南ア白峰南嶺前衛 鷹取山 2006年12月24日

 


 身延山は信仰の山として有名であるが、そのお隣にある鷹取山は全くの無名であろう。身延山の案内地図を見ても鷹取山には道の記入は無かったし、地形図を見ても点線が無く、さらっとネットで検索しても登山記録は発見できなかった。車道で最も高い場所まで入れる身延山鞍部付近から登ろうとも考えていたが、水平距離もあるし余分なピークを行きも帰りも登らなくてはならないため効率的とは言えず、標高差はあっても麓から一気に登ったほうが楽なようだ。地形図を見ると南東尾根の標高600mくらいに神社マークがあって破線が書かれており、これを使えば少なくとも途中までまともな道を歩けそうだ。身延山の延長線上でたぶん鷹取山にも信仰登山の名残があって山頂まで踏跡くらいあっても不思議ではないだろうし、南東尾根から往復することにした。

車を置いた神社から見た鷹取山(山頂は見えない)

尾根末端と神社

神社から見た集落

尾根取り付き。写真ではわかりにくいが道がある

 

 登山口の神社マークを探すには送電線が役に立ち、上空を横断した次にある右手の細い急坂を登り、無人のお寺の駐車場に車を止めた。墓地参拝者用駐車場と思われるが車が1台止まっているだけなので迷惑はかからないだろう。ザックを担いで出発する。人家の隙間の細い路地を山に向けて歩くと地形図に出ている神社の赤い屋根が目に入り、鹿かイノシシ避けの柵の出入口を針金を解いて抜けるとその裏手には目的の尾根末端があり、落ち葉に埋もれてはいるがしっかりとした道が上がっていて一安心。地形図に破線が描かれていても実際は道は存在しないというパターンは意外に多いが、今回は地図通りだと思ったのだが、地形図をよく見ると破線は神社から上がっているわけではなくもっと北からで、実際にそのように道が付いていた。

 

「新道」と「旧道」がある

主に「新道」を登った

 

 植林帯で朝は薄暗くて写真は撮影できないので帰りに撮るか。最初は細かった道も右手からもっと太い道が合流し(これが地形図に描かれた破線だった)、だいぶ登山道らしくなった。ただ、鹿の足跡はあったが最近人が歩いた雰囲気は無く、半分廃道なのかもしれないが。いや、道は2本あって傾斜がきつい区間も一直線に登る溝のようにえぐれた道は完全に廃道化しており、その脇にジグザグに付けられた道のほうがまだ利用されている雰囲気だった。2つの道は時折交差し、「新道」の傾斜が緩やか過ぎて労力が無駄だと感じたら「旧道」を通った。「旧道」はあまり歩かれていないようで地面が柔らかく、下りでは膝への衝撃を吸収してくれるのでいいかもしれないが、登りでは砂浜を歩くようなものだから疲れた。一方、「新道」は踏み固められており歩きやすかった。

標高510mにある神社

その先はなだらかな肩

 

 旧道を上り詰めると550m前後の傾斜が緩やかになる場所へ左を巻きながら到達、最後は道は消滅して落ち葉が積もる明るい樹林を歩いた。肩には平地が何箇所かあったが地形図であるはずの神社は見当たらなかった。もしかしたら小さな祠で見落としたのかもしれないが。帰りに分かったのだが、旧道を登ると神社付近は尾根左を巻いてしまうため神社前を通らなかったのだ。下山時、尾根をまっすぐ歩いたらちゃんと神社があり、真新しいしめ縄が飾られ、今でも地元の人が参拝しているようだった。そして神社前の参道を下っていくと植林帯をジグザグに下っており、「新道」の正体だった。

 

北側は崩壊している

年末なのにカエデが紅葉

南の小尾根から迂回する

ここから下が迂回区間

 

