大菩薩前衛 高芝山、柳沢ノ頭、鈴庫山 2007年12月22日
柳沢峠西側の稜線には地形図記載の山がいつくかあり、東京から近いのでそのうち登ろうと思いながら後回しにし続けてきた。そろそろ山梨の山も未踏がネタ切れ気味で、近場でも登っていいだろう。それに標高1000mを越える場所では雪の心配もあり、あまり時期が遅いと柳沢峠に車で入れるかも心配だし、雪が積もりすぎるとラッセルが面倒だ。柳沢峠西部には地形図記載の山では南から高芝山、鈴庫山、倉掛山があり、山名事典記載の山では柳沢ノ頭と墨川山がある。柳沢峠から倉掛山は標高差は大したことはないが水平距離があり、往復に時間がかかりそうだ。
毎年、冬の間は路面凍結がない低山や南部の山に登ってきたが、栃木北部や茨城北部になると標高が低くても道が凍っていることも多く、そろそろスタッドレス導入の頃合いかと考えてボーナスも出たことだし新品を購入することにした。軽自動車のタイヤは安いのが一般的だが、私の車のタイヤサイズは軽自動車では一般的ではないようでホイル込み+工賃で約\70000もかかったのはちと痛かった。まあ、冬道の安心料と思えば安いものか。北海道で冬場の出張作業で凍結路も走っており、スタッドレスが万能ではないことは知っているので無理はしないようにしよう。特に私の車は後輪駆動なのでスリップには弱いだろう。
今回は近場なので一般道で柳沢峠に向かったが、五日市街道、新青梅街道の渋滞は予想以上で時間がかかった。明日の帰りは3連休の日中で、おそらくこれ以上の大渋滞だろうから、金はかかっても中央道から帰った方が良さそうだ。瑞穂を抜ければスイスイ走るようになり、青梅市街を抜けて山の中に入っていくと路面が湿った場所も見られるようになり、早朝は凍結箇所もありそうだ。氷川を抜けて奥多摩湖沿いを上がると懐かしい鴨沢バス停。昔はよくここから歩き出したよなぁ。丹波山集落を過ぎればほぼ無人地帯で対向車もほとんど来ない。一ノ瀬分岐を過ぎるとグングン高度を上げ、道の脇には白い物が僅かに見られるようになったが予想よりずっと雪は無い。北向きなので峠が近づくと道路にも僅かに残雪が見られるがスタッドレスなので無理をしなければ安心して走行できた。気温表示は−3度。
峠から右に入ると大きな駐車場で電気がつく公衆トイレもあり、一番奥に車を置いて酒を飲んで寝た。まだ一面の星空だが明日は朝から曇りで夕方には雪とのことで、明日は午前中が勝負だろう。朝起きると予報通り曇り空だが気温は高めで0度、フロントガラスは水滴が凍ることはなかった。予想と違って暖かいが、天気は曇りのままで徐々に下り坂だから日中もほとんど気温が上がらないだろう。日中に日差しが無い0度は寒いぞ。
竹森林道入口ゲート。施錠はされていなかった (気づいたのは下山後) |
竹森林道を歩き始める。最初は遊歩道は別にある |
出発の準備をしていると工事業者らしい4WD車が上がってきてゲートを開閉して林道に入っていった。林道は最初は舗装だがやがてダートになるも通行量は多いようで路面が荒れることもなく走りやすそうだ。泥の部分もあるが、この時期は水分がカチカチに凍っているので泥沼にはまる心配は皆無だ。林道入口には「柳沢林道」と書いてあったがそのうちに「竹森林道」になった。竹森とは昨年冬に登った小倉山の麓にある集落で、この稜線を超えた西側なので、もしかしたらこの林道は竹森まで抜けられるのだろうか。しかし手持ちのエアリアマップではこの林道は書き込まれていないので、どこを通っているのか分からない。しかし本当に竹森に抜けられるのならどこかで稜線を越えているはずで、そこからまずは高芝山に登ったほうが、わざわざ柳沢ノ頭まで登ってから下るより労力削減できるだろう。
