジグザグして1650m峰に至るのかと思ったら、途中で大きく南に巻き始めた。この上の尾根は藪がひどいのかもしれない。ここも良く整備され、でかい倒木は伐採こそされていないが通りやすいように低いところは切り取られていた。どこで尾根に這い上がるのか心配になる頃、そのまま直進する巻き道は枝で塞がれて左に折れて登っていく道が登場、ここから再び上を目指すようだ。いつの間にか周囲は深いシラビソ樹林となり、高山の雰囲気が漂う。それに加えてガスっているいるのだから山深い雰囲気だ。実際は新穂高からさほど登っているわけではないが。段差のある石には木の梯子がかかっているが、濡れた横木は非常に滑りやすく、梯子は使わずに横の露岩帯を歩いたりした。でも、その岩も濡れて滑りやすい。普通、登山道の石は良く踏まれて濡れてもあまり滑らないのだが、ここのはツルツルよく滑る。

どんどん登る 1650m峰の一角
「合体木」の下部。かなり太い 「合体木」の上部。数本の檜

 深いシラビソ樹林を登りきって傾斜がなくなると1650m峰の一角に到着。周囲が見えないのでどこが最高点なのか、最高点を登山道が通っているのか不明だ。この辺はシラビソだけでなく檜も多くなり、下部で何本かの檜が合体して太い幹になった木もあった。そういえば東濃の井出ノ小路山に登る途中、サワラと檜が合体した「合体木」というのがあったなぁ。私にはサワラも檜も同じに見えて違いが分からなかったが。

 小鞍部に下って進路が左に曲がると右手(南側)に残雪が見られるようになる。ここは中崎山から南西に下る2重山稜で、地形図では真中の谷に登山道が書かれているが、実際は西側の尾根上に道が付けられていた。ここまで来ると徐々に笹が混じるようになるが、登山道の刈り払いは完璧で体に触れる藪は皆無だ。尾根を緩やかに登っていくが相変わらずガスの中で周囲の視界はなく、穴毛槍は諦めて正解だったかもしれない。一時だけガスが薄まって太陽の輪郭が見え、このまま雲が切れるかと思ったら再び深いガスに覆われてしまった。

2重山稜真ん中の谷には残雪あり 三角点分岐の刈り払い
中崎山山頂

 地形が緩やかで視界は無いし、山頂を通過してしまったのではないかと心配になってGPSの電源を入れるが、頭上は樹林に覆われて場所を選ばないと衛星捕捉ができない。いざ捕捉ができると中崎山まで残り200mを切っていた。よかったぁ、まだ行き過ぎていなかった。今までよりは少し傾斜が出たが、やっぱり緩やかな尾根を登って水平になったところで右手に刈り払いが分岐していた。直進方向は奥丸山で、時間があれば足を延ばしてもいいが、中崎山からまだまだ遠いし、この天気のままだったら山頂に到着しても何も見えないし、既に登ったことがあるので今回はパスだ。

 GPSを見ると山頂は右の刈り払いの方向なので入ってみると、刈り払い終点に小さな広場があり、真中に三角点が鎮座していた。ここが中崎山山頂だった。周囲は樹林で展望はなく、今はおまけのガスが出て何も見えない。本来ならもしかしたら樹林の隙間から穴毛槍が見えるのかもしれないなぁ。山頂標識はなく、登山道の分岐にも標識は無かったので、おそらくは多くの登山者が中崎山山頂に立ち寄ることなく気付かず通過しているだろう。大した高度差を登っていないし、予報と違って天気が悪くて気温が低くほとんど汗をかかなかったのであまり疲労は感じないがしばし山頂で休憩した。さすがにこの時期に中崎尾根を歩く人はいないだろうから、登りも休憩中も下りも人と会うことはなかった。

中崎山登山口。林道脇にある 登山口に続く林道は立入禁止の看板が・・・

 下山は登山道を辿って登山口の位置を確かめることにする。相変わらずガスった状態が続いて全く展望がない中を下っていくと、巻き道に入って下った1400mくらいで雲の層を脱出して下界が見えるようになった。登りの時より雲の高さが高くなっているが、上端はどの辺までなのだろうか。3000m峰は雲海の上だろうか。でもやっぱり穴毛谷から穴毛槍は雲の中かなぁ。ジグザグに高度を下げて登りで登山道に飛び出した地点を通過してなおも下り、麓が近付いて傾斜が緩むと右手に左俣林道が接近、そこに出るのかと思ったら道は左に曲がり、右俣谷へと下っていく。最後は右俣谷右岸に付けられた治山用?車道に出た。車道から登山道への入口にはでかい標識がかかっているので見落とすことはないだろう。

ロープウェイ駅 まだ穴毛槍はガスの中
穴毛谷下部の治山工事現場 帰る頃には穴毛槍が姿を現す

 未舗装の林道を下るとロープウェイに至る遊歩道と交差、そこはロープが張られて林道に入れないようになっていたが、どこからか出口があるのだろうか? ロープを跨いで遊歩道に乗り、左俣沿いの車道を歩いて駐車場に戻った。この頃になって急速に天候が回復し、最初は少ししか見えなかった抜戸岳近くの白い稜線が姿を現し、蒲田川の橋を渡るころには低い雲も取れて穴毛槍が姿を現した。P5はすくっと立ち上がり槍の名に恥じない姿で、その奥のなだらかなピークがたぶんP7だろう。かなり白い部分が少なくなり、DJFが東を巻いた雪原もほとんど消えているように見えた。ここからルンゼは稜線の反対側なので様子は窺えないが、かなり雪が消えているだろう。雪崩の心配は無いと思うが落石の方が心配だ。あと藪の程度も。このまま延期して秋に挑戦するか、それとも梅雨入り前に突っ込んでみるか悩むところである。今回は消化不良の半日であった。


所要時間
 5:51駐車場−−6:07左俣ゲート−−6:12林道を外れる−−6:33夏道−−6:56巻道終点−−7:44中崎山8:02−−8:38巻道−−9:11登山口−−9:25駐車場



2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る