南ア北部前衛(奈良田) 高山、南城山 2007年11月25日

 


 高山は鳳凰三山、夜叉人峠からさらに南に下り、櫛形山と分岐して奈良田へと消える尾根の途中にある。標高約1800mほどで、登るなら丸山林道が南尾根を乗り越えるところが最短コースと考えていた。昨年は登る前に林道が冬季通行止めになってしまい時機を逸してしまったので、今年はその前に登ろうと考えた。例年、山梨の林道は12月に入ると冬季通行止めが始まるので、11月最後の週末がラストチャンスだ。

丸山林道奈良田側ゲート 通行止めの看板

 

 富士宮から北上し、旧下部町を横切って富士街道に出たところにスーパーがあったのだが、いつのまにか廃業しており、富士川左岸の県道を下って身延市街地に近い地元スーパーで買い物を済ませてから奈良田に向かい、途中、草塩温泉で汗を流した。相変わらずいつ来ても空いていて独占状態に近い穴場温泉である。夏の間、マイカー駐車場になっている奈良田の駐車場は一部を除いて入口が塞がれていた。丸山林道入口に達すると、11月30日まで土休日を含めて終日通行止めとの看板があるではないか! でも工事箇所までは入れるかと車を進めたが、ゲートはしっかりと閉まっていた。地図によると工事現場は南尾根取り付きよりもっと先なのだが。反対側からだと峠まで入れるので、櫛形山から往復しようかとも考えたが、高山南西になる南城山が山名事典に記載されているのを考えると、当初計画どおり奈良田から登るのが得策だろう。昨日の富士寄生火山同様林道歩きが長くなるが、ここから歩くことにする。駐車場は無人で車は1台も無く、夜は静かに寝られた。

林道をショートカット、斜面を登る 最初のみ植林、その後藪無し自然林が続く

 

 翌朝、東京へ帰る時間を少しでも早めて中央道の渋滞にはまらないようにとまだ薄暗い6時過ぎに出発。どうせ最初は林道歩きだから問題ない。もっとも、正直に林道を歩こうという気は毛頭無く、ショートカットできるところは斜面を登るつもりだが。ゲートを通過してジグザグってからしばらくは斜面を巻くように進み、カーブでUターンして少し進んだところで林道を外れて斜面を登る。この上部には次のヘアピンカーブが待ち受けているはずなだ。取り付きは急だが藪は無いので植林帯をジグザグに登り、小さな尾根を進むと予定通りヘアピンカーブに出た。ここの上部にもまだ林道があるはずなのでそのまま斜面を登り続けると植林帯から落葉広葉樹林に変わる。鹿が多いようで鹿道が縦横に走り、それらも利用して歩きやすいように自由気ままにルート取りする。徐々に傾斜がきつくなって木に掴まりながら登るとガードレールが見えてきて、林道直下が最も傾斜がきつかったが無事に出ることができた。ただ、林道から登ってきた斜面を見下ろすととんでもない急斜面で、とても降りる気は起きなかったので帰りには使えないだろう。

朝焼けの白峰南嶺 林道から見た大唐松山

林道から見た大唐松尾根、農鳥岳

 

 この先はショートカットはできないので、尾根取り付きまで林道歩きだ。所々に距離表示があるが、最初に見たのは5km、相当ショートカットしたのでこの半分くらいしか林道歩きはしていないだろう。林道からは農鳥から白峰南嶺がずらりと並び、手前には大唐松山、雨池山が見えている。農鳥はほとんど雪は消えて黒い姿に戻っていた。南嶺は今ではルートがはっきりしているかな。次に行くなら奈良田から笹山に至る尾根でも歩いてみたいもんだ。おそらく山頂直下のハイマツ以外は藪も無く、楽しめると思う。水が無いのが難点だが、標高差2000m弱なので日が長い時期なら強行日帰りも不可能ではないだろう。

南城山の南尾根を巻く 南尾根に上がる階段
高山南尾根 法面手前から登ることにした

 

