南ア北部 風巻峠 2008年12月06日


 仙丈ヶ岳から西に延びる地蔵尾根にある丸山谷ノ頭から南に分岐する尾根上に丸山、小瀬戸山があって倒木に悩まされながらも両者をつなげて周遊したのは数年前のことで、今年はDJFが同様の周遊をやってのけた。この尾根上の山は以上3つだけなのだが、実は風巻峠が山名事典に記載されている。峠名として記載されているのかと思ったが地形図を見るとなんと三角点まである立派なピークであった。なんでピークに峠の名前を冠した理由は不明だが、ともかく山としてカウントでき僅かに2000mを切るくらいの標高があれば登らない手はない。ただ、12月に入ってどれくらい雪が降ったか、特に林道が走行できるかが問題であった。もしダメなら周辺の山でも登ろうと出かけた。

林道入口。相変わらず警告の立て看板あり

登山口とした三峰川第2発電所


 金曜日は寒冷前線の通過で大荒れだったが、暖気を引き込んで悪天の割には気温が高く路面凍結の心配が通常より低いのは助かる。それでも茅野市街の縁、杖突峠への入口で気温は+2度、峠は氷点下だろう。雨上がりで濡れた路面には塩化カルシウムが撒かれているが凍っていないとも限らない。慎重に運転して通過する。標高が下がると凍結の心配が無くなりスピードアップして高遠市街に入り、長谷中心部を抜けて三峰川沿いの道に入る。例によって通行は自己責任との趣旨が書かれた看板が立っているが今回は車止めは端に寄せられそのまま進入可能だった。舗装道路が終わってダートになればスリップの心配は格段に減るが、穴が多くてスピードは上がらない。水たまりは既に凍っている。落石が多く転がっているが相変わらずどこかで工事をやっているようで道の状態は全般に良く普通車でも問題なく走行でき、無事に発電所に到着した。ちらと道路脇を観察しながら走行したが巡視路のような物は発見できなかったので、明日朝もう一度捜索しよう。この夜は満天の星空が広がったが気温はさほど下がらずガラスの水滴が凍ることはなかった。

 明るくなるといくぶん雲が出てきたが基本的には晴れている。少し雪が舞っているが風花だろう。朝飯を食べて出発。装備は悩むところだが上部は新雪がたっぷり積もった可能性もあり、2週間前のことも考えて今回はワカン、ピッケル、それに6本爪アイゼンを持っていくことにした。ワカンを使うほど雪が積もっていないことを祈ろう。ちなみに林道の周囲には雪のかけらもなかった。

導水管。管の横についている階段を利用するのもよし 林道脇の熊棚
発電所から斜面に沿って北に進む 踏跡?入口発見。ただし地形図の破線とは別物
小尾根に絡んでジグザグに登っていく 上部は適当に尾根を登る。藪皆無

 結局、林道脇にはモノレール軌道はあったのだが巡視路入口らしき踏跡は発見できず、適当に登ることにする。踏跡の替わりに熊棚は発見できた。導水管脇は傾斜がきつく登るのが大変そうなので北側の小尾根から登り始める。幸い、踏跡らしきものがジグザグに登っていたのでそれに従ったが派生する獣も多い。踏跡はある程度登った後は東風巻谷方面にトラバースし始めたので踏跡から離れて尾根の獣道を登る。とはいってもこの一帯は林道脇から唐松植林帯が続き下草も無いのでどこでも歩けるが。

標高1300m付近で導水管に出る

二児山は雪雲に覆われる


 標高1300m付近で小尾根は導水管と合流し、以降は導水管脇の獣道を上がった。気温は0度を下回って土の水分が凍結しているが、表面に氷ができているわけではないので滑らず歩きやすい。振り返ると二児山が白く雪化粧してっぺん付近は雪雲の中に隠れていた。風巻峠は二児山より標高が低いがガスっていないよなぁ。ここから山頂はまだ見えない。

導水管脇の階段を上がる

導水管最上部の施設


 標高が上がると地表に僅かながら雪が付き始め、凍結して滑るようになったため、導水管横の階段を使わせて頂くことに。これは林道からずっと続いているようであるが、おそらく今はモノレールが主役で使われることはほとんどないだろう。凍った部分もあるが手すりが延々と付いているのでアイゼンは付けずに登ることができた。

導水管入口。このときは水は止められていた 導水管より先は道無しだが藪無し
このようなピンクリボンが点在する 傾斜がきつくなると左にトラバース気味に登る

 導水管最上部は地形図では池マークが書かれているが、実際は導水路が僅かな距離だけ地表に顔を出していた。水はほとんど流れておらず冬季は発電はお休みなのだろうか? この先は人工物はないので適当に登ればいい。念のため地形図の破線の道を探したが発見できず、今まで同様どこでも歩ける唐松植林帯が続いていた。そしてここから目印が見られるようになり、僅かながら踏跡もあるようだ。この後も目印がずっと続いており、帰りのためのいい道標となってくれた。

 小尾根を登って傾斜がきつくなると踏跡が明瞭になり、左に進路をズラして斜めに登っていった。この頃から雪が少しずつ増えてくるがまだ数mmの厚さだし昨日は半分雨だったようで水滴が落ちた跡が無数にあった。今の気温は-5度を下回っているので完全に氷結している。小尾根に出ると向きを上に変えてジグザグに登っていくところも割と明瞭な踏跡があり、適度に目印があって安心できるが、基本的には尾根をまっすぐ登ればいい。ただし、下山時はこのまままっすぐ下ると導水路ではなく東風巻谷に行ってしまうので尾根を離れる地点を忘れないように。

