南会津 小沢山、稲子山 2008年4月12日
今週末はどうにか天気が持ちそうなので再び北を目指すことにする。先週の山毛欅沢山があまりにもよかったため本当は丸山岳を目指そうと考えていたのだが、体調がイマイチ風邪気味で幕営はヤバいと判断し日帰り2連発とする。初日は丸山岳の偵察を兼ねて山毛欅沢山西側の小沢山と稲子岳とした。ルートとしては安越又川沿いの林道が川を渡ったところから伸びる尾根を登って1436m峰から小沢山、稲子山と縦走、坪入山方面に進んで1447m峰から道行沢、西沢、東沢合流点へと下る尾根を歩いて破線終点近くに下って破線を戻るプランである。丸山岳を往復する際は逆に安越又川沿いの破線を上流向けて登り1447m峰で主稜線に出る予定だ。
安越又川沿いの林道入口。すぐに除雪終点 | 林道はほぼ全線が雪の下 |
赤岩橋、大久保橋と渡って小立岩の集落に入り、すぐに右に曲がると安越又川沿いの林道に入ったが入口から200mほどで除雪が終わってしまった。付近に駐車できそうな場所はないので赤岩橋まで戻って先週と同じく伊南川沿いのどん詰まり舗装道に車を止めた。翌朝、できるだけ雪が締まっている時間帯に出発するべく暗いうちに起きたが雨が降っているではないか! しょうがないのでもう一度寝て明るくなった1時間半後に起床、上空は雲が覆っているが雨は止んだので出発することにする。朝から曇っているので気温は高く雪質が心配だ。
林道除雪終点の雪はザクザクで早速スノーシューの出番だ。釣り人のものと思われる足跡が多数あるが、みんな潜って苦労の跡がうかがえる。その点、スノーシューだと数cm沈む程度で体力の消耗は最小限で済むが、それなりに疲労する。帰りはこの状態よりもっと雪が緩んで体力を消耗するはずで、歩く距離も行きの数倍になるので計画を変更して同じコースを戻った方が良さそうだ。南側の尾根で邪魔されて雪解けが遅いようで、林道が現れた場所はほとんど無かった。
橋の向こうに目的の尾根 | 林道の橋で対岸に渡る |
安越又川上流にも林道が延びる |
林道の橋で安越又川を渡ると建物があるが住居ではなく、何かの作業所らしい。大きな池があり、コンクリートの構造物が置いてある。目の前には予定の尾根末端が見えているが全く雪がなく、スノーシューを脱ぐのが面倒なので残雪がある山毛欅沢から斜面を登って尾根に取り付くことにする。見えている範囲では尾根上はしばらく雪がなさそうなので、こんなことをしても無駄な努力で、尾根に這い上がったらしばらくはスノーシューを脱がないといけないだろうが。
山毛欅沢沿いにも林道あり | 残雪の尾根東側斜面を登る |
尾根上は雪無し、藪無し | 赤ペイントと境界標識があった |
山毛欅沢沿いにも雪に覆われた林道があり、これを少し辿って適当なところで左側の斜面を登り始める。雪解けが進んで所々地面が見えているので、先の様子を見ながらルートを決める。傾斜はきついがスノーシューなら踏み抜くことはなく、階段状のところはピッケルで支えながら登り、最後は崩れかけた雪を伝わって尾根上に出た。ブナ科の落葉樹林で藪は殆ど無く、これなら最初からスノーシューを脱いで尾根末端から歩いた方が楽だったかも知れない。僅かに踏跡があるような無いようなだが、ブナには赤スプレーの目印があり境界標識も付けられ人が入るようだ。雪は東側のみ残り、それも崩壊しかけて雪の上を歩くのは危険なので、スノーシューを脱いでザックにくくりつけて歩き始める。余分な重りがなくなって足が軽くなり、無雪のありがたみを感じる。これで天気が良ければいいのだが低い雲がたれ込めて薄暗い。
徐々に雪が増えてくる | この辺でスノーシュー装着 |
ガスがかかりそうな山毛欅沢山 | 振り向けば安越又川の谷 |
やがて雪が連続するようになり再びスノーシュー装着、雪の上には古いワカンの跡が残っており、同じような考えをする人がいるようだ。どこまで行ったのかなぁ。先週とは違って気温が高く雪質は最悪で、スノーシューでも足首くらい潜って快適な残雪歩きからほど遠い。1235m標高点手前で尾根が広がって下りはルートを失いやすいが、潜って足跡がクッキリ残るので目印は不要であった。この付近になると赤ペイントや境界標識は見られなくなった。
