中央アルプス北部 坊主岳 2007年10月28日

 


 土曜日は台風の通過で大雨。山に行くどころの話ではないので自宅で休憩し、予報では翌日は台風一過の快晴とのことで日帰りで出かけることにした。もう北アは雪のシーズンだろうから2000m峰は諦めてもっと南の2000m弱の山に登ることにして、中ア北端に位置する1900m台の坊主岳を考えた。ここは奈良井宿の近くで、ネットで検索すると奈良井ダム湖末端付近から南西尾根を登る記事がいくつも発見できた。登山道は無く笹藪のようだが、これだけ記事があるということはこれの数100倍は登る人がいるだろうから、わりとはっきりした踏跡があるかも知れない。

 土曜夜は台風最接近の大雨でとても屋外に出られる状況ではなかったし、風が強くて軽ワゴンで高速道路なんか走ったら横風でふらついて危険なので、久しぶりに本当の日帰りだ。ところが早朝というか深夜に調布から中央道に乗ると事故で八王子〜相模湖東が通行止め。八王子ICから一般道で相模湖ICまで走ってもいいのだが、相模湖ICに到着すると深夜割引時間帯を過ぎてしまうのは確実だ。坊主岳の笹薮が乾く時間も考えてこのまま高速を降りないことにして石川PAで仮眠。2時間ほどで車の往来が多くなり開通したことを知って走り出した。既に周囲は明るくなり始めていた。

 快晴の朝に中央道下りを走るのはたぶん初めてではなかろうか。甲府盆地に入ると雪化粧した南アがずらり並んでいて、南部は3000mくらいから上が白かったが鳳凰三山や甲斐駒は2500〜2600mから上が白かった。もっと進んで甲斐駒北西の坊主山まで白かったのが見えたので、場所によって雪になった標高にバラツキがあるようだ。八ヶ岳も南部を除いて2500〜2600mが雪の境界だった。

イノコ沢にかかる橋手前の林道奥に登山口あり 登山口。赤テープに坊主岳と書かれていた

 

 諏訪ICで降りて杖突峠→高遠→伊那市街→権兵衛トンネルと抜けて姥神トンネル手前で奈良井ダムへのショートカットコースに入ろうとしたら目の前が工事中で全面通行止め。遠回りになるが鳥居トンネルを抜けてダムに至り、イノコ沢北の尾根末端に到着した。今は使われていないバス停(上の原)があり、林道が沢に下りているが、この道路はさっきのように工事中で通り抜けはできず通行量もほとんどないので路肩に車を置いた。話によると林道を入った先に駐車スペースがあるようだが、それは下山時に知ったことだ。時刻は既に9時半、いつもなら山頂に立っている時間に登り始めるのも奇妙な感じだが、これで濡れた笹が乾いているといいのだが。

下部の山道ははっきりしている 山の神?

 

 尾根末端の林道側にはっきりとした山道があり、入口の木に赤テープが巻かれて「坊主岳 3時間」の記入があった。こんなものがあるくらいだから、やっぱり登る人は思ったより多いようだ。その僅か上に、私有地及び共有地なので関係者以外の立入お断りの看板があった。ま、これは山菜やきのこ取りの話で登山だけなら問題なかろうと解釈して登り始める。非常にはっきりした道でジグザグに登っていくが、どこに行く道なのか分からないので尾根から離れそうになると道を外れて尾根を追うようにした。藪は全く無いので道がないところでも問題なく歩けた。標高1200m強の場所で「標高1200m」の標識を見かける。これは登山者が付けたものだろう。他に1700mでも見かけた。

尾根上は藪はなく歩きやすい 1700m地点にもあった

 

 少し登るといくつかの祠が出現、山ノ神といったところか。安全登山を祈願する。古い石碑がいくつか立っており、中には「水神」と書かれたものもあり、五穀豊穣を願っての信仰登山があったのかもしれない。途中から山道が薄くなるが相変わらず藪は無く、尾根筋には点々と目印があるので迷う心配はない。この目印の種類から考えても歩く人の多さが分かる。少なくとも3種類以上はあった。