太い尾根に乗るとシラビソがでてくる 小瀬戸山へと続く尾根か?
造林跡のワイヤーロープ 徐々に雪が増えてくる

 標高1650m付近で右手から太い尾根が合流、こちらは南斜面はシラビソの自然林のままで、シラビソと唐松の境界を登っていく。でもシラビソは冬でも葉があるので雪は葉に遮られ地面が露出して歩きやすいので尾根右側を登っていった。この付近も目印があるが、雪に覆われたせいもあるのか踏跡は断片的にしか分からなかった。とにかく尾根を外さないよう登っていく。いつのまにか周囲は一面のシラビソ樹林に変わっていた。

尾根の歩きやすい所を適当に登る

シラビソに雪が乗るようになる


 標高1700mでいったん傾斜が緩み、その後も尾根を登り続ける。もう一面の銀世界で踏跡の有無は直接確認できないが、木の隙間等で何となく判別できるので、そこそこの濃さの踏跡があるらしい。時々倒木が邪魔するので迂回したり乗り越えたりするが、雪が乗っているので乗り越えようとすると滑って苦労した。ただ、枝や木に付いた雪は昨日は気温が高かった様で半分溶けかけていたのが今日の低温でカチカチに凍っているので体に触れても雪が付着せず濡れないのは大助かりだ。2週間前の井出ノ小路山は逆に雪まみれになって全身ずぶ濡れで大変だった。まあ、この気温なら体に雪が付いても溶けないけど。なんと-10度まで下がっていた。これでも登りで体を動かしていれば体温が上がって発汗するほどなのでTシャツに腕カバーでまだ大丈夫だ、まあ、これで風があったらこの格好では寒すぎるだろうが。予報では北西の風が強そうだったがどういうわけだかほとんど風がない。

標高が上がると明瞭な道になってくる

木々は真っ白、空は真っ青!

倒木処理の跡 山頂付近の小凹地

 明瞭な尾根を巡ってグングン高度を上げると徐々に雪が増えてくるが1,2cmと浅く、ワカンの出番が無い。もちろんピッケルもアイゼンも不要だった。地形図では標高1800mを越えると尾根北側に道が書かれているが、実際は尾根の南側に道があるようだ。もちろん雪に埋もれて本当に道があるのか確認できないが、明らかに邪魔な木が無い1本の筋が見て取れた。下部ではこのような明瞭な道らしき物は無かったのになぜ上部ではっきりしているのか不思議だった。

小凹地から先は道不明瞭でも藪無し 風巻峠山頂三角点

 いよいよ山頂間近という標高1950mを越えると傾斜が緩んで2重山稜地形となり(正確には凹部になっている)道も不明瞭になる。私は右から回り込んだが遠回りであり、へこみの左から行くのが正解らしく下りで目印を追ったら左回りだった。雪に覆われた主稜線上も深いシラビソに覆われて視界無し。もし展望があったら仙丈ヶ岳から塩見までがずらっと白い姿が並んでいるのが間近に見えるのだろうけど残念。稜線は傾斜が緩く、山頂が特定できるかちょっと心配だったがまだ緩やかに登っているようだ。少し密度が高い樹林を抜けると再び背の高いシラビソ樹林となり、右手に僅かな高まりが見えたので行ってみると三角点が鎮座していた。ここが風巻「峠」だ。間違いなく周囲より高く山頂であった。山頂標識は無かったので近くの木にテープを巻いてマジックで書いておいた。こういう場所にはKUMOよりも達筆標識の方が似合うかも知れない。今までのテープの多さから考えるとそこそこ登る人がいるようだ。防寒着をめいっぱい着込んで三角点脇で少々休憩。何せ気温は-10度のままで体を動かさないと足の指先が痛いくらい冷えてくる。長時間の休憩は無理だ。せめて日差しがあればいいのだが、元気な太陽でも大いに茂ったシラビソに邪魔されて日光は地面に届かない。先週のような落葉樹林帯ならよかったのだが。

帰りのすっきり晴れた二児山

導水管横を登った尾根


 帰りは目印と自分の足跡を頼りに同じコースを戻った。行きは無人だった発電所には数台の車が駐車し、送電施設に登って碍子を拭いたりと点検整備作業をやっていた。もしかしたら冬は発電しないのではなく今日はたまたま点検日で発電を止めていただけなのかもしれない。ここは小さな発電所だが発電容量はどれくらいで何kVで送電しているのだろうか。ま、電圧は碍子の数から推測できるのだけけれど計算式は忘れてしまった。

戸台川沿いから見た鋸岳


 まだ時刻は早いが冷えた体を温めるため高遠で温泉に直行した。高遠は晴れていたが西に見えているはずの中ア北部は厚い雲に覆われて吹雪いている模様。そのうちに高遠にも雪雲が押し寄せてきてチラチラと雪が舞い始めた。たぶん伊那市街地はもっと雪が降っているだろうな。


所要時間
6:54発電所−−7:36導水管最上部−−8:53風巻峠9:11−−9:45導水管最上部−−10:14発電所

 

2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る