 南城山から南に落ちる尾根を通過すると階段があり、尾根上に作業道でもあるらしい。ここから登ってしまってもいいのだが、余計なアップダウンがあるので帰りに歩くことにして、登りは予定通り南尾根がいいだろう。なおも林道を歩き、大きな沢で林道が右に曲がって南尾根に向けて登り始めるが、沢の手前から小尾根が南尾根に延びているので、予定を変更してここから登ることにした。これで林道歩きがまた縮まった。

ここから南尾根に取り付く 唐松植林帯を急登する
間伐したばかり 南尾根上も唐松植林帯

 

 小尾根入口には目印が付いているが尾根上には特に目印は無く、葉が落ちた唐松植林帯をグングン登っていく。間伐をしたばかりのようで伐採した枝があちこちに散乱して歩きにくいことこの上ないが、傾斜がきついので効率よく高度を稼げる。傾斜が緩むと南尾根で、はっきりとした作業道らしき道があり、これなら間伐材に邪魔されないで山頂まで行けそうだ。落葉しているとはいえずっと唐松樹林が続いて視界がすっきりしないのが残念だ。標高が上がるとそれまで隠れていた間ノ岳や北岳も白い姿を表したが、写真を撮る気分になるような視界が開けた場所は無かった。

自然林に変わる 尾根が狭まると明瞭な踏跡
南城山の尾根と合流するピーク 再び唐松植林帯

 

 植林帯から自然林に変わると落ち着いた雰囲気になり、散乱した木も無くなるので歩きやすくなった。やっぱりこういう場所の方がいいな。このエリアらしく、ブナ科の落葉時に混じって照葉樹もある。1720mで南城山がある南西尾根と合流、登っていくと再び唐松植林帯に変わり、間伐した幹、枝がいっぱいでこれまで以上に歩きにくかった。下山時に分かったことだが、枝が片付けられた作業道は稜線中央よりやや東よりにあった。東側からは櫛形山に続く尾根が合流しているが、藪は無いが登山道があるわけでもなく、たぶん南尾根同様に歩けるだろう。

高山山頂。白いのは間ノ岳

 山頂直下の平地からちょっと盛り上がった場所が山頂で三角点が鎮座、近くに立っているのは山頂標識かと思ったら伐採地の標識だった。それによると昨年度間伐整備したばかりのようで、どうりでまだ腐っていないわけだ。周囲は唐松所林が広がって展望はすっきりしないのは残念。樹木がなければ白峰三山、大唐松山から白峰南嶺がずらりと並んだ姿が見えるはずだが、樹林を通してでは肉眼ではまだいいが、写真になると遠近感が無くなって肝心の山が目立たなくなってしまうので撮影は諦めた。ちなみに山頂標識はなかった。

 休憩しながら地図を見て下山ルートを考えた。長い林道歩きはごめんなので、できるだけ林道を歩かず、効率よく下山できるルートにしたい。帰りは南城山に立ち寄るのでそこからどう下るかだが、そのまま南に直進して林道に出ては林道歩きが長いので、山頂から西に進路を取って北西尾根に乗り、そのまま尾根をまっすぐ下れば、ほとんど林道を歩かなくてもいいようだ。問題は尾根と林道が交差する部分に崖マークがあるので下れるかどうかだが、右の沢付近は崖マークが無いので、どうしても降りられない場合はそっちに逃げればいいだろう。顕著な尾根なので外す確率は少ないだろうし、もし外しても南にずれる分には下っていけば必ず林道に出るので、怪しい場合は左寄りに進路をとればよかろう。車で丸山林道に入れたら単純に南尾根往復で終わってしまっただろうが、下から歩いたおかげで後半戦は楽しめそうだ。

南城山への尾根も踏跡がある 藪もなく歩きやすい
なにやら文字が書かれていたが意味不明 照葉樹も多い

 

 標高1720m地点で南尾根と別れて南城山へと続く尾根に入るが、ここに立っている境界標石には、これから行く尾根の方に×印が描かれているのが気になるが、いくらなんでも危険箇所で通行不能なんてことはありえそうにないので無視して進んだ。はっきりした尾根が続いて藪も無く、何となくあるような無いような踏跡も続き、古い目印が時々現れる。自然林が続いて落ち葉のラッセルが楽しい。

