阿寺山地 奥三界岳 2008年11月22日


 長野/岐阜県境は延々と長いが、その中でも木曾御嶽から南側の山域で王滝川/木曽川/国道257号線に囲まれたエリアを阿寺山地と呼ぶらしい。長野県側に阿寺山があるのでそこからの名前だろう。最高峰は小秀山で、私はこの山域ではここしか登ったことがない(15年くらい前)。他にも高い所では1800m台の山がいくつかあり、小秀山に次ぐ高さは井出ノ小路山、次が奥三界岳である(後から分かったが3番手は小秀山近くの前山だった)。

 この付近はやたらめったら林道があるので簡単に登れそうに思えたが、現実には麓でゲートがあるのでほとんど歩くしかないようだ。ネットで調べたところ、井出ノ小路山、奥三界岳とも岐阜側から登った記録しかなく、植生は笹藪とのことで登山道がないと苦労しそうだ。井出ノ小路山は登山道は無いが奥三界岳は南側の竜神の滝から登山道があるようだ。東京から遠くなるが岐阜側から登ることとする。できるなら井出ノ小路山と奥三界岳とをつないで縦走したいところだが、笹が深くて無雪期は困難そうなので(やってみなければ不可能かどうかわからないが)今回は個別に登ることにした。

ゲート前の駐車場

施錠されたゲート


 中津川は遠い。中津川ICまで300km近く、川上まで北上し、夕森公園から竜神の滝への分岐を見送って左手の舗装された林道を進むとゲートに到着、ここが奥三界岳登山口だ。途中に「奥三界山(岳ではない)」の案内看板が立っており間違いない。予想外にもここで雪が降っているではないか! 暗闇で周囲は見えないがきっと山の上は真っ白だろう。ただ、奥三界岳は登山道がある山なので笹+半端な積雪の最悪状態は無いだろう。これが井出ノ小路山だったら・・・・。今日雪が溶けてくれないと明日は地獄を見るだろう。

行く手は真っ白 銅穴の滝
銅穴の滝近くの案内看板 ここで林道を離れる。標識あり

 翌朝は打って変わって快晴。しかし地面は凍結して林道歩きもスリップに気を付けながらとなる。今日は長〜い林道歩きなのでのんびり行こう。まずは銅穴の滝まで。舗装された立派な林道には場所によってはうっすら積雪があり凍っているので、雪がない部分や表面がデコボコしてグリップのいい場所を選んで足を置く。6本爪のアイゼンを持ってきてはいるがこんなところで使いたくはない。銅穴の滝はなかなかな立派な姿で豪快に水を落としていた。地形図によるとここから上部の林道に出るはずだが、案内標識にはこのまま林道を進むよう書かれている。やや雪が増えたヘアピンカーブを登ると左に登山道が分岐し奥三界「山」の標識が立っていた。

積雪の吊橋を渡る。定員1名 登山道はジグザグに登っていく
林道も積雪に覆われる 林道から見た夕森山

 いったん下って川上川を吊橋で渡るが、橋は下からも空気に冷やされて雪が溶けにくいようで足の重いラッセルとなった。上部はずっとこんな状態だろうか。足跡は私一人だけで先行者はいないらしい。対岸に渡ると尾根を直登ではなく長いジグザグで緩やかに高度を上げていく。いったいどこで林道に出るのかと思ったら林道が尾根突端を大きく迂回するようにつけられたその突端だった。林道は完全に雪に覆われて深さは足首よりやや浅い程度だった。

林道から見た1708m峰

橋は積雪深くラッセルに苦労する


 再び長い林道歩き。雪で真っ白の風景は退屈な林道歩きに変化を与えてくれて楽しいが、さすがに長時間足跡がない雪面を歩き続けるといいかげん疲れてくる。特に足首以上の深さになるとこれまで以上に歩行スピードが落ちる。見上げる稜線の木々は真っ白であっちはもっと雪が深そうだなぁ。眩しいほどの青空が目にしみる。ラッセルは疲れるので数人パーティーで先頭を交代できればいいのだが単独ではそうはいかず、黙々と歩く。林道が鋭角に分岐した個所がはるか遠くに見え、ちょっとがっかりした。橋の上は積雪が多く鹿の足跡にラッセルを助けられた。

