安倍山系 バラノ段、ワサビ沢ノ頭、大笹ノ頭、奥大光山、大光山 2008年9月27日

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 白峰南嶺から続く安倍峠周辺には1500mを越えるピークがいくつかあり、十枚山から安倍峠間は歩いたことがなかったが、昨年夏のDJFの記録により地形図記載のピークは無いが日本山名事典記載の山がいくつかあることを知った。今年の冬に歩こうかとも思ったが安倍峠の林道が冬季通行止めで、積雪を考えると下からぐるっと回るとけっこう疲れそうなので林道が開通している時期に歩こうと考えていた。そろそろ涼しくなってこの標高でも汗だくになる心配はなくなったので出かけることにした。もちろんDJFの記録付きである。DJFは標高が高い山をまとめて効率よく登るルートをとることが多く、私が未踏の山については彼の記録はおいしい山となるわけだ。

 この他にもここを選んだ理由がある。それは大光山の読み方だ。最初は「だいこうやま」かと思って山名事典を引いたら項目が無く「おおひかりやま」で引いても存在しない。しょうがないのでDJFの記録を見るとなんと「おおぴっかりやま」なのだ。光を「ぴっかり」と読むなどなんてお茶目だろう! 日本広しといえどこの山くらいだろう。

縦走路入口。駐車スペース横にある

登山口はこの看板が目印


 うっかりして中央道甲府南ICで降りるのを忘れて甲府昭和で降り、あとは適当に南下して富士川街道に入り、身延の市街地を通過して大城口で右に入れば安倍峠まで一本道だ。以前通ったのは何年前だか忘れてしまったが、凄い濃霧で歩くようなスピードでしか走れなかった記憶があるが、今回は雨も上がって対向車の心配も無くガンガン飛ばせた。この道はずっと舗装なので基本的に心配は無いが、所々で段差があるので気をつけたい。傾斜が緩んで峠が近い雰囲気が漂うが、どこが県境なのか分からないまま下り始め東屋のある広場でUターンし、今度は慎重に車を走らせると最高点より山梨側に下ったところに県境標識があり、その少し下に「安倍峠」の看板が立った歩道入口があった。さらに100mほど山梨側に下ったところに2台ほどしか置けない駐車場があり車を突っ込んだ。標識も何も無いここが、まさか登山口とは思いもしなかった。ここから本当の安倍峠への遊歩道が始まっていたのだった。林道脇で見かけた看板がある入口からも行けるが、標高差があるので駐車場から行くのがよろしい。

 翌朝、飯を食って出かける。天気予報では低気圧が去って今日は好天が期待できるはずだが、残念ながら一面の雲に覆われている。たぶんもっと標高が高いところから見れば雲海だと思うが、この標高では雲の下だった。やや風が強いが冬型の気圧配置は北日本が中心なのでここはまだまだマシな地域だろう。涼しいのは助かるがこのままだと稜線での展望は望めそうにない。

きれいに刈り払われた広い道で始まる 本当の?安倍峠。大光山方面は左
案内地図 安倍峠から先も1級の登山道
少し開けたバラノ段山頂 年季の入ったバラノ段山頂標識

 駐車スペース横の黄色い保安林看板が登山道入口の標識だ。よく手入れされた水平な道を歩くとすぐに安倍峠に到着。ここが本当の最低鞍部で林道はそれより高い場所に付けられていた。峠は十字路になっており、西に上がると林道、南は梅ヶ島温泉、東が大光山方面だ。小さな地図付き看板が設置されている。これまたよく整備された登山道でバラノ段目指して登りにかかる。もしかしたら草ぼうぼうでスパッツをつけないと足元が濡れてしまうかと心配していたが、実際は1級の整備された登山道で全く問題ない。周囲は膝から腰程度の高さの一面の笹原なので、刈り払いがなければ相当苦労させられるだろう。最初は傾斜は緩やかだが標高が上がるに従ってきつくなってくる。ピークに到着してバラノ段かと思いきや、山頂標識も三角点もなく、さらに先に進んで次の急峻なピークに登りつくと今度はバラノ段山頂だった。今までは樹林に閉ざされていたがここだけは開けているのだが、この天気では周囲の展望はない。

バラノ段からの下り

バラノ段の次のピーク


 バラノ段からの下りは急でフィックスロープも張ってあるが、地面が乾いていれば問題なし。鞍部から向こう側の登りもこれまた急だった。この稜線は同じような標高のピークが連なるが、それなりに細かいアップダウンがあってトレーニングにはなりそうだ。周囲の植生はいつのまにか笹原の中に太いブナが点在する風景となり、ブナの存在感が圧倒的だ。この標高でこのような南の位置でブナなんて珍しいと思う。カエデ類も多く見られ、紅葉の時期はさぞかしきれいだろう。この標高では針葉樹はあまり見られない。一部区間のみ天然ヒノキの大木が立ち並ぶ場所があるだけだ。

 バラノ段の次のピークを過ぎればあとはほとんどがなだらかな稜線が続く。相変わらず笹原の中によく刈り払われた登山道が続く。笹原には鹿道があちこちに付けられ、鹿のフンもたくさん見られた。遠くでは悲しげな鹿の求愛の声が聞こえた。そういえば山の中では鹿の姿は見えなかったが林道では何頭か見たな。DJFの記事によると途中に「砥石のガレ」があるはずだが、行きも帰りもその標識は発見できなかった。