竹森林道から見た大菩薩嶺 | 竹森林道から見た高芝山 |
これが高芝山への主稜線。入口はか細い | 尾根は笹藪に覆われている |
予想通り竹森林道はあまり標高を上げずにダラダラと山腹を巻きながら西に進み、大きく突き出した尾根を越えるといかにも高芝山と思われる顕著なピークとそれに続く尾根が見えてきた。そこから下りになるが最初の小さな切通しが主稜線で、あまりに小さい尾根なのでそれと気づかず先に下ってしまったが、振り返ると主稜線より下に来ていた。登り返して獣道を上がって尾根に入るといやらしいことに最初から背丈を越える笹薮だ。この標高なら落葉広葉樹林かと思っていたが甘かった。この上に雪が載ると重い笹漕ぎになって地獄だから早めに高芝山まで往復した方がよさそうだ。
笹藪の中で見つけた袋 | 目印がいっぱい入っていた |
笹薮の中には幾筋もの獣道があるので、稜線上の太いものを選んで進んでいくと時々目印が見られるので人間も利用しているようだ。それとも廃道化した登山道なのだろうか? ネットで地形図を見たがこの尾根上には破線が書かれているので廃道の可能性が高いか。部分的には明瞭な筋が残っている区間もあるが、ほぼ全域で笹に埋もれていると言っても過言ではない。とくに最低鞍部から1518mピーク間は踏跡が薄く獣道が交錯しているので、稜線を外さないような獣道をつないで歩くのが肝要だ。こういう区間には肝心の目印が無いのであった。薄い獣道でもあるのと無いのとでは大違いで、完全な笹薮に突入すると絡み合った笹を掻き分けるのが一苦労だった。また、少しでも皮膚が露出した部分は笹の葉で容赦なく切り付けられ、掻き分けるので笹に触れる機会が多い腕なんかは、シャツの袖と手袋との僅かな隙間が傷だらけになってしまった。途中、赤い荷造り紐を短く切った目印がたくさん入った袋が落ちていたが、この目印を付けながら歩いた人が笹藪に袋を引っかけて取られてしまったのだろう。
1518mピークのMWV標識(文字は別人のもの) | 笹に覆われた1518mピーク |
1518mピーク直下で笹が消えるがてっぺんに近づくと再び笹に覆われてしまった。1518mピークで左に道が分岐するはずだがその形跡は分からず、普通にまっすぐ歩くと自動的に高芝山の尾根へと引き込まれる。ここにはMWVのオリジナル文字が消え、別の人が「柳沢ノ頭 高芝山」と書いた標識があったが、まさかMWVが誤って高芝山と思って取り付けた標識だったりして? 全く文字の形跡も残っていないのでいつ取り付けられたのかは不明である。1518mピーク付近から先は笹の高さが低くなって鬱陶しさは半減して大助かりだ。
高芝山への最後の登り | 高芝山山頂。山頂標識有り |
高芝山北側鞍部から登りにかかるときれいさっぱり笹が消えて日が当たらない檜の植林帯に変貌し、足の抵抗から解放されて快適な登りになった。急な登りで尾根がはっきりしなくなり、適当に右手の斜面を登ったが、帰りに歩いた感じでは薄い踏跡は左手の斜面にあるようだ。こういうルートが判然としない場所に目印があるといいのだが、この尾根はルートが濃いところに目印が多い。少し登ると尾根がはっきりし、尾根を上目指して登っていくと最高点に手製の山頂標識があった。標識があると言うことはそれなりに登る人がいるということだが、みんなこの藪をかき分けてくるのだろうか。帰ってからネットで調べると普通は麓から登るようで、そうすればルート上に笹藪は登場しないようだ。今回は柳沢峠西側の山を一掃する予定だったので麓から登るわけにもいかないから、藪漕ぎもやむを得ない。
