富士寄生火山 幸助山、八軒山、椹山、臼山、棧敷山、東剣、西剣、丸山 2002年11月10日

 

 

※ここに登った当時はデジカメを持っておらず写真がありません。あしからず。

 

 富士山の寄生火山としては宝永山が有名であるが、地形図を見ると山麓にいくつも山名が書かれた山があることに気付く。そのほとんどが寄生火山であり、勘定したことはないが結構な数になるのではないか。富士山本体への登山は年間何万人の単位で行われるが、寄生火山の方はほとんど注目もされず登る人はいないであろう。数が多いのでネットで全部調べたことはないが、宝永山に次いででかい大室山以外はほとんど登山記録など無いような気がする。山梨側などは自殺の名所として有名な?青木ヶ原樹海のまっただ中に点在し、磁石も効かないと噂される溶岩台地上の深い樹林帯で、一般的なイメージとしては「恐い場所」であり、登山対象となり得ないというのが正直なところだろう。

 本当に自殺の名所かどうか分からないが、もしそうだとしてもあれだけ広大な樹林中で現場にぶつかることはほとんど無いだろうし、なにせ富士のすそ野に位置するので地表面からの出っ張りが僅かでも標高は高く、労力の割に高度が稼げる。それに狭い範囲に密集しているので効率的に片づけることができるのも魅力だ。そんな目論見で寄生火山巡りをやってみることにした。ただし、情報が少ないので手探り状態だが。今回は後藤さんとの合同移動なので車が有効に使える富士スバルライン沿いにした。

 前夜の内に山麓に移動して仮眠。HPによるとスバルラインはAM5時に開くはずで、もう6時過ぎだから開いてるはずだ。飯は歩き出す直前に食うことにしてまずは出発した。今日の予定は幸助山からスタートし、八軒山、可能なら椹山、臼山と縦走し、樹海を突っ切って3合目駐車場から棧敷山に登り後藤さんと合流、東剣脇で車から降ろしてもらって西剣を往復、まだ体力と時間が余っていたら最後に丸山でおしまい。ワンデイ8山という、久しぶりに効率的な山行になる。ただし、各山の藪の状態は全く不明で、所要時間と労力は現場に行ってみないとわからない。

 スバルラインは入口で往復料金\2300を徴収される。ま、他に出口無いからな。路面は一部で霜が降りて凍結しているが、ほぼ全線ノーマルタイアで問題なし。GPSの表示を頼りに幸助山を目指す。すぐ道ばた右側の盛り上がりがそれで、手前には駐車余地まである。いったん通り過ぎてGPSで間違いなく幸助山であることを確認、Uターンして先ほどの駐車余地に戻り、朝食をとって防寒装備を調えて出発した。後藤さんは3合目駐車場に向かい、棧敷山で無線運用の予定だ。

山名:幸助山 標高:1894m 2.5万図名:富士山
 本当に道ばたの山で標高差は大したことがない。深いシラビソ樹林で藪はなく適当に歩けた。途中、2箇所の木にバケツがくくりつけられていたのは何かの研究用か。その先を登ると風倒木が散乱する幸助山だった。車から5分もかからなかったのではないか。標識はないが、静岡でたまに見かける「無くそう消費税」のシールがあった。こんな近くでも滅多に人は来ないらしい。時間はまだ7時過ぎで6mでは客が期待できないので430FMでCQを出すと庵原郡から声がかかった。

八軒山 1742m 富士山
 次は八軒山だ。地図を見る限りでは平坦な尾根の一角で山頂同定が難航しそうな山で、GPSの真価が発揮されよう。ここで方位を定めて歩き出すため方位磁石を取り出そうとしたら無い! たしか昨日はあったはずなのに。あちこち捜したが発見できず、GPSのみで歩く羽目になった。GPSは方位も出るが、3つ以上の衛星を受信できなければ正常な表示にならず、このような樹林ではそれは不可能だ。こうなったら太陽の位置で概略の方向を知り、GPSの残距離でみていくしかない。こりゃまいったなぁ・・・。