1235m標高点で2重山稜に出る | 以降はなだらかな尾根が続く |
小沢山が見えてきた | 山毛欅沢山にガスがかかる |
1235m標高点で傾斜が緩んで小規模な2重山稜となり、登ってきた尾根は東側の小さな尾根とつながっていた。主尾根に上がり、以降は傾斜が緩やかな尾根を上がっていく。先週の山毛欅沢山南東尾根を思わせる風景だが、緩んだ雪と低くたれ込めた雲で気分は最悪だ。右手には真っ白な山毛欅沢山が見えているが、山頂付近はガスに隠れていた。このぶんでは稲子山はガスの中だなぁ。丸山岳は止めておいて正解だった。
最後に小雪庇を越えて主稜線へ | 山毛欅沢山方面 |
小沢山方面 | 登ってきた尾根 |
1436m峰との合流はちょっとだけ雪庇を這い上がって主稜線に合流、もし急な尾根を上がってきたら雪庇の壁で上がることができなかっただろう。でかい尾根を選んで良かった。山毛欅沢山、小沢山方向とも新しい足跡は無く、いままで見てきたワカンの古い跡が小沢山方面へと断続的に残っていた。ここで初めて黄色い目印を見たが、主稜線上の目印はこれ1個だけだった。これほど目印が無い稜線も珍しい。
藪が顔を出すが薄い | 雪庇に亀裂が入っている箇所も |
左へと進路を変えて小沢山を目指す。発達した雪庇にはいくつもの亀裂が入っており場所によっては崩壊している区間もあり、少し藪が顔を出している稜線上を歩くところもあった。雪が消えているところの笹藪は意外に薄く、もしかしたら無雪期登頂も可能かもしれない。もちろん、この程度の藪が下からずっと続いて入ればの話だが。雪庇が残る場所もクレバス転落が恐ろしいので樹林との境界付近を歩いた。
小沢山山頂 | ここにもやっぱり熊棚が |
緩やかに登り、尾根が右に曲がるところに大きなブナが立っており、そこが最高点だった。標識や目印は全く無く山頂という雰囲気は無いが、GPSの電源を入れて確認しても小沢山に間違いなかった。北側はブナの樹林で視界が悪いが南側は雪庇のため樹木が無くて展望が開けるが、この付近が雲の底面ギリギリで僅かに下界は見えるが周囲の山はガスって見えなかった。ここでしばし休憩し、稲子山に向かう。
ガスって先の様子は見えない | 下部のガスが切れる |
標高1450mから先で傾斜が緩む | 古い足跡が続く |
ガスって稜線の先の様子が見えないし、尾根が広い部分もあるので迷わないか心配だったが、尾根南側は雪庇が張り出しているのでそれに沿って歩いていけばルートミスする心配はなかった。それにゆっくりではあるが天候は回復傾向のようで、全く見えなかった稲子山への稜線も下の方は見えてきた。ついでに今まで同様古い足跡が僅かに残っている。地形図では急な登りのようでどんなものだか楽しみと不安が入り交じっていたが、ガスから出た範囲内は特に問題となるような場所はなく、このままスノーシューで大丈夫だろう。今年も毎回12本爪アイゼンを持っていくのだが未だ出番は無い。私のスノーシューは円周全てが歯になっていてグリップがいいので、急傾斜でもピッケルがあればなんとか登れてしまう。
雪庇が崩壊して藪が顔をだしてる所もある | 再びガスに突っ込む |
尾根上にも亀裂が走る | 最後は雪庇。でも垂直ではなく助かった |
1450mで傾斜が緩み、今度はいくつも走った亀裂を北側に寄って差避けつつ稜線を登っていく。標高が上がりとうとう雲に突っ込んで視界が無くなり気温も下がったようだ。樹林が薄いので本来なら大展望の筈だろうが・・・・。いったん傾斜が増して再び緩み始めるとガスの向こう側にボーっと雪壁が見えてきた。そうか、この尾根は主稜線とはいえ東側から上り詰めるので、最後は坪入山からの尾根に生じた雪庇を乗り越えることになるのだ。ガスっているから遠目にはどれくらいの雪壁なのか分からず大いに不安を感じながら接近すると、高さは2mほどだが垂直ではなくスノーシューのままでも登れる斜度でほっとした。
稲子山目指し北上。視界無し | ここも雪庇が崩壊 |
ブナはエビのしっぽで白い | 稲子山最高点(雪庇上) |
