日高前衛 久山岳 2008年9月15日


 3連休最終日の山はどこにするか悩むところだ。2日間で累積標高差3000m近く登っているので、残存体力を考えると標高差1000m以内にしたいところだ。また、千歳への帰りを考えると午前中で下山できる山が好ましい。本当は日高中部から南部へ登りたいところだが、このエリアでは未踏の山は時間がかかる山しか残っておらず無理なので、日高北部で考えることにする。ここなら国道274号線に近く、帰りを考えると最短ルートだろう。ガイドブックを眺めて悩んだが、最終的には芽室岳から東に延びる尾根上にある久山岳か剣山のどちらかにしようと決めた。登山口はどちらも同じく剣山神社で、累積標高差は久山岳で約1000m、剣山で約800mだ。展望はどちらも良好とのことで、できれば標高差が高い久山岳を片づけたいところだ。

 旭山地区から南西にまっすく伸びる県道を上がっていくと終点が剣山神社だ。隣接して「高王山大自然霊光院」という宗教団体の建物がある。久山岳、剣山の登山道ともここが維持管理しているそうでありがたいことだ。山を御神体や修行の場と考えているのだろうか。このまま管理が続くことを祈りたい。北海道では登山道の管理が止まると標高が低いところはすぐに笹の海に埋もれてしまいそうだ。神社の駐車場は広く、精密地震計の近くに車を置いて寝た。

剣山神社 久山岳登山口は駐車場入口
久山岳登山口の看板 駐車場入口から廃林道へは鎖の車止めあり

 翌朝、朝飯を食べていると日の出前に数台の車がやってきて、日の出を待って神社入口にある祠と神社本社にお参りしていた。こちらは久山岳へ向かうことにして県道を少し下り、今は使われていない駐車場(車が多いときだけ使われる臨時駐車場か?)入口から左へ入る。ここには登山口の案内看板が設置されているのでわかりやすいが、進むべき廃林道?には鎖がかかっている。入っていいのか躊躇したが、鎖にはかすんだ文字で人間は入っていい旨が書かれた札がぶら下がっていた。途中の橋の前には老朽化して危険だから渡るなと書かれた看板が立てられているが、渡らないわけにはいかんだろう。後でこれは車両への警告だとわかったが。

こんな警告があるが車両用。人間は問題なし 最初の林道に出て左に進む
突き当って右に曲がると廃林道 再び現役の林道に出る
広場を通過 入林届のある「登山口」

 廃林道出口にも鎖がかかって車が入れないようになっており、その先には現役の未舗装林道が直角に交わっていた。ここも県道らしく、ここから100mくらいの区間は大自然霊光院の敷地だと看板があった。1軒屋を過ぎて工事現場へ右へ曲がる道の方が轍が濃く、直進する林道は少し薄くなる。林道が右に曲がると廃林道化し人間しか通れないようになり、久山岳の案内看板が現れた。この看板はこの後も要所要所で現われて的確に導いてくれた。廃林道を北西に進むと沢を渡って再びまともな林道に出る。ガイドブックではこの林道はかなりの悪路と書かれているが、見る限りは最近でも使われて普通車でも走れるグレードだった。ここまで入れると往復で1時間以上短縮できるだろう。ここで左に曲がって林道を歩くと樹林が切り開かれた場所が出現し、ここで林道は左に曲がるが案内標識に従って右に分岐する林道に入るとすぐに林道が終わって入山ポストがある場所に出た。ノートを見ると昨日は1人しか入っていないようだ。私もノートに記帳して先に進む。

最初は廃林道らしい広い道 小さい沢でも橋がある
マジかよ! この沢は細すぎて橋はなかった

 廃林道らしく広い道で笹が刈り払われてよく整備されている。周囲は背が高く密度が濃い笹の海が広がり、登山道がなければ強烈な藪漕ぎを強いられることになるので、久山岳へ登るのも無雪期はほぼ無可能だっただろう。道があるのはありがたいことだ。登っているのかわからないような緩やかな道が続く。笹の海の中で「熊の通り道」の看板を目にするが、笹の中に獣道は見いだせなかった。それともこの登山道自体が熊の通り道かもしれない。そうであっても何の不思議もない。