 八軒山はおよそ北西にあるので北目指して下っていく。相変わらずシラビソ樹林で藪はなく好き勝手に歩けた。やがて目的の尾根が見えてきたが、視界に入る南半分はツガの幼木地獄だ。これはたまらないので薄いところから尾根北側に回り、そちらから尾根を辿った。この作戦は成功で、藪が切れてから稜線に上がると薄い踏跡(それとも獣道?)があり、そこから山頂はすぐそこだった。とは言っても平坦な尾根だけでピークはなく、GPSがないと山頂がどこであるかわからない。カラマツの幼木が点在する尾根で日当たりはよい。もちろん標識はない。無線は6mでやることにしてヘンテナを組み立ててワッチすると東茨城郡からCQが出ていたので労せずしてQSOできた。その後奥積さんが呼んできて本日も目出度くQSO成立。ヘンテナなので強かった。次は約30分後に出ると宣言して出発した。GPSでは椹山まで約800mの表示だった。

椹山 1630m 富士山
 椹山はほぼ真西なので、尾根から外れて藪っぽい斜面を下る。やがてシラビソ植林帯に変わり藪は消え、グングン下ると右手に笹が出現したので西に直進は諦めて少し南に巻いた。南の植林帯は木の密度が高くGPSが受信できないほどで笹も生えていないから楽に歩ける。笹との境界を下っていくと隙間から舗装された林道が見てきた。と同時に笹藪が前面に広がってきたので強行突破しかない。幸い、それほどの藪ではなく、1分もかからずに林道に出られた。

 林道は上空が開けているのでGPS方位は正確だ。その方向にはピークが見えるがモロ笹藪だ。まだ400mくらい残っているので、もし延々と笹が続いていたらノックアウトされてしまう。若干遠回りになるがエアリアマップに描かれている黒点線からアプローチするのが正解だろう(上記地図には記載がないが、私が持っているエアリアマップでは記載があった)。本当に道が存在するか怪しいが。怪しいなら適当に藪の切れ目から進入しても同じだろうと、いかにも溶岩が押し出した上に樹林ができた様相の場所から西に入ったら、うまい具合に笹はなくて南西方向に緩やかに下っていった。やがてシラビソの植林地帯に出ると目印の赤スプレーが着いた木もあり、これが点線らしい。藪がないからどこでも歩けて問題ないが踏跡っぽいとは言えなかった。。そのままGPSの距離表示を頼りに下ると、登り斜面が見えてきた。あれに違いないと同じ様な藪無し樹林を登りきると山頂だった。

 ここもシラビソ樹林で視界はない。山頂部は平坦で、明確な高い場所はない。周囲を捜したが標識もなかった。少し日が当たる場所を確保して、アンテナ設営が面倒だったので木の間にDPを張り渡して6mで運用した。

 どこでも歩ける樹林帯なのに行きに目印等を付けないで登ってきたので、帰りのルートは方向だけ決めて適当に藪がない場所を歩いた。緩やかに登り始めた所で見覚えのある赤ペイントを吹き付けた木を見つけ一安心。もっとも、東に向かって歩いていればいつか林道に出られるが。踏み跡らしき筋を追っていったらエアリアマップの点線よりも北向きだったようで、いっこうに林道が現れず少々焦り、樹林を適当に東に向かって歩いて林道に飛び出した。いかにも溶岩が流れた上に木が生えた樹林が続き、これが青木ヶ原かと感じた。

臼山 1683m 富士山
 GPSを見ながら臼山直下に到着。ちょっとばかり周囲を歩いてみたが笹の海だったので、僅かに切り開きがあった南側から登ってみた。しかし、これは廃林道ですぐに濃密な笹の海に埋没し、とても進めないくらいの激藪と化したため無理と諦め、北斜面から攻めてみることにした。舗装林道を歩いていくと笹のない斜面が現れたので、そこから上を目指した。笹が出現したところでGPSの情報を頼りに東にトラバースしながら徐々に高度を上げるとまた笹が切れた樹林に変わった。昼なお暗き樹林を抜けると笹がお出まししたが、僅かで開けた場所に出た。そこから最高地点は僅かで、南に開けた場所だった。周囲はちょっとばかり笹があるが密藪ではなく、日が当たって気持ちのいい場所だった。ここでも6mで運用した。