稜線に上がると冷たい西風が強くなり体感温度はぐっと下がり、雪質は急に良くなってほとんど潜らなくなった。稲子山山頂までもうちょっとという所まで来ないとこんな雪質にならないとは。ブナの枝はエビのしっぽが成長していた。稜線東は巨大雪庇で崩壊箇所もあるので西側に離れた場所を歩いた。古い足跡は見られなくなり、どうも足跡の主は稲子山には立ち寄らなかったらしい。ガスで視界がないので山頂までの距離が分からないが、小ピークを越えて緩やかに登ったなだらかな雪庇の先で下りになり、右手には太い尾根が降りて雪庇が切れた場所に出た。GPSで確認すると山頂に間違いない。雪庇がでかいので本当の地面の最高地点は不明、今は雪の上が最高点だ。むろん三角点は見あたらず、周囲の木には目印も標識も無かった。朝方は気温が高かったのだろう、ブナの幹は濡れているように見えるのだが触ってみるとテカテカに凍っていた。最初から気温が低ければここもエビのしっぽになったはずだ。西風を避けて雪庇の東側に下って休憩、ずっとガスったままで展望を楽しむことはできなかった。
坪入山への稜線 | 稲子山方面 |
小沢山へと下る | 稲子山は未だガスの中 |
1436m峰と山毛欅沢山(奥) | 小沢山へ向かう男性 |
下山を開始し、小沢山へと下ろうとしたその瞬間、ガスが切れて坪入山への尾根が見えてきたではないか! 今の場所が雲の底面ギリギリで稲子山や坪入山は相変わらず見えないが、坪入山との鞍部へとうねるなだらかな真っ白な稜線が顔を出した。ここを歩く日はいつだろうか。雪庇を越えてスノーシューを滑らせながらガンガン下り、ゆっくり登り返して再び小沢山で小休止。1436m峰へと向かうとスノーシューを履いた単独行男性がやってきた。まさかこんなところで他にも人がやってくるとは思わなかったので驚きだ。今回私が登った尾根も考えたが安越又川を渡れるか不安だったので先週私が登った山毛欅沢山南東尾根を登ってきたとのことだった。林道がありしっかりした橋で問題なく渡れることを教えたので、もしかしたら下山はこちらを歩いたかもしれない。
ツボ足の跡が重なる | 登ってきた尾根を下る |
上がってきた尾根分岐近くで天から降って湧いたようにツボ足の足跡が「発生」した。山毛欅沢山方面はスノーシューの跡だけだし、まさか沢を上がってきたのだろうか?? 足跡は私が登ってきた尾根を下っているが、ツボ足だと場所によっては臑くらいまで潜っているからスノーシュー装着の私よりスピードは落ちるだろうから、このまま下っていくと足跡の主の姿が見られるかも知れない。私のスノーシュー跡を正確に追い掛けていき傾斜がある区間では半分滑りながらスピードを上げる。無雪期ではこんな芸当は不能で残雪期は下りの所要時間は相当短縮できるし、雪が衝撃を吸収するので膝や膝を支える筋肉への負担は格段に軽い。
1235m標高点からの下り | ツボ足の主。カモシカ並みの脚力か |
今年初めてカモシカ目撃 |
1235m標高点からの急な下りで足跡の主を発見、この斜面は適度な傾斜で雪が緩んでスノーシューが良く滑るのでスキーのように滑り降り追いついた。単独行の男性でさっき会った人とほぼ同じコースで山毛欅沢山から周遊してきたとのこと。あれ、でも山毛欅沢山方面は足跡が見あたらなかったなぁ。スノーシュー跡の上を歩いて見分けがつかなかっただけかな。しばし話をしたが会津の山々は残雪期にたくさん歩いているようだ。この後、少しの間私が先行したが雪が消えた区間の手前でスノーシューを脱いでいる間に先行され、その後は追いつくことはなかった。私が先行中に雪の上には新しいカモシカの足跡があったが、なんと尾根の先にはその足跡の主が立ち止まってこちらを見ていた。今年初めてのカモシカ目撃であった。
林道に出てから再びスノーシューを装着、ザクザクの雪を踏みしめて除雪終点に向かった。
参考:ネットで調べたところ、安越又川沿いの破線は林道で、雪がある時期は急斜面と化して通過には覚悟が必要とのこと。掲載されていた写真はデンジャラスだった。行かなくて良かったぁ。
所要時間
6:19赤岩橋−−6:52橋−−6:55尾根末端−−7:04尾根に出る−−8:03 1235m肩−−8:38稜線−−9:02小沢山9:24−−9:43鞍部−−10:28 m肩−−10:40稲子山11:01−−11:09 m肩−−11:59小沢山−−13:28尾根末端−−13:55除雪終点−−14:01赤岩橋