廃林道にかかる木製の橋(上側) 廃林道は鋭角に左に上がる(写真では右)
廃林道分岐の少し先の橋に標識あり 木製の橋の上流には立派な滝がある

 ようやく分岐に到着、ここで本道と離れて廃林道に入る。分岐の少し先に標識があるが、地形図を見れば問題なし。この標識が取り付けられた先に造林小屋があったが、これ以上余計なラッセルをするのはイヤなので小屋まで行って入れるかどうかは確認しなかった。古い木の大きな橋を渡り、新雪の積もった廃林道を緩やかに登っていく。雪の深さは脛までとなり完全なラッセルだ。これじゃワカンを持ってくればよかったと思ったが、まさかこんな時期に登場の機会があるとは考えてもみなかったので自宅に置いたままだ。

廃林道から見た奥三界岳方面。たぶん山頂は見えていない 廃林道終点の廃プレハブ小屋
廃林道終点。標識あり。ここも奥三界「山」の表記 廃林道終点から右に登山道が伸びる

 尾根を回り込むと窓やドアが壊れた廃プレハブ小屋があり、そこで林道が途切れて右の斜面を指して奥三界岳の案内標識が立っていた。道は完全に雪の下だが登山道だけ藪がないのですぐに分かった。登山道とは反対側の谷を挟んだ高まりが奥三界岳付近だろうが、なだらかな地形なのでたぶん山頂は見えていないだろう。

尾根に出ると笹原に変貌。檜は真っ白 南には恵那山
県境稜線の向こうに白い中ア 檜は木全体が真っ白

 雪が積もった檜植林帯を屈むように進んで雪を頭から被らないようにし、やがて尾根に出ると見通しが良い笹原になり、真っ白な中アも頭をのぞかせ、もう少し進むと南ア深南部も姿を現した。この距離だと色まではっきりとは識別できず、雪が積もっているのかわからなかったが、ここでこれだけあるのだから(たぶん15cm程度)2000m級では20cm以上積もったのではなかろうか。出発して3時間経過したのでここで休憩。日当たりがよく気持ちよかった。

小さな谷を登る

明瞭な登山道が続く


 尾根を右に巻くようになり、小さな沢沿いを登るようになると僅かに流れがあり、夏場でも流れているようであればいい水場になろう。谷から右に上がってなだらかな稜線をめぐるようになり、笹が刈り払われた明瞭な道(といっても雪の下だが)を辿っていく。だだっ広い地形であり、密な樹林で展望がなくこれで道がなければ下りはルートファインディングに苦労しそうだ。

なだらかな樹林帯が続く この辺はジャングル状態
再び歩きやすい樹林帯 奥三界岳山頂と展望台

 いったん平坦地になり山頂は近いと思ったら三角点まで1.15kmの標識にガッカリ。その先にまだ高まりがあった。ここも広い尾根でほとんど斜面のような場所で、黙々とラッセルが続く。やっと傾斜が無くなって平坦になると左に回り込むように進路を変えて雪をまとった樹林帯を進み、木を組んで作られた展望台がある山頂に到着した。展望台に登ると北から西の展望が開けるが飛騨方面は雲に覆われて山々は見えず、近くの木曾御嶽までだった。さすがにあちらは真っ白だった。その手前には明日登る予定の井出ノ小路山が見えている。東や南は展望台よりも木の高さの方が高くて中アや南アは見ることができなかった。展望台のベンチに積もった雪をどけて休憩。まさかシーズン最初からラッセルとは思っていなかったので本当に疲れた!

県境稜線から見た中ア〜南ア深南部(クリックで拡大)

奥三界岳から見た北方面の展望(クリックで拡大)


 晴れていた天気も休憩らしく雲が出てきて寒くなってきたので、こっちは休憩を終えて下山開始。歩きだして20分ほどで3人パーティーと遭遇、これで帰りのトレースは私だけでなくもっとしっかりしたものとなってラッセルから解放される! 体力セーブの効果は大きく大助かりだった。廃林道から林道に出ると雪は少なくなり溶けて消えた部分が多くなりトレースも消えていた。林道を離れて下り始めると樹林になるので雪が現れるが大した量ではないが、少しの積雪でも下りでは滑りやすくなるし、雪が消えた場所でも雨で湿った土の登山道と同じなのでよく滑った。

 吊橋にはまだ雪が乗っていたがだいぶ減っていた。林道に上がるとすっかり雪は消えており、舗装道路を淡々と歩いてゲートを潜った。


所要時間
6:50ゲート−−7:10銅穴ノ滝−−7:14林道を離れる−−7:16吊橋−−8:11林道−−9:07廃林道−−9:36廃林道終点−−9:55休憩10:14−−11:24奥三界岳12:04−−12:57廃林道終点−−13:11林道−−13:46林道を離れる−−14:14吊橋−−14:18林道−−14:38ゲート

 

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