棧敷山 1790m 富士山
 3合目駐車場上部のピークで、この界隈では唯一エアリアマップに道の記載がある。臼山からGPSと太陽の方向による方位推定で東を目指して適当に樹林を突っ切って歩く。途中で林道に出会うが方向が目的地と違いそうなので無視して樹林を直進、最後に急な登りで車道に出た。3合目より高い場所に出たらしいので左に下っていくと、まだ駐車場に到着していないが右手に登っていく廃林道を発見、これを登ることにする。どうせGPSがあるのだから、少し離れた所を通っても適当なところで尾根に取り付けばいいだろう。そのうち尾根に乗るかと思ったがずっと右側を通っており、GPSの表示を見ながらそろそろいいかという場所近くで法面を乗り越えられる場所を探して斜面に取り付き、シラビソ樹林を登っていく。尾根に乗るとなだらかになり山頂がどこなのか不明瞭になるがそこはGPSの威力で正確に導いてくれ、ピタリ山頂で後藤さんが無線をやっていた。エアリアマップの表記と異なり登山道はなくタダの樹林であり、廃林道が登山道らしかった。地形図記載ではなく旧コンサイス記載の山であり、ほとんど来る人もいないようで、山頂標識も無かった。

東剣 1635m 富士山
 2合目駐車場のすぐ裏手の山で簡単に登れると考え、車を降りて斜面に取り付いたらとんでもない笹藪と格闘することになった。踏跡はなく臼山同等の藪であるが、山頂までそれほど距離がないので強引に登っていく。どうにか高まりの一角にたどり着くが、どうやら寄生火山の火口壁らしく、窪みを中心に同心円状に高まりが続いていた。その最高点が山頂なのだが、これがまた強烈な笹藪のど真ん中で苦労させられた。

 無線を行い、次の西剣に向かうため林道に下ろうと北を目指すと、なんと全く笹は無くおとなしい樹林が続いているではないか! これなら遠回りでも最初から北側から攻めた方が時間も体力も使わずに済んだだろう。山頂直下まで笹藪の出現はない。淡々と下るとまともな林道に出た。

西剣 1590m 鳴沢
 林道脇の山なので、林道を歩いて小さな峠から山肌に取り付くことにした。もちろん、猛烈な笹藪だったら山を北側から巻く点線を歩き北側から攻めるつもりだ。その峠には駐車余地があり、予想外にもそこから踏み跡があってびっくり。周囲は笹の密藪で踏跡がなかったら東剣同様笹藪との格闘が必要なので大助かりだ。踏跡を辿ると山頂の一角にたどり着くが手前で消滅、しょうがないので笹をかき分けて最高点に立つ。当然のように目印、標識はなかった。西側の切り開きまで戻り無線をやった。

 

 帰りは林道を歩いてスバルラインを目指したが、地形図で細い林道から太い林道に変化する場所にゲートがあり、一般車は奥に入れない。ただし、猛烈な傾斜だが迂回路があり、車高が高い4WD車なら突破できる。その林道を歩くと麓に行ってしまうため途中で右の林道に入るが、これが途中で消滅してスバルラインまで行けなかった・・・・。適当に斜面を南に歩いて車道に出て後藤さんに合流したが、地形図に記載された林道との交差場所は存在しなかった。ずいぶん前に廃林道になり、今では痕跡さえ消えてしまったようだ。


丸山 1720m 富士山
 時間的にもそろそろ潮時なので丸山を最後にすることにする。後藤さんに車で送ってもらい直下で下ろしてもらうが、その付近では駐車余地がなかったのでもう少し上に上がった場所で待っていてもらうことにした。取り付いたのは市郡の境界線が真上を通る尾根で、北斜面ということもあり恐怖の笹は全く見られず、歩きやすい樹林帯をグングン登っていく。かなりの傾斜なので登る効率はいいが一直線に登るにはきつすぎてジグザグに登っていく。地図を見ると三角点があるがそれは最高地点ではなく、馬蹄形の火口壁の反対側がてっぺんなのでそちらに向かう。火口壁にたどり着くと確かに左手にへこみがありぐるっと土手が取り囲んで火口の雰囲気だ。山頂付近はカヤトの疎林でそこそこ日当たりも良く、寄生火山では珍しく心地よいピークだった。無線は後藤さんとのみ。火口を囲んでぐるっと一周でき、帰りがけに三角点を拝んでから元来たルートを下った。


 このように、南斜面の笹だけ避ければ意外に簡単に登れることがわかった。また、後日判明したことだが、富士吉田5合目に古御岳というコンサイス記載の山があり、その東で吉田口登山道との合流点にある2386m三角点が経ヶ岳との名称で山名事典に記載されたので、まとめて2山登った。この2山+今回の8山は1日で充分登れるだろうからワンデイ10山、しかも累積標高は2万m近く、非常に効率がいい。富士登山が終わって1日程度休養をとったら、これらの山にも足を延ばすといいだろう。

 

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