山頂は檜に覆われ展望はなく日当たりも無いのでこの時期は寒いが、この天気ではどのみち日当たりはないか。少し休んですぐに下山、というか柳沢ノ頭向けて登り返しに向かう。笹藪は相変わらずで、左手下に見える竹森林道に下って林道を歩こうかと誘惑に駆られたが、藪山派を自負する身としては遠回りの林道よりもショートカットの藪を歩くべきと気力出して笹をかき分けた。行きと違って踏跡を失ってしまい、終始本格的な笹藪漕ぎが続いてやっと林道に出たときにはほっとした。毎度感じるようにか細い獣道であろうとあるのと無いのとでは大違いであった。途中では鈴庫山らしき顕著なピークが西に飛び出した場所にあるのが見えた。
林道に出て正面の尾根に取り付くかどうか悩むところだ。削られて法面だが垂直ではなく傾斜がついているので登れないことはないが、問題はこの笹藪がこの先も続くのではないかとの心配である。見た感じでは笹が深くて踏跡がありそうになく、安全策をとるなら笹森林道を柳沢峠側に戻って遊歩道から登るのが最良であろうが、遠回りになって悔しいところだ。ここは戻りながら笹が薄い尾根を探して登るのがいいと判断した。
竹森林道から見た主稜線。法面で登れないし尾根上は笹 | 一つ東の尾根も法面で登れない |
もう一つ東の尾根から登ることに | この尾根には廃道化した遊歩道があった |
標高が最も高い最初の尾根は法面がコンクリート吹きつけで垂直近く登れないので通過、次の東に張り出した尾根は先端手前が登れそうな傾斜で、笹に覆われているがよく見るとその中に水平に筋が見える。これは歩道に違いない。早速林道を離れ、獣道を利用して傾斜がきつい斜面に取り付いて笹藪の中に入っていった。林道で樹林が刈り払われた南斜面で日当たりが良く、笹の密度は濃厚だが獣道を上がっているのでまだマシだ。少し藪をかき分けたところで無事踏跡に遭遇、最近整備された形跡は感じられないが、その昔に刈り払われたようで歩くのに問題はない。ああ、助かった。これで柳沢ノ頭まで藪はないだろうと思ったのだが・・・。
廃道も途中で完全に笹藪化 |
巻き気味に歩いて尾根に乗ると木の階段もあってまともな遊歩らしいが、やはり最近整備された様子はなく両側から笹がはみ出している。それでも周囲のような完全な笹藪より遙かに歩きやすく大助かりだ。しかし進むに従って徐々に笹の勢いが増してきて、ほとんど道の有無が分からないような場所も出てくるようになった。おまけに残雪が笹の上に乗って笹が寝てルート形跡を隠している部分もある。足の感覚で抵抗が薄い方向を探しながら進むので進行速度はぐっと落ちる。今まで稜線東側を歩いていたが稜線の高さが落ちて鞍部を通過するところで稜線西側に赤テープを発見、目印が必要なくらいの状況だからもはや遊歩道の面影はない。しかし深い笹はここまでで、西に乗り移ると笹が薄くなって踏跡もはっきりし、ルートを外す心配はなくなった。しかし天候が悪化し、最初は雪が落ちてきたのかどうか分からない程度の僅かな降りがチラホラ程度となり、本降りの雪になってしまった。天気予報では夕方から下界では雨と言っていたがずいぶん早い降り始めだ。積もりそうな勢いで遊歩道を歩く分には問題ないが、藪区間では雪が乗った笹を漕ぐことになり大問題だ。笹が寝て踏跡や獣道を覆い隠してしまうし、雪が乗った笹は重くて体力の消耗が激しい。奥多摩のウトウノ頭では降雪の中を歩いたが、やたら思い笹で疲れ果て、疲労凍死するかと思った経験がある。もし鈴庫山への尾根が笹だったら今日はパスだろう。濡れそうなのでゴアの上着を着た。
遊歩道と合流 | 登ってきた尾根。踏跡不明瞭 |
柳沢ノ頭山頂 | 柳沢ノ頭にあった案内図 |
