富士寄生火山 二子山 2007年12月09日

 


 富士寄生火山シリーズもけっこう進み、私有地及び自衛隊演習地以外で地形図記載の山は、御殿場以外ではたぶん二子山だけだろう。新五合目に至る県道の途中から等高線に沿って北上した場所にあり、地形図では近くに破線が通っているが存在は信用はできない。それに標高が低いところから上がっているから、やっぱり県道から横移動が常道だろう。カーブの一つが一番近いところなので、その周辺に車を置いて歩けばいいだろう。問題は二子山手前に書かれた崩壊した大きな沢で、これが横断できるかどうかがカギだろう。こんなどうでもいい山は注目されるはずも無く、ネットで検索しても相撲の力士名はぞろぞろ出てくるが、寄生火山とか側火山とあわせると箱根の二子山は出てくるが、富士山の二子山の登山記録は発見できなかった。そもそも周囲より等高線1本分、10m高いだけでは山と言っていいのやら・・・。

 場所確認のためGPSをつけながら車を走らせ、最接近したカーブから分岐する林道入口に駐車した。そろそろ路面凍結の可能性が高く、夜の走り屋出没は無いかと思ったら、まだポツリポツリと走っていた。数はだいぶ少ないので気にならないで眠れたが。

廃林道を歩く 林道を離れてイバラの植林帯を横断

 

 翌朝はあまり冷え込まず窓ガラスの水滴は凍ることはなく、飯を食べて廃林道を出発した。ただし、この林道は地形図に記載が無いためどこに向かうのか見当が付かず、方向が大きく違ってきたら利用を諦めて斜面を歩くしかないだろう。少し歩くと林道が2分し、左を行くが西に下っていきそうなので杉植林の斜面に突入、しかし下草としてイバラが広く分布し一面がトゲの藪だった。私の場合、ズボンはジャージなのでトゲが貫通して足が傷だらけになり風呂に入るときに大いに痛かった。ここは厚手のズボンがいいようだ。

溶岩が露出した沢を渡る 網の目のように廃林道がある

 

 溶岩の上に植林したようで、地面のあちこちに黒い溶岩が転がっており、えぐれた枯れ沢を横断したりした。まるで鹿道のように廃林道が現れ、ここだけはトゲの藪から開放されるので、多少方向が違ってもできるだけ林道を利用して方向を調整しながらジグザグに進んでいく。平坦な地形で植林が続くため先の様子が見えず、二子山の在り処は全く分からず、方位磁石で北西方向にひたすら進むだけである。もちろん、GPSで目標の方位と距離は把握しているが、人工林が深いので電波は途切れがちである。

林道終点で大きな枯れ沢を渡る 沢から急登すると廃林道へ出る

 

 廃林道より少しマシな林道を歩いていくと、目の前に大きな尾根?が現れ、その手前の枯れ沢で林道が終わっていた。山深そうな場所に思えるが、沢の中には大量のゴミ尾が散している。これだから林道という林道のゲートが施錠されてしまうわけだ。この沢は今まで渡った枯れ沢の中では一番大きく、これが地形図に出ている沢なのだろうか?

イバラが消えた杉林に獣道が延びる 地形図の大きな枯れ沢登場
枯れ沢の中。両側が崖の部分が多い 対岸も藪がない杉の植林帯

 

 対岸に渡ると再び廃林道出現、沢に沿って上流及び下流方向に伸びているが、二子山がある北西方向ではないので再び植林帯を歩くが、今までのイバラの藪と違ってこっちは杉の植林の下には藪は皆無で、どこでも自由に歩くことができ大助かりだ。やっぱり鹿が多いようであちこちに明瞭な獣道が見られた。平坦な地形ではなく小さな尾根がいくつも横切りアップダウンがある。そのうち一つの尾根を越えると今までで最大の枯れ沢が登場、これが地形図の沢に間違いない。幅は10mほどで岸からの深さは10mくらいあるだろうか、岸がえぐられて絶壁の箇所もあり、場所を選ばないと横断できない。幸い、水は流れていないので沢に下って対岸を這い上がるルートを見つければいい。ラッキーなことに眼下には沢に下る獣道があり、対岸は崖ではなく木が生え落ち葉に覆われた斜面で難なく沢を横断できた。

 この先も今まで同様深い杉の植林帯が続き、地形図に無い林道が次から次へと登場し、小さな尾根を越えていく。尾根の高まりがあるので山頂の高まりと見分けが付かず、こうなるとGPSだけが頼りだが、人工林で電波が邪魔されて衛星捕捉を維持できない。今でも使用されているような、最近頻繁に車が通っていそうな林道で頭上が開けて衛星捕捉できたので位置を確認すると、北に200mほど行き過ぎているではないか。ということは今まで歩いてきたルートの近くに二子山があったはずだが全く気づかなかったし、ここから200m先にあるはずの山頂は杉木立で全く分かない。通常の山なら200mなら完全に視認できるはずだが、それほど二子山の標高差10mは僅かな盛り上がりなのだろう。

100mくらいまで接近してようやく発見 二子山山頂も杉植林帯
小さいながらも火口の窪みあり 獣道を下る

 

 GPSを見ながら林道を下っていき残距離が減っていくと、左手に僅かな高まりが見えてきた。近くまで来れば長く続いた尾根ではなく小さいながらも独立したピーク(ただし大き目の築山並みだが)であることが分かり、間違いなく二子山だろう。周囲も斜面も一面が杉の植林帯で、北側から登ると東斜面を巻きながら林道が山頂まで達していた。山頂標識は無く、設置されているはずの三角点も見当たらない。しかしGPSの残距離は2,30mだし、南側にはもう一つのピークも見えているので二子山に違いないだろう。ごく小規模ながら中心部は凹んで火口の面影があるが、そこまで植林されている。火口壁の北東が最も高い場所だったが、この植林では展望なんてあるはずもなかった。

 どうにか二子山登頂を果たしたが、たぶんGPSがなければ杉林の中を徘徊するだけで山頂を発見できなかっただろう。この地形では車道から出発して方位磁石だけで二子山にたどり着けたら神業の持ち主といってよいだろう。いや、幸運の持ち主か? 今まで数々の富士寄生火山を登ってきたが、ここまで発見が難しかった山は初めてだった。

 

 帰りは南東に進路を取りつつできるだけ直線的に歩いたが、どうやら行きは少し東に寄っていたようだ。大きな枯れ沢は登りの時より下流側で対岸に渡ったが、今度は絶壁が続いてなかなか降りる場所が見つからなかった。その手前て渡ったはずの深い沢は出現せず、イバラの植林帯を横断して、最後は車の音を頼りに方向を微調整し、車を置いた林道入口に戻った。


所要時間
 6:48林道入口−(0:34)−7:22行きすぎて戻る−(0:07)−7:29二子山7:39−(0:33)−8:12林道入口

 

 

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