茨城北部 男体山 2007年2月25日

 


 男体山といえば奥日光の男体山が有名だと思うが、茨城には男体山が2つある。一つは双耳峰である筑波山の低いほうのピークで、もう一つが今回登った大子の山である。大子町は冬季に凍結する袋田の滝が有名だが、その袋田の滝の南方にあり、この界隈の最高峰である。前日登った鍋足山からは山頂にUHF TV送信所が立っているのがはっきりと見え、落葉した広葉樹林に覆われたごく穏やかな普通の中低山に見えたのだが、南や西から見ると絶壁が連続した険しい山に変身する。今回は一番楽に登れる北東側から入ることにした。同行するMさんは北に伸びる尾根を月居山まで縦走することにしたので、時間の都合もあるので私は西隣の長福山を往復してから車に戻り、Mさんが降りてくるはずの月居山登山口に車を回すことにした。前日のうちに登山口の位置は確認済みだ。

 白木山を下って車に戻り、車道を標識に導かれて左に入って車止めまで進むと男体山登山口なのだが案内標識は皆無で本当にここか?と思わせる風情だ。一番楽なコースとはいえ他のコースと違って樹林に覆われた緩やかな尾根を登るコースなので面白みが無いし、鉄道や幹線道路から離れいることが登山客が少ない原因だろう。Mさんは以前南側から男体山に登ったことがあるそうだが、なかなかいいコースだったと言っていた。

登山口。このコースは人が少ない 林道から分かれて左に入る

 

 舗装が切れてダートに変わった林道を歩き始めて少し経過すると案内標識が出現、左手が男体山への登山道でまっすぐの林道は何やら地名が書いてあったが土地鑑が無いのでどこに出るのか具体的には分からない。ただ、地図やガイドブックを見ると男体神社から長福山へと続く登山道が稜線に出る辺りで同じく稜線に出るらしい。まずは男体山を目指すのでここは左の登山道を辿ることにする。

山火事注意の看板 尾根上はよく整備された道
落葉樹林が続く 男体山山頂が見えてきた

 

 小さな沢を渡って尾根に取り付いてからはずっと尾根を歩く。尾根上には電柱が続いていたが、たぶん山頂のUHF TV中継所への電力供給用だろう。登山道兼電線巡視路と思うが、もしかしたら電線はずっと後からできてこの道も比較的新しいもので、よって他の登山コースより利用者が少ないのかもしれない。でも道の整備状況はばっちりで藪も無いし道も広い。尾根を登りきり左から太い尾根が合流すると登山道も合流する。おそらく大円地越からの登山道だろう。ここまで来ると男体山は目の前で、TV送信所のパラボラもはっきりと見える。登山口の看板によると以前山火事があったらしいが、その影響か間隔が開いた大きな木の下は笹原が覆っていた。普通、この地域の山の標高や気候からすると落葉広葉樹林が広がり地面付近は藪は無くどこでも歩きやすいはずだが、山火事であまり背が高くない木は一掃されてしまい、日当たりが良くなったところで笹が繁茂してしまったのかもしれない。

男体山山頂 岬のように飛び出した神社

男体山山頂から見た那須連峰

男体山山頂から見た塩原の山々
男体山山頂から見た奥日光

 

 最後の一登りで男体山山頂に到着、山頂北側はTV送信所の建物が占めているが一番高い場所は1等三角点が鎮座してちゃんと山頂らしくなっていた。僅かに西に飛び出したでっぱりには神社があり一番の好展望だった。北側は樹林がかぶるが他は開けて邪魔者は無く、関東平野は全部見えるはずだが今日は冷え込んでいる割には空気の透明度は悪く丹沢も見ることはできなかった。奥秩父、富士山も陰も形も見えなかった。奥日光から那須にかけては距離が近いこともあって少し霞んでいたが雪をかぶった峰々が並んでいた。

 男女の先客がいて女性の方が山岳同定に悩んでいるようなので左から日光、高原山、大佐飛山を中心とする塩原の山、そして一番右の白いのが那須の山と教えてやると、連れの男性が「山岳ガイドですか?」との言葉に「ごく普通の登山者です」と答えておいた。今考えると「ごく普通」は嘘だったかもしれない?? 男性は甲武信小屋の小屋番とのことで、小屋を閉める冬場はこんなところで山登りとは知らなかった。甲武信に登ったのは10年くらい前だったかなぁ。

 さて、ここからはMさんと別行動で、私は長福山を往復してから月居山登山口に車を回して縦走してくるMさんを改修する手はずだ。常識的にはMさんのコースの方が標高差はほとんどないなだらかな尾根なので短時間で歩き終わると思われるので、私の到着が遅れたら日当たりがいい場所で待っているように話しておいた。こちらは男体山と長福山の鞍部まで下って登っての往復なので、歩く距離は短くても時間がかかるだろう。少しでも標高差を少なくするため、できれば登山道を歩かないで両者を結ぶ尾根を歩こうと思う。登山道は尾根の南側を通って一番低いところは男体神社で、そのまま尾根の南を巻きながら登り返しているので、尾根上を歩けば少しは楽ができるはずだ。ただし、地形図を見ると尾根の途中には崖マークがあるのである程度標高が下がってから尾根に乗らないと進めそうにないので乗り移るタイミングが重要で、稜線西側は岩っぽいので地図には表現されない岩場が立ちはだかっている可能性もあり本当に使えるのかは何とも分からない。でもずっと登山道を歩くよりも楽しめそうなので現場で行けそうかどうか判断して、できれば尾根から行ってみたいところだ。