 広かった尾根が狭まり、右手は崩壊して谷底に落ちているのは地形図表記のとおりだった。この先は登山道なのか獣道なのか判断できないような踏跡に格下げとなり、尾根真上でなく南側を巻いて小鞍部を通過した。まだ紅葉しているカエデの下を通って痩せた急な尾根登りになるが、踏跡は尾根を外れて南側を巻いているのでそれに従い、主尾根から南に派生する小尾根で目的の尾根に向かった。ここを歩く人は少なからずいるようで、境界標識や赤テープ、スプレーの目印がいくつも見られた。再び尾根に戻り、左手が切れ落ち、落ち葉が降り積もって滑りやすい急な登りを慎重にこなし、尾根の幅が広がる安全地帯に出てほっとする。地形図ではこれほど尾根が痩せた区間があるようには見えないし、これほど切れ落ちているようにも見えないので予想していなかった事態だが、3点確保を心がければ危険は無いだろう。雪が付いたらイヤだけど。

痩せ尾根を登り切ったところ

標高700mの緩斜面

植林帯中1カ所だけ開けた場所

再び植林帯を登る

標高980m肩

古い祠

 

 明るい自然林はすぐに終わって暗い植林帯の登りに変わり、傾斜が緩むと標高700mの緩やかな斜面に出た。ここは下りで尾根の入口が分かりにくいので何箇所か目印をつけたのだがそれでも迷ってしまった。人工林で日当たりが悪いので藪は皆無なのはいいが、踏跡も無いので下りで正しい尾根にたどり着くには目印が必須である。わずかに盛り上がった尾根らしい場所を登っていくと徐々に尾根がはっきりしてきて、いつのまにか作業道に乗った。間伐した杉が片づけられず地面に転がり邪魔であるが、作業道の筋だけはチェーンソーで人が通れる幅だけ切り取られているのでルートをたどれる。850m付近だけ樹林がとぎれて明るくなるが再び暗い植林帯になり、なだらかになってからはまっすぐではなく左から巻くように道が付けられており、標高950mを越えると落葉樹林に出た。そして標高980m肩の木の根本には古い祠が置かれていた。ここも身延山の一角だからその昔は修行の場だったのかもしれない。

 

もうすぐ鷹取山山頂

鷹取山山頂

 

 尾根が狭まると再び植林帯になり、獣道に導かれて上り詰めたところが鷹取山山頂であった。ここも植林帯で落葉しないから景色は全く見えない。三角点は花崗岩ではなくコンクリートっぽく、頭が赤くペイントされて、四方に石が配置されていた。予想外にも手製の標識が2つ付けられており、北東尾根、西尾根には目印が付けられていたが道があるわけではなかった。一方、私が登ってきた南東尾根は山頂から見るとなだらかで尾根があるようには見えないから、目印がないとルート取りは難しいだろう。でも地図を見る限りでは最短ルートだし、途中に目印がいくつかあったから利用者がいないわけではない。まあ、かなり少ないのは間違いないだろうが。気温は高めでプラス1℃くらいあり、防寒着を着ればさほど寒くはなかった。

 

 下山は自分の付けた目印も利用しながら下ったが標高700mの緩斜面で北に寄りすぎてしまい、小尾根に迷い込んだが登りとは違う傾斜、踏跡の様子や標識のおかげで気づき、ロスった時間は数分くらいだった。登り返して南に向かい、慎重に周囲を見ながら下ると正しい尾根に出られた。痩せ尾根は登りと同じく南を巻き、標高550mの緩やかな尾根をまっすぐ歩くと登りでは発見できなかった神社があった。そこから「新道」を辿って麓の神社に下った。神社までもうすぐというところで「新道」は尾根を外れて左に下っていったが、地形図を見ると私が辿った尾根は地形図の破線が書かれているルートとは異なっており、どうやら「新道」は地形図の破線どおりについているらしい。帰りがけに集落の中の細い道を通ってみたが、私が登った神社よりももっと北に別の神社があり、おそらくここが登山口になっていると思われた。

所要時間
6:48お寺−−6:52麓の神社−−8:32鷹取山着−−鷹取山発8:52−−9:32中腹の神社−−9:46麓の神社−−9:49お寺

 

 

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