緩く登ると右手から明瞭な遊歩道が合流、そこには案内標識があり、今来たルートを指して「竹森林道」と書かれているが通行止めの表示もあった。まあ、あれじゃ一般人は無理だな。僅かに残った雪の上には複数の足跡が残っており、登山者なのか観光客なのか分からないがこの時期でも登る人がいるようだ。いい道を少し登ると思いがけず柳沢ノ頭山頂だった。山頂は開けた所で案内標識があり、それによると鈴庫山まで遊歩道があるようだ。ラッキー! これなら雪が降っていても問題無さそうだ。
鈴庫山分岐の案内図 | 鈴庫山分岐 |
鈴庫山山頂 | 鈴庫山から見た高芝山 |
しばらくは雪が降り続く稜線上の遊歩道を北に向かい、小さな鞍部で「鈴庫山」の案内標識に導かれて西に進路を変える。ここにも地図付き標識があるが、遊歩道は鈴庫山までのようだ。ただ、この付近の笹は低くて薄く、踏跡が無くても大した問題では無さそうだ。ほんのちょっと先で左に曲がり、そのまま尾根を西に下っていく。雪に煙った先には鈴庫山らしきピークが見えている。先が行き止まりなので踏跡が薄いかと思ったらそんなことはなく、今までと同じ1級の遊歩道が続いていた。鞍部で登りにかかると高芝山のように檜の植林帯を登るが、こちらは道ははっきりしている。右を巻きながら少し登ったところで直進方向にロープが張られ、これより先の尾根に入らないよう注意書きがあった。もっとも、この状況から推測するにこの尾根には笹藪は無さそうなので、ルートファインディングができる人ならば問題無さそうだ。左に進路を変えて登ったところでひょっこり山頂に出てしまった。鞍部から大して登っていないのでまだ先かと思っていたが、何とも短かった。
山頂は南側が崖になっているので開けているが、他の方向は樹林に覆われて展望はなかった。南の展望も雪が降っているのでイマイチで高芝山も霞んでいる。古い石碑があるので昔から信仰登山があったらしいが手製を含めて山頂標識は無く、誰か1つくらい付けても良さそうなものだ。雪を避けるため木の下で休憩。この時刻でもまだ気温は0度のままで日の光もなく、体を休めるには寒すぎる。朝の気温0度は暖かく感じたんだけどなぁ。休憩しながら今後の行動を検討。倉掛山まで往復するには水平距離で約4kmあるので片道1時間半から2時間かかると思われ、往復3〜4時間だろう。晴れていれば気持ちよく歩けそうだが、このまま雪が降った状態で歩くのもイマイチだ。気になるのは案内地図では北側の板橋峠まで入る笠取林道はゲートが無いことで、峠まで入れば倉掛山までの距離は半分以下になり、帰りの登り返しも省略できる。そのくらいの労力なら雪が降っていても許容できるだろうと、一度車に戻って笠取林道を車で上がり、峠まで入れるようなら倉掛山を往復することにした。
柳沢ノ頭に戻り、今度は柳沢峠駐車場に下る遊歩道を歩く。さすが遊歩道できれいに刈り払いされ、体に触れる笹は全くない。駐車場に近づいたところで竹森林道に合流、駐車場に到着した。林道を歩いているときに何台も車が通過していったので、もしかしたらゲートは施錠されていないのではないかと思い確認してみると、鍵はぶら下がっているが施錠はされておらず、ゲートを開けることが可能だった。な〜んだ、そうだったのか。まあ、でも今回のルートなら歩いても大した差にはならないのでいいか。
所要時間
7:02柳沢峠駐車場−−7:34林道を離れる−−7:57 1518mピーク−−8:12高芝山−−8:25 1518mピーク−−8:52林道−−8:57尾根に取り付く−−9:17柳沢ノ頭−−9:46鈴庫山10:03−−10:33柳沢ノ頭−−10:52柳沢峠駐車場