この標識設置場所は最高点ではない ワサビ沢ノ頭最高点手前直下の太い倒木
ワサビ沢ノ頭最高点 ワサビ沢ノ頭最高点を下った直下のブナ枯れ木

 ワサビ沢ノ頭はなだらかな尾根の一角で顕著な山頂ではなく標識がなければ判別不能だ。ただしライオンズクラブが標識を設置した場所はGPSが指し示す山頂より北に約300mの緩やかな斜面だった。どちらにしても周囲は背の高い樹林なので展望はない。山名事典の山頂からわずかに下った所にブナの立ち枯れがあり、そこには巨大なサルノコシカケがいくつも張り付いていた。

ブナ、カエデが多い 相変わらず素晴らしい刈り払いが続く
天然ものの檜樹林 大笹ノ頭山頂
「大笹ノ頭山頂標識その1」がかかっていたはずの枝 「大笹ノ頭山頂標識その2」がかかっていたはずの木

 なおもなだらかな尾根を行くと複雑な2重山稜になり、鹿の楽園のような低い笹原が広がる。急な登りでは尾根を外れて東から回り込むように登るが、ここにはでかい倒木がありこれは下をくぐる。さらに登って大笹ノ頭直下ではもっと大きな倒木があり、これは上を乗り越えた。その先が大笹ノ頭山頂だが、ワサビ沢ノ頭と同じようになだらかな稜線の一角で山頂の雰囲気が無く、標識がなければ通過してしまうだろう。DJF記事によるとライオンズクラブの標識のほかに古ぼけた手製の標識が2つあるはずだがどこを探しても見当たらない。DJFの写真を見ながらそれらしき木がないか探したところあった! どうやらお掃除されてしまったらしい。そういえば同じくDJF記録の写真にある「バラの段」「砥石のガレ」の標識も消失しているので、やっぱり誰かまとめて撤去したようだ。撤去した当人にはそれなりの考えあってのことだと思うが、私にはあのくらいの標識が存在しても問題ないように思えるのだが。

安倍の大滝方面経由三河内へ下る道 三河内方面の文字は見える
稜線方面の文字は消えてしまっている 奥大光山山頂

 この先もまだまだアップダウンが続く。鞍部から登った次のピーク直下で西に分岐するこれまたよく刈り払われた登山道があった。標識には「三河内」と書かれ、安倍の大滝方面へ下る道のようだ。標識には稜線の道にも案内が書いてあるはずだが文字が消えて判読不能だった。そして登りきった緩やかな最高点に奥大光山の標識があったが、ここも今までのピーク同様に通過してしまいそうな場所だった。

大光山三角点峰 木にめり込んだMWV標識?
DJF曰く「この山最大級のいたずら書き」。24年経過でも明瞭 山名事典による大光山山頂。ガスって展望皆無

 再び下ってなだらかな稜線を登りきると三角点が鎮座し団子串刺し山頂標識がある大光山に到着。ここは完全に樹林に覆われて視界は無く、山名事典で山頂とされている西側ピークに向かう。僅かに下った鞍部で千枚山方面の縦走路が分かれ、それを見送り直進して登った細長い尾根上が山名事典の大光山だった。こちらには山頂標識はないが低い笹原で雲が無ければ展望が楽しめそうだが、残念ながら今日は周囲が見えない。

 少々休憩して同じルートを逆戻り。帰りながら鹿の角でも落ちていないか地面をよく見ながら歩いたが残念ながら発見することはできなかった。あれだけ鹿道が多く付いているのだから鹿の数はかなりなものだろうから、それなりの数の角が落ちていても不思議はない。もうすぐ安倍峠というところで本日始めての登山者とすれ違った。峠には小さなナップサックが2つ置いてあったが人の姿が見えず、そのまま進んで駐車スペースに向かう途中で夫婦と思われる男女とすれ違ったのでザックの主だろう。車に忘れ物でもしたのだろうか。駐車スペースには軽自動車が1台増えていた、というか2台しか止められない広さなのでこれ以上は増えないが。

 軽く着替えを済ませて身延方面に下り、身延町営の「門野の湯」で入浴。入口には高齢者保養施設ののぼりはあっても日帰り温泉ののぼりはなく、知らない人は入浴可能とは考えないだろう。しかしここは日帰り入浴可能で建物の方には「一般の方も入浴できます」との但し書きがある。これは道路沿いに掲げたほうがいい。幹線道路から離れた施設なので混雑することもなく\400と東京の銭湯より安い。

 翌日の山は須玉方面と決めて車を北に走らせた。


所要時間
6:39駐車スペース−−6:42安倍峠−−7:12バラノ段−−7:42ワサビ沢ノ頭−−8:06大笹ノ頭−−8:29三河内分岐−−8:30奥大光山−−8:58大光山三角点−−9:01大光山9:18−−9:47奥大光山−−10:15大笹ノ頭−−10:38ワサビ沢ノ頭−−11:08バラノ段−−11:25安倍峠−−11:27駐車スペース 

 

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