 尾根を北上して滝倉へ下る分岐を左に入る。この付近は背の高い落葉樹が点々と生えた下は笹と灌木の藪で、その中にきれいに刈り払われた登山道が延びている。時々立ち枯れた木も混じるのは山火事の影響か。長福山はまだ眼下でもったいないくらい標高を下げないと鞍部に到着しそうにない。地形図は縦走するMさんに渡してしまったので記憶に頼るしかないが、鞍部まで標高差300mあったと思う。

男体山から見た長福山 登山道から尾根に移る途中
尾根に乗る 岩もあるが問題なく巻ける

 

 グングン標高を下げると北方の尾根が徐々に近づき、登山道と尾根が一番接近した場所で崖等の危険地形はなくなっていたので尾根に乗り移ることにした。斜面は杉の植林帯の下は刺付きの藪でいやらしい。何故かほぼ全面が刺付きの木なので避けようが無く手袋をした手でかき分けながら進んでいく。藪の状態は変わらないが進んでいくと杉は立ち枯れて幹に焦げ跡が見られるようになり山火事の痕跡が見られた。樹林が見えて日当たりが良くなるとこういう藪が繁茂してしまうんだよなぁ。こうなると鬱陶しいがまだ笹の方がマシで、その笹は尾根直下で登場したがすぐに尾根に飛び出した。尾根上には岩も見えるがどうにか左右から巻けるといいが。

笹が茂る踏跡が消えた小尾根を下る 笹から竹藪になった
最低鞍部手前は藪が深い 杉林に覆われた最低鞍部

 

 尾根に出ると大きな樹木が無くなって展望が開けるが刺付き藪は薄くはなったが相変わらず続いていた。心配していた尾根上の岩は左右どちらかに必ず迂回可能で難なく進むことができて一安心、そもそも尾根上にはゴミが落ちていたので他にも歩く人がいたり植林等で入山した人がいるのは間違いなかった。何となく踏跡があるような無いようなであったが、一面の藪よりはずっといい。やがて尾根が左に曲がり南に進路を変えるが、これが主尾根でいいのか地形図がないので判断ができない。周囲は樹林なので様子が見えないし判断が難しいが、このまま西に降りるのが正しいと判断、かなり藪っぽくて踏跡もない急な尾根を下っていく。徐々に竹が混じるようになり枯れた竹をバリバリと音を立てながら踏みつけて、最後はかなり藪が深くて潜って通過すると間違いなく最低鞍部で正しいルートだった。杉の植林帯で峠には踏跡があるので麓から道があるようだ。ただしこれから登る西側にも私が降りてきた東側にも踏跡はない。

鞍部から登りにかかると刺付きの藪 尾根に上がる

 

 さあ、長福山への登りだ。尾根らしくないただの斜面を登るので下りでは嫌らしい場所で目印を付けつつ登っていくが、薄暗い杉の植林帯なのに刺付きの藪が一面に生えていて進むスピードが極端に落ちる。普通はこういう日当たりの悪い場所ではこんな刺の木は出てこないのだが、なぜかこの斜面は一面がこんな状態で迂回するにも手が無く、最短距離でできるだけ藪が薄い場所を選んで登っていく。最後は急傾斜で斜めに走るケモノ道をつないで尾根に出た。尾根上は落葉広葉樹の自然林でとげとげの藪は消えて歩きやすくなって一安心だ。傾斜も緩んで楽になる。登り切ったところが370mピークで緩やかに下り始めると笹が出てくるがまだまだ序の口だ。鞍部から登りにかかっても笹があるままで、面倒なので尾根上ではなく右を巻いて笹が薄くなってから尾根に乗るとそこそこはっきりした踏跡が登場、境界標識らしきものがあったのでたまに人が入るようだ。

480mピークに登る 何もない長福山山頂

 

 尾根が左に曲がって傾斜が増すと尾根がはっきりしなくなるのでこれまた目印を付けながら歩く。尾根がばらけると同時に踏跡も消えるが、この斜面には笹も刺の藪もないので問題ない。最後に突き上げて登り付いたのは480mピークで、ここで進路は左に変わってほとんど水平な道になる。GPSではまだ山頂は南と示しているので灌木の尾根を進み残距離ゼロ地点に到着したが、なだらかな尾根の一角で山頂標識はないし、樹林に覆われて視界もなく休む広場もなく山頂っぽくなかった。ただ、その先まで進んでみたが緩やかに下り始めたので本当の山頂らしかった。もしかしたら地形図の山頂と地元が言う山頂は少し違うのかもしれないが、これだけなだらかなら標高は大差ないだろうから問題ないか。休憩中も誰も来ない静かな山頂だった。

 帰りは一般登山道から男体山に戻るか、それとも刺藪を覚悟で同じ尾根ルートで戻るか悩んだが、標高差で特をする尾根ルートにした。帰ってから地形図を見たら尾根上の最低鞍部と登山道の最低標高部分の男体神社の標高を比較したら50mしか差が無く、これなら登山道を歩いても大差なかったのでガックリきた。


所用時間
 登山口−0:31−0男体山−0:43−鞍部−0:40−長福山−0:21−鞍部−1:05−男体山−0:20−登山口

 

 

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