 鞍部から1646m峰に向かって登っていると、丸山方面から断続的に銃声が聞こえてきた。既に狩猟シーズンが解禁されハンターが山に入っているのだ。もしこの付近でもハンターがいるとしたら、一般登山者が登るはずもないこんな場所では獣と間違って撃たれかねない。ハンター対策には遠くからも目立つ色の帽子や服装が一番なのだが、残念ながら私が着ているのは灰色のTシャツや濃紺のズボンや帽子だから、遠くから見たら白、灰色、黒にしか見えないだろう。唯一、ザックは赤であるが、前から見たら背中に隠れて見えない。これからのシーズンは目立つ色の何かを身に着けたほうがいいなぁ。なお、この当日は奥多摩の棒ノ折山で登山者がハンターに誤射された事件が発生している。

一升瓶が散乱。飯場跡か なおも自然林が続く
1646m峰 1646m峰南のガレから見た荒川岳
1646m峰南のガレから見た白峰南嶺(クリックで拡大)
次のピークは右を巻いた 唐松植林帯になる
尾根上には踏跡あり 1つ目のTVアンテナ
南城山山頂 つ目のTVアンテナ

 

 1646m峰を下ると地形図どおり右手にガレが出現、ようやく南嶺方面の視界がすっきりして欲求不満もすっきりした。大唐松山なんかまた行ってみたい山だ。林道以外で展望があったのはこのガレだけだった。1650m峰は右から巻いたが、ここから唐松植林帯が始まるが、今までのような間伐の形跡は無く、地面に散乱した枝が無くて快適に歩けた。そのまま南城山まで植林は続いた。南城山三角点手前で東を向いたTVアンテナがあり、三角点の向こうには南を向いたTVアンテナが。どちらも奈良田の共聴用アンテナだろうか。ここから南に伸びる尾根末端付近で見た尾根に這い上がるための階段は、これのメンテナンス用作業道かもしれない。

北西尾根へと斜面を下る 尾根らしくなってきた

 

 2つ目のアンテナから少し進んでから、尾根を成していない斜面を注意しながら西に下っていくと、やがて尾根がはっきりして右に曲がり北西方向に下り始めた。間違いなく目的の尾根に乗った。ここも植林帯で藪は無く、歩きやすい場所を適当に降りていけばいい。そのうちに檜植林帯に変わるが今まで同様藪はないが、間伐は全くやっていないようで薄暗く、矮小な潅木が少し生えていた。

尾根を下っていくと檜植林帯に 林道に出る
なおも北西尾根を下る 照葉樹の回廊
林道を越えて斜面を下る 杉の植林帯を下れば林道に出る

 

 尾根は概ね明瞭で直進するだけでよかった。やがて林道と遭遇するが、地形図の記述どおり法面が崖で下れず、少し右に寄って獣道を利用して下った。林道を突っ切ってなおも尾根を直進すると、今度は照葉樹が中心の尾根で廃林道が出てきた。廃林道があるということは安全に林道に降りられるはずで、予想通り崖はなく林道に出た。ここであらためて地形図を見ると、この尾根の下部は広がって急斜面になっており、このまま進むより林道を少し下ってから斜面を下ったほうが傾斜が緩くて得策だろう。ただし、あまり左により過ぎると崖マークがあるので要注意だ。適当に斜面に入って杉の植林帯を下っていくと、これまた縦横無尽に獣道が走っているが、どれも等高線に沿って緩く登ったり下ったりするルートなので無視してまっすぐ下っていく。樹林で下部が見えないが傾斜が増している気配は無く崖もないようで想定どおりのルートを下っているようだ。やがて上水道施設がある林道カーブが登場、ゲートより少し上で林道に出たが、まあまあ予定のコースといえよう。あとは林道を歩いて駐車場に戻ったが、やっぱりこの時期は他に駐車する車は無かった。


所要時間
 6:09奈良田駐車場−−7:45南尾根に取り付く−−8:05稜線−−8:50高山9:08−−9:36 1646m峰−−9:44 1650m峰を巻く−−9:59 1つめのTVアンテナ−−9:59南城山−−10:24林道を突っ切る−−10:30林道を突っ切る−−10:34林道をちょっとだけ歩く−−10:43林道−−10:49奈良田駐車場

 

 

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