「日輪釈迦如来」の広場 しっかり刈り払われた登山道が続く
やたらとサルオガセが下がっている 標高が上がるとシラビソ?が増える

 少し下って沢を越えて左岸に渡ってからやっと登りにかかる。しばらくは沢に沿って歩くが沢から離れるようになると傾斜が出てきて登山道らしくなってきた。今までは傾斜が緩すぎて準備運動の範疇だ。やがて樹林が切れて広場が現れ「日輪釈迦如来」の標識がかかっている。平坦地ではないが広い範囲で笹が刈られて休憩にはちょうどいいと思う。この後も名前が書かれた札が設置された場所が何箇所かあり、地形はさほど険しくないが足尾山塊の庚申山を思わせる。「母の胎内」などは特にそうだ。他に「父の胎内」という場所もあるが、ちとネーミングに難があるか。シラビソのように見える針葉樹であるがもしかしたら種類は違うかもしれない。これにぶら下がるサルオガセが目立つ。サルオガセは温かいところや雨量が多いところというイメージがあるが、こんなところにもあったのか。ついでにシラビソの枝にぶら下がっているイメージが強いが、ここではダケカンバやナナカマドなどの枝にもぶら下がっていた。 

屏風岩で休憩 なおも登る
北西ピーク 山頂直下はアカエゾマツの樹林

 標高が上がると針葉樹が目立つようになり、平たい岩が立った「屏風岩」で休憩とする。登っていると汗が噴き出す気温だが体を休めているとTシャツでは寒く長袖シャツを着込んだ。休憩を終えてなおも標高を上げると今度はダケカンバ主体の樹林となり、傾斜が緩むと山頂北西にある1380m峰に到着。ここには頂上まで10分の標識があった。少し進んだところにも「熊の通り道」の看板があった。これで2か所目だ。僅かに下って登り返すとやや背の低いシラビソ樹林になるが、これはシラビソではなくアカエゾマツだそうだ。葉をよく見るとシラビソというよりトウヒに近く、丸く短く先端が尖っていた。

久山岳山頂

久山岳から見た芽室岳

久山岳から見た剣山

久山岳から見た伏美岳、ピパイロ岳、幌尻岳

久山岳から見たパノラマ展望写真(クリックで拡大)
久山岳から見た日高方面パノラマ展望写真(クリックで拡大)
久山岳から見た十勝連峰〜東大雪方面パノラマ展望写真(クリックで拡大)

 アカエゾマツの樹林を僅かに登ると露岩の山頂に飛び出した。山頂一帯は矮小なアカエゾマツに覆われているので視界が閉ざされることなく展望がいい。今日も稜線に雲がかかることはなく日高核心部が見えているが、いかんせんここの標高が低いので伏美岳や十勝幌尻岳の尾根に邪魔されて奥の山は見えないのが残念だ。その代り北に目を向けると十勝からトムラウシ、東大雪の山々が連なっている。最も目立つのは天を突き刺すように鋭く聳えたニペソツ山だろう。東には剣山、反対側にはきれいな三角形の芽室山だ。今日も好天でこれだけの展望が楽しめてラッキーだ。しばし無人の山頂で展望を楽しんだあと、少々昼寝(時刻からして朝寝?)をして下山にかかった。結局、山頂は終始独占だった。

 下りの登山道でも人の姿は無く、熊の出現を恐れて鈴を鳴らすだけでなく時々手を叩いて周囲に響かせた。これは鈴よりはるかに遠くまで音が届くので熊に存在を気付いてもらういい手段だろう。リスや鳥は見かけたが大型動物は見かけなかった。そういえば今回はキタキツネの姿も見ていないなぁ。入林届の箱を通過して林道に乗れば下界の一部だ。神社の駐車場に戻ると剣山から下ってきた登山者の姿がちらほら見られた。どうやら剣山はなかなか人気の山のようであった。


所要時間
5:18剣山神社−−5:391つ目の林道から廃林道に入る−−5:47 2つ目の林道−−6:02入山ポスト−−7:24屏風岩で休憩7:46−−8:20久山岳9:33−−9:40北西ピーク−−9:51屏風岩−−10:37入山ポスト−−10:54沢で水浴び10:57−−11:17県道−−11:19剣山神社

 

 

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