1429m三角点。小坊主峰の標識があった 三角点先から笹が出現
笹原が続くが足下には踏跡がある この辺は笹が低い

 

 1429m4等三角点には「小坊主峰」の標識が掲げられていた。この先でいよいよ笹が出現、しかしまだ薄くて問題にはならないが、ゴアを履くほどではないが微妙に濡れていているので、手で掻き分けながら進む。この付近は傾斜が緩く、時間の割には標高差が稼げない。下りのことを考えると登りで苦労しても傾斜があった方がいいのだが。徐々に笹は濃くなってくるが、割りと明瞭な一筋の踏跡が延びており、それを外しさえしなければ足元に空間があって楽に歩ける。先日の大木場ノ辻と比較すれば天国といえよう。手で掻き分けなくても足だけで登ることができる程度だった。ただし、踏跡を外すとそれなりに苦労する濃さではあった。笹の高さは胸から肩くらいで、登りではちょうど顔の辺りに笹の葉が来て首筋に当たって切り傷ができ、汗にしみて痛かった。首にタオルを巻いていけばよかったな。

まだまだ笹が続く 標高1800m付近は樹林が開けた場所
標高1800m付近から見た木曽御嶽 標高1800m付近から見た乗鞍岳

 

 傾斜がきつくなるが、笹の濃さは今までと同じ程度で、延々と踏跡が続くので目印も参考にして外さないよう追いかける。部分的に薄い箇所もあってたまに外すこともあったが、そんなときは左右に数m移動すると踏跡を発見できた。この尾根はほぼ樹林が続いて展望が無いが、2箇所くらい樹林が切れた低い笹原が出現し、雪をかぶった木曾御嶽や乗鞍を望むことができた。今日は気温が高めなので登りの最中は樹林の日影の方が気持ちよかった。

山頂直下で笹が切れる 樹林を抜ける。もう山頂は間近
坊主岳山頂。低い笹原で展望良好 坊主岳から見た中央アルプス
坊主岳から見た坊主岳北方1961m峰 坊主岳から見た白い浅間山
坊主岳から見た八ヶ岳
坊主岳から見た鉢盛山、奥穂高岳、槍ヶ岳
坊主岳から見た木曽御嶽〜鉢盛山(クリックで拡大)
坊主岳から見た北アルプス(クリックで拡大)

 

 山頂直下で笹が切れてシラビソ樹林の急斜面を登り、樹林が切れて頭上が開けると山頂は目の前だ。低い笹原を緩やかに登ったところに石碑がいくつかあり、笹が刈り払われた坊主岳山頂があった。樹木がほぼ無いので展望はよく、中ア主峰群はもちろん、八ヶ岳、浅間山、後立山、表銀座、槍と奥穂は鉢盛山の両側に僅かに頭を出していた。乗鞍、木曾御嶽は邪魔するものは無く、その間に大笹沢山と鎌ヶ峰。これだけ展望がいいとは思わなかった。

 下山は踏跡と目印を頼って同じルートを戻った。山頂直下で単独男性2名が次々と登ってきて、そのうち1名と20分ほど立ち話した。地元伊那に住んでいる人で、定年退職してしばらくたつが山登り三昧らしい。伊那だとこの周囲の山だったら当日朝の天気を見てから出かけても充分間に合うのは羨ましい限りだ。林道奥の堰堤付近から踏跡を頼りに尾根に取り付いたそうだが、ガレて歩きにくかったそうだ。

 下りは登りと違って踏跡を外しやすいので慎重に足を進めたが、「手探り」ならぬ「足探り」で踏跡を辿ったら剣岳北方稜線のように大きく外すことはなかった。このルートは少し手入れをすれば面白いコースになりそうだ。山頂の展望の良さを考えれば登る価値があるだろう。笹で滑りやすく、何度かコケそうになりながらも緩斜面の笹地帯が終わって三角点に到着、これ以降は笹は無いのでガンガン下る。思ったよりも早く車道に出た。


所要時間
9:30尾根末端−(0:08)−9:38山ノ神−(0:30)−10:08三角点−(1:11)−11:19坊主岳11:50−(0:29)−12:19三角点−(0:12)−12:31山ノ神−(0:05)−12:36尾根末端

 

 

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