北上山地 早池峰山 2007年06月24日

 


 岩手北上山地といえば阿武隈のようになだらかな丘が連なるイメージがあるが、早池峰山だけは特異な様相を見せている。標高は2000mに僅かに届かないが全体的に岩っぽくて男性的な山である。南側の薬師岳はずいぶん前に登ったのだが肝心の早池峰山は未踏のままで、岩手まで来たのだから登っていくことにした。メジャーな山なので事前に情報収集していなかったが、岩手山のハイカーの話ではマイカー規制があって途中でシャトルバスに乗り換える必要があるとのこと、どこまで車で入れて始発が何時だか不明だがとにかく現場に行って状況に合わせて行動すればいいだろう。

 小岩井牧場を抜けて買い物を済ませて、一路登山口の小田越を目指す。山麓南側を通る県道に入ると何やら看板が立っているのが見え、読んでみると6月から8月初旬の土日祝日はAM5:00からPM1:00まで岳から先がマイカー規制とのこと。今は午後1時を過ぎているので自由に入れるが、問題はお帰りのときに午後1時前に出られるかどうかだ。岩手中部から東京まで帰るのは遠く、午後1時に林道を出たのでは東京着は深夜になってしまう。マイカー規制の場合、入るのは規制されるが出るのは自由というパターンが多いが、その点は看板に書かれていない。岳の駐車場でバスの始発時間を見ると5:30で、北沢峠よりマシだが普段の出発より1時間ほど遅い。さてどうしようかと迷いながら先に進み、岳の集落の先に「番人」がいたので聞いてみると、規制時間内は出るのもダメとのこと。これでは帰りの時刻が相当遅くなってしまうので、出発時刻が遅くなるがシャトルバス利用に決めた。東京に帰ってからネットで調べたが、規制時間内は車の移動はダメとのことだった。

 私が車を置いた駐車場が岳駐車場と思っていたのだが収容台数が20台弱で妙に狭く、百名山にしては貧弱だし車も少ないなぁと疑問に感じた。翌朝になってその答えが判明、始発バスの座席が全部埋まっており、本当の駐車場は僅か1分ほど手前にあったのだった。どうりでおかしいと思った。素直に県道をまっすぐ登ってくれば広い駐車場が出てくるだろう。マイナーな駐車場のおかげか夜中の車の出入りも少なく静かに寝られた。


 翌朝、心配していた天気は快晴で、昨日かかっていた稜線の雲もすっきり消えていた。やってきたバスは既に満席で河原坊まで立つことになったが、その先は1/3くらいの乗客が降りたので座って小田越に向かうことができた。小田越は10年以上前に仲間と薬師岳に登ったときに車で入ったはずだが記憶が飛んでしまっており、天気が良かったか悪かったかも覚えていない。樹林の向こうには岩っぽい早池峰山が姿を見せている。上空は真っ青な空が広がり、太平洋岸の梅雨前線の影響もここまでは届かない。

小田越。正面が早池峰山 いい登山道が続く
樹林帯を抜けると開けた斜面に出る 振り返ると薬師岳

 

 さすが百名山だから道は心配なし、最初は樹林帯を登っていくので日影で涼しい。朝一番のバスの乗客で最初に歩きだしたのが私なので先行者はいないかとおもいきや、小田越山荘の宿泊者らしき姿が前方に見られた。樹林帯はすぐに終わって低い樹林を抜けると一気に森林限界に飛び出す。早池峰は蛇紋岩質で土壌のアルカリ度が高く普通の植物は生育できないので、ここは高度的な森林限界ではなく地質的な森林限界らしい。ハイマツもあるがお花畑が大半で、今はまだ花の季節には早いがピーク時には賑やかそうだ。高山植物ではハヤチネウスユキソウくらいしか早池峰の名を冠した植物は知らないが、まだ花はつぼみのままだった。

ミヤマオダマキ ミヤマシオガマか?
ミヤマアズマギク? ハヤチネウスユキソウ

 

 岩の間を登ったりお花畑の間を登ったりと、ずっと視界が開けっぱなしなので今日のような天気がいい日は最高だ。南西に見える僅かに残雪をまとった山は、後で調べたら焼石と栗駒だった。南東方向に見えていたのは五葉山らしい。残念ながらエアリアマップの裏面は広域地図が無いので山岳同定はできなかった。

1枚岩にかかる梯子 主稜線に出る。盛り上がった部分が山頂
主稜線上のショウジョウバカマ 主稜線上のイワカガミ

 

 1箇所だけ1枚岩の上に2段構え梯子があるが、1段目は左から迂回可能(たぶん渋滞対策?)、2段目は手がかりがあるのですぐ右側の岩場を歩くこともできるようだ。今は無人なのでせっかくだから梯子を使わせてもらう。慣れない人が押し寄せると渋滞するだろうなぁ。岩稜帯をさらに登ると主稜線に到着、進路を西に変えて山頂を目指す。稜線上は植生が変化してイワカガミやショウジョウバカマなどおなじみの花が咲いており、蛇紋岩質ではないらしい。真っ赤な屋根が見えているピークが山頂らしく、直下で僅かに雪を踏んだがほんの10歩くらいだった。

早池峰山山頂

早池峰山山頂から見た岩手山
早池峰山山頂から見た姫神山 早池峰山山頂から見た主稜線西側

 

 立派な避難小屋を過ぎれば山頂の一角で、1等三角点が設置されている場所は最高地点ではなく、林立する岩が本当の山頂のようだ。どれも似た様な高さなので適当な岩に登って山頂とする。樹林は無いので展望はいいが、昨日同様思ったより空気の透明度は高くなく、岩手山さえ霞んでおり、期待していた鳥海山は影も形も見えなかった。地形的に朝日や飯豊が見えるのか分からないが、焼石岳、栗駒山が何とか見える程度では問題外だ。北の方が遠くまで見るがどれがどの山なのか全く分からないのが残念だ。北風がやや強いので岩の南側に隠れるように休憩した。まだ朝早い時刻なので山頂の登山者は多くは無いが、風が出て寒いので長時間粘る人は少なかった。

 展望を充分堪能してバスの時刻に合わせて下山開始、ゆっくり下って登山口到着はバスの時刻3分前だった。


所要時間 小田越−1:24−早池峰山−1:10−小田越

 

 

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